かのんちゃんはからかいたい!〜「勘違いしないでね?」と言う学校一の美少女がからかってくる〜

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第二章 高校三年生編

第112話 藤川虎徹は想っている

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「……それならなんで断ったんだ?」

「まあ待てって」

 虎徹は若葉のことが好き。
 それを聞いて、俺は少し焦ってしまった。

 ……何故断ったのかわからず、お互い好き同士ならなぜ今こうなっているのかわからなかったからだ。

「それ、若葉に言ったのか?」

「言ったよ。……それは聞こえてなかったのか?」

「ああ、聞こえなかったな」

「そうか……。俺は若葉に告白された後、『付き合えない』って伝えたんだ。そして、『俺も若葉のことが好きだ』とも」

 多分、最後の一言だ。
 花火の音にかき消されて最後だけ何も聞こえなかったが、虎徹が若葉に伝えたのはその言葉だったのだろう。

 虎徹が断った理由もわからないが、それなら若葉がショックを受けている理由もわからない。

 しかし、その後の言葉で理解した。

「あと一言、『付き合うつもりもない』とも伝えた」

「それは、『今は』ってことか?」

「いや、『これからずっと』だ」

 好き合っているはずなのに付き合えない。
 このことが若葉にはショックだったのだ。

「……なんで」

「理由は三つある。まず一つ目は、俺じゃあ若葉に見合わない」

「そんなこと――」

「まあ聞けって。……それで二つ目は、若葉にはちゃんとした恋愛をしてほしいってことだ。そして三つ目は、……若葉や颯太たちが思ってる以上に、俺は若葉のことが好きだからだ」

「……は?」

 ――そこまで好きだと言うのなら、何故?

 もちろん考えがあるのはわかっている。
 俺は一つ一つ確認するように、虎徹の話を聞いていた。

「見合わないってのは、正直言い訳だ。怖いんだよ。若葉が求めている関係と、俺の求めている関係が違うことが」

「関係って……付き合うってことじゃないのか?」

「そうだ。そうだけど、俺は若葉とそれ以上の関係になりたい。……率直に言うと、結婚したい」

「けっ……!?」

 もうすぐ俺たちも十八歳になる。
 まだ現実的ではないが、まったく現実とかけ離れている話でもない。

 ただ、確かに高校生の俺たちにとっては、考えにくい話にもなるのだ。

「付き合ってない今はまだ気持ちを抑えられる。俺は若葉に幸せになってほしいんだ。……でも俺は、若葉と付き合うなら、すぐにでもそれ以上の関係になりたい。シモの話になるが、求めてしまう自信がある」

 それを聞いて俺は黙った。
 俺にはわからないことだったから。

 純粋な欲求というよりも、虎徹の場合はまた違った意味を持つのだろう。

「俺がそんな気持ちなんだ、付き合えば普通の付き合いはできない。もちろん若葉が他のやつと付き合うことを想像したら、死にたくもなるよ。でも、それ以上に若葉のことを考えて……俺自身関係を無理に関係を変えたくないから、俺は若葉と付き合えない」

 想像以上に重すぎる。
 そんな気持ちを虎徹は抱えていたのだ。

「……今は待ってもらって、将来的に考えるってのはどうなんだ? 今は受け入れられなくても、もう少し大人になってからなら問題ないだろ?」

「ああ、それは考えた。……ただ、若葉を縛ることにもなる。まともに付き合えないのに、他に好きな人も作れないままなんだぞ?」

 大人になってから……と言えば簡単だが、少なくとも数年間、長ければ十年近く待つことになる。
 十代後半から二十代前半という貴重な時間を、ただ待ち続けなければいけない。
 気持ちが変わる……なんて考えたくもないが、ない話ではなかった。
 いつになるのかわからない将来的な約束は若葉の枷となり、虎徹の言うように縛るものとなってしまう。

 徐々にになっていてもおかしくないのだ。

「俺はずっと考えてたんだよ。……もう覚えてないけど、十年以上好きだったんだから」

「……そんなにか」

「ああ。気付いたら好きだった」

 ……正直、羨ましいとさえ思ってしまう。

 誰かを一途に長年想い続けるなんて難しいことだ。
 恋愛をしていない俺でもそれは知っている。
 ただ、そんな気持ちを抱くことができるのは……そこまで先々のことを考えてしまうのは、早くに結婚した両親の影響があるのかもしれない。

「なあ、若葉に一回話してみるのはダメなのか?」

「ダメだな。多分若葉なら待とうとしてくれる。それは枷になるってことだ」

「……まあ、確かに」

 少なくとも今の若葉の気持ちは『虎徹が好き』なのだ。
 何年だろうが、何十年だろうが待つと言いそうだ。
 それが井上若葉という人間だ。

 ただ、それなら話は進まない。
 それでも俺は上手く虎徹に行動させることができないでいた。

 納得はできないが、ここは一度話を置いておこう。
 そして疑問に思ったことを口にする。

「てか、それなら好きって伝えなかった方がスムーズだったんじゃないのか?」

「それはそうだが、嫌いなんて嘘はつけないし……舞い上がったんだよ、好きって言われて」

 虎徹はそう恥ずかしそうに言っている。
 感情の起伏が薄い虎徹の、珍しく変わった表情だ。

 元々の性格ともなれば、変わるのは難しい。
 しかし、そんな虎徹でさえも、若葉のこととなれば変わるのだ。

「俺さ、告白されないようにしたつもりなんだよ」

「……と言うと?」

「若葉の好みって、どっちかって言うと爽やかな感じなんだよな。恋愛とは違うけど、カッコいいって言う有名人とか、そういうタイプが多いし」

 現実の恋愛とは多少違うと思うが、確かにタイプの傾向は似てくるだろう。
 それを考えると、今の虎徹は爽やかという感じではない。

「じゃあ、金髪なのってそれが理由?」

「大きな理由はな。普通に興味とか、親の影響とか、カッコつけたいとか、そういう理由もあるが」

 金髪にしたのは高校からというのは知っていた。
 実際に中学の頃の写真を見せてもらったこともある。
 若葉からは『高校デビュー』と聞いていたため特に気にしたことはなかったが、虎徹なりの理由があったようだ。

「俺は俺で若葉のことを必死に考えてるんだ。……まあ、本人の意思とは違うのはわかってる。俺が考えていることが自己満足だってことも」

「……それなら、一度話すべきじゃないのか? 虎徹の気持ちを伝えて、その上で若葉の想いを聞くことは、俺は必要だと思う」

「……わかってる。でも、若葉なら受け入れようとする。そこに話が戻ってくるんだよ」

 虎徹の気持ちは伝えるべきだと考えている。
 しかし、そうなれば虎徹の意志とは反してしまう。
 かと言って伝えなければ、若葉の想いはただ宙に浮いたままとなるのだ。

 話が進まない。

 俺は虎徹も若葉も大切だ。
 だからこそ、言わなければならない。
 そう思ってしまった。
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