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第二章 高校三年生編
第111話 藤川虎徹は。
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「……よう」
「おう、お疲れ」
俺はいつも学校に行く時に待ち合わせに使っているコンビニに行く。
すでに虎徹は待っており、ビニール袋を片手に下げていた。
「虎徹もお疲れ」
お互いにバイト終わりに待ち合わせをしていた。
バイトが終わってから一度家に戻り、あらかじめ用意してあった荷物を持って俺は家を出た。
そのため二十一時半と遅い時間だが、俺たちは虎徹の家に向かった。
「颯太、どんどん食べな!」
「あ、ありがとうございます」
藤川家の食卓に混ざり、俺は夕食を食べていた。
友達の親と話すのは、どうしても緊張してしまう。
何度も顔を合わせてはいるが、慣れる気配はない。
虎徹母はよく話しかけてくれるが、父親の方は寡黙で厳かな雰囲気をまとっており、話しづらいのだ。
その雰囲気は虎徹と似たところはあるが、大人相手ではどうも勝手が違う。
「あ、これ美味しいです?」
「お、嬉しいこと言ってくれるね。ほらほら、いっぱい食べな」
虎徹母は嬉しそうに笑っている。
それを見た父はムッとした表情で俺の方に視線を向けていた。
虎徹の両親は仲が良い。結婚してすぐに虎徹が生まれたため、もう二十年近くになるはずだが、ラブラブだと聞いている。
――まさか俺に嫉妬してる!?
ただ、美味しいのは本当で、つい口から洩れてしまった。
こじゃれたわけではなく、男子が好みそうな食卓で、テーブルの真ん中には唐揚げが大量に盛られている。
そして白米とサラダに味噌汁とシンプルかつ食欲をそそるメニューだ。
虎徹母は大雑把でガサツなところがある……と虎徹から聞いているが、こうやってご飯をご馳走になるたびに俺は、そんなことはないと思っていた。
「……それで、今日はどうかしたのか?」
虎徹父は食事の手を止めると突然口を開き、そう尋ねてきた。
呼ばれた側とはいえ、急に泊まることになったのは迷惑だっただろうか。
「すいません、急に来てしまって」
「い、いや、そんなことはない」
動揺したような態度の虎徹父に、俺は首を傾げた。
どうも迷惑という様子ではなさそうだ。
「父さん、言葉足らずなんだよ。……急に来たから何かあったのかって心配してるだけだ」
――そういうことか。
虎徹父は小さく頷いており、どうやら虎徹の言う通りらしい。
「まあ、どっちかって言うと俺が颯太に相談があって呼んだんだ」
虎徹がそう言うと、虎徹父は「そうか」と言い、止めていた手を動かし始めた。
……関心がないというよりも、息子を信頼しているということだろう。
その後も談笑は続く。
食事を終えると、俺は先にお風呂をいただいた。
「ゲームしようぜ」
「……お、おう」
俺が風呂をもらって交代に虎徹が風呂に入る。
そして部屋に戻ってくるなり、そんなことを言い始める。
――話はしないのか?
そう思ったが、急かすものでもない。俺は虎徹に応じ、コントローラーを手にする。
俺たちのゲームは静かに白熱する。
「それは卑怯だぞ」
「テクニックだ。卑怯もクソもない」
虎徹はシステム外のコンボ技を決め、俺の操作するキャラにダメージを蓄積させる。
外に飛ばされながらもなんとかフィールド復帰しようとしたが、その最中に強力な攻撃を加えられ、俺は会えなく場外へと吹き飛んだ。
虚しくも、『ゲームセット』というアナウンスが響く。
「負けた負けた」
俺はコントローラーを手放し、両手を挙げて負けた意思表示をする。
虎徹はゲームがうまいのだ。
俺も勝てはするが、本気になった虎徹に勝つのは至難の業だ。
コントローラーを手放したため、ちょうどいいタイミングだ。
「なあ虎徹。そろそろ良くないか?」
「……ああ、そうだな」
俺がそう言うと虎徹は観念したかのようにコントローラーを手放した。
そしてゲーム機本体を操作して電源を切り、テレビモニターをオフにする。
「とりあえずどこから話せばいいのか……」
「そうだな、話したいことを話してくれればいいけど、虎徹の気持ちはどうなんだ?」
……虎徹の気持ち。
それは当然若葉に対する気持ちだが、簡単に言葉にできるものではないのか俯いて黙ったままだ。
「虎徹はさ、前に『今の関係が好き。友達関係がいい』って言ってたよな? それは本当なのか?」
何度も聞いてきたことだが、俺は改めて問いただす。
今まで虎徹は、若葉と付き合うということを考えようとしていなかったことは知っている。
ただ、当の本人の若葉にはもちろん、俺にも言えないことがあってもおかしくはない。
少なくとも、何か思うところがなければ、今のような状態にはなっていないだろう。
「……それは話さないといけないな。ただ、先に聞かせてほしいんだが、若葉の方から相談とかはなかったのか?」
「なかったよ」
虎徹と若葉……二人のことを一番知っているのは俺だという自負はある。
もしかしたら花音には何か話しているのかもしれないと思ったが、告白現場を目撃してしまった際の反応を見るにそれもないと言える。
告白をすることを考えていたのなら、タイミングやシチュエーションなどを相談してもおかしくはない。
花火の最中に告白するにしても、事前に相談があれば俺たちが目の前で目撃することもなかっただろう。
しかし、今更ながら思い当たる節はあった。
何度か若葉の様子がいつもと違うことには気が付いていた。
特に直近で言えば、夏祭りで場所取りをする時にどこか様子がおかしく、俺に何かを言おうとしていた。もしかしたら俺に一言、相談でもしようとしてきたのかもしれない。
また、それ以外でも虎徹に対しての態度が度々おかしかったことは、今になって思い当たる。
そんなことがあっても、俺は気付けなかった。
ただ、もしお互いから相談をされていたら、俺は難しい立ち位置だっただろう。
そう考えると、虎徹にしても若葉にしても、俺にも花音にも何も言わなかったのは納得がいく。
俺たちに気を遣い、自分で解決しようとしていたのだから。
「……虎徹。若葉のこと、どう思ってるんだ?」
俺は改めて尋ねると、虎徹はため息を吐いた。
そして、「誤魔化しても仕方ないか」と言うと続けて言った。
「俺はさ……、若葉のことが好きなんだ」
「おう、お疲れ」
俺はいつも学校に行く時に待ち合わせに使っているコンビニに行く。
すでに虎徹は待っており、ビニール袋を片手に下げていた。
「虎徹もお疲れ」
お互いにバイト終わりに待ち合わせをしていた。
バイトが終わってから一度家に戻り、あらかじめ用意してあった荷物を持って俺は家を出た。
そのため二十一時半と遅い時間だが、俺たちは虎徹の家に向かった。
「颯太、どんどん食べな!」
「あ、ありがとうございます」
藤川家の食卓に混ざり、俺は夕食を食べていた。
友達の親と話すのは、どうしても緊張してしまう。
何度も顔を合わせてはいるが、慣れる気配はない。
虎徹母はよく話しかけてくれるが、父親の方は寡黙で厳かな雰囲気をまとっており、話しづらいのだ。
その雰囲気は虎徹と似たところはあるが、大人相手ではどうも勝手が違う。
「あ、これ美味しいです?」
「お、嬉しいこと言ってくれるね。ほらほら、いっぱい食べな」
虎徹母は嬉しそうに笑っている。
それを見た父はムッとした表情で俺の方に視線を向けていた。
虎徹の両親は仲が良い。結婚してすぐに虎徹が生まれたため、もう二十年近くになるはずだが、ラブラブだと聞いている。
――まさか俺に嫉妬してる!?
ただ、美味しいのは本当で、つい口から洩れてしまった。
こじゃれたわけではなく、男子が好みそうな食卓で、テーブルの真ん中には唐揚げが大量に盛られている。
そして白米とサラダに味噌汁とシンプルかつ食欲をそそるメニューだ。
虎徹母は大雑把でガサツなところがある……と虎徹から聞いているが、こうやってご飯をご馳走になるたびに俺は、そんなことはないと思っていた。
「……それで、今日はどうかしたのか?」
虎徹父は食事の手を止めると突然口を開き、そう尋ねてきた。
呼ばれた側とはいえ、急に泊まることになったのは迷惑だっただろうか。
「すいません、急に来てしまって」
「い、いや、そんなことはない」
動揺したような態度の虎徹父に、俺は首を傾げた。
どうも迷惑という様子ではなさそうだ。
「父さん、言葉足らずなんだよ。……急に来たから何かあったのかって心配してるだけだ」
――そういうことか。
虎徹父は小さく頷いており、どうやら虎徹の言う通りらしい。
「まあ、どっちかって言うと俺が颯太に相談があって呼んだんだ」
虎徹がそう言うと、虎徹父は「そうか」と言い、止めていた手を動かし始めた。
……関心がないというよりも、息子を信頼しているということだろう。
その後も談笑は続く。
食事を終えると、俺は先にお風呂をいただいた。
「ゲームしようぜ」
「……お、おう」
俺が風呂をもらって交代に虎徹が風呂に入る。
そして部屋に戻ってくるなり、そんなことを言い始める。
――話はしないのか?
そう思ったが、急かすものでもない。俺は虎徹に応じ、コントローラーを手にする。
俺たちのゲームは静かに白熱する。
「それは卑怯だぞ」
「テクニックだ。卑怯もクソもない」
虎徹はシステム外のコンボ技を決め、俺の操作するキャラにダメージを蓄積させる。
外に飛ばされながらもなんとかフィールド復帰しようとしたが、その最中に強力な攻撃を加えられ、俺は会えなく場外へと吹き飛んだ。
虚しくも、『ゲームセット』というアナウンスが響く。
「負けた負けた」
俺はコントローラーを手放し、両手を挙げて負けた意思表示をする。
虎徹はゲームがうまいのだ。
俺も勝てはするが、本気になった虎徹に勝つのは至難の業だ。
コントローラーを手放したため、ちょうどいいタイミングだ。
「なあ虎徹。そろそろ良くないか?」
「……ああ、そうだな」
俺がそう言うと虎徹は観念したかのようにコントローラーを手放した。
そしてゲーム機本体を操作して電源を切り、テレビモニターをオフにする。
「とりあえずどこから話せばいいのか……」
「そうだな、話したいことを話してくれればいいけど、虎徹の気持ちはどうなんだ?」
……虎徹の気持ち。
それは当然若葉に対する気持ちだが、簡単に言葉にできるものではないのか俯いて黙ったままだ。
「虎徹はさ、前に『今の関係が好き。友達関係がいい』って言ってたよな? それは本当なのか?」
何度も聞いてきたことだが、俺は改めて問いただす。
今まで虎徹は、若葉と付き合うということを考えようとしていなかったことは知っている。
ただ、当の本人の若葉にはもちろん、俺にも言えないことがあってもおかしくはない。
少なくとも、何か思うところがなければ、今のような状態にはなっていないだろう。
「……それは話さないといけないな。ただ、先に聞かせてほしいんだが、若葉の方から相談とかはなかったのか?」
「なかったよ」
虎徹と若葉……二人のことを一番知っているのは俺だという自負はある。
もしかしたら花音には何か話しているのかもしれないと思ったが、告白現場を目撃してしまった際の反応を見るにそれもないと言える。
告白をすることを考えていたのなら、タイミングやシチュエーションなどを相談してもおかしくはない。
花火の最中に告白するにしても、事前に相談があれば俺たちが目の前で目撃することもなかっただろう。
しかし、今更ながら思い当たる節はあった。
何度か若葉の様子がいつもと違うことには気が付いていた。
特に直近で言えば、夏祭りで場所取りをする時にどこか様子がおかしく、俺に何かを言おうとしていた。もしかしたら俺に一言、相談でもしようとしてきたのかもしれない。
また、それ以外でも虎徹に対しての態度が度々おかしかったことは、今になって思い当たる。
そんなことがあっても、俺は気付けなかった。
ただ、もしお互いから相談をされていたら、俺は難しい立ち位置だっただろう。
そう考えると、虎徹にしても若葉にしても、俺にも花音にも何も言わなかったのは納得がいく。
俺たちに気を遣い、自分で解決しようとしていたのだから。
「……虎徹。若葉のこと、どう思ってるんだ?」
俺は改めて尋ねると、虎徹はため息を吐いた。
そして、「誤魔化しても仕方ないか」と言うと続けて言った。
「俺はさ……、若葉のことが好きなんだ」
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