夜影の蛍火

黒野ユウマ

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短編集

身長差の話

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「カップルの理想の身長差って10cmらしいよ~」
「え? マジで? でも分かるかも、ちょっと背高いくらいがちょうどいいよね」

 日の入り時。いつもの帰り道で、すれ違った女子中学生二人が楽しそうにそんな話をしていた。
青春真っ盛りの女子らしい青い話、というのか。男子高校生であるボクも、青春真っ盛りの時期ではあるのだが。

「今の、聞きました?」
「何」
「カップルの理想の身長差ですって。10cmらしいですよ」

 ふーん、と興味なさそうに隣で頷くのは──ボクの友達、ではなく恋人の影人さん。まぁ、元々は本当に友達だったけれど。
何だかんだあったことを経て、今は少し甘みのついた間柄になっている。

 友達だった時と変わらないことも、多々あるものだけれど。
たとえば、今。こうして二人で隣り合って歩いている時も、他のカップルのようにベタベタしたりはしない。
他愛ない話をして、その場の状況次第でふざけ合って──時々、気が向いたら手を繋ぐ。
外にいる時は大体そんな感じだ。二人きりの時でもない限り、影人さんもいつもと様子を変えたりはしてこない。

「そういうの、あるんですね~。好きになった者同士なら別に関係ないと思うんですけど」
「まぁね……というか、別にそういうの興味ないし」
「ははは……影人さん、相変わらずドライですね~」

 興味ないことは興味ない、ばっさり切るのも相変わらずだ。ボクが特別な存在であるからといって、全てに興味を持ってくれるわけじゃないのも影人さんらしい。
それくらいが、さっぱりしてて良いのだけれど。そういうところもボクは好きなのだ。

「……まぁ、それに」
「え? 何です──」

 ── 塞がれた視界、唇に当たった柔らかな感触。
ほんの一瞬だけ感じた唇の熱に、何をされたか理解したボクの顔が沸騰したようにかあっと熱くなる。
え、とボクが呆然としている様が面白いのだろうか……張本人である影人さんは、少しだけ口角を上げて意地悪そうに笑む。

「俺と蛍、身長差同じだからさ……こうやって、キスもしやすいじゃん」

 ……時折こうやって見せてくる「恋人としての顔」に、どうにもボクは弱いようで。
恥ずかしさのあまり、しばらくボクは鯉のようにぱくぱくと口を動かしていた。
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