ループ8回目のヒーローは今度こそガチのマジで本気出す

一ノ瀬九十九

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第16話 ノルン•ウォード

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 新人受付け嬢のルチカが戻ってくるまでの間、どうにも暇になってしまった。手持ち無沙汰ぶさたな俺はただただ辺りをキョロキョロと見渡すほかなかった。
 すると反対側の受付け付近がやけに騒がしい。

 「ちょっと割り込みとか、ありえなくな~い?? マジ最悪!!」
 「嬢ちゃんが小さすぎて見えなかった。ってことでここはこの俺、ゴルゴーン様が先に行かせてもらうぜ」

 え!?
 今、ゴルゴーンって言わなかったか??
 確かあの後、リスターギルドを出禁になったとは聞いていたが拠点をまさかここに移していたとは。

 ちょっと面白そうなので、近くまで行って野次馬の中に加わることにした。

 「あいつ超ムカつく~。ちょっとお兄様、やっちゃってもいい?」
 「あまり騒ぎ立てしたくはないんだがな。それでも順番は順番だ。やってしまえ」
 「おっけ~♡」

 少女は手の平をゴルゴーンに向ける。

 「ごああああぁぁぁぁ」

 いきなりゴルゴーンは地面に顔をつけてひれ伏す。
 少女は手の平をかざしたまま、ゴルゴーンに近づき右足で頭を踏みつける。

 「あのさぁ~、もしかしてうちらのこと知らない感じ~?」
 「ごおおおぉぉぉあああああぁぁぁぁぁ」
 「いい加減うるさくなってきた。もうそのへんにしとけノルン」
 「は~い♡」
 
 野次馬達は大きな歓声を上げていた。黄色い声援にも似た声があちこちで上がっていた。
 ゴルゴーンも相手が悪い。
 髪はピンク色でショートボブの小柄な少女はモナコスフギルドと書かれた腕章を身につけていた。何を隠そう、ノルン•ウォードだ。そしてそのすぐ後にいたのが勇者ライナス•ウォード。いけすかない野郎だ。でも不思議なことにここいらではこいつらのファンは多いようだ。

 「あ~あ、派手にやっちゃって。これだから都会の奴らはキレやすくて怖いねー」

 俺はどうしても堪らなくなり、野次馬の最前列であえて挑発するような言葉を放った。そしてそこから静かに歩き始めて、ノルンの側へと近づいていく。

 「てかあんた誰? ふ~ん、見ない顔だけど一応は認定冒険者なんだ? じゃ、あんたも【R.A.Fアールエーエフ】に出るってことね」
 「まあそういうことだ。今日はエントリーだけのつもりだったが思いのほか、面白いものがみれた。生意気な妹と利己主義な兄貴をな」

 俺の言葉に反応したのか、ライナスが俺に向けて強烈な殺気を飛ばす。俺はすぐさま両手を上に上げて、戦う意思がないことをこの場で示す。

 「急にいなくなったと思ったら、何やってるんですか!? ルチカさんが呼んでます! 行きますよ」
 
 慌てた様子のニーナは群衆をかき分けて俺のところへやってきた。そして、周りの連中に聞こえない程度に小さい声で耳打ちする。
 俺は静かに頷き、両手を上げながらニーナのあとを歩き始める。

 「待て! お前、名前は?」
 「エイト•スライフ……これからお前ら兄弟の目の上のたんこぶになる存在だ。よろしく」
 「ふざけた野郎だ。覚えたからな……」

 俺はキメ顔で自己紹介を済ませ、ニーナにブツブツと怒られながら再びルチカの居る受付けへ戻った。するとリエリーが何度もぺこぺこと頭を下げている姿がそこにあった。
 
 「悪い、悪い。すぐ戻ってくる予定だったんだが、遅れちまったわ」
 「まったくですよ」

 その後、ルチカは上司に指示でも仰いだのか、俺達はスムーズに【R.A.F】のエントリーを済ませることができた。
 個別の写真と3人の集合写真。それから年齢に長所や特技、臨む意気込みといったことまで事細かに記入させられた。

 「やっと終わりました」
 「でも今からリスターギルドに帰るにはちょっと勿体無いですね」
 「いうてまだお昼過ぎだし、もうちょっと王都中をブラブラしてから帰ろうか」

 俺の提案に対して、2人は勢いよく頷いていた。

 それからは別行動を取り、女子達は買い物に出掛けていった。俺はというと、エントリーの初日ということもあり、他の認定冒険者達がまだ来るかもしれないから情報集めとしてモナコスフギルド内に残ることにした。
 女子達には気が済んだら、またここに戻ってこいとだけ伝えた。

 「なんでー!? マジ意味分かんない! 私達を誰だと思ってんのよ」

 奥の受付けで聞き覚えのある声が響いていた。ノルンだ。今度は受付け嬢と何やら揉めているようだった。

 「あの、パーティー名【勇者降臨】は2名と伺っています。付き人の方々は【R.A.F】にエントリー出来かねます」

 よく見ると、さっきの野次馬の中から声援を上げていたやつらが何人かそこにいた。
 あいつら、サクラだったのか。

 「はぁあ~!? あんたじゃ話になんない。上の人間よこしなさいよ」
 「え? そ、それは困ります」
 「……てか、何さっきからジロジロとこっち見てんの??」

 やべっ、バレた。
 こうなったら下向きながら、トイレの方向に歩いて行こう。ワンチャンまだ見逃してもらえる可能性も残ってはいる。
 
 ──トントン

 とか考え混んでいたら、すぐ真横で俺の肩をトントンと叩くノルンがいた。

 「あんたはさっきの……あの後お兄様、めっちゃ怒ってて大変だったんだからね」 
 「いや~、天才付与術師様の力を生で拝見したら、つい嫉妬して」
 「ププッ……何それ、あんた面白~♡ エイトって言ったっけ!? なんか怒ってるのがアホらしくなってきちゃった」

 いや、なんかウケてしまった。
 成り行きでトイレの方向へ歩き続けていたせいか、後ろを見ると大名行列のようにゾロゾロと列をなしていた。

 「てか、あんたらいつまで付いてきてんの? 今日はもう散りなさい」
 
 ノルンの一声で付き人達は空中分解していった。
 というか、この子はいつまで俺に付いてくるのだろうか?
 受付け嬢へのクレームはもういいのだろうか?

 「あ~、え~っとノルンさん? 俺、ご飯まだだったんで飯行ってくるっすわ~」
 「ちょうど良いじゃない! 私もお腹減ってきたところだったからなんか奢んなさいよ! それでさっきの私達への無礼な態度はチャラにしてあげる♡」

 このギルドの中は鬼広い。とりあえずギルド内でランチに最適な場所を目指した。

 いったい、どうしてこうなった……
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