21 / 186
第三章 悪の女帝の迫り来る罠
嵌められた罠
しおりを挟む
「結城、すまんが今から職員室まで来てくれないか? 時間はそうかからないから」
帰りのHRが終わった後、コハクは担任に呼ばれて職員室へ向かった。
それを見計らっていたかのように、桃井が極上の笑みを浮かべて話しかけてきた。
「一条さん、ちょっといいかしら? いつも結城君と一緒だから、たまには皆で遊んで帰りましょう?」
桃井の言葉を聞いて、彼女と行動を共にする女子、坂梨、柑凪、栗木の三人が集まってくる。
「いいねー最近駅前に出来たカラオケ行ってみない?」
「それはいい考えね。一条さん、よかったら一緒に行きましょうよ。私達、今までの事をきちんと謝りたいの」
伏し目がちに潤んだ瞳でこちらを見てくる桃井。胡散臭いことこの上ないけど、最近は彼女達から嫌がらせはされていない。むしろ、何かと話しかけてきては世話をやいてくれる。
あまり好きではないのは確かだが、無下に断るのも悪い気がした。
「少し、だけなら……」
「ありがとう! それじゃあ、行きましょう」
笑顔の桃井達に促され、そのまま教室を後にした。
コハクにはラインで連絡し、桃井達と遊んで帰る旨を伝え、私達は駅前のカラオケ店へとやってきた。
部屋に入り扉を閉めたところで、桃井達が一様に並んで私の前に立った。
中々威圧感のある光景に、心臓が不整脈のように嫌なリズムで鼓動を刻む。
綺麗に化粧をして髪にも拘り派手な印象の彼女達と、地味で冴えない自分。
一緒に街中を歩いている時も遠くからヒソヒソと声が聞こえていた。
『一人浮いたのがいるぞ』
『どう見ても引き立て役だろ。合コンでも行くんじゃね?』
『女ってこっえー』
学園を出ても周囲から感じるのはバカにしたような嘲笑の眼差し。場違い感をヒシヒシと感じて惨めな気持ちになった。
一緒に来たのは失敗だったのかもしれない……そう思い始めた頃、彼女達は一斉に深々と頭を下げた。
「今まで貴女に辛い思いをさせて、悪かったと思ってるの。許して欲しいなんて言わない。でも、これだけは聞いて欲しいの。本当にごめんなさい」
桃井の謝罪の言葉を契機に、他の女子達も誠心誠意謝ってくれた。
また何かされるんじゃないかって少しでも変に勘繰った自分が恥ずかしくなる。
「気持ちは分かったから、頭を上げて」
正直今までの事を許せたわけじゃないけど、真摯に向き合ってくれたのは分かる。
今までの事は水に流すという方向で話は進み、私達はカラオケを楽しむことにした。
途中、坂梨さんの彼氏とその友達がやってきて場を盛り上げてくれたものの、その場のノリについていけない私はひとり隅の方で烏龍茶を飲んでいた。
「桜ちゃんは彼氏とか居るの?」
その時、坂梨さんの彼氏の友達の一人、柳原君が私の隣の席に腰を掛けて話しかけてきた。
「桜の彼氏は聖学きってのイケメン王子だから、あんたに望みはないよ」
向かいの席でフライドポテトを摘まんでいた坂梨さんが、辛口で柳原君の質問を一刀両断。
「そうなんだ、残念。桜ちゃん結構俺のタイプだったのに」
「柳原君にも素敵な人がきっと現れるわよ」
ちぇっと呟く柳原君を、歌い終わった桃井がこちらに近付いてきて優しくフォローしていた。
あまりこういう雰囲気が得意でない私はトイレに行くと席を立つ。
スマホを見ると、コハクから『大丈夫?』とラインが来てたので『大丈夫だよ』と返信しておいた。
カラオケに来て、既に一時間半ほど経っていたようで、時刻はもう十九時になろうとしている。
クッキーも待ってるだろうし、そろそろ帰ろう。
部屋に戻り飲みかけの烏龍茶を飲んで、そろそろ帰る旨を伝えようとした時、異変が起こった。
異様に眠たくなってきて、身体が思うように動かない。
「桜さん、大丈夫?」
そう桃井が話しかけてきたのを最後に、私は意識を手放した。
***
「ここは……」
気が付くと、知らない部屋で寝ていた。
隣には柳原君が半裸で寝ていて、首元まで閉めていたはずのブラウスのボタンが少しはだけていた。
何故こうなったのか、記憶を辿ろうとしても思い出せない。
帰ろうとしてたら、急に眠くなってそれから私は何をしたの?
とりあえず急いでボタンを閉めていると、柳原君が起きた。
「あれ、桜ちゃんもう帰っちゃうの?」
「これはどういう事ですか? どうして私はあなたとここに居るんですか?」
「一晩愛し合った仲なのに。冷たいね、桜ちゃん」
彼のその言葉に、私は絶句した。
帰りのHRが終わった後、コハクは担任に呼ばれて職員室へ向かった。
それを見計らっていたかのように、桃井が極上の笑みを浮かべて話しかけてきた。
「一条さん、ちょっといいかしら? いつも結城君と一緒だから、たまには皆で遊んで帰りましょう?」
桃井の言葉を聞いて、彼女と行動を共にする女子、坂梨、柑凪、栗木の三人が集まってくる。
「いいねー最近駅前に出来たカラオケ行ってみない?」
「それはいい考えね。一条さん、よかったら一緒に行きましょうよ。私達、今までの事をきちんと謝りたいの」
伏し目がちに潤んだ瞳でこちらを見てくる桃井。胡散臭いことこの上ないけど、最近は彼女達から嫌がらせはされていない。むしろ、何かと話しかけてきては世話をやいてくれる。
あまり好きではないのは確かだが、無下に断るのも悪い気がした。
「少し、だけなら……」
「ありがとう! それじゃあ、行きましょう」
笑顔の桃井達に促され、そのまま教室を後にした。
コハクにはラインで連絡し、桃井達と遊んで帰る旨を伝え、私達は駅前のカラオケ店へとやってきた。
部屋に入り扉を閉めたところで、桃井達が一様に並んで私の前に立った。
中々威圧感のある光景に、心臓が不整脈のように嫌なリズムで鼓動を刻む。
綺麗に化粧をして髪にも拘り派手な印象の彼女達と、地味で冴えない自分。
一緒に街中を歩いている時も遠くからヒソヒソと声が聞こえていた。
『一人浮いたのがいるぞ』
『どう見ても引き立て役だろ。合コンでも行くんじゃね?』
『女ってこっえー』
学園を出ても周囲から感じるのはバカにしたような嘲笑の眼差し。場違い感をヒシヒシと感じて惨めな気持ちになった。
一緒に来たのは失敗だったのかもしれない……そう思い始めた頃、彼女達は一斉に深々と頭を下げた。
「今まで貴女に辛い思いをさせて、悪かったと思ってるの。許して欲しいなんて言わない。でも、これだけは聞いて欲しいの。本当にごめんなさい」
桃井の謝罪の言葉を契機に、他の女子達も誠心誠意謝ってくれた。
また何かされるんじゃないかって少しでも変に勘繰った自分が恥ずかしくなる。
「気持ちは分かったから、頭を上げて」
正直今までの事を許せたわけじゃないけど、真摯に向き合ってくれたのは分かる。
今までの事は水に流すという方向で話は進み、私達はカラオケを楽しむことにした。
途中、坂梨さんの彼氏とその友達がやってきて場を盛り上げてくれたものの、その場のノリについていけない私はひとり隅の方で烏龍茶を飲んでいた。
「桜ちゃんは彼氏とか居るの?」
その時、坂梨さんの彼氏の友達の一人、柳原君が私の隣の席に腰を掛けて話しかけてきた。
「桜の彼氏は聖学きってのイケメン王子だから、あんたに望みはないよ」
向かいの席でフライドポテトを摘まんでいた坂梨さんが、辛口で柳原君の質問を一刀両断。
「そうなんだ、残念。桜ちゃん結構俺のタイプだったのに」
「柳原君にも素敵な人がきっと現れるわよ」
ちぇっと呟く柳原君を、歌い終わった桃井がこちらに近付いてきて優しくフォローしていた。
あまりこういう雰囲気が得意でない私はトイレに行くと席を立つ。
スマホを見ると、コハクから『大丈夫?』とラインが来てたので『大丈夫だよ』と返信しておいた。
カラオケに来て、既に一時間半ほど経っていたようで、時刻はもう十九時になろうとしている。
クッキーも待ってるだろうし、そろそろ帰ろう。
部屋に戻り飲みかけの烏龍茶を飲んで、そろそろ帰る旨を伝えようとした時、異変が起こった。
異様に眠たくなってきて、身体が思うように動かない。
「桜さん、大丈夫?」
そう桃井が話しかけてきたのを最後に、私は意識を手放した。
***
「ここは……」
気が付くと、知らない部屋で寝ていた。
隣には柳原君が半裸で寝ていて、首元まで閉めていたはずのブラウスのボタンが少しはだけていた。
何故こうなったのか、記憶を辿ろうとしても思い出せない。
帰ろうとしてたら、急に眠くなってそれから私は何をしたの?
とりあえず急いでボタンを閉めていると、柳原君が起きた。
「あれ、桜ちゃんもう帰っちゃうの?」
「これはどういう事ですか? どうして私はあなたとここに居るんですか?」
「一晩愛し合った仲なのに。冷たいね、桜ちゃん」
彼のその言葉に、私は絶句した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
バイト先の先輩ギャルが実はクラスメイトで、しかも推しが一緒だった件
沢田美
恋愛
「きょ、今日からお世話になります。有馬蓮です……!」
高校二年の有馬蓮は、人生初のアルバイトで緊張しっぱなし。
そんな彼の前に現れたのは、銀髪ピアスのギャル系先輩――白瀬紗良だった。
見た目は派手だけど、話してみるとアニメもゲームも好きな“同類”。
意外な共通点から意気投合する二人。
だけどその日の帰り際、店長から知らされたのは――
> 「白瀬さん、今日で最後のシフトなんだよね」
一期一会の出会い。もう会えないと思っていた。
……翌日、学校で再会するまでは。
実は同じクラスの“白瀬さん”だった――!?
オタクな少年とギャルな少女の、距離ゼロから始まる青春ラブコメ。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる