【R18】逃げられた令嬢は無愛想な騎士様を溺愛したい

みちょこ

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第3章 予期せぬ色事

15話※

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「んっ、な、なにこの匂い……っ」

 脳天まで突き抜けそうな甘い香りに、リディアは思わず鼻を摘まむ。お世辞にも広いとは言えない収納庫に閉じ籠もっているせいもあるのか、吐き気を催すほどの匂いだ。 

「おい! なにをこぼしたんだ!? あっま……」

「ごめんなさい! 今すぐに片付けます!」

 リディアは急いで足元に散らばった魔法瓶の欠片を集めようと手元を泳がせたが、ピリッと皮膚が裂けるような感覚に遅れて鋭い痛みに襲われた。

 ぬるりとした感触が指先から溢れ出ていくのが分かる。どうやら硝子で出血をしてしまったらしい。

「ちょこまか動くな! 怪我するぞ……ってもうしてるじゃないか!」

 アーノルドは慌ててリディアの手首を掴み、血の溢れ出る人差し指を咥内に加える。突然のアーノルドの行動に呆然としたのも束の間、血を優しく吸われ、リディアの口から妙に艶かしい声が漏れた。

 どうしてだろうか。
 緊急を要する事態であるはずなのに、身体の芯がぞくぞくと震え上がっている。
 全身を火照らせるような熱に見舞われ、鼓動が異様に速まり、リディアは熱の孕んだ目でアーノルドを見つめた。

「……くそ、妙に気持ち悪い感覚だ。とりあえず硝子が刺さってるかもしれないから、早くここから出よ、う」

 アーノルドは声を上擦らせながらも立ち上がり、扉を押そうとした──


 が、開かない。


 どんなにアーノルドが取手を動かしても、全力で体当たりをしても微動だにしない。収納庫に飛び込んだときに変な閉じ方をしてしまったのだろうか。

「……くっ、そ! こんなときになぜ開かない!? はっ、なんだ、からだ、が……」

 それほど動いていないはずのアーノルドが、なぜか息を切らしている。
 アーノルドはどうにか扉を開こうと尽力していたものの、次第に動きがじわりじわりと鈍っていき、終いにはその場に崩れ落ちてしまった。肩を上下に大きく揺らしながら息を吐くアーノルドに、リディアは思いがけず手を伸ばす。

「さ、わ、るな……っ」

 ぱちんっ、とあまりにも弱々しい力で手を跳ね除けられる。
 リディアは息を切らしながら、もう一度手を伸ばした。

 今度は拒まれない。
 拒む余裕がないのかもしれない。
 熱を帯びたアーノルドの頬を両手で包み込むと、親指の付け根に彼の脂汗が伝った。

 苦しいのだろうか。
 リディアも彼と同じく苦しい。ハリーが寄越した魔法瓶の中身は一体なんだったのか。そんなことがどうでもよく思えるくらいに、理性が放散された熱に溶かされていく。

「リ、ディ、ア……」

 どうすればよいのか、混乱している間にも底知れぬ劣情に蝕まれていく。リディアが睫毛を震わせてぐったりとアーノルドに寄りかかると、歯軋りのような音が頭上から降りそそいだ。

「……もうい、っかい、開けるから、待って、ろ」

 アーノルドはリディアの頭を滑り落ちないように支えながら、片足で扉を蹴り上げる。しかしいくら蹴破ろうと試みても、鉄製の頑丈な扉は簡単には壊れない。
 やがて、鉄板を何度も打ち付けてきた鈍い音は鳴り止み、アーノルドとリディアの淡い吐息だけが残った。

「ア……ノル、ド、さま……」

 荒い呼吸を繰り返しながら、リディアはアーノルドの肩に片頬を預ける。潤んだ瞳を持ち上げると、苦痛に耐えるように唇を噛み締めるアーノルドとまた目が合った。

 目を逸らすことができない。
 熱が籠った瞳に吸い込まれてしまう。

 絡まり合った視線の糸を辿るようにリディアは顔を近づけて、吐息の漏れる唇をかすかに開いて、そのまま。







***








「あっ……ふっ、んあっ」

 淫らな息遣いに混じえてこぼれる粘っこい水音。綺麗に重ねられた唾液まみれの唇の隙間から覗かせた赤い舌が、くちゅりぬちゅりと互いの咥内を行き来していた。
 リディアはアーノルドの首にしがみつき、ひたすら肉厚な舌の動きに応える。

 どれだけ時が経ったのかは分からない。

 気づいたら本能の赴くがままに深い口づけを交わしていて、リディアは下腹部からもたらされる甘い痺れに惚けていた。

「あっ、んんっ」

 最初は遠慮がちだった口づけも、今は余裕のなさを見せるように激しさを深めていく。舌と舌を交互に絡め、唾液を沁み込ませるように表面を厭らしく舐め合う。
 こんな濃厚な口づけを交わすのはリディアにとっては初めてだが、アーノルド自身がどうかは分からない。脳の髄まで蕩けてしまうようなキスを、他の女性ともしたことがあるのだろうか。

「ひぁっ」

 アーノルドの手が性急に滑り落ち、じんわりと濡れていたリディアの秘部に触れる。そのまま服越しにずるっと指先で溝を擦られ、リディアは思わず膝を閉じてしまった。

「ど、どこを触って」

「触らな、いと、はっ、辛いままだろ、う。これ以上のことはしな、い。下を見るな」

 唾液の糸を繋いだまま低く囁かれ、また深く口づけられる。
 ぐちゅぐちゅに濡れた蜜口に指を押し当てられたかと思えば、ぷっくりと膨れた花芽を擦られて。直に触れられていないせいなのか、妙に焦れったいような快感に襲われる。

 ──いや、それよりも。それよりも、だ。
 明らかにアーノルドの手は慣れている、ように思えなくもない。

 妙な苛立ちと焦りに駆られたリディアは、勢いのままアーノルドと自らの下体衣を寛げた。

「おっ、おい……っ、なにをして」

 うすぼんやりとした暗さではっきりとは見えないが、リディアの掌に芯が硬くなった熱がある。閨教育で学んだ知識を脳裏に浮かべながら、迸りでぬるぬるとした剛直を上下に扱くと、あっという間に熱い粘液が噴き出した。あの魔法瓶の液体のせいかは分からないが、どうやらアーノルド自身も限界間際だったらしい。

 今更になって羞恥が込み上げたのか、触れ合わせた頬から伝わる温度が一気に上昇する。

「やめ、てく……れ」

 掠れた声で紡がれたアーノルドの懇願。リディアは頬を真っ赤に紅潮させながらまた唇を塞ぎ、口内を貪る。
 竿を支えていたリディアの手は離れ、代わりに愛液が溢れた秘裂が充てがわれた。花弁で挟み込むようにして亀頭に押し当て、ずるっと滑らせて。何度も擦り合わせていくうちに、リディアは快感の波に攫われそうになってしまう。

「あっ、あぁっ、アーノルドさ、ま」

「んぐっ、リディ、ア……っ」

 アーノルドの息も酷く上がり、遂にはリディアの身体が押し倒された。
 顔の横に手をつかれ、獰猛にも見える切れ長の瞳でリディアは見下ろされる。ドクドクと心臓が鳴り響く中なにか意を決したような表情でアーノルドが口を開こうとしたそのとき──


 暗い二人だけの密室空間に眩い光が射し込んだ。




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