Repair ~TS転生して奴隷になったけど、日本に戻れました~

豊科奈義

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第四章

第四十四話 1

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 その言葉を受けて、ヘムカは「ああ」と感嘆の声を上げた。

「知事! どうかなさいましたか?」

 知事のさらに奥から、案内係のやら撮影用のカメラを所持している職員が駆け足でやってくる。

「いえ、何か問題が起こっているようで。どうかなさったのかと思ったまでですよ」

 知事が職員の方を向き何でもないと諭すと、知事はイツキを拘束している警察官とヘムカの顔を見比べる。

「で、何があったのか聞いても?」

 どちらからでもいいということだろう。
 先に話し始めたのは警察官だった。

「いえ、彼女が佐藤容疑者の保釈を要求していまして、主張が通らない場合は捜査活動に一切協力しないと」

 知事が警察官の発言を頷きながら聞いた。

「そうかい。君からは?」

 ヘムカに視線を移し、発言を求めた。
 県知事の前で無様な姿を晒すのか?
 でも、そんなことどうでもいいのだ。

「仰るとおりです」

 ヘムカはきっぱりと宣言した。だが、これだと人質をとって要求する犯罪者とさして変わらない。誤解を招かないように一応付け加えておく。

「別に、減刑しろとか無罪にしろとか言っているわけではないのです。ただ、時間をください。そうじゃないと、私おかしくなっちゃいそうで……」

 無理なお願いというのもわかっている。だからせめて、時間がほしかった。
 転生したこと、奴隷になったこと、たまたま歪に落ちたこと。全ては極僅かな確率だったはずだ。
 だったら、この無理難題もどうにかできるというのは高望みしすぎだろうか?
 ヘムカは諦め気味になり俯いた。
 知事はヘムカの発言を受け少し考えると、先程の警察官の方を見る。

「佐藤容疑者の罪状は?」

「殺人、道交法、諸々ですがそれがなに……か……?」

 警察官は、おとなしくイツキの罪状を述べるが、知事のしようとしていることに感づくなり語勢がどんどん弱くなっていった。顔も引きつっている。

「そうか。なら、検討しよう」

 その発言により、その場に激震が走った。

「知事!? 何を仰っているんですか?」

 真っ先に反応したのが先程の警察官だ。

「知事! お気を確かに! そろそろ知事選ですよ?」

 そして、警察官に続くように知事に同行する職員も驚きを隠しきれてなく、カメラを持った職員に至ってはシャッター音を立てて写真を撮っている。

「本当ですか」

 弱々しい声を出し、イツキもまた信じられていないようだ。

「彼女、ヘムカくんだろ? 通訳ができる唯一の存在だと聞いたが」

 知事はヘムカを見るとそのまま警察官に向かって話し始める。

「そりゃそうですが……」

「問題だとわかっているさ。しかしな、羽黒市民は事件の早期解決を望んでいる。実際、不審者の数は増える一方だ。そのせいで羽黒市では殺人やら強盗やらで散々な被害を被っているのだ。詳しい話はわからないが、不審者を帰し、これ以上の出没を防ぐためには彼女の協力が必要不可欠なのだろう? だったら我々は彼女の言いなりになるしかあるまい?」

 知事だってこの問題の重大さは理解している。少なくとも、知事にとって最善の選択肢がこれであり、県民にとっても、最良の結果であると確信している。
 この発言を受け、職員たちは黙りこくってしまう。
 ヘムカも驚いているが、何ら反対する理由があるため何も言わないことにする。

「それはそうですが……」

 しかし、警察官は納得いっていない。

「納得行かないのもわかる。だが、別に減刑等は求めていない。時期が来れば再び逮捕され、他の人同様裁かれる。ただ、多くの有名人の逮捕同様に、保釈しただけ。そうだろ?」

 少ないとはいえ、殺人犯でも保釈の例がある。

「……わかりました。ですが、どうやって? 裁判所が保釈の許可を出すまで数日かかりますが」

 保釈請求までにかかる日数は長くても一週間程度で短いのだが、一分一秒無駄にできない。

「その辺は大丈夫だ。私を誰だと思ってる?」

 知事はあえて県知事だとは言わなかった。しかし、警察官はどこか怯えた様子で知事から離れる。そして、知事の目線はヘムカへと向いた。

「ヘムカくん、私は総理に超実定法的措置を要請する。ただ、別に君が可哀想とはそういうのだからではない。君がきちんとこの羽黒市の事件をくれるために行うのだ。きちんと調査に協力すること。でなければ即座に許可を取り消し、強権発動してでも君を通訳として協力させる。わかっているね?」

「はい」

 ヘムカは理解した上で頷いた。その後すぐに別室で契約書を書かされると、確かに署名をする。

「確かに、契約は成立だ。すぐに県庁に戻って総理に打診しよう」

 知事とその職員が契約書をまとめ、警察署を発つ準備をすると急いだ様子でヘムカが知事の側にやってきた。

「あの、知事!」

「何だい?」

 知事はヘムカの方へと振り返った。

「その……ありがとうございます」

 ヘムカは頭を深々く下げた。

「なに、私は何もしていない。実際に判断を下すのは総理だ。私じゃないからね」

 知事は首を横に振る。

「通訳、頑張ってね。それじゃ」

 その後すぐに知事は帰庁のために警察署前に停まっている車に乗ったが、車が見えなくなってもヘムカは知事に向かって頭を下げ続けた。
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