かのんちゃんはからかいたい!〜「勘違いしないでね?」と言う学校一の美少女がからかってくる〜

文字の大きさ
45 / 135
第一章 高校二年生編

第45話 春風双葉は見つけたい!

しおりを挟む
 午前九時。
 ホテルで朝食を済ませ、会場に向かう。
 会場はまだ早い時間というのにも関わらず、人で溢れかえっていた。

「楽しみだなー!」

 双葉たち桐ヶ崎高校女子バスケ部は、一回戦を難なく勝ち進み二回戦へと駒を進めている。
 勝ち進めたということを嬉しく思いながらも、正直なところ無駄足にならずに済んだということにも安堵していた。

「双葉ちゃんいるかなー?」

「いたとしても声かけるなよ?」

「わ、わかってるよー」

 わかっていなかった口ぶりだ。
 試合前となれば集中してピリついた雰囲気になる。
 人によるとは思うが、少なくとも双葉はそのタイプだ。

 もし声をかければ笑顔で応じてくれるだろう。
 ただ、邪魔になりたくないという想いから、偶然でもない限りは会わない方がいいと考えている。
 そしてその偶然ですら、早めに席に着いておくことで回避する。
 この大会で一言も交わさなくてもいい。ただ応援さえできればいいのだから。



 試合前、見るかはわからないが連絡だけはしておく。
 ちゃんと来ていることと、応援していることを伝えるためだ。

『凪沙と会場来たぞ。応援してる』

 来ることは事前に伝えてあったため、伝えない方が気になるだろうと思ってのことだ。
 ものの数分で返事は返ってくる。

『ありがとうございます! 写真ください!』

 唐突なことで頭にハテナを浮かべるが、断る理由もなかった俺は言われた通りにする。

「凪沙、ちょっといいか?」

「ん? おにいどうしたの?」

 疑問を浮かべている凪沙だが、有無を言わさずに自撮りをする。
 理由もわかっていないのに「いえーい」とノリノリだった。

「双葉が『写真ください!』って言うんだよな。なんでだろ?」

 そう言いながら携帯をポチポチと操作し、二人で撮った写真を送る。
 すぐに、『ありがとうございます! 頑張るので見ててくださいね!』と返ってきた。

「おにい……、わからないの?」

「いや、わかるわけないだろ」

 凪沙はため息を吐き、呆れたような表情をする。

「双葉ちゃん可哀想だなぁ……」

 意味深なことを言うが、わからないものはわからない。
 思い付くのは、本当に来ているのか確認するためくらいだろうか。
 周りの人が映ることを考慮して、コートの方を背景にして撮ったため、本当に来ているということは確認できるだろう。

 ――そう考えていると、一つの可能性が頭をよぎる。

「もしかして、見てる場所を特定するためか!?」

「そんなわけないじゃん」

 冷静にツッコミを入れられ、俺は項垂れる。
 普段は甘えてくる可愛い妹だが、俺が『ふざけたことを言っている』と判断した時の凪沙は冷たい。
 ……別にふざけているつもりはないのだが。

「あっ、あれ、双葉ちゃんじゃない?」

 凪沙が指を差す方に視線を向けると、いつも学校で見る女バスのジャージに身を包んだ選手たちが姿を現した。
 桐ヶ崎高校の女子バスケ部は、強豪とはいえ頻繁に全国大会に来られるものではなく、選手たちは緊張しているのが見て取れる。

 その中でも一人、緊張しているのかわからない……いや、緊張しているだろうが別の意味で挙動不審な人がいる。
 それが春風双葉だ。

「なにしてんだあいつ?」

「さあ……?」

 会場に入るなりキョロキョロと周りを見渡している。
 そして十秒もしないうちにその動きは止まり、視線を真っ直ぐに向けている。

「なんかこっち見てないか?」

 視線は俺たちの方向。
 コート内ではなく、客席の高い位置に視線が向いていた。

「あ、手振ってるね」

 満面の笑みで手を振る双葉。
 手を振り返すとテンションが上がっているのがわかるほど、両手で手を振って喜びを表現していた。
 ただ、キャプテンらしき人に頭を小突かれ、試合の準備へと取り掛かる。

「……おにいの言ってたこと、間違いじゃなかったかも」

「ん? なんの話?」

「写真。見てる場所を特定するためって話」

 見ている場所は最前列。
 運良く取れた席だ。

 ただ、場所は教えていないし、手がかりとなるのは写真だけ。
 その写真で最前列だとわかっても、広い会場でしかも遠い場所ということを考えると、見つけることは困難だ。
 たまたま見つけたのであれば納得はいくが、人探しをする絵本のごとく、双葉はいとも簡単に俺たちを探し当てた。

「そんなわけ……、いや、うん、まああり得るか」

 今では俺と並ぶほど……俺以上に成績は悪い双葉だが、元々頭が悪いわけではない。
 中学生になりたての今ほどバスケに熱中していなかった頃はそれなりの成績だった。

 ただ、勉強に対する思考リソースをバスケに全振りした結果、今のように頭が残念な子となっている。
 決して頭が悪いわけではなく、地頭は良いのだ。

「なんで言うか、変なところで力使うよな」

 見られてると感じて集中できないようなことを避けるためにこちらからは言わなかったが、逆にどこから見られているのか気になるのなら教えていた。
 わざわざ探さなくてもよかったのだ。

「私の師匠だからね」

 凪沙はそう言って胸を張る。

「いや、俺も教えただろ……。てか、双葉に教えたのも俺だから、元を辿れば俺なんじゃ……」

「細かいことはいいのー!」

 もっと細かいことを言えば顧問の先生にも教えてもらっている。
 ただ、身長が高くなかった俺が、戦うために身につけた技術は自主練がほとんどのため、プレースタイルは俺からの派生だ。
 双葉も凪沙も低めの身長のため、それが合っていたのだ。……凪沙のポジションは違うが。

「もうそろそろ始まるぞ」

 試合前のアップを終えた双葉たちがコートに出てくる。

「……頑張れ、双葉ちゃん」

 凪沙は胸の前で手を組んで祈っていた。
 ――試合が始まる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】大変申し訳ありませんが、うちのお嬢様に貴方は不釣り合いのようです。

リラ
恋愛
 婚約破棄から始まる、有能執事の溺愛…いや、過保護?  お嬢様を絶対守るマンが本気を出したらすごいんです。  ミリアス帝国首都の一等地に屋敷を構える資産家のコルチエット伯爵家で執事として勤めているロバートは、あらゆる事を完璧にこなす有能な執事だ。  そんな彼が生涯を捧げてでも大切に守ろうと誓った伯爵家のご令嬢エミリー・コルチエットがある日、婚約者に一方的に婚約破棄を告げられる事件が起こる。  その事実を知ったロバートは……この執事を怒らせたら怖いぞ!  後に後悔しエミリーとの復縁を望む元婚約者や、彼女に恋心を抱く男達を前に、お嬢様の婿に相応しいか見極めるロバートだったが…?  果たして、ロバートに認められるようなエミリーお嬢様のお婿候補は現れるのだろうか!? 【物語補足情報】 世界観:貴族社会はあるものの、財を成した平民が貴族位を買い新興貴族(ブルジョア)として活躍している時代。 由緒正しい貴族の力は弱まりつつあり、借金を抱える高位貴族も増えていった。 コルチエット家:帝国一の大商会を持つ一族。元々平民だが、エミリーの祖父の代に伯爵位を買い貴族となった資産家。

処理中です...