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第3章:重ね塗りのシンフォニー(16)
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※ ※ ※
最終的に三対二で僕の負けとなり、ドーナツを奢ることになった。
「あそこあそこ!」
遥奏が指差した方向に目をやると、十メートルくらい先に赤色の看板。
「あれが今日オープンしたお店だよ! 楽しみ!」
遥奏の足取りが早くなる。
そのとき、館内BGMが止まったかと思うと、短い効果音に続いてアナウンスが流れた。
『……本日は、館内清掃のため、十八時で閉館となります。誠に恐れ入りますが……』
「えーー! そんな!」
時計を見ると、すでに閉館十分前だった。
「行きたかったのにー!」
そのとき、スマホのバイブレーションが鳴ったらしく、遥奏は「もしもし」と言って電話に出た。
「へ」の字に曲がったその唇を見ながら、僕はここに来る前の遥奏の言葉を思い出していた。
『私、オープン当日のドーナツ屋さんに行くの、夢だったんだよね!』
ほんの小さな夢だ。
これから先、いくらでも叶える機会がありそうな。
それでも、遥奏が思い描いた景色がその瞳の中でシュレッダーにかけられるのを、見たくないと思っている僕がいた。
歌が好き。ドーナツ巡りが趣味。
『好きなこと:特になし。得意なこと:特になし』の僕と違って、自分の「好き」をはっきり持っている遥奏。
その願いを叶えるために、できることをしたいと思った。
斜め上を見ながら通話している遥奏を置いて、僕は赤色の看板に向かって歩き出した。
最終的に三対二で僕の負けとなり、ドーナツを奢ることになった。
「あそこあそこ!」
遥奏が指差した方向に目をやると、十メートルくらい先に赤色の看板。
「あれが今日オープンしたお店だよ! 楽しみ!」
遥奏の足取りが早くなる。
そのとき、館内BGMが止まったかと思うと、短い効果音に続いてアナウンスが流れた。
『……本日は、館内清掃のため、十八時で閉館となります。誠に恐れ入りますが……』
「えーー! そんな!」
時計を見ると、すでに閉館十分前だった。
「行きたかったのにー!」
そのとき、スマホのバイブレーションが鳴ったらしく、遥奏は「もしもし」と言って電話に出た。
「へ」の字に曲がったその唇を見ながら、僕はここに来る前の遥奏の言葉を思い出していた。
『私、オープン当日のドーナツ屋さんに行くの、夢だったんだよね!』
ほんの小さな夢だ。
これから先、いくらでも叶える機会がありそうな。
それでも、遥奏が思い描いた景色がその瞳の中でシュレッダーにかけられるのを、見たくないと思っている僕がいた。
歌が好き。ドーナツ巡りが趣味。
『好きなこと:特になし。得意なこと:特になし』の僕と違って、自分の「好き」をはっきり持っている遥奏。
その願いを叶えるために、できることをしたいと思った。
斜め上を見ながら通話している遥奏を置いて、僕は赤色の看板に向かって歩き出した。
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