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第四章 貴方の隣に相応しくなりたい!
34、誕生日パーティー
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あれから一ヶ月が経って、今日はフォルネウス様の誕生日パーティーが開かれる。
念入りに身支度をされ、着なれないドレスに身を包んだ私は、開幕まで部屋で休んでいた。
「緊張しているのか?」
「はい、とても……」
フォルネウス様の正式な婚約者としての発表も兼ねられており、緊張しない方が無理だ!
私が失敗したら、それはフォルネウス様の恥になってしまう。足を引っ張るわけにはいかない。
「ダンスはリードするから大丈夫だ。安心して俺に身を委ねてくれ」
「た、頼りにしてます!」
一ヶ月間空いた時間でみっちりと練習してきたものの、何とか一曲を踊りきるのでいっぱいいっぱいだった。
「アリシア」
「はい、何でしょう?」
「とても綺麗だ。美しい君をこのまま拐って一人占めしたい気分だが、同時に皆にも知って欲しい。君という大切な人の存在を」
「フォルネウス様……」
「肩肘張る必要はないよ。君はそのままで十分に魅力的なんだから」
魅力的なのは、フォルネウス様の方ですよ!
正装に身を包んだお姿はとても格好いいし、さりげなく緊張を和らげようとしてくれるその優しさも素敵すぎます!
思いが通じあってからというもの、フォルネウス様は素直に気持ちを教えて下さる。それがもう砂糖菓子のように甘くて、正直私の心臓がいくつあっても待ちません。
この方の隣に相応しい存在になりたいと思って努力してきたものの、私が追い付けないスピードでフォルネウス様はさらに先をいってしまうわ。ぐぬぬ、悔しい!
「フォルネウス様だって、いつも魅力的です。そんな貴方に、私はいつも追い付きたくて必死なんですよ」
「まいったな。やはり一人占めしたい……」
口元に手を当てて、フォルネウス様は恥ずかしそうに視線を逸らしてしまわれた。私の言葉でこうやって照れてくれる姿も可愛いし。
あ、そうだ! 主役のフォルネウス様は今日も忙しいだろうし、今のうちにプレゼントを渡しておこう。喜んでくれるといいな。
「あの、フォルネウス様。お誕生日おめでとうございます。よかったらこれを受け取って頂けませんか?」
「ありがとう、アリシア。開けてみてもいいだろうか?」
「はい、勿論です!」
「これは、アリシアの手作りなのか?!」
私がプレゼントとしてお渡ししたのは、手作りのお守り。
「はい。私の住んでいたベリーヒルズ村では、女性から意中の男性へ手作りのお守を渡す習慣があって……ずっと傍で支え、貴方の幸せを祈り続けますという意味が込められているのです。フォルネウス様に頂いたこのチョーカーのように、私も、その……自分の気持ちを込めた物を贈りたかったので、これにしてみたのですが……」
「ありがとう、アリシア! これほど嬉しい物はない」
フォルネウス様にぎゅっと抱き締められる。
「大切に持ち歩くとしよう」
喜んでもらえたみたいでよかった。ついでに城下の魔法加工屋さんで、もらったお給金のほぼ全額を費やして一番効果の高いプロテクト魔法をかけてもらった。
蒼の吸血鬼討伐など、危険な任務に行かれるフォルネウス様の安全が少しでも守れるなら、安いものだよね!
「そうして頂けると、嬉しいです」
私の肩に顔を埋めているフォルネウス様の体が、小刻みに震えているのに気付いた。なだめるように、背中に手を回して抱き締め返していると、ノックの音が聞こえてきた。
「姫様? そろそろお時間ですよ?」
どうやらメルムが呼びにきてくれたようだけど、フォルネウス様は私を抱き締めたまま動かない。ガチャリとドアの開く音がして、メルムが入ってきた。
「め、メルム……」
「若様! いい加減姫様から離れて下さいませ!」
不貞腐れた様子でフォルネウス様はメルムに言った。
「主役は遅れて登場するものだ。少しくらいいではないか」
「よくありません! ああもう、折角綺麗にセットした姫様のドレスと髪が! イチャイチャするのは終わってからにしてくださいませ!」
「そうだな。早く終わらせて戻ってこよう、アリシア」
「主役は最後まで残ってください!」
メルムに怒られつつ、私達は会場へと向かった。
◇
フォルネウス様にエスコートされて、パーティー会場に入る。豪華なシャンデリアが華やかな会場を明るく照らす。楽団の優雅な演奏に迎えられ足を進めると
「まぁ、素敵!」
「とってもお似合いだわ!」
「ついに若様にも春が来たのね!」
会場内は優しく見守ってくれる温かい眼差しで溢れていた。
吸血鬼は長寿だ。一生を幸せに終えるために、ハイグランド帝国では愛のある結婚しか認めていない。それは過去にこの国を作ったシエラ様の意志であり、温かい家庭を築くことが一番とされてきたからのようだ。
リグレット王国のように、身分違いの結婚に批判的な意見は一切ないようで、初めて皇帝であるディートリヒ様に挨拶しに行った時も温かく迎え入れて下さった。
とても優しくて温かい国だなぁとしみじみ思っていると、斜め前方から突き刺さるような鋭い視線を感じた。一人の女性がこちらをじっと睨んでいるのが目に入り、思わず手が震えてしまった。
『どうした? アリシア』
私の異変に気付いたのか、フォルネウス様がポータブルコールで話しかけて来られた。
『い、いえ、何でもありません』
『何かあったらすぐに知らせてくれ』
『はい、お気遣い頂きありがとうございます』
気のせいかもしれないし、今はそれよりも転ばないように集中しなければ!
「今宵は我が息子フォルネウスのために、よくぞ集まってくれた。このめでたき日を無事迎えられたのは、ひとえに貴公等の支えあってのこと。誠に感謝する。今日は息子より、皆に嬉しい報告があるようなので聞いてやって欲しい」
ディートリヒ陛下の口上を聞いている間も、女性の突き刺さるような視線が止むことはなかった。気のせいではないわね、これは……
「本日は私のためにお集まり頂き誠にありがとうございます。実は皆さんに、嬉しいご報告があります。私フォルネウス・ハイグランドは、こちらのアリシア嬢と正式に婚約した事を発表します」
フォルネウス様の言葉で、どこからともなく拍手が沸き起こる。
「おめでとうございます、若様!」
「待ってました、おめでとうございます!」
祝いの言葉が飛び交い、会場は温かい空気に包まれた。
「それでは皆の者、今宵のパーティーをどうか楽しんでくれ」
開幕の挨拶がおわり、どうやら自由時間になったようだ。
「アリシア、私と一曲踊って頂けますか?」
「はい、喜んで」
フォルネウス様にエスコートされてダンスホールに上がる。
大丈夫、練習した通りにすれば何とかなる。だってフォルネウス様のリードは完璧だもの!
そうして何とかダンスを乗りきった後、主役のフォルネウス様は挨拶に来た来賓客達に捕まってしまった。
「初めまして、アリシア様」
振り返ると、穴が空きそうなほど私を睨んでいた女性がにこやかな笑顔を浮かべて立っていた。
念入りに身支度をされ、着なれないドレスに身を包んだ私は、開幕まで部屋で休んでいた。
「緊張しているのか?」
「はい、とても……」
フォルネウス様の正式な婚約者としての発表も兼ねられており、緊張しない方が無理だ!
私が失敗したら、それはフォルネウス様の恥になってしまう。足を引っ張るわけにはいかない。
「ダンスはリードするから大丈夫だ。安心して俺に身を委ねてくれ」
「た、頼りにしてます!」
一ヶ月間空いた時間でみっちりと練習してきたものの、何とか一曲を踊りきるのでいっぱいいっぱいだった。
「アリシア」
「はい、何でしょう?」
「とても綺麗だ。美しい君をこのまま拐って一人占めしたい気分だが、同時に皆にも知って欲しい。君という大切な人の存在を」
「フォルネウス様……」
「肩肘張る必要はないよ。君はそのままで十分に魅力的なんだから」
魅力的なのは、フォルネウス様の方ですよ!
正装に身を包んだお姿はとても格好いいし、さりげなく緊張を和らげようとしてくれるその優しさも素敵すぎます!
思いが通じあってからというもの、フォルネウス様は素直に気持ちを教えて下さる。それがもう砂糖菓子のように甘くて、正直私の心臓がいくつあっても待ちません。
この方の隣に相応しい存在になりたいと思って努力してきたものの、私が追い付けないスピードでフォルネウス様はさらに先をいってしまうわ。ぐぬぬ、悔しい!
「フォルネウス様だって、いつも魅力的です。そんな貴方に、私はいつも追い付きたくて必死なんですよ」
「まいったな。やはり一人占めしたい……」
口元に手を当てて、フォルネウス様は恥ずかしそうに視線を逸らしてしまわれた。私の言葉でこうやって照れてくれる姿も可愛いし。
あ、そうだ! 主役のフォルネウス様は今日も忙しいだろうし、今のうちにプレゼントを渡しておこう。喜んでくれるといいな。
「あの、フォルネウス様。お誕生日おめでとうございます。よかったらこれを受け取って頂けませんか?」
「ありがとう、アリシア。開けてみてもいいだろうか?」
「はい、勿論です!」
「これは、アリシアの手作りなのか?!」
私がプレゼントとしてお渡ししたのは、手作りのお守り。
「はい。私の住んでいたベリーヒルズ村では、女性から意中の男性へ手作りのお守を渡す習慣があって……ずっと傍で支え、貴方の幸せを祈り続けますという意味が込められているのです。フォルネウス様に頂いたこのチョーカーのように、私も、その……自分の気持ちを込めた物を贈りたかったので、これにしてみたのですが……」
「ありがとう、アリシア! これほど嬉しい物はない」
フォルネウス様にぎゅっと抱き締められる。
「大切に持ち歩くとしよう」
喜んでもらえたみたいでよかった。ついでに城下の魔法加工屋さんで、もらったお給金のほぼ全額を費やして一番効果の高いプロテクト魔法をかけてもらった。
蒼の吸血鬼討伐など、危険な任務に行かれるフォルネウス様の安全が少しでも守れるなら、安いものだよね!
「そうして頂けると、嬉しいです」
私の肩に顔を埋めているフォルネウス様の体が、小刻みに震えているのに気付いた。なだめるように、背中に手を回して抱き締め返していると、ノックの音が聞こえてきた。
「姫様? そろそろお時間ですよ?」
どうやらメルムが呼びにきてくれたようだけど、フォルネウス様は私を抱き締めたまま動かない。ガチャリとドアの開く音がして、メルムが入ってきた。
「め、メルム……」
「若様! いい加減姫様から離れて下さいませ!」
不貞腐れた様子でフォルネウス様はメルムに言った。
「主役は遅れて登場するものだ。少しくらいいではないか」
「よくありません! ああもう、折角綺麗にセットした姫様のドレスと髪が! イチャイチャするのは終わってからにしてくださいませ!」
「そうだな。早く終わらせて戻ってこよう、アリシア」
「主役は最後まで残ってください!」
メルムに怒られつつ、私達は会場へと向かった。
◇
フォルネウス様にエスコートされて、パーティー会場に入る。豪華なシャンデリアが華やかな会場を明るく照らす。楽団の優雅な演奏に迎えられ足を進めると
「まぁ、素敵!」
「とってもお似合いだわ!」
「ついに若様にも春が来たのね!」
会場内は優しく見守ってくれる温かい眼差しで溢れていた。
吸血鬼は長寿だ。一生を幸せに終えるために、ハイグランド帝国では愛のある結婚しか認めていない。それは過去にこの国を作ったシエラ様の意志であり、温かい家庭を築くことが一番とされてきたからのようだ。
リグレット王国のように、身分違いの結婚に批判的な意見は一切ないようで、初めて皇帝であるディートリヒ様に挨拶しに行った時も温かく迎え入れて下さった。
とても優しくて温かい国だなぁとしみじみ思っていると、斜め前方から突き刺さるような鋭い視線を感じた。一人の女性がこちらをじっと睨んでいるのが目に入り、思わず手が震えてしまった。
『どうした? アリシア』
私の異変に気付いたのか、フォルネウス様がポータブルコールで話しかけて来られた。
『い、いえ、何でもありません』
『何かあったらすぐに知らせてくれ』
『はい、お気遣い頂きありがとうございます』
気のせいかもしれないし、今はそれよりも転ばないように集中しなければ!
「今宵は我が息子フォルネウスのために、よくぞ集まってくれた。このめでたき日を無事迎えられたのは、ひとえに貴公等の支えあってのこと。誠に感謝する。今日は息子より、皆に嬉しい報告があるようなので聞いてやって欲しい」
ディートリヒ陛下の口上を聞いている間も、女性の突き刺さるような視線が止むことはなかった。気のせいではないわね、これは……
「本日は私のためにお集まり頂き誠にありがとうございます。実は皆さんに、嬉しいご報告があります。私フォルネウス・ハイグランドは、こちらのアリシア嬢と正式に婚約した事を発表します」
フォルネウス様の言葉で、どこからともなく拍手が沸き起こる。
「おめでとうございます、若様!」
「待ってました、おめでとうございます!」
祝いの言葉が飛び交い、会場は温かい空気に包まれた。
「それでは皆の者、今宵のパーティーをどうか楽しんでくれ」
開幕の挨拶がおわり、どうやら自由時間になったようだ。
「アリシア、私と一曲踊って頂けますか?」
「はい、喜んで」
フォルネウス様にエスコートされてダンスホールに上がる。
大丈夫、練習した通りにすれば何とかなる。だってフォルネウス様のリードは完璧だもの!
そうして何とかダンスを乗りきった後、主役のフォルネウス様は挨拶に来た来賓客達に捕まってしまった。
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振り返ると、穴が空きそうなほど私を睨んでいた女性がにこやかな笑顔を浮かべて立っていた。
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