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ずっと、待っていた。
本当にずっとずっと、それこそ十一年前から待っていたんだ――この時を。
「東の花国第一王子フラディオール・ローデヴェイク。此度の件について、何か申し開きはあるか」
威厳ある女性、わが母である女王陛下の声が謁見の間に響く。
国の重鎮達や他国の王族まで集うその空間で、彼女以外誰も声を発することはない。
僕を貫く、凍るような水色のまなざし。
微笑むと春のごとく暖かな印象になるそれは、もう二度と目にすることはできないだろう。
ティアラと薔薇の花で飾られた濃い金髪は自分の持つ色に似ているけど、母上のそれは蜂蜜のように艶やかだ。
こんな時なのに綺麗な人だと思いながら、わざと返答に間を空ける。
痛い程の静寂の中、視線をいくつも感じる。
その内一際強い視線は、ふたつ。金髪に白い百合の花をつけた可憐な美少女と、黒髪にピンと立った同色の三角耳を持つ長身の美青年だ。
正直〝こっちを見ろ〟感がひしひしと伝わってくるのだが、ふたりには意識を向けない。
もう僕と彼女達は、完全に別たれた存在だから。
「……一切ございません。いかなる裁きもお受けいたします、女王陛下」
この場で微笑むことは、さすがにしなかった。
いくら国内で〝春のプリンス〟なんて恥ずかしいあだ名で呼ばれていても、今の僕には相応しくない。
なんせ、僕が犯した罪は重い。
王子という高い身分でありながら他国の王子に喧嘩を売り、また別国の王女を侮辱し、あまつさえ自らの妹と王子を死に至らしめようとしたのだ。
これで首が飛ばないのは身分ゆえというより、被害者達からの助命嘆願の方が大きい。
僕が手を出した王子の国はうちより国力がある、世界一の大国だ。国際問題になったら僕どころか国自体も被害を被る。
それを大きくせず逆に自分を殺そうとした相手を助けてあげるなんて、とんでもないお人好しの集まりだ。
……まぁ、知っていたけど。
「フラディオール・ローデヴェイク。そなたの王位継承権と王族籍を剥奪する。更に私財は没収とし、その身は国外追放となる。今後一切この地を踏むことは許さぬ」
「承知いたしました」
それは死罪でなくてもかなりの重刑だ。
身分、財産、住む土地もなくなる。人によっては死より残酷な刑かもしれない。
「加担していた者らにも、追って沙汰を申しつける――下がれ」
「――は」
礼を取り、顔を上げる。
真正面から見た女王陛下は、ほんの少し、僕にしかわからないくらいに少しだけ、眉を下げた。
ごめんね、母上。こんな終わり方になってしまって。
僕だってもっと穏便にできたらとは思っていたけど、無理だったんだ。
なんせうちの妹の攻略ルートに乗って、嫁ルートじゃなくて婿ルートを選んでしまった……あのイケメン狼がいたからね。
× × ×
ここは美少女ゲームの世界、らしい。
その名の通り、美少女が登場する恋愛シミュレーションゲーム。ちょっとだけ大人な表現があるものの、完全なアダルトゲームではない。
そして何と、攻略対象のひとりが僕の身内である。
僕がそれを思い出したのは、今から十一年前だった。
この世界には十年に一度各国の王が集まる大祭がある、僕はそこで未成年の王族達の交流会に出席するため、各国の王族の姿絵を見て勉強していたのだ。
そして今年の開催国である西の獣国の王家の姿絵に、まだ幼い狼獣人の王子を見つけた瞬間だった。
――あ、これ絶対『けもひめ』のむっつり変態イケメン狼王子。わかりやすい成長したんだな。
そんな色々どうかと思う感想と共に、前世の記憶が脳内を一時占拠した。
人生を一から十まで全て思い出したわけじゃない。断片的な記憶の欠片がいくつも入り込んできたという方が正しい。
幼稚園の通園バスを待っていたり、高校の夏休みにバイトの面接に行ったり、残業後に深夜のラーメン屋へ駆け込んだり……日常生活が垣間見える、正直どうでもいいシーンばかり。
しかし、その中で前世が蘇るトリガーとなった記憶があった。
それは前世の兄が〝隠しルートのハーレムエンドを迎えるため協力してくれ〟と土下座してきた記憶。
その兄がプレイしていたのが『けもひめ』というゲームだったのだ。
何でもミニゲームで一定以上スコアを出すともらえるアイテムが尋常じゃない程必要なルートらしく、死ぬ気で周回するから仮眠の間だけ代理を頼むと。
ゲームのために有給を使いすでに三徹目だった兄の剣幕はすさまじく、僕は了承するしかなかったようだ。
兄はその後眠気覚まし的にゲームについて色々語っていて、あの時はうざいし怖いから早く寝落ちしてくれと思っていたけど……よくやってくれた、前世の兄よ。
『けもひめ』は〝獣の王子と姫〟ではなく〝獣の王子と獣の姫〟の意味だ。
この世界に人間はいない。いるのは人間に耳尻尾や羽根が生えた獣人、冗談じゃなく頭から花を生やした花人、水陸両用で人魚にもなれる魚人の三種族だ。獣人以外〝けもの〟ではないとかはツッコんではいけない。
ちなみにファンタジーの醍醐味、魔術も魔物も出てくる。えっちなことと悪役の陰謀と狼王子の見せ場くらいしか使われないけど。
ストーリーとしては、世界一の大国の王子様である眉目秀麗文武両道のチート狼王子が嫁探しのために諸国を漫遊し、そこで出会う多種族の姫君達をオトすというもの。
正規のハッピーエンドは姫君ひとりと愛を育み、嫁に迎えるか婿入りをするかの二択らしい。
兄が目指していたハーレムエンドは邪道ではあるけど、シナリオ的に違和感がなく円満ハーレムを築き王となるものだったようだ。ただし難易度ヘルとのこと。
リアルな存在となった狼王子は、どうやら難易度ヘルは選択しなかったようだ。
それどころか妹が成人してすぐにわが国へ赴き、表向きは〝東の花国の文化に興味があるため勉強〟に、秘密裏には〝第一王女と交流を深めたい〟と申し出てきた程のストレートな婿入りルート。
確かに妹は他国へも評判が届く程の美少女だ。花人の特徴である頭の花は白百合で、彼女の心身の美しさを表しているように思う。
下にあとふたりいる子達を含め誰もが自慢の妹だが、あの子は最も聡く穏やな気質を持っているのだ。狼王子は見る目がある。
……ある、んだけど。
妹――レリリーエ・ローデヴェイクのルートに入ると、邪魔者が表れるのだ。
ひとりはレリリーエ、リリィに長年懸想していて、狼王子が来る前まで婚約者の第一候補だった従兄弟の公爵令息。
もうひとりは世界一の大国の狼王子が婿になることでリリィの価値が上がり、自分の地位を脅かされると焦る第一王子。
――そう、僕だ。
第一王子は王太子ではない。うちの国は長子から順に王位継承権が与えられるけど、立太子は直系が全員成人してからだ。
しかも割合的に王族は女性がほとんどで、歴代の王は九割超が女性なのである。
歴史上数少ない男性の王として玉座につきたい王子は、彼女と狼王子の結婚を様々な手を使い妨害する。
兄から聞く限り、本当に王子かと思えるくらい陰湿でみみっちい嫌がらせに始まり。
ゲームの中間イベントである他国を招いた舞踏会で獣人差別とも取れる発言をし。
出席していた王子の幼馴染の姫に媚薬を盛り既成事実を作らせようし。
妹を暴漢に襲わせ、助けに来た狼王子もろとも断崖絶壁から突き落としたり……ずいぶんやることの振り幅が大きい。
それに引き換え、実際の僕は王太子なんて絶対になりたくなかった。
ゲームがどうした。ここは現実だ。僕は僕の道を行く。妹を妬む気持ちなんて毛ほどもない。
だから狼王子がうちの国に来た時、妹の恋を応援して義弟と軋轢を生まずひっそり消えたい、とか考えていた。
だけどそうはうまくいかないのが、世の常らしい。
カリスマ性も天性の才能もない僕でも取り巻きは多い。
その取り巻き達が様々な思惑を以て、ゲームの第一王子の所業をほぼ再現してしまった。しかもそれが僕の指示とでもいうように。
常なら察せるはずの貴族の動きが読めない。僕が何をしようともしなくとも、過程は違えど結果は全てゲームシナリオ通り。
まるで神が示した予定調和のように、僕は黒幕とされていった。
ゲームよりハイスピードで進んでいく展開に、さすがにこれ以上は僕の手に負えないと母上に相談した。
僕が王位継承権をなくすのはいいけど、シナリオ通り妹を危険に晒したくない。
幸い母上は僕が黒幕だという噂は信じていなかった。もしや他国の陰謀かと調べたが、僕の取り巻きに余程悪運が強い奴がいるらしいという結論しか出ていないのだと。だけど僕が陥れられないよう証拠を集めているとは言ってくれた。
ただ周囲の貴族を御せなかったという点で、僕の王位継承権はいくつも下がるだろうとも。
そこで僕はずっと考えていたことを、さも天啓を得たように打ち明けた。
変えられない流れなら、そうするしかないと。
『母上。いっそのこと僕を黒幕のままにして、王位継承権を完全に剥奪してください。それくらいしなければ収まらない程に、一連の騒動は大きくなってしまいました』
『何を言う、フラディオール。そなたは貴重な直系男子……』
『母上こそ、何を言っているんですか。僕は――』
僕が続けた言葉に、母上は何も言えなくなってしまった。
それは母上が亡き父上と共に隠し続けた罪であり……ゲームとは完全に乖離したフラディオール・ローデヴェイクたる僕の秘密だったから。
本当にずっとずっと、それこそ十一年前から待っていたんだ――この時を。
「東の花国第一王子フラディオール・ローデヴェイク。此度の件について、何か申し開きはあるか」
威厳ある女性、わが母である女王陛下の声が謁見の間に響く。
国の重鎮達や他国の王族まで集うその空間で、彼女以外誰も声を発することはない。
僕を貫く、凍るような水色のまなざし。
微笑むと春のごとく暖かな印象になるそれは、もう二度と目にすることはできないだろう。
ティアラと薔薇の花で飾られた濃い金髪は自分の持つ色に似ているけど、母上のそれは蜂蜜のように艶やかだ。
こんな時なのに綺麗な人だと思いながら、わざと返答に間を空ける。
痛い程の静寂の中、視線をいくつも感じる。
その内一際強い視線は、ふたつ。金髪に白い百合の花をつけた可憐な美少女と、黒髪にピンと立った同色の三角耳を持つ長身の美青年だ。
正直〝こっちを見ろ〟感がひしひしと伝わってくるのだが、ふたりには意識を向けない。
もう僕と彼女達は、完全に別たれた存在だから。
「……一切ございません。いかなる裁きもお受けいたします、女王陛下」
この場で微笑むことは、さすがにしなかった。
いくら国内で〝春のプリンス〟なんて恥ずかしいあだ名で呼ばれていても、今の僕には相応しくない。
なんせ、僕が犯した罪は重い。
王子という高い身分でありながら他国の王子に喧嘩を売り、また別国の王女を侮辱し、あまつさえ自らの妹と王子を死に至らしめようとしたのだ。
これで首が飛ばないのは身分ゆえというより、被害者達からの助命嘆願の方が大きい。
僕が手を出した王子の国はうちより国力がある、世界一の大国だ。国際問題になったら僕どころか国自体も被害を被る。
それを大きくせず逆に自分を殺そうとした相手を助けてあげるなんて、とんでもないお人好しの集まりだ。
……まぁ、知っていたけど。
「フラディオール・ローデヴェイク。そなたの王位継承権と王族籍を剥奪する。更に私財は没収とし、その身は国外追放となる。今後一切この地を踏むことは許さぬ」
「承知いたしました」
それは死罪でなくてもかなりの重刑だ。
身分、財産、住む土地もなくなる。人によっては死より残酷な刑かもしれない。
「加担していた者らにも、追って沙汰を申しつける――下がれ」
「――は」
礼を取り、顔を上げる。
真正面から見た女王陛下は、ほんの少し、僕にしかわからないくらいに少しだけ、眉を下げた。
ごめんね、母上。こんな終わり方になってしまって。
僕だってもっと穏便にできたらとは思っていたけど、無理だったんだ。
なんせうちの妹の攻略ルートに乗って、嫁ルートじゃなくて婿ルートを選んでしまった……あのイケメン狼がいたからね。
× × ×
ここは美少女ゲームの世界、らしい。
その名の通り、美少女が登場する恋愛シミュレーションゲーム。ちょっとだけ大人な表現があるものの、完全なアダルトゲームではない。
そして何と、攻略対象のひとりが僕の身内である。
僕がそれを思い出したのは、今から十一年前だった。
この世界には十年に一度各国の王が集まる大祭がある、僕はそこで未成年の王族達の交流会に出席するため、各国の王族の姿絵を見て勉強していたのだ。
そして今年の開催国である西の獣国の王家の姿絵に、まだ幼い狼獣人の王子を見つけた瞬間だった。
――あ、これ絶対『けもひめ』のむっつり変態イケメン狼王子。わかりやすい成長したんだな。
そんな色々どうかと思う感想と共に、前世の記憶が脳内を一時占拠した。
人生を一から十まで全て思い出したわけじゃない。断片的な記憶の欠片がいくつも入り込んできたという方が正しい。
幼稚園の通園バスを待っていたり、高校の夏休みにバイトの面接に行ったり、残業後に深夜のラーメン屋へ駆け込んだり……日常生活が垣間見える、正直どうでもいいシーンばかり。
しかし、その中で前世が蘇るトリガーとなった記憶があった。
それは前世の兄が〝隠しルートのハーレムエンドを迎えるため協力してくれ〟と土下座してきた記憶。
その兄がプレイしていたのが『けもひめ』というゲームだったのだ。
何でもミニゲームで一定以上スコアを出すともらえるアイテムが尋常じゃない程必要なルートらしく、死ぬ気で周回するから仮眠の間だけ代理を頼むと。
ゲームのために有給を使いすでに三徹目だった兄の剣幕はすさまじく、僕は了承するしかなかったようだ。
兄はその後眠気覚まし的にゲームについて色々語っていて、あの時はうざいし怖いから早く寝落ちしてくれと思っていたけど……よくやってくれた、前世の兄よ。
『けもひめ』は〝獣の王子と姫〟ではなく〝獣の王子と獣の姫〟の意味だ。
この世界に人間はいない。いるのは人間に耳尻尾や羽根が生えた獣人、冗談じゃなく頭から花を生やした花人、水陸両用で人魚にもなれる魚人の三種族だ。獣人以外〝けもの〟ではないとかはツッコんではいけない。
ちなみにファンタジーの醍醐味、魔術も魔物も出てくる。えっちなことと悪役の陰謀と狼王子の見せ場くらいしか使われないけど。
ストーリーとしては、世界一の大国の王子様である眉目秀麗文武両道のチート狼王子が嫁探しのために諸国を漫遊し、そこで出会う多種族の姫君達をオトすというもの。
正規のハッピーエンドは姫君ひとりと愛を育み、嫁に迎えるか婿入りをするかの二択らしい。
兄が目指していたハーレムエンドは邪道ではあるけど、シナリオ的に違和感がなく円満ハーレムを築き王となるものだったようだ。ただし難易度ヘルとのこと。
リアルな存在となった狼王子は、どうやら難易度ヘルは選択しなかったようだ。
それどころか妹が成人してすぐにわが国へ赴き、表向きは〝東の花国の文化に興味があるため勉強〟に、秘密裏には〝第一王女と交流を深めたい〟と申し出てきた程のストレートな婿入りルート。
確かに妹は他国へも評判が届く程の美少女だ。花人の特徴である頭の花は白百合で、彼女の心身の美しさを表しているように思う。
下にあとふたりいる子達を含め誰もが自慢の妹だが、あの子は最も聡く穏やな気質を持っているのだ。狼王子は見る目がある。
……ある、んだけど。
妹――レリリーエ・ローデヴェイクのルートに入ると、邪魔者が表れるのだ。
ひとりはレリリーエ、リリィに長年懸想していて、狼王子が来る前まで婚約者の第一候補だった従兄弟の公爵令息。
もうひとりは世界一の大国の狼王子が婿になることでリリィの価値が上がり、自分の地位を脅かされると焦る第一王子。
――そう、僕だ。
第一王子は王太子ではない。うちの国は長子から順に王位継承権が与えられるけど、立太子は直系が全員成人してからだ。
しかも割合的に王族は女性がほとんどで、歴代の王は九割超が女性なのである。
歴史上数少ない男性の王として玉座につきたい王子は、彼女と狼王子の結婚を様々な手を使い妨害する。
兄から聞く限り、本当に王子かと思えるくらい陰湿でみみっちい嫌がらせに始まり。
ゲームの中間イベントである他国を招いた舞踏会で獣人差別とも取れる発言をし。
出席していた王子の幼馴染の姫に媚薬を盛り既成事実を作らせようし。
妹を暴漢に襲わせ、助けに来た狼王子もろとも断崖絶壁から突き落としたり……ずいぶんやることの振り幅が大きい。
それに引き換え、実際の僕は王太子なんて絶対になりたくなかった。
ゲームがどうした。ここは現実だ。僕は僕の道を行く。妹を妬む気持ちなんて毛ほどもない。
だから狼王子がうちの国に来た時、妹の恋を応援して義弟と軋轢を生まずひっそり消えたい、とか考えていた。
だけどそうはうまくいかないのが、世の常らしい。
カリスマ性も天性の才能もない僕でも取り巻きは多い。
その取り巻き達が様々な思惑を以て、ゲームの第一王子の所業をほぼ再現してしまった。しかもそれが僕の指示とでもいうように。
常なら察せるはずの貴族の動きが読めない。僕が何をしようともしなくとも、過程は違えど結果は全てゲームシナリオ通り。
まるで神が示した予定調和のように、僕は黒幕とされていった。
ゲームよりハイスピードで進んでいく展開に、さすがにこれ以上は僕の手に負えないと母上に相談した。
僕が王位継承権をなくすのはいいけど、シナリオ通り妹を危険に晒したくない。
幸い母上は僕が黒幕だという噂は信じていなかった。もしや他国の陰謀かと調べたが、僕の取り巻きに余程悪運が強い奴がいるらしいという結論しか出ていないのだと。だけど僕が陥れられないよう証拠を集めているとは言ってくれた。
ただ周囲の貴族を御せなかったという点で、僕の王位継承権はいくつも下がるだろうとも。
そこで僕はずっと考えていたことを、さも天啓を得たように打ち明けた。
変えられない流れなら、そうするしかないと。
『母上。いっそのこと僕を黒幕のままにして、王位継承権を完全に剥奪してください。それくらいしなければ収まらない程に、一連の騒動は大きくなってしまいました』
『何を言う、フラディオール。そなたは貴重な直系男子……』
『母上こそ、何を言っているんですか。僕は――』
僕が続けた言葉に、母上は何も言えなくなってしまった。
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