黒乃の短編集

黒野ユウマ

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おっちょこちょいな幼なじみと俺

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「きゃぁっ!!」


 ――あ、また転んだ。
   これで、本日10回目。



「お前さ、ちゃんと足元も見てるのか?」
「み、見てる! ちゃんと見てるよ!」
「見てるんだったら、あんなに何度も転ばないよなぁ?」
「うっ……」

 涙目で俯く目の前の幼なじみに、俺は言った。
このおっちょこちょいな少女――ニノは、ホント一日に何度転んでることだろうか。

 いや、転んでるだけじゃないな。
転ぶ以外にも、こいつホント色々な面でドジッてる。
昔から傍で見てきた俺だけが、多分それを知っている……と、思う。

「ドジの一言じゃ済まされないくらいドジだよな……お前、今日一日だけで何回ドジったか覚えてるか?」
「そ、そんなのわからないよ、ジャック……」
「転んだ回数はさっきの含めて10回、木とか壁とかにぶつかった回数4回、料理中に手を切った回数同じく4回、火力を間違えた回数2回、本棚を倒した回数5回。」

 合計25回だ。
そう教えると、ニノは「えぇっ!?」と驚いた。

 盛大なリアクション、どうもありがとう。でもこれが真実だ、リアルなんだぞ、ニノ。

「すごーい……ジャック、よく数えてたね」
「アホ、感心してる場合か。感心してる暇があんなら、さっさとそのドジを直せ」
「痛っ」

 ニノの頭に軽くチョップをかまして、俺は言った。
ホントに世話の焼ける奴だ……ちょっとでも目を離したら、どんなとんでもないドジをするもんだか。
そう思うと、マジでひやひやする。

 将来は看護師さんになりたい! とか言っちゃいるが……このドジが治らない限りは多分、一生無理だ。

 あぁ、どうしたらこのドジが治るもんだか。俺としては、もうこいつのドジの後始末は勘弁して欲しい。
全員が全員そうってわけじゃないが、ニノがドジをした後に「お前が何とかしろ」みたいな目で見てくるヤツがいるのも事実。周りからはもう完全に俺が二ノの保護者扱いだ。

 心臓に悪いし、心労も絶えない。こんな役目、いつまで続くんだろうな。


「あ、ねぇジャック! あそこにいるの、スズメさんだよね!!」

 ちょっと遠いところにいる鳥を指指して、ニノが爛々とした笑顔で言った。
小さくて丸っこく、もふもふとした小鳥――スズメだ。鳥が大好きなニノにとっては、まさにどストライクの萌えキャラ。

「あ? あー…そうなんじゃねぇの?」
「だよね! あのスズメさん、すっごく可愛いなぁ……もうちょっと近くで見たーい!」
「お、おい! 走るな、転ぶぞ!」
「大丈夫だよー!」

 やっぱり気に入ったらしい。
 ニノはそのスズメに向かって走り出した。そう、俺の注意なんか聞かずに。

 俺はそんな彼女を見て、溜息をつく。あいつの「大丈夫だよ」は、ぶっちゃけ信用ならない。
そう言っておきながらドジるのが、あいつ特有のオチであって。


「きゃあっ!」


 ……ほら、また転んだ。これで本日11回目。
俺は相変わらずな幼なじみに、またため息をついた。
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