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後編
鬼が笑う1
しおりを挟む淡い色彩の風景、薄着の月読は石窟の城を歩いていた。
――――ああ、これは夢……か……。
見覚えのある広場は青々とした草におおわれ、瓦礫や小石も落ちていない。廊下を通って記憶をたよりに部屋を探す。
蚊帳の垂れた巨大なベッドは、きれいなシーツが敷かれている。
風で透けた帳が舞う。悲嘆に暮れた暗然な部屋ではなく、陽の光にあふれていた。
窓辺で風になびく蚊帳を眺めていたら、誰かが歩いてくる。
「フラフラとこんな場所へ迷いこむなんて、相変わらずイケナイ奴だな」
聞き覚えのある声がして、赤毛の大男が側へやって来た。男の唇の端があがり、薄茶色の瞳が見下ろす。
大きな手を差し出されて、その手をとる。
月読は導かれて蚊帳の内へ入った。
互いにキスを交わせば、知っている味が口内を満たす。目をつむり、うっとり口づけを享受した。
夢中で舌を絡ませていると、もう1人の気配がしてベッドがギシリと音を立てて沈む。
「それは俺のだぞ」
「ああん? なに言ってやがる。最初に見つけたのは俺だ」
「おまえは、ちょっと舐めただけだろ。先に喰ったのは俺だ」
「……てめえ、いい度胸してんじゃねぇか」
唇をはなした隼英の視線の先に、赤い瞳のよく似た男がいる。顔も体格もソックリなのに隼英とは対照的な常闇色の男――多娥丸が傍へ来て、月読の頭上で口喧嘩がはじまる。
双子の兄弟ゲンカをぼんやり眺めていたら、いつのまにか2人の目はこっちを見ていた。
さっきの続きをするように隼英の唇が重なり、舌がもつれあって濡れた音がひびく。隼英から奪い取るように多娥丸の手が月読の顎へ添えられて、口内へ侵入した舌が荒々しく動く。
双子の男たちは、競い合うように月読へ口づけを交わす。
気付けば男たちの肉体に前後を挟まれていた。薄着は開けられて太腿から腰、首すじから胸部にかけて大きな手のひらが撫でまわす。最初はくすぐったかったけれど、弱い部分を突かれて月読の口から吐息がもれた。
後ろにいる多娥丸の指が、胸の尖りを弾いて引っぱる。
「くう……」
胸のあたりに快い疼きがツンと広がった。月読が身を捩ると、凝った乳首を摘んで弄られた。あえいで口をひらけば口を塞がれる。
「はっ……あ、くうっ……んんっ」
指先で乳首をつままれ、転がされ引っ張られる。
赤みを帯びてぷくりと尖った実は、胸の動きに合わせて震えていた。見ていた隼英が吸いついて、味わうように舐る。舌先で突かれ強く吸われて月読は背をしならせた。
「はっ……んぅっ――……っ」
月読の口へ吸い付いた多娥丸の舌が、のど奥まで侵入して声はかき消される。
双子の手に弄られ、じょじょに身体の奥底へ火がともる。熱い疼きが中心に生まれて下肢が反応した。多娥丸に握られた月読のものは起ちあがり、鈴口からこらえきれない雫を滴らせる。
「あぅ……」
「ほら見ろ、俺の方が気持ちいいってよ」
唇を開放した多娥丸が、口角を上げてチラリと牙が覗いた。
「お前の拙い愛撫でか? こいつは俺の方が好いんだよ」
「んだと? てめぇ」
口喧嘩しながらも2人の愛撫する手は止まらない。前から口を吸われ、項へ舌が這う。月読のそり返った陰茎に触れた指は、はしたなく濡れた先端を弄んだ。
「ああっ……っく……んんっ」
あえぐ口を隼英が塞ぎ、伸ばされた手は双丘の谷間をたどり秘めた場所へと伝う。そこを突かれて、きゅっと窄まりが締まった。しばらく窄まりの反応を楽しんでいた指先は挿しこまれ内側を探索する。
「……はっ……うっ……」
反応した陰茎を握った多娥丸の手が緩やかにうごく。
月読はあやしくうねり、無防備な口へどちらともない唇が重なった。両方から与えられる刺激に身体を捩らせ、我知らず逃ようと動いた。けれども逞しい4本の腕に、がっちり抱え込まれ逃れることも出来ない。
「ぅあっ――ああっっ!! 」
陰茎をにぎる手は激しく上下にすべり、月読の欲望から白い粘液が迸った。それまで塞がれていた唇が開放されて、月読はあられもない声を上げてしまった。
薄茶色の瞳が笑う。尻へ侵入した指は増え、複数の指に責められる。夢のせいなのか指を挿入される痛みも、こみ上げる苦しさもなく、双子の隙間で快楽に身悶えた。
「はうっ、ぁ……いやぁ……」
中を掻きまわされて、内腿をふるわせ指を咥えこむ。ぎゅうと尻の穴を締めると、指の数まで分かる気がして恥ずかしさで目尻に涙が浮かぶ。
イッたばかりの陰茎をやわやわと握られた。敏感になった先っぽを刺激されて、電流が走ったように背筋が引き攣る。仰け反って身を預けたら隼英に胸の尖りを吸われ、多娥丸の舌が喉奥へ押し込まれる。
「うんっ……んん、んぅっ!! 」
陰茎を滑る手で少し強めに扱かれて、仰け反った身体は痙攣した。気持ちのいい感覚が先端から飛び出して、正面の隼英を白濁液で濡らした。
力のぬけた月読は、ぐったりと多娥丸へ背を預けた。
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