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僕の人生
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「何年使ってるん?……えっ?5年!!もうそんなに使ってるんやったら、ええんちゃうん…次の買ったらいいのに」
「毛玉すごいついてるやん。モケモケや~」
「それ見てたら、毛玉だらけで可哀想になってくるわ…新しいの、プレゼントしよか?」
そんな会話を聞く度に毛糸の手袋の僕は悲しくなる。でも、持ち主のママさんの言葉に救われる。
「5年使ってるけど…モケモケになってるけど…毛玉だらけやけど…いいねん!私、ムッチャ気に入ってるねん。あったかいし、手に馴染んでるし。それに誰にも迷惑かけてへんしエエねん、エエねん」
ママさんの温かい声で、無事丸5年を乗り切れた僕。でも6年目に入るシーズン前の夏、僕にとってとんでもないことが起きていた事は知る由もない。
🧤 🧤 🧤 🧤 🧤
ママさんとの出会いは今から5年前。
昔からある地元密着型のスーパー。その2階にある婦人服・小物売場での冬物アイテムバーゲン特設会場にて。
山盛りワゴンセールの中に沢山の仲間達。
その中の僕は、[1980円(税抜)]の値札が付けられ、その横に[ここから3割引]の値札が貼られていた。
僕はいろんな人に手にされては戻され、仲良かった仲間は売れていく。【僕、このまま誰にも買ってもらえへんのとちゃうかなぁ…処分されてしまうんかなぁ…】と落ち込む。
─────
今日は、バーゲン最終日。ワゴンセールの中は、元々の量の1/3になっていた。その中にまだいる僕。
【きっと、またじろじろ見られるだけ見られて、また戻されるんや…ポイって。“きっと買ってもらえる”って、期待しすぎて疲れたわ。もうええねん!】
その時今までの事で、ヤケっぱち・不貞腐れ・捻くれ…と、心はむちゃぐちゃひん曲がって、荒んだ気持ちでいっぱいやった。でもそんな僕に、待ちに待った瞬間が遂にやってきた。僕を手に取って、選んでくれた人が現れた。
「へー…最終日か…。残り物には福ちゃん…なんかいいのあるかなぁ…」
【あっ…オバちゃんが手に取ってくれた…でもじろじろ見るだけ見て、きっとすぐポイされるんや…ふん!もうええねん】
「あらっ…イヤッ、これっ、ちょっと、ちょっと!これ、ちょっとちょっと、これ、イイやん!濃いグレーと白メインで、くすんだピンクちょっと使ってあって…これイイやん!!めちゃ、ラッキー!!これ、買お!」
大っきいひとりごと言いまくって即決。
僕を握りしめ、レジに行ってくれた運命の人!このオバちゃん、改めママさん。この後の5年間、僕を大切に取扱い使ってくれるなんて、この時は夢にも思ってなかった。
🧤 🧤 🧤 🧤 🧤
昨シーズンが終わった時、僕をキレイに洗濯して乾かして、防虫剤と一緒にケースに閉まってくれたママさん。
寒くなる前に、再び僕を登場させてくれた!さぁ、6年目のシーズン突入…でも、いつも通りとはいかなかった。シーズン前の夏に、ママさん、使い慣れた携帯電話からスマートフォンに機種変更していた。
ある日。元々方向音痴のママさん。目的地までの途中、案の定道に迷ってしまう。通行人の邪魔にならない場所まで移動して、手袋をしたままスマホを触るママさん。
「えっ?あれっ?なんでやろ?画面が変わらへん…えらいこっちゃ、どうしよ…」
焦ったママさんは、きょろきょろして、交番を探すのに走り出す。運良く走り出してすぐのところに交番があって、事なきを得た。
─────
そして、その日の夜…
「冷え性やのに、手袋しながらスマホ触れへんのえらいこっちゃ!一人暮らしの息子に聞かな分からへんなぁ。今何時や…あっ21時か…もうご飯食べ終わってる頃かな…。ちょっと電話してみよ」
【ママさん、一人暮らしやししゃーないんやろうけど、ひとりごとの声大っきすぎやわ…。あっ、家電と違って、スマホから息子さんに電話掛けるんや】
「もしもしー、ちょっと教えてほしいんやけど」
『何をや?』
「あんな、夏にガラケーからスマホに機種変したんやんか」
『ふん』
「毛糸の手袋したままスマホ触ってんけど、うんともすんともしてくれへんかってん…なんで?」
『あー…あんな、おかん。普通の手袋やったら反応しいひんねん。スマホ対応の手袋売ってるし、買物行くついでに見てきてみ?』
「えっ…そんなんあるん?分かった。ありがとう!明日早速見に行ってくるわ~」
『はいはーい。ほんならおやすみ~』
「カゼひかへん様にしいや。ほんならおやすみ」
僕は気になって、耳をダンボにして電話の話しを聞いていた。ママさん…明日一体何を見に行くの?
🧤 🧤 🧤 🧤 🧤
翌日の午前中、ママさんが向かった先は、昔からある地元密着型のスーパー。その2階にある婦人服・小物売場での冬物アイテム売場。そう、この場所は、僕がママさんと出会った運命の場所。そのママさんは、手袋売場に立って、ミニハンガーに掛けられている沢山の種類の手袋を手に取って見ている。その様子を僕は、コートのポケットの中からずっと見ていた。
「スマホ対応の手袋っていろいろあんねんなぁ…」
【スマホ対応の手袋?…あっ!】
昨日の息子さんの電話から今ので、だいたいが僕の中で繋がってしまった。
【僕、捨てられてしまうんや…スマホ対応と違うから…】
そして僕は気を失ってしまった。
🧤 🧤 🧤 🧤 🧤
【ん?あれ…僕…なんか…いつもと違う?なんか別々に動けへん…なんで?】
なんか気持ち悪い感じでゆっくり目が覚める。いつもの僕は、右手・左手のニコイチ。いつもの様に動こうとする。でも右手と左手がくっついてる気がして仕方ない。
【センパイ!?気、つかれましたか!?】
【!?】
知らない手袋に声を掛けられて、びっくりする。
【センパイ、初めまして。今日、こちらにお住まいのおかあさんに購入頂きました、スマホ対応手袋です。宜しくお願い致します】
【へっ?…あっ…スマホ対応…購入…】
“スマホ対応”と聞いて、気を失う前の記憶が蘇ってくる。
【あっ、新しい…そっか…君がママさんのとこに来たってことは、僕、用無しや。捨てられるんや。そっか、そっか…。あっ!そう言うたら明日燃えるゴミの日やった気がするわ!スマホ対応くん、ママさんのこと、これから宜しくお願いします…】
【えっ…?用無し?捨てられる?ママさんのこと、これから宜しく?えっ?それ、どういう事です?】
【どういう事ですって、言葉通りやけど】
【えっ?センパイ、用無しでも、捨てられもしませんよ!もう、新しい人生始まってます!】
【新しい人生…って、どういう事なん?】
スマホ対応くんの言っている意味が全然分からない。
【こちらのおか…ママさん、「昔手袋でパペット作った事あんねんけど、思い出せへん」ってぶつぶつ言いながら、あーでもない、こーでもないってやってはったんですよ。その後、スマホ見て、「あっ…そうや!スマホで作り方探したらわかるかなぁ」って。再びあーでもない、こーでもないってやって、そして出来たのが、今のセンパイなんです】
【今のって…どういう事なん?】
【どういう事なん?…って、百聞は一見にしかずです。さぁ、窓際に行ってみましょう!】
そう言ったスマホ対応くんが僕を持ち上げて、エッホエッホと窓際まで連れてきて、ゆっくり下ろしてくれた。
【さぁ!センパイ、窓を見て下さい】
そう言われて、窓を見てみた。思わず見惚れる。
【わぁ~っ…綺麗な三日月や~!スマホ対応くんもこっち来て一緒に見よ?】
窓を差して【ほら!】と振り向いて、スマホ対応くんを見たら、ズッコケていた。
【スマホ対応くん、どしたん?何、コケてんの?大丈夫か?】
【大丈夫です…ボクの言い方が悪かったんですね…。改めて…窓に映るセンパイの姿を見て下さい】
そう言われて僕は窓に映る自分を見る。
【!!】
そこに映った姿にびっくりする。
【あの…これ…だれ…?】
【センパイですヨ!】
【へっ?どういう事なん…?】
今起きてる事に僕の頭がおいつかん…。
【センパイ、パペットにならはったんです】
【パペット…?】
【はい。えっと、パペットって、動かして楽しむための人形の事を言うらしいんです。センパイは、元手袋で手にはめるから、ハンドパペットになるらしいんです】
【ハンドパペット…】
スマホ対応くんが言うにはつまり…僕はママさんのおかげで生まれ変わったちゅーことなんか?
【分かりやすく言ったら手袋と人形のいいとこ取りのハイブリッドっちゅー事ですわ】
【いいとこ取りのハイブリッドのハンドパペット…】
僕は窓に映る姿を見ながら、試しに手になる部分をゆっくり動かしてみた。思う通り動いた。次に手を振ってみた。ちゃんとしっかり振れていた。
🧤 🧤 🧤 🧤 🧤
そしてパペットに生まれ変わった僕は、ママさんと一緒になぜかボランティア活動をする事になった。
ママさんが住んでいる町に、こどもからおとしよりまで楽しめるパペット人形劇団『ぱぴぷぺパペットさん』と言うボランティアサークルがあった。ぱぴぷぺパペットさん一家が楽しく過ごす日々を劇にしたオリジナルストーリーが売りの人形劇団。練習や道具作りをするのが月・水・金曜日で、人形劇をするのは主に日曜日。
僕の役は、ぱぴぷぺパペット一家のお隣に引っ越してきた、手袋の毛玉のせいで人形なのかぬいぐるみなのか分からないダ~レさん。ダ~レさんの声とパペットの使い手はママさん。ダ~レさんは脇役でちょい役。出番は少ないけど、ボケ役として重要な役柄やった。
ダ~レさんの初登場してからしばらくの間、お客さんの反応はしーん…笑う場面で笑いが起こらず。「こらあかん!!」とママさんは、どうしたもんかと悩んだ。そして悩み抜いた答えが、家での練習と“よし!もっともっと新喜劇”を観る…やった。ママさんは毎日1日1本の新喜劇の動画を見て、ボケ役のマネを必死に練習しはった。そしてそれをいかにパペットの僕で表現するか…を寝る前の30分間で集中練習する毎日。
ママさんが寝てから僕はスマホ対応くんに「今日もお願いします」と声を掛ける。そして、彼の前でママさんがした動きをマネしながら、ママさんが出来ないオリジナルの動きをする。
「そのズッコケ方、もうちょっと滑らかにしてみましょか?」
等…スマホ対応くんにアドバイスをもらって、練習を繰返す毎日。
そして2カ月程経ってから、遂にママさんと僕の努力の報われる時が来た。
何もないところでズッコケる場面で、お客さんから笑い声が聞こえてきた!
それから登場するタイミングで拍手が鳴るようになった!ママさんも僕も大喜びした!!
アドバイスしてくれたスマホ対応くんにその話をしたら、「おめでとうございます!努力が報われて、ほんまによかったです!!」と彼は泣きながら一緒に喜んでくれた!
🧤 🧤 🧤 🧤 🧤
ママさんは、売れ残っていた手袋の僕を寒くなりだしてから暖かくなるまでの約半年間、ほんまに大切に取扱って使ってくれた。使い終わったら洗濯をして、衣替えの箱に丁寧にしまってくれた。そんなママさん、更に大好きになった。あまり好きじゃなかった僕自身も少しだけ好きになれた。
そして、手袋として使えなくなった僕をパペットにしてくれて、更にダ~レさんとしてママさんと一緒に過ごせるようになって…ママさんと過ごせる時間は手袋の時の倍以上!季節関係なくずっと一緒に過ごせている。
あのスマホ対応くんとも友達になれた!
今思うと、あの時ママさんが僕を見つけて手に取ってくれてへんかったら、僕の人生どうなっていたんやろ…?もしかしたら辛いものになっていたかもしれへん…。
あの時の僕…山盛りワゴンセールの中に沢山の仲間達といた僕に伝えれるなら伝えたい!
「ワゴンセール最終日に運命の人…ママさんに出会うねん。ママさんのおかげでとても幸せな人生を送るねん。僕に伝えている未来の僕は今、ほんま幸せなんやで…ほんまに」と。
「毛玉すごいついてるやん。モケモケや~」
「それ見てたら、毛玉だらけで可哀想になってくるわ…新しいの、プレゼントしよか?」
そんな会話を聞く度に毛糸の手袋の僕は悲しくなる。でも、持ち主のママさんの言葉に救われる。
「5年使ってるけど…モケモケになってるけど…毛玉だらけやけど…いいねん!私、ムッチャ気に入ってるねん。あったかいし、手に馴染んでるし。それに誰にも迷惑かけてへんしエエねん、エエねん」
ママさんの温かい声で、無事丸5年を乗り切れた僕。でも6年目に入るシーズン前の夏、僕にとってとんでもないことが起きていた事は知る由もない。
🧤 🧤 🧤 🧤 🧤
ママさんとの出会いは今から5年前。
昔からある地元密着型のスーパー。その2階にある婦人服・小物売場での冬物アイテムバーゲン特設会場にて。
山盛りワゴンセールの中に沢山の仲間達。
その中の僕は、[1980円(税抜)]の値札が付けられ、その横に[ここから3割引]の値札が貼られていた。
僕はいろんな人に手にされては戻され、仲良かった仲間は売れていく。【僕、このまま誰にも買ってもらえへんのとちゃうかなぁ…処分されてしまうんかなぁ…】と落ち込む。
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今日は、バーゲン最終日。ワゴンセールの中は、元々の量の1/3になっていた。その中にまだいる僕。
【きっと、またじろじろ見られるだけ見られて、また戻されるんや…ポイって。“きっと買ってもらえる”って、期待しすぎて疲れたわ。もうええねん!】
その時今までの事で、ヤケっぱち・不貞腐れ・捻くれ…と、心はむちゃぐちゃひん曲がって、荒んだ気持ちでいっぱいやった。でもそんな僕に、待ちに待った瞬間が遂にやってきた。僕を手に取って、選んでくれた人が現れた。
「へー…最終日か…。残り物には福ちゃん…なんかいいのあるかなぁ…」
【あっ…オバちゃんが手に取ってくれた…でもじろじろ見るだけ見て、きっとすぐポイされるんや…ふん!もうええねん】
「あらっ…イヤッ、これっ、ちょっと、ちょっと!これ、ちょっとちょっと、これ、イイやん!濃いグレーと白メインで、くすんだピンクちょっと使ってあって…これイイやん!!めちゃ、ラッキー!!これ、買お!」
大っきいひとりごと言いまくって即決。
僕を握りしめ、レジに行ってくれた運命の人!このオバちゃん、改めママさん。この後の5年間、僕を大切に取扱い使ってくれるなんて、この時は夢にも思ってなかった。
🧤 🧤 🧤 🧤 🧤
昨シーズンが終わった時、僕をキレイに洗濯して乾かして、防虫剤と一緒にケースに閉まってくれたママさん。
寒くなる前に、再び僕を登場させてくれた!さぁ、6年目のシーズン突入…でも、いつも通りとはいかなかった。シーズン前の夏に、ママさん、使い慣れた携帯電話からスマートフォンに機種変更していた。
ある日。元々方向音痴のママさん。目的地までの途中、案の定道に迷ってしまう。通行人の邪魔にならない場所まで移動して、手袋をしたままスマホを触るママさん。
「えっ?あれっ?なんでやろ?画面が変わらへん…えらいこっちゃ、どうしよ…」
焦ったママさんは、きょろきょろして、交番を探すのに走り出す。運良く走り出してすぐのところに交番があって、事なきを得た。
─────
そして、その日の夜…
「冷え性やのに、手袋しながらスマホ触れへんのえらいこっちゃ!一人暮らしの息子に聞かな分からへんなぁ。今何時や…あっ21時か…もうご飯食べ終わってる頃かな…。ちょっと電話してみよ」
【ママさん、一人暮らしやししゃーないんやろうけど、ひとりごとの声大っきすぎやわ…。あっ、家電と違って、スマホから息子さんに電話掛けるんや】
「もしもしー、ちょっと教えてほしいんやけど」
『何をや?』
「あんな、夏にガラケーからスマホに機種変したんやんか」
『ふん』
「毛糸の手袋したままスマホ触ってんけど、うんともすんともしてくれへんかってん…なんで?」
『あー…あんな、おかん。普通の手袋やったら反応しいひんねん。スマホ対応の手袋売ってるし、買物行くついでに見てきてみ?』
「えっ…そんなんあるん?分かった。ありがとう!明日早速見に行ってくるわ~」
『はいはーい。ほんならおやすみ~』
「カゼひかへん様にしいや。ほんならおやすみ」
僕は気になって、耳をダンボにして電話の話しを聞いていた。ママさん…明日一体何を見に行くの?
🧤 🧤 🧤 🧤 🧤
翌日の午前中、ママさんが向かった先は、昔からある地元密着型のスーパー。その2階にある婦人服・小物売場での冬物アイテム売場。そう、この場所は、僕がママさんと出会った運命の場所。そのママさんは、手袋売場に立って、ミニハンガーに掛けられている沢山の種類の手袋を手に取って見ている。その様子を僕は、コートのポケットの中からずっと見ていた。
「スマホ対応の手袋っていろいろあんねんなぁ…」
【スマホ対応の手袋?…あっ!】
昨日の息子さんの電話から今ので、だいたいが僕の中で繋がってしまった。
【僕、捨てられてしまうんや…スマホ対応と違うから…】
そして僕は気を失ってしまった。
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【ん?あれ…僕…なんか…いつもと違う?なんか別々に動けへん…なんで?】
なんか気持ち悪い感じでゆっくり目が覚める。いつもの僕は、右手・左手のニコイチ。いつもの様に動こうとする。でも右手と左手がくっついてる気がして仕方ない。
【センパイ!?気、つかれましたか!?】
【!?】
知らない手袋に声を掛けられて、びっくりする。
【センパイ、初めまして。今日、こちらにお住まいのおかあさんに購入頂きました、スマホ対応手袋です。宜しくお願い致します】
【へっ?…あっ…スマホ対応…購入…】
“スマホ対応”と聞いて、気を失う前の記憶が蘇ってくる。
【あっ、新しい…そっか…君がママさんのとこに来たってことは、僕、用無しや。捨てられるんや。そっか、そっか…。あっ!そう言うたら明日燃えるゴミの日やった気がするわ!スマホ対応くん、ママさんのこと、これから宜しくお願いします…】
【えっ…?用無し?捨てられる?ママさんのこと、これから宜しく?えっ?それ、どういう事です?】
【どういう事ですって、言葉通りやけど】
【えっ?センパイ、用無しでも、捨てられもしませんよ!もう、新しい人生始まってます!】
【新しい人生…って、どういう事なん?】
スマホ対応くんの言っている意味が全然分からない。
【こちらのおか…ママさん、「昔手袋でパペット作った事あんねんけど、思い出せへん」ってぶつぶつ言いながら、あーでもない、こーでもないってやってはったんですよ。その後、スマホ見て、「あっ…そうや!スマホで作り方探したらわかるかなぁ」って。再びあーでもない、こーでもないってやって、そして出来たのが、今のセンパイなんです】
【今のって…どういう事なん?】
【どういう事なん?…って、百聞は一見にしかずです。さぁ、窓際に行ってみましょう!】
そう言ったスマホ対応くんが僕を持ち上げて、エッホエッホと窓際まで連れてきて、ゆっくり下ろしてくれた。
【さぁ!センパイ、窓を見て下さい】
そう言われて、窓を見てみた。思わず見惚れる。
【わぁ~っ…綺麗な三日月や~!スマホ対応くんもこっち来て一緒に見よ?】
窓を差して【ほら!】と振り向いて、スマホ対応くんを見たら、ズッコケていた。
【スマホ対応くん、どしたん?何、コケてんの?大丈夫か?】
【大丈夫です…ボクの言い方が悪かったんですね…。改めて…窓に映るセンパイの姿を見て下さい】
そう言われて僕は窓に映る自分を見る。
【!!】
そこに映った姿にびっくりする。
【あの…これ…だれ…?】
【センパイですヨ!】
【へっ?どういう事なん…?】
今起きてる事に僕の頭がおいつかん…。
【センパイ、パペットにならはったんです】
【パペット…?】
【はい。えっと、パペットって、動かして楽しむための人形の事を言うらしいんです。センパイは、元手袋で手にはめるから、ハンドパペットになるらしいんです】
【ハンドパペット…】
スマホ対応くんが言うにはつまり…僕はママさんのおかげで生まれ変わったちゅーことなんか?
【分かりやすく言ったら手袋と人形のいいとこ取りのハイブリッドっちゅー事ですわ】
【いいとこ取りのハイブリッドのハンドパペット…】
僕は窓に映る姿を見ながら、試しに手になる部分をゆっくり動かしてみた。思う通り動いた。次に手を振ってみた。ちゃんとしっかり振れていた。
🧤 🧤 🧤 🧤 🧤
そしてパペットに生まれ変わった僕は、ママさんと一緒になぜかボランティア活動をする事になった。
ママさんが住んでいる町に、こどもからおとしよりまで楽しめるパペット人形劇団『ぱぴぷぺパペットさん』と言うボランティアサークルがあった。ぱぴぷぺパペットさん一家が楽しく過ごす日々を劇にしたオリジナルストーリーが売りの人形劇団。練習や道具作りをするのが月・水・金曜日で、人形劇をするのは主に日曜日。
僕の役は、ぱぴぷぺパペット一家のお隣に引っ越してきた、手袋の毛玉のせいで人形なのかぬいぐるみなのか分からないダ~レさん。ダ~レさんの声とパペットの使い手はママさん。ダ~レさんは脇役でちょい役。出番は少ないけど、ボケ役として重要な役柄やった。
ダ~レさんの初登場してからしばらくの間、お客さんの反応はしーん…笑う場面で笑いが起こらず。「こらあかん!!」とママさんは、どうしたもんかと悩んだ。そして悩み抜いた答えが、家での練習と“よし!もっともっと新喜劇”を観る…やった。ママさんは毎日1日1本の新喜劇の動画を見て、ボケ役のマネを必死に練習しはった。そしてそれをいかにパペットの僕で表現するか…を寝る前の30分間で集中練習する毎日。
ママさんが寝てから僕はスマホ対応くんに「今日もお願いします」と声を掛ける。そして、彼の前でママさんがした動きをマネしながら、ママさんが出来ないオリジナルの動きをする。
「そのズッコケ方、もうちょっと滑らかにしてみましょか?」
等…スマホ対応くんにアドバイスをもらって、練習を繰返す毎日。
そして2カ月程経ってから、遂にママさんと僕の努力の報われる時が来た。
何もないところでズッコケる場面で、お客さんから笑い声が聞こえてきた!
それから登場するタイミングで拍手が鳴るようになった!ママさんも僕も大喜びした!!
アドバイスしてくれたスマホ対応くんにその話をしたら、「おめでとうございます!努力が報われて、ほんまによかったです!!」と彼は泣きながら一緒に喜んでくれた!
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ママさんは、売れ残っていた手袋の僕を寒くなりだしてから暖かくなるまでの約半年間、ほんまに大切に取扱って使ってくれた。使い終わったら洗濯をして、衣替えの箱に丁寧にしまってくれた。そんなママさん、更に大好きになった。あまり好きじゃなかった僕自身も少しだけ好きになれた。
そして、手袋として使えなくなった僕をパペットにしてくれて、更にダ~レさんとしてママさんと一緒に過ごせるようになって…ママさんと過ごせる時間は手袋の時の倍以上!季節関係なくずっと一緒に過ごせている。
あのスマホ対応くんとも友達になれた!
今思うと、あの時ママさんが僕を見つけて手に取ってくれてへんかったら、僕の人生どうなっていたんやろ…?もしかしたら辛いものになっていたかもしれへん…。
あの時の僕…山盛りワゴンセールの中に沢山の仲間達といた僕に伝えれるなら伝えたい!
「ワゴンセール最終日に運命の人…ママさんに出会うねん。ママさんのおかげでとても幸せな人生を送るねん。僕に伝えている未来の僕は今、ほんま幸せなんやで…ほんまに」と。
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手袋くんに泣かされるなんて、誰が想像できたでしょうか・・・(´;ω;`)
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いや、きっと手袋くんが優しい子だからママさんも見つけてくれたんじゃないかなあ。
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私も簡単に「手袋失くしたから新しいの買おう」じゃなくて、お気に入り君を大切に使い続けようと思います。
ていくみー様
お読み下さって、更に感想を頂きありがとうございました😂
むちゃ嬉しいです!
この作品は、かなりの思い入れがあったのですがしかし、ドボ〜ン😨(ドボ〜ンの意味がていくみー様ならきっと分かられるはず😁)
どうしても、どうしても成仏?させたくって、アルファポリス様に投稿させて頂きました😁
いつもありがとうございます😆