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第一章 高校二年生編
第45話 春風双葉は見つけたい!
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午前九時。
ホテルで朝食を済ませ、会場に向かう。
会場はまだ早い時間というのにも関わらず、人で溢れかえっていた。
「楽しみだなー!」
双葉たち桐ヶ崎高校女子バスケ部は、一回戦を難なく勝ち進み二回戦へと駒を進めている。
勝ち進めたということを嬉しく思いながらも、正直なところ無駄足にならずに済んだということにも安堵していた。
「双葉ちゃんいるかなー?」
「いたとしても声かけるなよ?」
「わ、わかってるよー」
わかっていなかった口ぶりだ。
試合前となれば集中してピリついた雰囲気になる。
人によるとは思うが、少なくとも双葉はそのタイプだ。
もし声をかければ笑顔で応じてくれるだろう。
ただ、邪魔になりたくないという想いから、偶然でもない限りは会わない方がいいと考えている。
そしてその偶然ですら、早めに席に着いておくことで回避する。
この大会で一言も交わさなくてもいい。ただ応援さえできればいいのだから。
試合前、見るかはわからないが連絡だけはしておく。
ちゃんと来ていることと、応援していることを伝えるためだ。
『凪沙と会場来たぞ。応援してる』
来ることは事前に伝えてあったため、伝えない方が気になるだろうと思ってのことだ。
ものの数分で返事は返ってくる。
『ありがとうございます! 写真ください!』
唐突なことで頭にハテナを浮かべるが、断る理由もなかった俺は言われた通りにする。
「凪沙、ちょっといいか?」
「ん? おにいどうしたの?」
疑問を浮かべている凪沙だが、有無を言わさずに自撮りをする。
理由もわかっていないのに「いえーい」とノリノリだった。
「双葉が『写真ください!』って言うんだよな。なんでだろ?」
そう言いながら携帯をポチポチと操作し、二人で撮った写真を送る。
すぐに、『ありがとうございます! 頑張るので見ててくださいね!』と返ってきた。
「おにい……、わからないの?」
「いや、わかるわけないだろ」
凪沙はため息を吐き、呆れたような表情をする。
「双葉ちゃん可哀想だなぁ……」
意味深なことを言うが、わからないものはわからない。
思い付くのは、本当に来ているのか確認するためくらいだろうか。
周りの人が映ることを考慮して、コートの方を背景にして撮ったため、本当に来ているということは確認できるだろう。
――そう考えていると、一つの可能性が頭をよぎる。
「もしかして、見てる場所を特定するためか!?」
「そんなわけないじゃん」
冷静にツッコミを入れられ、俺は項垂れる。
普段は甘えてくる可愛い妹だが、俺が『ふざけたことを言っている』と判断した時の凪沙は冷たい。
……別にふざけているつもりはないのだが。
「あっ、あれ、双葉ちゃんじゃない?」
凪沙が指を差す方に視線を向けると、いつも学校で見る女バスのジャージに身を包んだ選手たちが姿を現した。
桐ヶ崎高校の女子バスケ部は、強豪とはいえ頻繁に全国大会に来られるものではなく、選手たちは緊張しているのが見て取れる。
その中でも一人、緊張しているのかわからない……いや、緊張しているだろうが別の意味で挙動不審な人がいる。
それが春風双葉だ。
「なにしてんだあいつ?」
「さあ……?」
会場に入るなりキョロキョロと周りを見渡している。
そして十秒もしないうちにその動きは止まり、視線を真っ直ぐに向けている。
「なんかこっち見てないか?」
視線は俺たちの方向。
コート内ではなく、客席の高い位置に視線が向いていた。
「あ、手振ってるね」
満面の笑みで手を振る双葉。
手を振り返すとテンションが上がっているのがわかるほど、両手で手を振って喜びを表現していた。
ただ、キャプテンらしき人に頭を小突かれ、試合の準備へと取り掛かる。
「……おにいの言ってたこと、間違いじゃなかったかも」
「ん? なんの話?」
「写真。見てる場所を特定するためって話」
見ている場所は最前列。
運良く取れた席だ。
ただ、場所は教えていないし、手がかりとなるのは写真だけ。
その写真で最前列だとわかっても、広い会場でしかも遠い場所ということを考えると、見つけることは困難だ。
たまたま見つけたのであれば納得はいくが、人探しをする絵本のごとく、双葉はいとも簡単に俺たちを探し当てた。
「そんなわけ……、いや、うん、まああり得るか」
今では俺と並ぶほど……俺以上に成績は悪い双葉だが、元々頭が悪いわけではない。
中学生になりたての今ほどバスケに熱中していなかった頃はそれなりの成績だった。
ただ、勉強に対する思考をバスケに全振りした結果、今のように頭が残念な子となっている。
決して頭が悪いわけではなく、地頭は良いのだ。
「なんで言うか、変なところで力使うよな」
見られてると感じて集中できないようなことを避けるためにこちらからは言わなかったが、逆にどこから見られているのか気になるのなら教えていた。
わざわざ探さなくてもよかったのだ。
「私の師匠だからね」
凪沙はそう言って胸を張る。
「いや、俺も教えただろ……。てか、双葉に教えたのも俺だから、元を辿れば俺なんじゃ……」
「細かいことはいいのー!」
もっと細かいことを言えば顧問の先生にも教えてもらっている。
ただ、身長が高くなかった俺が、戦うために身につけた技術は自主練がほとんどのため、プレースタイルは俺からの派生だ。
双葉も凪沙も低めの身長のため、それが合っていたのだ。……凪沙のポジションは違うが。
「もうそろそろ始まるぞ」
試合前のアップを終えた双葉たちがコートに出てくる。
「……頑張れ、双葉ちゃん」
凪沙は胸の前で手を組んで祈っていた。
――試合が始まる。
ホテルで朝食を済ませ、会場に向かう。
会場はまだ早い時間というのにも関わらず、人で溢れかえっていた。
「楽しみだなー!」
双葉たち桐ヶ崎高校女子バスケ部は、一回戦を難なく勝ち進み二回戦へと駒を進めている。
勝ち進めたということを嬉しく思いながらも、正直なところ無駄足にならずに済んだということにも安堵していた。
「双葉ちゃんいるかなー?」
「いたとしても声かけるなよ?」
「わ、わかってるよー」
わかっていなかった口ぶりだ。
試合前となれば集中してピリついた雰囲気になる。
人によるとは思うが、少なくとも双葉はそのタイプだ。
もし声をかければ笑顔で応じてくれるだろう。
ただ、邪魔になりたくないという想いから、偶然でもない限りは会わない方がいいと考えている。
そしてその偶然ですら、早めに席に着いておくことで回避する。
この大会で一言も交わさなくてもいい。ただ応援さえできればいいのだから。
試合前、見るかはわからないが連絡だけはしておく。
ちゃんと来ていることと、応援していることを伝えるためだ。
『凪沙と会場来たぞ。応援してる』
来ることは事前に伝えてあったため、伝えない方が気になるだろうと思ってのことだ。
ものの数分で返事は返ってくる。
『ありがとうございます! 写真ください!』
唐突なことで頭にハテナを浮かべるが、断る理由もなかった俺は言われた通りにする。
「凪沙、ちょっといいか?」
「ん? おにいどうしたの?」
疑問を浮かべている凪沙だが、有無を言わさずに自撮りをする。
理由もわかっていないのに「いえーい」とノリノリだった。
「双葉が『写真ください!』って言うんだよな。なんでだろ?」
そう言いながら携帯をポチポチと操作し、二人で撮った写真を送る。
すぐに、『ありがとうございます! 頑張るので見ててくださいね!』と返ってきた。
「おにい……、わからないの?」
「いや、わかるわけないだろ」
凪沙はため息を吐き、呆れたような表情をする。
「双葉ちゃん可哀想だなぁ……」
意味深なことを言うが、わからないものはわからない。
思い付くのは、本当に来ているのか確認するためくらいだろうか。
周りの人が映ることを考慮して、コートの方を背景にして撮ったため、本当に来ているということは確認できるだろう。
――そう考えていると、一つの可能性が頭をよぎる。
「もしかして、見てる場所を特定するためか!?」
「そんなわけないじゃん」
冷静にツッコミを入れられ、俺は項垂れる。
普段は甘えてくる可愛い妹だが、俺が『ふざけたことを言っている』と判断した時の凪沙は冷たい。
……別にふざけているつもりはないのだが。
「あっ、あれ、双葉ちゃんじゃない?」
凪沙が指を差す方に視線を向けると、いつも学校で見る女バスのジャージに身を包んだ選手たちが姿を現した。
桐ヶ崎高校の女子バスケ部は、強豪とはいえ頻繁に全国大会に来られるものではなく、選手たちは緊張しているのが見て取れる。
その中でも一人、緊張しているのかわからない……いや、緊張しているだろうが別の意味で挙動不審な人がいる。
それが春風双葉だ。
「なにしてんだあいつ?」
「さあ……?」
会場に入るなりキョロキョロと周りを見渡している。
そして十秒もしないうちにその動きは止まり、視線を真っ直ぐに向けている。
「なんかこっち見てないか?」
視線は俺たちの方向。
コート内ではなく、客席の高い位置に視線が向いていた。
「あ、手振ってるね」
満面の笑みで手を振る双葉。
手を振り返すとテンションが上がっているのがわかるほど、両手で手を振って喜びを表現していた。
ただ、キャプテンらしき人に頭を小突かれ、試合の準備へと取り掛かる。
「……おにいの言ってたこと、間違いじゃなかったかも」
「ん? なんの話?」
「写真。見てる場所を特定するためって話」
見ている場所は最前列。
運良く取れた席だ。
ただ、場所は教えていないし、手がかりとなるのは写真だけ。
その写真で最前列だとわかっても、広い会場でしかも遠い場所ということを考えると、見つけることは困難だ。
たまたま見つけたのであれば納得はいくが、人探しをする絵本のごとく、双葉はいとも簡単に俺たちを探し当てた。
「そんなわけ……、いや、うん、まああり得るか」
今では俺と並ぶほど……俺以上に成績は悪い双葉だが、元々頭が悪いわけではない。
中学生になりたての今ほどバスケに熱中していなかった頃はそれなりの成績だった。
ただ、勉強に対する思考をバスケに全振りした結果、今のように頭が残念な子となっている。
決して頭が悪いわけではなく、地頭は良いのだ。
「なんで言うか、変なところで力使うよな」
見られてると感じて集中できないようなことを避けるためにこちらからは言わなかったが、逆にどこから見られているのか気になるのなら教えていた。
わざわざ探さなくてもよかったのだ。
「私の師匠だからね」
凪沙はそう言って胸を張る。
「いや、俺も教えただろ……。てか、双葉に教えたのも俺だから、元を辿れば俺なんじゃ……」
「細かいことはいいのー!」
もっと細かいことを言えば顧問の先生にも教えてもらっている。
ただ、身長が高くなかった俺が、戦うために身につけた技術は自主練がほとんどのため、プレースタイルは俺からの派生だ。
双葉も凪沙も低めの身長のため、それが合っていたのだ。……凪沙のポジションは違うが。
「もうそろそろ始まるぞ」
試合前のアップを終えた双葉たちがコートに出てくる。
「……頑張れ、双葉ちゃん」
凪沙は胸の前で手を組んで祈っていた。
――試合が始まる。
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