全てを義妹に奪われた令嬢は、精霊王の力を借りて復讐する

花宵

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「フィオちゃん、私の可愛いフィオちゃん、起きてちょうだい」

この優しい声は……お母様?!

「フィオ、ごはん食べたら兄ちゃんといっぱい遊ぼうな!」

この元気で明るい声は……子供の頃のお兄様?!

夢じゃない。
お母様とお兄様が目の前にいる。

「あらあら、まだ寝ぼけているのね。フィオちゃん、今日は一緒にピクニックへ行く約束をしていた日でしょう? そろそろ準備をしましょうね」

「いっぱい外で遊ぶぞ、フィオ!」

夢じゃない。
私、過去に戻ったんだ……

「お母様っ! お兄様っ!」

二人の手をとって、ぎゅっと握りしめた。

今度は必ず、守って見せます……!





私は復讐計画を立てるために、机に向かっていた。
お母様とお兄様を守るためにも、これから起こる出来事をまとめて、対処法を考えておかなければならない。

今の私は八歳だ。
一年後には、お父様が愛人のミレイユとその娘リリアナを離れの屋敷に連れてくるだろう。

そしてその一年後、私が十歳の時にお母様が事故に遭って命を落とした。五年後には、お兄様まで。

何としてもお母様とお兄様の死を回避させなければならない。
そのために出来る事はと考えていると……

『感動の再会はどうであった?』

突如、目の前に翼の生えた小さな妖精が現れた。
夢でも見ているのであろうか。
頬をつねってみると、かなり痛い。

「えっと、貴方は一体……?」

『我は精霊王ユグドラシルだ。フィレオニアの姫よ、久しぶりだな。最近は誰も我を呼び出してはくれなくて、寂しくしておったのだぞ。其方、名は何という?』

「フィオラ・ロバーツと申します。えっと、その……フィレオニアの姫というのは、何かの間違いではございませんか?」

『まさか其方、知らぬのか?!』

「はい、すみません。そもそも、フィレオニアってどこですか?」

不思議な力で世界地図を空中に創り出したユグドラシル様は説明し始めた。

『ここじゃ、ここがフィレオニア王国じゃ! 我との契約は代々フィレオニアの姫へと受け継がれ、呼び出しに応じてこちらへ遊びに来ていたのだ。フィオラ、其方が今は我の契約を受け継ぐフィレオニアの姫ではないか』

「えっと、そこはローザンヌ帝国です。フィレオニアなんていう国は聞いたこともございませんが……」

『なんだと?! そんなバカな! 待っておれ、確認してきてやろう!』

ユグドラシル様が姿を消して五分後、再び現れた。

『時代か……これも時代の流れなのか?! 人間の世界は、移り変わりが早すぎるぞ!』

「えっと、そういわれましても……」

『久しく我を呼び出す者がいなかったのも、そういう事であったのか。信仰心が薄れ、我の存在を知らなかったとは……だがフィオラ、其方は確かに我を呼び出したフィレオニアの姫だ! その手の甲に刻まれた刻印が何よりの証拠だ!』

刻印?
手を確認すると、見た事もない紋様のマークがあった。
なにこれ、こすっても消えない上に、薄っすら光ってる。

『フフフ、そんな事をしても無駄じゃぞ! 我と其方の繋がりはそんなものでは消えん! 時戻りの力を行使して、こうして幼子に戻してやったのだ』

「時間を巻き戻せたのはユグドラシル様、貴方の力だったのですね?」

『勿論だとも』

「すごいです! 感謝してもしきれません、本当にありがとうございます……っ」

『そうであろう? もっと褒めてたたえて良いのだぞ……って、どうした、何故泣くのだ?! 我は其方の味方じゃぞ! 怖くなんてないぞ!』

死の間際、聞こえた声はどうやらユグドラシル様の声だったらしい。

「お母様とお兄様にまた会う事が出来て、とても嬉しかったのです。ユグドラシル様が私の願いを聞き届けて下さったおかげです。本当にありがとうございます」

『フィオラ、遠い昔我は其方の祖先に命を助けられた。とても大事に、我の意識の宿った霊樹を育てて守ってもらったのだ。だからこそ、こうして精霊王にまで成ることができた。国はなくとも、こんなところで優しく気高きフィレオニアの血を絶やしてほしくはない。だからこそ我は、何があっても其方達を守るぞ。其方達が幸せに生きて、次世代にその血を残していけるようにな。我の力を存分に使うといい!』

「はい! ありがとうございます」


こうして、精霊王ユグドラシル様の加護を受けた私は、もう一度人生をやり直す機会を手にいれた。
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