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しおりを挟む「ほんとにうち来るんだ」
「え、うん。行くって言ったじゃん。紬だって弟クンにやめてもらいたいんだろ?」
「そうだけどぉ…」
HRが終わると、有賀はさっそく俺のところに来て「行くぞ」と一言だけ言うとすたすたと教室を出て行ってしまった。
慌てて追いかけたけど、なんとなくいつもより歩くスピードが早い気がするのは気のせいだろうか。気のせいだと思いたい。
というかこいつは俺の家で一体何をするつもりなんだろう。
家に来ることはうっかり承諾しちゃったけど、まさか本当に乳首吸われたりする?友達に??冗談だよね???
有賀の後ろ姿を凝視しながらぐるぐると考えていたら、とうとう自分の家に着いてしまった。
有賀がこちらを振り返って、玄関を開けるよう促してくる。
なんとなく凛と有賀を鉢合わせるのが気まずくて、玄関の扉をそっと開ける。
「た、ただいまー」
「なんでそんな声潜めてんの?」
「しっ!分かんないけど、なんかちょっと気まずいじゃんか」
「あー、ね。お邪魔しまーす」
「ちょ、ばか、」
「紬お兄ちゃん…?」
全然俺の話を聞かない有賀に焦っていると、先に学校から帰っていた凛がいつもと違う様子に不思議そうにリビングから顔を出していた。
横にいる有賀の姿を目に止めると、凛の顔つきに少しだけ警戒が混じる。
そのまま俺に一直線に近寄ってくると、ぎゅっと甘えるように出迎えられ、反射的に腕の中の凛を抱きしめ返した。
顔をすりすりと擦り付けてくる様は猫のように可愛くて、それにつられるように頭を撫でる。
「凛、ただいま」
「おかえり、紬お兄ちゃん。……この人、だぁれ?」
「あー、えと、友達の有賀。今日ちょっと遊びに来たから、しばらく部屋に居るね」
「……うん、わかった」
我慢して返事をしているのが雰囲気で伝わってきて、なんだか申し訳ない気持ちになってしまった。
よしよしと慰めるように、凛の丸い頭に沿ってさらさらの髪の毛を撫でてあげる。
その間、さりげなく横を向いた凛と隣に立つ有賀が、互いにどんな視線を送り合っていたのかも知らずに。
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