161 / 186
第十三章 激化する呪い
最悪の場所に閉じ込められました
しおりを挟む
「すまん、俺がもうちょい慎重にドアノブ回せば」
「カナちゃんのせいじゃないよ。元々さっきの人達が先に向こう側を壊したせいだ。それにこの災いも呪いのせいだろうし、逆に巻き込んでごめん」
「とりあえず、携帯で外に連絡を……」
スマホの画面に視線を移したカナちゃんの顔が、ひきつるのが見えた。そしてスマホを色んな所にかざす姿を見て悟る。この場所が圏外なのだと。
念のためポケットから私もスマホを取り出すと、案の定『圏外』の文字が目にはいる。
「ま、まだ諦めるのは早いよ! ウィルさんから預かってる発信器! これを押せば!」
「なぁ、桜。GPSって地下におると測定されにくいんやないか? ここ、携帯の電波も届かんくらいやし」
「そ、そうなんだ……でも一応、押すだけ押しておこう」
望みは薄くてもゼロじゃない。
ここに誰かがくる可能性が低い今、助けを呼ばない限り気付いてもらえないだろう。すがる思いで発信器のボタンを押した。
その時、ゴォォと風が吹き出すような音が聞こえてきて冷たい空気が頬を掠める。
まさかここは──携帯のライトで辺りを照らすと、積み重ねられたダンボールが目に付く。その箱には『冷凍ぎょうざ』と書かれていた。
「思い出したわ、この店。冷凍食品専門店や。ありとあらゆる冷凍食品を食べられるって当時はえらい話題やったけど、食品偽装が相次いでメーカーの自主回収が頻繁な時期に廃れて潰れたんや」
「じゃあここはもしかしなくても……」
「それ保存するための冷凍室、やろな」
「やばいよ、カナちゃん! このままここに居たら凍死しちゃう!」
これならまださっきの人達に見つかった方がマシだったのかもしれない。捕まったフリして油断させたら、逃げれる可能性もあった。
でもここは誰にも気付かれない上に、気付かれたとしてもドアノブが壊れていて簡単に開けられない。
救助の人を待っている間にここの温度は下がり続けて──最悪のシナリオが頭に浮かぶ。
シロが身体をはって逃がしてくれたのに、待ってないといけないのに。こんな所に居たら、もう二度と会えない?
そんなの嫌だ、シロ、コハク……ッ!
「落ち着け、桜!」
動揺した私の肩をカナちゃんがガシッと掴んだ。力が強くて少し痛みを感じる。
でもそのおかげで、絶望に飲み込まれそうになっていた意識を強制的に現実へ引き戻され、身体の震えが止まった。
「お前は必ず俺が守るから。シロの元へちゃんと帰してやるから。せやから落ち着くんや」
馬鹿だ私は。ここに居るのは自分だけじゃない。こんなにも頼りになる存在が傍にいるじゃないか。
それなのに、弱気になるなんて。シロの事が心配で少し動揺してしまった。
大丈夫、必ずシロは約束を守る。あんな奴等に負けたりしない。どこに居てもきっと私を見つけてくれる。
だから私は待っていなければならない。こんな所で冷凍付けになるわけにはいかないんだ。
「ありがとう、カナちゃん。おかげで頭冷えた。大丈夫、きっとシロが見つけてくれる。だから今は、少しでも寒さをしのぐ方法を考えよう」
「せやな、とりあえず風避けになりそうなもん探すで。この冷風のせいで体感温度めっちゃ下がるわ」
それから私たちは、手分けして冷凍室内を探索して使えそうなものを探す事にした。
携帯のライトを頼りに周囲を調べるがなんとも心許ない。
とりあえず隅の方から見ていこうと足を進めたら、くにゃりとしたものを踏んづけ滑りそうになる。慌てて床を照らすと、冷凍うどん五袋入りの麺が転がっていた。常温で放置されればくにゃりともなるわけだ。
その時、急に室内が明るくなった。振り返ると、どうやらカナちゃんが電気のスイッチを見つけて押したらしい。
「これで携帯の充電無駄に使わんで済むな。もしかすると、電波立つとこあるかもしれへんし。てか、なんや散らかってんなぁ」
明るくなった室内は思ったよりも物でごったがえしていた。
広さでいうと畳六畳分ぐらいの室内に、隅の方には二段の棚があり空の発泡スチロールが引っ掻き回した後のように無造作におかれている。
その手前にはダンボールが積んであり、中を見ると常温で放置された冷凍食品がぎっしりと詰まっていた。
「何で電気通ってるんだろう。閉店して結構経つよね?」
「この建物確か、エコ発電うたったハウスメーカーの宣伝で屋根にソーラーパネルつけてあんねや。きっと何らかの拍子で作動してもうたんやろな」
昨日も何故か用具倉庫に園芸用の生石灰がおかれてたくらいだし、やっぱり災いを呼び寄せたのはこの左手の呪印のせいだろう。
「物であふれかえってんのは逆にラッキーやったな。これなら、風しのぐのは何とかなりそうや」
そう言ってカナちゃんは鞄からカッターと布テープを取り出した。普通の通学鞄には入ってないよな、それ。
バイトで使うものらしく、鞄の中に入れっぱなしにしていたらしい。他にもワイヤーやロープとか今からどこ行くんだよ! とツッコミたくなる物が多々出てくる。
とりあえず私たちは、踏み台と冷気を塞ぐ蓋を手分けして作ることにした。
「カナちゃんのせいじゃないよ。元々さっきの人達が先に向こう側を壊したせいだ。それにこの災いも呪いのせいだろうし、逆に巻き込んでごめん」
「とりあえず、携帯で外に連絡を……」
スマホの画面に視線を移したカナちゃんの顔が、ひきつるのが見えた。そしてスマホを色んな所にかざす姿を見て悟る。この場所が圏外なのだと。
念のためポケットから私もスマホを取り出すと、案の定『圏外』の文字が目にはいる。
「ま、まだ諦めるのは早いよ! ウィルさんから預かってる発信器! これを押せば!」
「なぁ、桜。GPSって地下におると測定されにくいんやないか? ここ、携帯の電波も届かんくらいやし」
「そ、そうなんだ……でも一応、押すだけ押しておこう」
望みは薄くてもゼロじゃない。
ここに誰かがくる可能性が低い今、助けを呼ばない限り気付いてもらえないだろう。すがる思いで発信器のボタンを押した。
その時、ゴォォと風が吹き出すような音が聞こえてきて冷たい空気が頬を掠める。
まさかここは──携帯のライトで辺りを照らすと、積み重ねられたダンボールが目に付く。その箱には『冷凍ぎょうざ』と書かれていた。
「思い出したわ、この店。冷凍食品専門店や。ありとあらゆる冷凍食品を食べられるって当時はえらい話題やったけど、食品偽装が相次いでメーカーの自主回収が頻繁な時期に廃れて潰れたんや」
「じゃあここはもしかしなくても……」
「それ保存するための冷凍室、やろな」
「やばいよ、カナちゃん! このままここに居たら凍死しちゃう!」
これならまださっきの人達に見つかった方がマシだったのかもしれない。捕まったフリして油断させたら、逃げれる可能性もあった。
でもここは誰にも気付かれない上に、気付かれたとしてもドアノブが壊れていて簡単に開けられない。
救助の人を待っている間にここの温度は下がり続けて──最悪のシナリオが頭に浮かぶ。
シロが身体をはって逃がしてくれたのに、待ってないといけないのに。こんな所に居たら、もう二度と会えない?
そんなの嫌だ、シロ、コハク……ッ!
「落ち着け、桜!」
動揺した私の肩をカナちゃんがガシッと掴んだ。力が強くて少し痛みを感じる。
でもそのおかげで、絶望に飲み込まれそうになっていた意識を強制的に現実へ引き戻され、身体の震えが止まった。
「お前は必ず俺が守るから。シロの元へちゃんと帰してやるから。せやから落ち着くんや」
馬鹿だ私は。ここに居るのは自分だけじゃない。こんなにも頼りになる存在が傍にいるじゃないか。
それなのに、弱気になるなんて。シロの事が心配で少し動揺してしまった。
大丈夫、必ずシロは約束を守る。あんな奴等に負けたりしない。どこに居てもきっと私を見つけてくれる。
だから私は待っていなければならない。こんな所で冷凍付けになるわけにはいかないんだ。
「ありがとう、カナちゃん。おかげで頭冷えた。大丈夫、きっとシロが見つけてくれる。だから今は、少しでも寒さをしのぐ方法を考えよう」
「せやな、とりあえず風避けになりそうなもん探すで。この冷風のせいで体感温度めっちゃ下がるわ」
それから私たちは、手分けして冷凍室内を探索して使えそうなものを探す事にした。
携帯のライトを頼りに周囲を調べるがなんとも心許ない。
とりあえず隅の方から見ていこうと足を進めたら、くにゃりとしたものを踏んづけ滑りそうになる。慌てて床を照らすと、冷凍うどん五袋入りの麺が転がっていた。常温で放置されればくにゃりともなるわけだ。
その時、急に室内が明るくなった。振り返ると、どうやらカナちゃんが電気のスイッチを見つけて押したらしい。
「これで携帯の充電無駄に使わんで済むな。もしかすると、電波立つとこあるかもしれへんし。てか、なんや散らかってんなぁ」
明るくなった室内は思ったよりも物でごったがえしていた。
広さでいうと畳六畳分ぐらいの室内に、隅の方には二段の棚があり空の発泡スチロールが引っ掻き回した後のように無造作におかれている。
その手前にはダンボールが積んであり、中を見ると常温で放置された冷凍食品がぎっしりと詰まっていた。
「何で電気通ってるんだろう。閉店して結構経つよね?」
「この建物確か、エコ発電うたったハウスメーカーの宣伝で屋根にソーラーパネルつけてあんねや。きっと何らかの拍子で作動してもうたんやろな」
昨日も何故か用具倉庫に園芸用の生石灰がおかれてたくらいだし、やっぱり災いを呼び寄せたのはこの左手の呪印のせいだろう。
「物であふれかえってんのは逆にラッキーやったな。これなら、風しのぐのは何とかなりそうや」
そう言ってカナちゃんは鞄からカッターと布テープを取り出した。普通の通学鞄には入ってないよな、それ。
バイトで使うものらしく、鞄の中に入れっぱなしにしていたらしい。他にもワイヤーやロープとか今からどこ行くんだよ! とツッコミたくなる物が多々出てくる。
とりあえず私たちは、踏み台と冷気を塞ぐ蓋を手分けして作ることにした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
バイト先の先輩ギャルが実はクラスメイトで、しかも推しが一緒だった件
沢田美
恋愛
「きょ、今日からお世話になります。有馬蓮です……!」
高校二年の有馬蓮は、人生初のアルバイトで緊張しっぱなし。
そんな彼の前に現れたのは、銀髪ピアスのギャル系先輩――白瀬紗良だった。
見た目は派手だけど、話してみるとアニメもゲームも好きな“同類”。
意外な共通点から意気投合する二人。
だけどその日の帰り際、店長から知らされたのは――
> 「白瀬さん、今日で最後のシフトなんだよね」
一期一会の出会い。もう会えないと思っていた。
……翌日、学校で再会するまでは。
実は同じクラスの“白瀬さん”だった――!?
オタクな少年とギャルな少女の、距離ゼロから始まる青春ラブコメ。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる