【完結】スライム5兆匹と戦う男

毛虫グレート

文字の大きさ
45 / 71
第3章 スライム5兆匹と戦う男編

第41話 すべての男の子の夢

しおりを挟む
第41話 すべての男の子の夢


 レンジは、天井を見上げる自分に気がついた。
 ランプの明かりに照らされて、天井画が浮かび上がっている。宗教画だ。天と地を創造する白い髭の神様の絵。
 杖を持っているので、この国の神は、自分と同じ、魔法使いなのだろうか。

 そんなことをぼんやりと考えている。
 雨音は続いている。ふと、すぐそばでバタバタとシーツが断続的に叩かれるような音に気づいて、そちらに顔を向ける。
 女の子が、うつ伏せで枕に顔を押し付けたまま足をバタバタとさせていた。

「どうかした?」

 そう問いかけると、足の動きは止まり、代わりに手がレンジの体をポカポカと叩き始めた。

「だって、だって。一回でいいのに。あんなに、あんなに何回も……」

 枕で顔は見えない。

「えっ。俺そんなに?」

 下に意識を集中させると、あんなにうるさくレンジにアドバイスをしてきた陰茎先生だか陽物先生だかは、完全に沈黙してしまっている。
 体が軽い。頭もだんだんとスッキリしてきた。

 どさくさに紛れて、とんでもない約束をした気がする。
 レンジはぞわっとして起き上がろうとした。
 その時だった。いきなり部屋の扉が開かれた。

「おっらあああ! レンジィッ! セトカを傷物にしやがったなあああゴラアッ!」

 いきなりバレンシアが飛び込んできた。

「でえええ?」

 レンジは思わずベッドの上で、毛布を手繰り寄せて下半身を隠した。

「ごめえんセトカ。このバカが夜這いに行くってきかないから、止めてたらバレちゃったぁ」

「大丈夫でありますか団長殿!」

 ライムと、それに続いてマーコットが部屋になだれ込んでくる。

「終わったかセトカ? どうだ? どうなった?」

 バレンシアが両手をレスリングの構えのようにワキワキさせながら、迫ってくる。
 セトカは布団から顔を出し、レンジのほうを見た。
 レンジは、バレンシアとマーコットの格好に驚きながらも、上半身を起こしたまま、自分の体を見下ろした。
 そして首をかしげる。

「なんか、あんま変わった気がしない……かも」

 レンジが小さな声でそう言うと、バレンシアが叫んだ。

「だから言ったじゃねえか! やっぱり処女じゃだめなんだよ! こんな大事な任務で!」 

 そう言って地団太を踏むバレンシアは、あられもない下着姿だった。上も下もおそろいの黒い下着だ。

「おいレンジ」

「は、はい」

「まだ残ってんな」

「ええ?」

 息の荒いバレンシアが迫ってくる。普段の鎧姿でも想像はついていたが、裸に近い格好の今は、その凄い身体が際立っている。とにかく胸がデカい。筋肉が盛り上がった胸囲も圧倒的だが、カップも相当ある。
 全身の筋肉が橙色のランプに照らされて、その陰影を際立たせていた。

「ブチ犯して、搾り取ってやる!」

 バレンシアがレンジににじり寄りながらそんな怪気炎を上げると、ライムがすぐにツッコんだ。

「なに言ってんのよバカ。あんたが搾り取られるほうでしょ。レベルを」

「いえ、ここは私! 私の出番であります!」

 そう言って、後ろからマーコットもやってきた。こちらも上下ともに赤い下着姿だった。均整のとれたスマートな身体だが、出るところは出ている。幼い言動や表情と、その成熟した肢体のミスマッチが、レンジの脳をぶん殴った。

「やめろマーコットこら。順番守れ」

 バレンシアが、後ろから来たマーコットの顔をアイアンクローで止めた。
 マーコットは鷲掴みされた顔を歪めながら、なおも前進しようとしていた。

「むぎぎぎ。私は、レンジ殿に求婚された仲でありますぞ!」

「それは違う!」

 レンジが叫んだ。

「うにににににぃ。1回目の腕相撲勝負は私の勝ち。2回目のジャンケン勝負はレンジ殿の勝ち。3回目のせっくす勝負で決着をつけるでありますぅ!」

「しつっけえぞマーコットごらあ!」

 レンジが目を白黒させていると、扉からさらに2人入ってきた。

「仲間同士でなにやってんスか副団長」

「だめですよ。レンジ様を困らせては」

 1班班長のイヨと、2班班長のビアソンだった。ビアソンは、ぽわんとした顔つきの背の高い女性だったが、大胆な紫色の下着に、ガーターベルトを着けている。
 イヨに至っては、すっぽんぽんだった。どうやってここまで来たのだろう。

「揃いも揃って、なんて格好してんのよみんな」

 ライムが額に手を当てながらそう言うと、マーコットが振り向いて反論した。

「ライム殿だって、さっきえっちなパンツを履いてたの、見たであります!」

「そういや、ライムてめえ、そのリボン!」

 バレンシアがライムの頭を指さした。ライムの服装は今まで通りのローブ姿だったが、今までなかった大きな赤いリボンが頭の上で揺れていた。

「こ、これはその」

 ライムが狼狽して頭の上のリボンを掴んだ。やがてうつむきながらボソボソと言う。

「ま、魔法使い同士のほうが、相性がいい可能性だってあるわけだし」

 うつむいて人さし指同士を合わせるその仕草が、妙にかわいかった。

「わ、私もはじめてだけど……」

「だあああああ! どいつもこいつもサカりやがって。とにかくセトカが失敗した今は、副団長のアタシが次だ。文句はねえだろ」

 バレンシアがそう宣言したが、マーコットは顔を掴まれながら食い下がった。

「私は、今度えっちしようって、レンジ殿から言われたのであります!(言ってない)」

「うっせえ! だいたいてめえも処女だろうが!」

「もう処女じゃないであります! こんなこともあろうかと、さっきそのへんにいたおじさんで捨ててきたであります!」

「まじかよ。なにやってんだこのバカ!」

 バレンシアは驚きながら怒っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。 名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。 絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。 運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。 熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。 そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。 これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。 「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」 知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。

「お前は用済みだ」役立たずの【地図製作者】と追放されたので、覚醒したチートスキルで最高の仲間と伝説のパーティーを結成することにした

黒崎隼人
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――役立たずの【地図製作者(マッパー)】として所属パーティーから無一文で追放された青年、レイン。死を覚悟した未開の地で、彼のスキルは【絶対領域把握(ワールド・マッピング)】へと覚醒する。 地形、魔物、隠された宝、そのすべてを瞬時に地図化し好きな場所へ転移する。それは世界そのものを掌に収めるに等しいチートスキルだった。 魔力制御が苦手な銀髪のエルフ美少女、誇りを失った獣人の凄腕鍛冶師。才能を活かせずにいた仲間たちと出会った時、レインの地図は彼らの未来を照らし出す最強のコンパスとなる。 これは、役立たずと罵られた一人の青年が最高の仲間と共に自らの居場所を見つけ、やがて伝説へと成り上がっていく冒険譚。 「さて、どこへ行こうか。俺たちの地図は、まだ真っ白だ」

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

濡れ衣を着せられ、パーティーを追放されたおっさん、実は最強スキルの持ち主でした。復讐なんてしません。田舎でのんびりスローライフ。

さら
ファンタジー
長年パーティーを支えてきた中年冒険者ガルドは、討伐失敗の責任と横領の濡れ衣を着せられ、仲間から一方的に追放される。弁明も復讐も選ばず、彼が向かったのは人里離れた辺境の小さな村だった。 荒れた空き家を借り、畑を耕し、村人を手伝いながら始めた静かな生活。しかしガルドは、自覚のないまま最強クラスの力を持っていた。魔物の動きを抑え、村の環境そのものを安定させるその存在は、次第に村にとって欠かせないものとなっていく。 一方、彼を追放した元パーティーは崩壊の道を辿り、真実も勝手に明るみに出ていく。だがガルドは振り返らない。求めるのは名誉でもざまぁでもなく、ただ穏やかな日々だけ。 これは、最強でありながら争わず、静かに居場所を見つけたおっさんの、のんびりスローライフ譚。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

処理中です...