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第一章 高校二年生編
第58話 花音と颯太は勘違いされる
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「青木くんおはよー」
冬休みが終わった学校の初日。
教室で虎徹と話していると、花音が声をかけてくる。
クリスマスパーティーの際に色々あったが、その後何度か会っていることもあって気まずさというのはなかった。
「おはよ」
「うん、おはよう。藤川くんもおはよう」
「はよー」
いつものように挨拶を交わして花音は荷物を自分の席に置くと、俺たちの会話に混ざる。
「昨日若葉ちゃんち行ったんだけどさ、初花ちゃん可愛いね!」
「初花ちゃん良い子だからなー」
「そうか? 生意気じゃね?」
「そうかな? 私は礼儀正しい子だと思ったけど……」
虎徹は何故か年下の女の子からの扱いが雑だ。
俺の妹である凪沙も、若葉の妹の初花ちゃんも、虎徹には軽口をたたいている。
嫌われているというよりは話しやすい相手という感じだが。
「外面はいいからな。若葉の妹じゃなかったらはっ倒してるぞ」
「えー……」
若葉の妹じゃなければもっと礼儀正しいと思うが。
古くからの付き合いだからこそ、お互いにそんなことを言えるのだ。
そんな雑談をしていると、教室の外から「かのんちゃーん」と声がかかる。
「はーい、……ごめん、ちょっと行っているね」
「行ってらっしゃい」
他クラスの女子に呼ばれた花音は、教室から出ていく。
俺たちに素を見せ始め、冬休み期間に一気に距離は縮まったため忘れていたが、花音は学校でも一番と言われる美少女で、人気者なのだ。
ただ、他の人に対しての猫かぶりは相変わらず健在だ。
冬休みの間、クリスマス以外でも俺たちは遊んでいた。
……とは言っても若葉は基本的に部活があり、俺たちもバイトなどを入れているため、三人で遊んだり、虎徹と遊んでいる時に初花ちゃんと遊んだり、いずれも部活終わりの若葉も合流したのはあるが、四人で一日を遊んだのは初詣に出かけたくらいだった。
それでも遊びとバイトが半々くらいで、一番予定の合わない若葉は少なめだが花音や虎徹とは期間の三分の一は会っていたのではないだろうかというほどだ。
クリスマスパーティーと初詣。
それだけでも十分なほどの思い出となり、ちょっとした遊びの予定も冬休みのいい思い出だ。
冬休み前に考えていた『思い出を作りたい』ということは十分に達成できた、充実した冬休みとなった。
そして多くの時間を一緒に過ごしたことで感覚がわからなくなっていた。
冬休みに入る前まで、どのように花音と接していたのかということに。
「青木と藤川、かのんちゃんと仲良かったっけ?」
他クラスから来ていた男子・・・・・・小林に声をかけられる。
一年生の頃一緒のクラスだったため顔見知りではある。
「まあ、そこそこだな」
虎徹が答えると、その男子は「ふーん」と言って離れていった。
そして翌日、通常通りよりも短い日程ながらも授業が始まったため、午後まで学校がある。
俺と虎徹は昼食のために購買でパンを買い、教室に戻ろうとしているところだった。
「やべ、後藤に日直の仕事頼まれてたの忘れてた」
虎徹はそう言って買ったパンを俺に預けると職員室に向かった。
俺は「大変だなぁ」と思いながら教室に戻る。
「お待たせ」
「あれ? 藤川くんは?」
「日直の仕事ってさ」
「あー」
花音は納得して「それなら」と虎徹の席に座る。
今日は若葉も部活の用事があるとかで一緒にはいない。
そのため二人でのご飯だ。
四人で食べるときは机を並べて食べるが、二人のため椅子を後ろに向けただけだ。
「何気に二人って初めてだな」
「確かにそうかもー」
休みの日に二人で遊ぶこともあり、正確に言うと二人きりのご飯は初めてではない。
ただ、こうして学校でというと初めてだった。
いつものように話を弾ませながらご飯を食べる。
話が一つ終わると、一瞬の沈黙がある。
その時、周りからやけに視線を向けられている気がした。
花音から視線を外して周りの様子をうかがうと、教室内にいる大半の人がこちらを気にしている。
特に男子からの目線が気になった。
「何か見られてない?」
「そう?」
花音が周りをキョロキョロと見回すと、視線を逸らす。
花音は気付いていない。
――気のせいならいいのだが。
そう思っていたが、やはり気のせいではなかった。
「かのんちゃん。青木と付き合ってんの?」
俺と虎徹に花音と仲が良いのか聞いてきた小林だった。
小林が俺たちに話しかけると、教室の生徒は俺たちを気にしている様子だ。
「えっ、いや、別に付き合ってないけど……」
反応がやや怪しいが、花音は恋愛に興味はあっても耐性はなく、俺たちと話すときも乗っかっておきながら恥ずかしがっている。
そのため戸惑ったような反応となっていた。
俺はそれを知っているため……、そもそも付き合っていないため、花音の反応に疑問は覚えなかった。
しかし、小林は言葉の裏を勝手に読み取った。……事実無根の言葉の裏をだ。
「なんで青木なんかと付き合うの? 俺のがいいじゃんか」
「いや、だ、だから付き合ってないって……」
「その反応とか、今まで男子と仲良くしてこなかったかのんちゃんが仲良くしてたりさ、それ付き合ってるようにしか見えないんだけど」
全くの誤解だ。
それでも今の恥ずかしがっている反応をする花音では説得力はない。
そのため俺が反論する。
「本当に付き合ってな……」
「青木には聞いてない」
――俺も関わっている話なのだが。
小林はしつこく花音に言い寄っている。
「こいつの何がいいの? 俺の方がいいじゃん。こいつなんかより俺と付き合った方がいいって」
薄々感じていたが、この小林は花音のことが好きなのだ。
そして、『俺のがいい』というのは、花音が一度振っているから出てきた言葉だろう。
小林からすると、『部活でしていたバスケがちょっとできるくらいで大した取柄もない』そんな俺が気に食わないのだろう。
確かに小林はそこそこ顔はイケている。
学校一というほどではないが、若葉曰く今までに何人かと付き合ったことがあるという話も聞いたことがあった。
俺より人気があるのは事実だ。
「そんなの関係ない。私と青木くんは、つ、付き合ってないけど。私にとってはいい友達だから」
俺の悪口に腹を立てたのか、いつもの猫をかぶっている『かのんちゃんモード』のままだが、小林の言葉に言い返す。
しかし小林も黙ってない。
「友達って、青木も絶対下心あるから。友達だって言っててもワンチャン狙ってるし」
流石にその言い草には俺も腹が立つ。
「そんなことないし、そもそもそんな考えが出てくるのって、小林がそうやって考えているからじゃないのか?」
俺が立ち上がり言い返すと、小林は言葉に詰まる。
この時、最初は俺と花音の関係に興味をしてしていた教室内の生徒たちの視線は、小林に対しての軽蔑の目に変わっていた。
ひそひそと聞こえる、「ただの僻みだよな」「さすがにダサいわ」という言葉に、小林は顔を真っ赤にして教室から出ていった。
花音のことを好きな気持ちはわかる。
ただ、それでも発言や行動が悪かったとしか言えない。
一段落したことで俺は座りなおす。
落ち着いてご飯を食べ進めると、クラスマッチのバスケで同じチームだった中田と山村が声をかけてきた。
「青木、かのんちゃんと仲良かったんだな」
「……まあ、うん」
――またか、と思ったが、二人の声色は攻撃的なものではない。
「かのんちゃんって、アイドル的な存在だから色々大変だと思うけど。……頑張れよ」
完全に誤解をしている。
「いや、そんなんじゃないんだけど……」
「大丈夫、俺たちは応援してるから!」
そう言う二人。
否定したところで半信半疑のようだ。
今までは『若葉と仲が良いから一緒にいる』という認識だったが、この日から俺と花音は『付き合ってるかもしれないけど否定しているからどっちかわからない微妙な関係』とクラスで認識されることになった。
冬休みが終わった学校の初日。
教室で虎徹と話していると、花音が声をかけてくる。
クリスマスパーティーの際に色々あったが、その後何度か会っていることもあって気まずさというのはなかった。
「おはよ」
「うん、おはよう。藤川くんもおはよう」
「はよー」
いつものように挨拶を交わして花音は荷物を自分の席に置くと、俺たちの会話に混ざる。
「昨日若葉ちゃんち行ったんだけどさ、初花ちゃん可愛いね!」
「初花ちゃん良い子だからなー」
「そうか? 生意気じゃね?」
「そうかな? 私は礼儀正しい子だと思ったけど……」
虎徹は何故か年下の女の子からの扱いが雑だ。
俺の妹である凪沙も、若葉の妹の初花ちゃんも、虎徹には軽口をたたいている。
嫌われているというよりは話しやすい相手という感じだが。
「外面はいいからな。若葉の妹じゃなかったらはっ倒してるぞ」
「えー……」
若葉の妹じゃなければもっと礼儀正しいと思うが。
古くからの付き合いだからこそ、お互いにそんなことを言えるのだ。
そんな雑談をしていると、教室の外から「かのんちゃーん」と声がかかる。
「はーい、……ごめん、ちょっと行っているね」
「行ってらっしゃい」
他クラスの女子に呼ばれた花音は、教室から出ていく。
俺たちに素を見せ始め、冬休み期間に一気に距離は縮まったため忘れていたが、花音は学校でも一番と言われる美少女で、人気者なのだ。
ただ、他の人に対しての猫かぶりは相変わらず健在だ。
冬休みの間、クリスマス以外でも俺たちは遊んでいた。
……とは言っても若葉は基本的に部活があり、俺たちもバイトなどを入れているため、三人で遊んだり、虎徹と遊んでいる時に初花ちゃんと遊んだり、いずれも部活終わりの若葉も合流したのはあるが、四人で一日を遊んだのは初詣に出かけたくらいだった。
それでも遊びとバイトが半々くらいで、一番予定の合わない若葉は少なめだが花音や虎徹とは期間の三分の一は会っていたのではないだろうかというほどだ。
クリスマスパーティーと初詣。
それだけでも十分なほどの思い出となり、ちょっとした遊びの予定も冬休みのいい思い出だ。
冬休み前に考えていた『思い出を作りたい』ということは十分に達成できた、充実した冬休みとなった。
そして多くの時間を一緒に過ごしたことで感覚がわからなくなっていた。
冬休みに入る前まで、どのように花音と接していたのかということに。
「青木と藤川、かのんちゃんと仲良かったっけ?」
他クラスから来ていた男子・・・・・・小林に声をかけられる。
一年生の頃一緒のクラスだったため顔見知りではある。
「まあ、そこそこだな」
虎徹が答えると、その男子は「ふーん」と言って離れていった。
そして翌日、通常通りよりも短い日程ながらも授業が始まったため、午後まで学校がある。
俺と虎徹は昼食のために購買でパンを買い、教室に戻ろうとしているところだった。
「やべ、後藤に日直の仕事頼まれてたの忘れてた」
虎徹はそう言って買ったパンを俺に預けると職員室に向かった。
俺は「大変だなぁ」と思いながら教室に戻る。
「お待たせ」
「あれ? 藤川くんは?」
「日直の仕事ってさ」
「あー」
花音は納得して「それなら」と虎徹の席に座る。
今日は若葉も部活の用事があるとかで一緒にはいない。
そのため二人でのご飯だ。
四人で食べるときは机を並べて食べるが、二人のため椅子を後ろに向けただけだ。
「何気に二人って初めてだな」
「確かにそうかもー」
休みの日に二人で遊ぶこともあり、正確に言うと二人きりのご飯は初めてではない。
ただ、こうして学校でというと初めてだった。
いつものように話を弾ませながらご飯を食べる。
話が一つ終わると、一瞬の沈黙がある。
その時、周りからやけに視線を向けられている気がした。
花音から視線を外して周りの様子をうかがうと、教室内にいる大半の人がこちらを気にしている。
特に男子からの目線が気になった。
「何か見られてない?」
「そう?」
花音が周りをキョロキョロと見回すと、視線を逸らす。
花音は気付いていない。
――気のせいならいいのだが。
そう思っていたが、やはり気のせいではなかった。
「かのんちゃん。青木と付き合ってんの?」
俺と虎徹に花音と仲が良いのか聞いてきた小林だった。
小林が俺たちに話しかけると、教室の生徒は俺たちを気にしている様子だ。
「えっ、いや、別に付き合ってないけど……」
反応がやや怪しいが、花音は恋愛に興味はあっても耐性はなく、俺たちと話すときも乗っかっておきながら恥ずかしがっている。
そのため戸惑ったような反応となっていた。
俺はそれを知っているため……、そもそも付き合っていないため、花音の反応に疑問は覚えなかった。
しかし、小林は言葉の裏を勝手に読み取った。……事実無根の言葉の裏をだ。
「なんで青木なんかと付き合うの? 俺のがいいじゃんか」
「いや、だ、だから付き合ってないって……」
「その反応とか、今まで男子と仲良くしてこなかったかのんちゃんが仲良くしてたりさ、それ付き合ってるようにしか見えないんだけど」
全くの誤解だ。
それでも今の恥ずかしがっている反応をする花音では説得力はない。
そのため俺が反論する。
「本当に付き合ってな……」
「青木には聞いてない」
――俺も関わっている話なのだが。
小林はしつこく花音に言い寄っている。
「こいつの何がいいの? 俺の方がいいじゃん。こいつなんかより俺と付き合った方がいいって」
薄々感じていたが、この小林は花音のことが好きなのだ。
そして、『俺のがいい』というのは、花音が一度振っているから出てきた言葉だろう。
小林からすると、『部活でしていたバスケがちょっとできるくらいで大した取柄もない』そんな俺が気に食わないのだろう。
確かに小林はそこそこ顔はイケている。
学校一というほどではないが、若葉曰く今までに何人かと付き合ったことがあるという話も聞いたことがあった。
俺より人気があるのは事実だ。
「そんなの関係ない。私と青木くんは、つ、付き合ってないけど。私にとってはいい友達だから」
俺の悪口に腹を立てたのか、いつもの猫をかぶっている『かのんちゃんモード』のままだが、小林の言葉に言い返す。
しかし小林も黙ってない。
「友達って、青木も絶対下心あるから。友達だって言っててもワンチャン狙ってるし」
流石にその言い草には俺も腹が立つ。
「そんなことないし、そもそもそんな考えが出てくるのって、小林がそうやって考えているからじゃないのか?」
俺が立ち上がり言い返すと、小林は言葉に詰まる。
この時、最初は俺と花音の関係に興味をしてしていた教室内の生徒たちの視線は、小林に対しての軽蔑の目に変わっていた。
ひそひそと聞こえる、「ただの僻みだよな」「さすがにダサいわ」という言葉に、小林は顔を真っ赤にして教室から出ていった。
花音のことを好きな気持ちはわかる。
ただ、それでも発言や行動が悪かったとしか言えない。
一段落したことで俺は座りなおす。
落ち着いてご飯を食べ進めると、クラスマッチのバスケで同じチームだった中田と山村が声をかけてきた。
「青木、かのんちゃんと仲良かったんだな」
「……まあ、うん」
――またか、と思ったが、二人の声色は攻撃的なものではない。
「かのんちゃんって、アイドル的な存在だから色々大変だと思うけど。……頑張れよ」
完全に誤解をしている。
「いや、そんなんじゃないんだけど……」
「大丈夫、俺たちは応援してるから!」
そう言う二人。
否定したところで半信半疑のようだ。
今までは『若葉と仲が良いから一緒にいる』という認識だったが、この日から俺と花音は『付き合ってるかもしれないけど否定しているからどっちかわからない微妙な関係』とクラスで認識されることになった。
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