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第三章 借りすぎた恩を返したい!
29、お返しがしたい!
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「姫様、すごくお似合いです! そのチョーカー、若様からのプレゼントでしょう?」
「うん、昨日もらったの」
「やっとお渡しになられたのですね!」
「やっと……?」
「はい、姫様がこちらにこられた時から、いつ渡そうかとすごくお悩みになっておられましたし」
「そ、そうなの?」
そんなに昔から、用意してくれていた物だったの?!
「あの、メルム……以前チョーカーって男性から女性にお守りとして贈るものだって教えてくれたよね」
「はい、そうですよ! 父から娘へプレゼントされるチョーカーは、家族愛を象徴しています。贈る相手の誕生石を付ける事で、災いから身を守り、幸せを運ぶ意味があるのです」
「じゃあ、そうじゃない場合は……?」
「男性から女性へプレゼントされるチョーカーは、誠実な愛を象徴しています。男性が自分の誕生石の付いたチョーカーを意中の女性へ贈ることで、どんな災いもはね除けて貴方を守り抜きますっていう誓いを示すものなんです」
「つまり、フォルネウス様が下さったこのチョーカーは……」
「アメジストは若様の誕生石です。つまり、姫様を守り抜くという若様の固い誓いですね!」
フォルネウス様の誓い……その想いの強さを感じて私から、さーっと血の気が引いていくのを感じた。
「どうしよう、メルム。私、フォルネウス様に与えてもらってばかりで何も返せていないわ」
「そんな事ありませんよ! 若様の執務室が綺麗に保たれているのは姫様のおかげです! 昔なんて若様、酷い時は書類に埋もれて眠られていましたからね」
「でもそれは仕事だし、ちゃんとお給金も貰っているもの。当たり前の事をしているだけよ」
結局お給金を貰っても、ここでの生活に必要な物は全てフォルネウス様が用意して下さっているから、私がお金を使う機会もない。
皇城内のフォルネウス様の宮殿に住まわせて貰っているのも申し訳なくて、そろそろ城下で住む所を探そうと思ってるって言ったら、住まいは福利厚生だって許可を貰えなかったのよね。
それに近くに居る方が食事をしやすいっていうのもあって、出て行き辛くもある。
仕事以外でフォルネウス様に何かお返しが出来るもの……
「そういえば、来月は若様の誕生日があります! 何かプレゼントを用意してあげたら、きっと喜んでくれるのではないでしょうか?」
「それは良い考えね! でも、何をあげたら喜んで下さるかしら」
「そうですね……若様は姫様がご用意して下さったものなら、何でも喜ぶと思いますよ」
「そ、そうかな?」
「はい、間違いございません。それに、姫様が若様のことを考えて選んでくださったものを、もし万一にも若様が無下になさったとしたら……私、黙っていませんことよ!」
メルムが手にしていた箒の柄がバキリと真っ二つに折れてしまった。
下手なプレゼントを贈ると、フォルネウス様があの箒のようになるかもしれない。ここは慎重に選んだ方がいいわね。
◇
フォルネウス様が喜んで下さるものって何だろう。
「アリシア? ボーっとしてどうしたのだ?」
はっ! いけない!
考え事をしていたら、食事が終わったというのに、フォルネウス様の膝の上に座ったままだったわ!
「ごめんなさい、重かったですよね!」
謝りながら急いで離れた。
「いや、そういうわけではないのだが……何か悩み事か?」
「フォルネウス様、何か欲しいものはございませんか?」
「欲しいもの? 特にこれといって思い付かないな……いや、一つだけ、ある」
「それは何ですか?」
「…………秘密だ」
それとなく聞いてみても、フォルネウス様は顔を赤くして目をそらしてしまわれる。答えたくないと意思表示されることを、それ以上聞くことが出来るわけもなく、分からずじまいだった。
翌日。考えた末、私はフォルネウス様の側近の二人である知将のリフィエル様と武将のガブリエル様に助言を仰ぐことにした。
子供の頃からフォルネウス様の事を指導さなっていたお二人なら、きっとご存知のはずよね!
そう結論付けてまず私が向かったのは、リフィエル様の所。温和で優しく、時に女性と見まごう美しさを持つリフィエル様は、私の質問にいつも丁寧に答えてくれる。
実は男性だとカミングアウトされた時は、正直申し訳なさすぎて生きた心地がしなかったけど。優しいリフィエル様は、笑って許して下さった。
「リフィエル様。あの、お休み中にすみません。少しお聞きしたい事があるのですが……」
書物庫で本を探しているリフィエル様を見つけ、声をかけた。
「はい、勿論構いませんよ。アリシア、どうなさいました?」
リフィエル様が作業の手を止めて振り返るとと、後ろで一つに束ねられた長い紫色の髪がふわりと宙を舞った。
「フォルネウス様のお誕生日に、何か贈り物をしたいのですが、何をあげたら喜んでもらえるのか分からなくて困ってたんです」
「なるほど……そうですね、若様は昔からとても好奇心旺盛なお方でした。面白いものを見つけるとすぐそれを追いかけて居なくなってしまわれるのです。そして今もそれは変わっていません。なので、好奇心を揺さぶるものをお渡しすればお喜びになるのではないかと思います」
「好奇心を揺さぶるもの、ですか」
「はい。特に初めて見るものに対しては、かなり興味を示されます」
確かに初めて城下街に行った帰り、迎えに来てくれたフォルネウス様はとても楽しそうに流れ星の行く末を追いかけたおられたわね。好奇心旺盛で無邪気な少年のような眼差しはとても輝いていた。
「なるほど、参考になりました。ありがとうございます!」
「お役に立てたのなら光栄です」
リフィエル様に聞いて正解だったわ!
その時、リフィエル様の小脇に抱えられた本に視線がいった。
非番の日であるにも関わらず、どうやらリフィエル様は次の議会で使う参考資料を集めているようだった。
「あの、リフィエル様。私もお手伝いします」
「アリシア、折角のお休みなのですから、無理をしてはいけませんよ。ゆっくり休養なさい」
「リフィエル様こそ、今日はお休みですよね」
「フフ、私が書物庫に来るのは趣味ですよ。そのついでに必要なものを集めているだけで、仕事ではありません」
「では、その趣味のお手伝いをさせて頂きます」
有意義な情報を頂いたんだもの、これくらいお手伝いさせてもらってもバチは当たらないよね!
「言っても、無駄のようですね」
「はい、よくご存知で」
「それでは、お願いします」
「はい、喜んで」
リフィエル様の手伝いを終えた後、フォルネウス様の好奇心を揺さぶるものを探して回った。しかし暮らしてきた環境が違う以上、フォルネウス様にとって何が興味を引かれる事なのかいまいち分からない。
もう少し調査をしようと、今度はガブリエル様の居らっしゃる騎士団の訓練場へと向かった。
「うん、昨日もらったの」
「やっとお渡しになられたのですね!」
「やっと……?」
「はい、姫様がこちらにこられた時から、いつ渡そうかとすごくお悩みになっておられましたし」
「そ、そうなの?」
そんなに昔から、用意してくれていた物だったの?!
「あの、メルム……以前チョーカーって男性から女性にお守りとして贈るものだって教えてくれたよね」
「はい、そうですよ! 父から娘へプレゼントされるチョーカーは、家族愛を象徴しています。贈る相手の誕生石を付ける事で、災いから身を守り、幸せを運ぶ意味があるのです」
「じゃあ、そうじゃない場合は……?」
「男性から女性へプレゼントされるチョーカーは、誠実な愛を象徴しています。男性が自分の誕生石の付いたチョーカーを意中の女性へ贈ることで、どんな災いもはね除けて貴方を守り抜きますっていう誓いを示すものなんです」
「つまり、フォルネウス様が下さったこのチョーカーは……」
「アメジストは若様の誕生石です。つまり、姫様を守り抜くという若様の固い誓いですね!」
フォルネウス様の誓い……その想いの強さを感じて私から、さーっと血の気が引いていくのを感じた。
「どうしよう、メルム。私、フォルネウス様に与えてもらってばかりで何も返せていないわ」
「そんな事ありませんよ! 若様の執務室が綺麗に保たれているのは姫様のおかげです! 昔なんて若様、酷い時は書類に埋もれて眠られていましたからね」
「でもそれは仕事だし、ちゃんとお給金も貰っているもの。当たり前の事をしているだけよ」
結局お給金を貰っても、ここでの生活に必要な物は全てフォルネウス様が用意して下さっているから、私がお金を使う機会もない。
皇城内のフォルネウス様の宮殿に住まわせて貰っているのも申し訳なくて、そろそろ城下で住む所を探そうと思ってるって言ったら、住まいは福利厚生だって許可を貰えなかったのよね。
それに近くに居る方が食事をしやすいっていうのもあって、出て行き辛くもある。
仕事以外でフォルネウス様に何かお返しが出来るもの……
「そういえば、来月は若様の誕生日があります! 何かプレゼントを用意してあげたら、きっと喜んでくれるのではないでしょうか?」
「それは良い考えね! でも、何をあげたら喜んで下さるかしら」
「そうですね……若様は姫様がご用意して下さったものなら、何でも喜ぶと思いますよ」
「そ、そうかな?」
「はい、間違いございません。それに、姫様が若様のことを考えて選んでくださったものを、もし万一にも若様が無下になさったとしたら……私、黙っていませんことよ!」
メルムが手にしていた箒の柄がバキリと真っ二つに折れてしまった。
下手なプレゼントを贈ると、フォルネウス様があの箒のようになるかもしれない。ここは慎重に選んだ方がいいわね。
◇
フォルネウス様が喜んで下さるものって何だろう。
「アリシア? ボーっとしてどうしたのだ?」
はっ! いけない!
考え事をしていたら、食事が終わったというのに、フォルネウス様の膝の上に座ったままだったわ!
「ごめんなさい、重かったですよね!」
謝りながら急いで離れた。
「いや、そういうわけではないのだが……何か悩み事か?」
「フォルネウス様、何か欲しいものはございませんか?」
「欲しいもの? 特にこれといって思い付かないな……いや、一つだけ、ある」
「それは何ですか?」
「…………秘密だ」
それとなく聞いてみても、フォルネウス様は顔を赤くして目をそらしてしまわれる。答えたくないと意思表示されることを、それ以上聞くことが出来るわけもなく、分からずじまいだった。
翌日。考えた末、私はフォルネウス様の側近の二人である知将のリフィエル様と武将のガブリエル様に助言を仰ぐことにした。
子供の頃からフォルネウス様の事を指導さなっていたお二人なら、きっとご存知のはずよね!
そう結論付けてまず私が向かったのは、リフィエル様の所。温和で優しく、時に女性と見まごう美しさを持つリフィエル様は、私の質問にいつも丁寧に答えてくれる。
実は男性だとカミングアウトされた時は、正直申し訳なさすぎて生きた心地がしなかったけど。優しいリフィエル様は、笑って許して下さった。
「リフィエル様。あの、お休み中にすみません。少しお聞きしたい事があるのですが……」
書物庫で本を探しているリフィエル様を見つけ、声をかけた。
「はい、勿論構いませんよ。アリシア、どうなさいました?」
リフィエル様が作業の手を止めて振り返るとと、後ろで一つに束ねられた長い紫色の髪がふわりと宙を舞った。
「フォルネウス様のお誕生日に、何か贈り物をしたいのですが、何をあげたら喜んでもらえるのか分からなくて困ってたんです」
「なるほど……そうですね、若様は昔からとても好奇心旺盛なお方でした。面白いものを見つけるとすぐそれを追いかけて居なくなってしまわれるのです。そして今もそれは変わっていません。なので、好奇心を揺さぶるものをお渡しすればお喜びになるのではないかと思います」
「好奇心を揺さぶるもの、ですか」
「はい。特に初めて見るものに対しては、かなり興味を示されます」
確かに初めて城下街に行った帰り、迎えに来てくれたフォルネウス様はとても楽しそうに流れ星の行く末を追いかけたおられたわね。好奇心旺盛で無邪気な少年のような眼差しはとても輝いていた。
「なるほど、参考になりました。ありがとうございます!」
「お役に立てたのなら光栄です」
リフィエル様に聞いて正解だったわ!
その時、リフィエル様の小脇に抱えられた本に視線がいった。
非番の日であるにも関わらず、どうやらリフィエル様は次の議会で使う参考資料を集めているようだった。
「あの、リフィエル様。私もお手伝いします」
「アリシア、折角のお休みなのですから、無理をしてはいけませんよ。ゆっくり休養なさい」
「リフィエル様こそ、今日はお休みですよね」
「フフ、私が書物庫に来るのは趣味ですよ。そのついでに必要なものを集めているだけで、仕事ではありません」
「では、その趣味のお手伝いをさせて頂きます」
有意義な情報を頂いたんだもの、これくらいお手伝いさせてもらってもバチは当たらないよね!
「言っても、無駄のようですね」
「はい、よくご存知で」
「それでは、お願いします」
「はい、喜んで」
リフィエル様の手伝いを終えた後、フォルネウス様の好奇心を揺さぶるものを探して回った。しかし暮らしてきた環境が違う以上、フォルネウス様にとって何が興味を引かれる事なのかいまいち分からない。
もう少し調査をしようと、今度はガブリエル様の居らっしゃる騎士団の訓練場へと向かった。
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