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第二章 高校三年生編
第100話 かのんちゃんは流れたい
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「夏だー!」
若葉はそうテンションを上げながら太陽の下に繰り出した。
そんな若葉を見て虎徹は呆れた様子だ。
……テンションが上がるのはわかるが、俺も花音もそのノリにはついていけていない。
「日焼け止め、塗ったか?」
「塗ったよー。かのんちゃんと更衣室で塗ったから、背中までバッチリだよ!」
親指を立てながら若葉がそう言うと、花音は恥ずかしそうに顔を赤らめた。
そんな表情を見て、健全な男子高校生である俺は変な想像をしてしまった。
「……颯太くん、えっち」
「なっ……!」
取り繕おうとしたが、想像してしまったのは事実のため否定しきれない。
女の子の水着なんて、男子高校生にとっては刺激が強いのだから。
夏休みに入ってすぐ。
まだ七月下旬の頃に、俺たちはプールに来ていた。
前に綾瀬と来た遊園地に併設されている、大型の海水プールだ。
俺と虎徹は元々持っていた適当な水着を着ているが、花音と若葉は今日のためにわざわざ買ったらしい。
花音は白い水着で、上下共にフリルが付いている可愛い水着だ。
対して若葉はシンプルに黄色の水着だ。
二人とも上に白のパーカーを着ているが、周りの視線を集めている。
言うまでもなく花音はその容姿で、若葉は……まあ、少し開いたパーカーから見え隠れしているその胸だ。
「上まで閉めろ」
「だって苦しいんだもん」
虎徹は柄にもなく照れながら、周りの視線を避けるために若葉のパーカーを閉めた。
「虎徹のえっちー」
「……なんだ? 見せてる若葉は痴女か?」
「女子高生にそんなこと言っちゃダメなんだよ?」
……女子高生でなくてもダメだとは思うが。
花音は悔しそうな表情を浮かべて胸元に手を当てている。
そんな花音も、別に小さいというわけではないと思うのだが……。
「また変なこと考えたでしょ?」
「……断じて変なことではない」
今回に関しては『花音が思ってるほど小さくない』と思っただけで、下心があって見たわけではない。
断じてそういうわけではない。
だから俺はキッパリと否定したが、花音は「ふーん……」と意味ありげな目線で何か言いたそうだ。
なんとなく視線を逸らしてしまう。
言い返したいところではあったが、下手に突っつくとセクハラになりかねない。
俺は黙っていた。
「颯太、かのんちゃん、とりあえず行かない?」
いつの間にか虎徹と若葉のやり取りが終わっており、二人は訝しげな目で俺たちを見ていた。
「そ、そうだな」
「う、うん。行こっか」
何も悪いことはしていないが、気恥ずかしくなる。
俺たちは誤魔化すようにそう言った。
最初に俺たちは流れるプールで軽く体を動かす。
本気で泳ぎに来たわけではないが、いきなりハードなウォータースライダーにでも乗れば、午前中からどっと疲れが来るだろう。
まずはゆったりと、夏を満喫するようにして、流れるプールで漂っていた。
「そうめんって、こんな気持ちなのかなぁ……」
若葉は持ってきた浮き輪に浮かびながらそんなことを言う。
「……なんでそうめん?」
「何言ってるの颯太? 流れるものって言えばそうめんじゃん」
「そんなことは決まってないんだけど……」
流しそうめんなんてしたことない俺にとっては、そうめんが流れるものだという認識は薄かった。
「いやいや若葉ちゃん……」
そこで花音もツッコミを入れる。
――味方がいた!
そう期待した俺が馬鹿だった。
「昔話に出てくる桃の気分だよ」
花音も浮き輪で浮かびながらそんなことを言い始めた。
虎徹は知らんぷりで、顔だけ水面に出して浮かんでいた。
浮き輪は二つだけで交代で使うため、今は俺と虎徹は浸かっているのだ。
まったりとしながら、よくわからないやり取りをする花音と若葉。
逃げるタイミングを失った俺は、この二人の相手をしなければならない。
「流れるって言えば、時間が流れるのって早いよな……」
「まあ……」
「確かにそうだね……」
話の流れは変わったが、一気に重苦しいものとなってしまった。
三年生の夏という、高校最後の夏であり、受験を迎える時期という現実に引き戻したのだ。
もしかしたら二人は、今はそのことを忘れようとしていたのかもしれない。
――そういう意図での発言じゃないけども。
ただ、現実を思い出した二人は、寂しそうな目をしていた。
「来年も遊びたいね……」
「かのんちゃん……。そうだね……」
感傷的なムードになってしまい、俺は視線で虎徹に助けを求めた。
しかし、虎徹は我関せずという様子で、流れに身を任せるかのように浮かぶだけだ。
誰も頼れない。
この話を変えるために、俺は二人に話題を振る。
「でも夏祭りあるじゃん? 時間流れないと行けないよ?」
「……夏祭りっ!」
反応したのは花音だ。
去年、一昨年は花音と仲良くなる前だったため虎徹と若葉の三人で行ったが、今年は花音も一緒だ。
……なんなら、花音が誘ったため、双葉も一緒である。
今まで花音は夏祭りに行くことが少なく、中学時代に今は仲違いした黒川たちグループと行った以来らしい。
つまり高校に入ってからは行っていない。
それもあってか、花音は夏祭りを楽しみにしていたのだ。
それはもう、犬のように。
どちらかと言えば猫のような雰囲気のある花音が犬のように楽しみにしているのだ。
約束をした当初、そんな花音の様子が少しばかり面白かったのは記憶に新しい。
「花火見て、いちご飴とかき氷とフランクフルトと、あと色々と食べたい! 浴衣も着たいなぁ」
夏祭りと言えば花火だが、食べ歩きも醍醐味だ。
花音は他にも食べたいものを挙げていき、テンションを上げている。
……そうやってテンションを上げているものだから、不安定な浮き輪の上で、花音はバランスを崩した。
「危ないっ!」
俺が声を上げた時にはすでに遅い。花音が浮き輪から落下した。
若葉はそうテンションを上げながら太陽の下に繰り出した。
そんな若葉を見て虎徹は呆れた様子だ。
……テンションが上がるのはわかるが、俺も花音もそのノリにはついていけていない。
「日焼け止め、塗ったか?」
「塗ったよー。かのんちゃんと更衣室で塗ったから、背中までバッチリだよ!」
親指を立てながら若葉がそう言うと、花音は恥ずかしそうに顔を赤らめた。
そんな表情を見て、健全な男子高校生である俺は変な想像をしてしまった。
「……颯太くん、えっち」
「なっ……!」
取り繕おうとしたが、想像してしまったのは事実のため否定しきれない。
女の子の水着なんて、男子高校生にとっては刺激が強いのだから。
夏休みに入ってすぐ。
まだ七月下旬の頃に、俺たちはプールに来ていた。
前に綾瀬と来た遊園地に併設されている、大型の海水プールだ。
俺と虎徹は元々持っていた適当な水着を着ているが、花音と若葉は今日のためにわざわざ買ったらしい。
花音は白い水着で、上下共にフリルが付いている可愛い水着だ。
対して若葉はシンプルに黄色の水着だ。
二人とも上に白のパーカーを着ているが、周りの視線を集めている。
言うまでもなく花音はその容姿で、若葉は……まあ、少し開いたパーカーから見え隠れしているその胸だ。
「上まで閉めろ」
「だって苦しいんだもん」
虎徹は柄にもなく照れながら、周りの視線を避けるために若葉のパーカーを閉めた。
「虎徹のえっちー」
「……なんだ? 見せてる若葉は痴女か?」
「女子高生にそんなこと言っちゃダメなんだよ?」
……女子高生でなくてもダメだとは思うが。
花音は悔しそうな表情を浮かべて胸元に手を当てている。
そんな花音も、別に小さいというわけではないと思うのだが……。
「また変なこと考えたでしょ?」
「……断じて変なことではない」
今回に関しては『花音が思ってるほど小さくない』と思っただけで、下心があって見たわけではない。
断じてそういうわけではない。
だから俺はキッパリと否定したが、花音は「ふーん……」と意味ありげな目線で何か言いたそうだ。
なんとなく視線を逸らしてしまう。
言い返したいところではあったが、下手に突っつくとセクハラになりかねない。
俺は黙っていた。
「颯太、かのんちゃん、とりあえず行かない?」
いつの間にか虎徹と若葉のやり取りが終わっており、二人は訝しげな目で俺たちを見ていた。
「そ、そうだな」
「う、うん。行こっか」
何も悪いことはしていないが、気恥ずかしくなる。
俺たちは誤魔化すようにそう言った。
最初に俺たちは流れるプールで軽く体を動かす。
本気で泳ぎに来たわけではないが、いきなりハードなウォータースライダーにでも乗れば、午前中からどっと疲れが来るだろう。
まずはゆったりと、夏を満喫するようにして、流れるプールで漂っていた。
「そうめんって、こんな気持ちなのかなぁ……」
若葉は持ってきた浮き輪に浮かびながらそんなことを言う。
「……なんでそうめん?」
「何言ってるの颯太? 流れるものって言えばそうめんじゃん」
「そんなことは決まってないんだけど……」
流しそうめんなんてしたことない俺にとっては、そうめんが流れるものだという認識は薄かった。
「いやいや若葉ちゃん……」
そこで花音もツッコミを入れる。
――味方がいた!
そう期待した俺が馬鹿だった。
「昔話に出てくる桃の気分だよ」
花音も浮き輪で浮かびながらそんなことを言い始めた。
虎徹は知らんぷりで、顔だけ水面に出して浮かんでいた。
浮き輪は二つだけで交代で使うため、今は俺と虎徹は浸かっているのだ。
まったりとしながら、よくわからないやり取りをする花音と若葉。
逃げるタイミングを失った俺は、この二人の相手をしなければならない。
「流れるって言えば、時間が流れるのって早いよな……」
「まあ……」
「確かにそうだね……」
話の流れは変わったが、一気に重苦しいものとなってしまった。
三年生の夏という、高校最後の夏であり、受験を迎える時期という現実に引き戻したのだ。
もしかしたら二人は、今はそのことを忘れようとしていたのかもしれない。
――そういう意図での発言じゃないけども。
ただ、現実を思い出した二人は、寂しそうな目をしていた。
「来年も遊びたいね……」
「かのんちゃん……。そうだね……」
感傷的なムードになってしまい、俺は視線で虎徹に助けを求めた。
しかし、虎徹は我関せずという様子で、流れに身を任せるかのように浮かぶだけだ。
誰も頼れない。
この話を変えるために、俺は二人に話題を振る。
「でも夏祭りあるじゃん? 時間流れないと行けないよ?」
「……夏祭りっ!」
反応したのは花音だ。
去年、一昨年は花音と仲良くなる前だったため虎徹と若葉の三人で行ったが、今年は花音も一緒だ。
……なんなら、花音が誘ったため、双葉も一緒である。
今まで花音は夏祭りに行くことが少なく、中学時代に今は仲違いした黒川たちグループと行った以来らしい。
つまり高校に入ってからは行っていない。
それもあってか、花音は夏祭りを楽しみにしていたのだ。
それはもう、犬のように。
どちらかと言えば猫のような雰囲気のある花音が犬のように楽しみにしているのだ。
約束をした当初、そんな花音の様子が少しばかり面白かったのは記憶に新しい。
「花火見て、いちご飴とかき氷とフランクフルトと、あと色々と食べたい! 浴衣も着たいなぁ」
夏祭りと言えば花火だが、食べ歩きも醍醐味だ。
花音は他にも食べたいものを挙げていき、テンションを上げている。
……そうやってテンションを上げているものだから、不安定な浮き輪の上で、花音はバランスを崩した。
「危ないっ!」
俺が声を上げた時にはすでに遅い。花音が浮き輪から落下した。
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