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金村の御山日誌
金村、九郎と出会う
しおりを挟む夏の盛り、寺の道場へいくと大がらな青年がいた。
するどい目つき、ながしているが硬くはねた黒髪。飯綱の弟子は何人も見てきたけれど、前ノ坊という青年は異様な存在感をはなっていた。
金村の師はわりと有名らしく、遠方から出稽古へくる者もいる。
青年もその1人、彼は生活圏のちかい都心からおとずれていた。身ぎれいで黒の道着はほつれもなくキッチリとして、おまけに背がたかく鍛えられてスタイルもいい――正直カッコよかった。金村にないもの全てもってるような男だった。
――――ふん、金持ちの坊ちゃんかよ。
ふだん他人へ関心をもたない金村は内心で舌打ちした。
第1印象はそんな感じだった。どうせ夏が終わればいなくなる人間、それほど興味も湧かない。
稽古がはじまると黒い道着の青年は思いのほかつよく、まったく歯が立たない。手合わせして気づいた、遠目にはきれいに見えても金村の何十倍も拳をうってきた手だった。
くやしい気持ちをかかえて道場の掃除をおこなう。飯綱の坊さんは黒い道着の青年――九郎がすでに師範代であることを教えてくれた。
「しかし君、くやしいと思うのは向上心の表れでもある。君はもっと強くなるんじゃないかな、とはいえ力に使われないよう気をつけなさい」
飯綱のおおらかな声に元気づけられる。言葉のとおり金村はぐんと才をのばし強くなっていく。法術もしっかり学び、悪霊を調伏する密教の片鱗も習得した。
ある日、金村は学校の同級生が困っているという話を耳にした。同級生の友人が朽ちた神社で肝だめしのあと、精神がおかしくなりその影響で一家は離散、家のまわりでも事故が多発していると嘆いた。
修行をつみ、おごりのでた金村は力だめしをしたかった。場所をききだし、くだんの朽ちた神社へ足をはこんだ。
土地の開発で放置された野原、何十年もまえに神社は移転して朽ちた建物だけがのこる。雑草だらけの参道へ入った瞬間からイヤな気配がつつむ。
――――気のよどみ? 強いのは……いない?
跡地へなにか棲みついたと思っていたがいない、ひととおり歩きまわり夕方になった。収穫もなくバイクのところへ戻ると脇道をみつけた。神社うらへつづく細い道、道祖神のむこうにくずれた小屋を発見した。
炭焼き小屋あるいは陶器、もえたレンガ、なにかの窯のあと。
陽がしずみ、周囲は暗くなった。
獣臭がただよう、だたの獣ではなかった。おびただしい足音が藪をふみグルグルとまわる。
息をころし注視すれば、窯あとの柱のむこうに人影がみえた。だが人影だとおもったものは歪んだ。毛むくじゃらの胴体、うつろに微笑む老婆の顔があった。顔と手足は白く枯れ枝みたいに細ながい、あきらかに異形だった。
つかみどころなく揺れこちらを窺っている。毛むくじゃらの老婆は四つん這いになると、ガサガサと小屋の周囲をあるいた。
山姥、餓鬼、どちらにしても妖怪や魔物のたぐい。冷や汗がつたい、うでに鳥肌がたった。
――――おちつけ!
鼻から息をすった金村は降魔の経をとなえる。手印を組みなおしたとき、徘徊していた老婆の顔がおそろしく変化した。シワだらけの顔は全体がつり上がる。枯れ木のような腕がのび、すんでのところで躱した。
印がとけ、もう1回やりなおす。真言を唱えてるあいだ悪霊や魔物は近寄れないはずだった。思いえがいた状況とちがい、あせりをつのらせ経を唱えつづける。
妖が足をとめて呻き、効果はあった。
ところが攻撃は止まない、詠唱をジャマされ体力もけずられて、しだいに劣勢になった。金村の手におえる妖ではなかったのだ。はやる気もちと驕りで見えなくなっていた。
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