ループ8回目のヒーローは今度こそガチのマジで本気出す

一ノ瀬九十九

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第17話 挑発的な小悪魔

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 どういうわけか、ノルンとギルドの中で食事することとなった。

 あまり気が乗らない。

 というのも、俺は個人的にこいつら兄弟とは因縁があるからだ。まあ、主に兄のライナス方ではあるが。その妹であるノルン•ウォードは当然、要注意人物になる。って言っても、5回目の人生くらいまでは雲の上のような存在でこんなにゆっくり話す機会なんてまるで無かったが。
 
 「俺ラーメン1つ」
 「私、ナポリタンとイチゴケーキね。あと、紅茶はケーキと一緒で」

 全然遠慮なんかしやがんねぇ。まあ、その方が気持ち良く奢れてこっちも悪い気はしないが。

 「あのさぁ、あんたっていったいどういう能力なわけ? お兄様の圧に対して、おちゃらけていられる人間、初めて見たけど」

 ノルンは口にパスタを詰めながら、同時に質問を投げかける。どうでもいいが、食べるか話すかどっちかにしないと口の中の食い物が見えてて汚ねえ。

 冗談はさておき、基本的には他の奴に自分の能力をバラさないことは定石セオリーだ。同じパーティーメンバーなら別だが、今は特に【R.A.Fお祭り】前だけに俺としては余計に教えたくはない。

 「そんな大した能力なんかねーよ。たぶん俺なんか前評判なんてたぶんだろうし」
 「ふ~ん、やっぱり簡単には聞き出せないよね~」

 ノルンはニヤっと笑みを浮かべると左手を俺目掛けて前に突き出す。

 「パラライズ♡」

 直後、俺の体はまるで金縛りにあったかのように硬直する。刹那せつな、俺は今自分に何が出来るかを確認する。
 呼吸はできる。
 目も動く。
 指先や口は動かない。
 口が動かせないので話すこともできない。

 「ほ~ら、能力使って解除しないと、どんどんラーメンが冷めちゃうよん♡」

 確かに【トリックスター】で防御に全振りすれば、簡単に解除できるだろう。ただ能力を披露すれば、ノルンに負けたことになってしまう。
 俺はどうしてラーメンなんか頼んじまった……サンドイッチとかにすれば良かった。

 「意外に頑張るね…」

 今度はおもむろに立ち上がったノルンは俺の背後に回り込む。すると、背後で『ギギィ…』という音だけが鳴り響いた。

 「今あんたの座ってたイス、1mメートル横にズラしちゃった♡」

 なな、なんてことしやがんだぁぁぁ!!
 俺今空気イスってこと!?
 周りから変な目で見られちゃうじゃんか。

 「男だったらさ~、さっさと能力使っちゃいなよ! けーち♡ けーち♡」

 ノルンが俺に能力を使わせようとして挑発していることくらい分かっている。でもなあ、俺はケチって言われるのが一番ムカつくんだぁぁあああ!!

 【トリックスター(緑)】発動
 防御力⤴︎⤴︎⤴︎

 俺は防御に全振りし金縛りを解除する。

 【トリックスター(青)】発動
 敏捷力⤴︎⤴︎⤴︎

 俺は敏捷を極限まで上げて、冷めて伸びきったラーメンを目にも止まらぬ速さで一気に口の中へと駆け込んでいく。

 「おぉ~、やれば出来んじゃ~ん♡」

 パチパチパチ──
 ノルンはニタニタと笑いながら、両手を合わせて拍手していた。
 食えない奴だ。初見でここまで俺を手玉に取ってくるとは。

 「私の麻痺状態パラライズを解除して、尚且つ凄い速さ……いったい何て職業ジョブなの? もしかして~、《LGエルジー》だったり? なんてことはさすがに無いか」

 レジェンドジョブ、通称《LGエルジー》。LGは通常の職業ジョブとは違いかなり特別だ。強力なスキルが多く汎用性はんようせいを併せ持ち、とても希少レア。普通の職業にはない⭐︎が付いているのも特徴的でLGホルダーと呼ばれたりもする。

 「LG? ノルンの兄貴ならともかく俺がLGなんて持ってる分ねーじゃん」
 「それもそうね」

 俺は実際、現状で2つのLGを所有している。特にこの【⭐︎トリックスター⭐︎】を使うようになってからは、目の前の景色がガラリと変わった。

 「やってくれるぜ。のおかげでラーメンが台無──」
 「パラライズ!」

 話している途中で再び体が硬直する。
 どうでもいいが、今の俺って口が開いた状態で固まっていて不細工なつらになってない??

 「私、お前って言われるの大嫌いなの。ノルンって可愛い名前があるんだから──まっ、今日は楽しめたから特別に許してあげる♡」

 ノルンは食べかけているイチゴのショートケーキの上にいてるイチゴにフォークを刺す。そしてそのイチゴを俺の開いていた口の中に放り込む。

 「ふふふっ──じゃあね~」

 そのままノルンは鼻歌を口ずさみながら、どこかへと行ってしまわれた。
 なんて奴だ……

 「あ、けっこう甘いタイプのイチゴだ」

 「──お待たせしましたエイトさん」
 「ついつい、色んな物を買いすぎちゃいましたね」

 俺は口の中に残っていたイチゴを丸呑みし横を向く。そこには両手に荷物をいっぱい持ったニーナとリエリーがいた。

 「お菓子とか果物とか、けっこう沢山ありましたよ──あれ? 誰かと食事でもしてたのですか?」
 「ん? ああ、フォクセンだよフォクセン」

 つい嘘をついてしまった。別に本当のことを言ってもよかった気もするが、なんだか面倒なことになりそな予感がしたからだ。

 「ま、そろそろリスターギルドに帰るとするか」
 「「はい!」」

 俺達、エイトヒーローズは来たときと同じように、転移ゲートを使用してリスターギルドに帰還した。
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