おーばー!2〜弱小女子野球部の監督に元最強選手の男子高校生が就任してハーレムになった件〜【明鈴高校女子野球部一年生後編】

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力と意表 選抜vs光陵

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 あまりにも呆気ない一打に、選抜メンバーチームの理解が追いつかない。軽く打つだけのような琥珀のスイングから放たれたホームランは、選抜メンバーチームの気持ちを削ぐような一打となった。
 光陵が一点を追加してこれで五対二。三点差へとリードを縮めたことで、まだまだわからない試合となっている。
 そして巧が何よりも心配しているのは晴の状態だ。振り遅れたような、一見レフトフライにも思える軽い一打によって、ピッチャーである晴が自分自身に力がないと感じることか、もしくは自分が不調なのだと錯覚することを巧危惧していた。
 それもそのはず、緊迫した場面での一度も痛手ではあるとはいえ、力で押し合って負けた結果のため実力は均衡していたように思える。しかし、軽く打たれたことによって、圧倒的な実力差を見せつけられた気持ちに陥ってしまうだろう。
 それでも巧から見ると、晴の球は走っているように見える良い球だ。
 ただ、試合は待ってくれない。五番に座る恭子が打席へと入る。

 そして初球。一発を浴びた直後を狙い打つように、恭子は外角へのストレートをセンター前へと弾き返した。
 嫌な流れに乗っている。それを止めるべく、巧はヒットを打たれた隙を見てマウンドに声をかけに行った。

「良い球来てますよ」

 そんな言葉をかけるが、晴はやはり落ち込んでいるようで、自虐気味に返答した。

「投げてるつもりだけど打たれちゃったからねぇ……。全然ダメだ」

 苦笑いをしながら晴は溜息をついて言う。しかし巧は晴を立ち直らせる意味もありながら、本音を吐き出した。

「ダメなら今の森本さんもホームランか長打を打ってますよ。琥珀は流し方向でも強い打球が打てるだけです。……良い球来てますよ」

 巧は同じ言葉を力強くもう一度言った。
 琥珀は光陵の二年生たちに引けを取らないどころか、総合的に見ればそれ以上の選手かもしれない。しかし打撃面で言えば……特に長打力は流や恭子の方が上だ。対応力やヒット率が高い上にホームランを打てる琥珀は光陵で一番怖いバッターではあるが、一発や長打面では流や恭子の方が怖い。
 晴の球がダメと言うのなら、二人共少なくとも長打を打っているはずだった。

「……乗せるの上手いねぇ」

 晴はそう呟いたが、巧は返答せずに守備位置に戻る。タイムを取っているわけでもないため、長々と話せないからだ。
 ただその返答から、晴の気持ちが入り直した気がした。

 そして続いて守備から途中出場の美鳥の打席だが、光陵はここで動く。代打に一年生の君塚雫が送られる。そして出塁した恭子に代わり、二年生の馬場美鶴が代走に送られた。

 代打の雫は珍しい神主打法……通常バットを構える際には自分側に倒すが、神主打法の場合はややベース側に倒して構える。
 リラックスした構えから爆発的に力強いスイングができるため、長打を打つ選手が使う傾向が強い。ただ、扱いにくい打法のため、限られている打法だった。

 代走の美鶴はショートの控えで、奏がレギュラーの座を掴んでいるため出番は少ない。しかし、去年までは二番ショートという奏と同じ立場にあり、走力が持ち味の春海と一、二番コンビを組んでいた。
 巧も監督となってから、去年の光陵の試合を見ることはあったが、持ち味は違えどレギュラーで出ている奏に劣るところもあれば勝るところもあると言った選手だ。
 そのため、今回の夏の県大会でもスタメンで出る試合も二試合ほどあったが、神代先生の起用方針としては奏の方がマッチしていたため、レギュラーから外されたというところだろう。

 代打の雫が打席に入り、バットを構える。神主打法は威圧感というのか、バッターの余裕を感じる打法ら他に置いてないだろう。ホームラン、ヒットと続いてピッチャーの晴にプレッシャーをかけるためということもあるだろう。そして一発が出れば一点差となり、長打も期待できてチャンスを広げられるため、雫を代打として送ったのだろう。
 初球、まずは様子見として、晴は力を抜いたカーブを放つ。

「ボール」

 緩く外に外れた球をバッターの雫は見送った。
 この場面、代打で送られた雫が狙うのは、恐らく最初のストライク……ファーストストライクだろう。まだバッターの特徴を掴めていない選抜メンバーチームだが、雫からすると何球も見た球だ。積極的に振っていき、プレッシャーをかけることを目的としているだろう。
 そのため、晴と榛名さんは初球は慎重に入った。
 ただ、カウントは進んでいくため、いつまでも慎重に行けるわけではない。

 二球目、今度は内角への力強い球だ。この球に雫は反応する。
 しかし……、

「ストライク!」

 雫のバットは空を切った。
 内角低めへのフォーク。雫が積極的に振っていきたいという裏をかいて、嘲笑うかのような球だった。
 バットを避け、躱すような配球だ。

 そして三球目、今度も同じところ、内角低めへの球だ。この球にも雫は反応する。そして今度こそ雫のバットは晴の球を捉えた。
 ただ、打球は三塁側のフェンスに直撃するファウルとなった。

「ファウルボール」

 タイミングが早かった、というのもあるだろうが、晴が力で押したと言うような打球が飛球した。
 ストレートはやはり走っている。意気消沈していたところを恭子に打たれたが、晴のストレートは決して力負けしていない。

 躱す配球かと思えば力で押す投球も織り交ぜる。晴の持っている球種と、ピッチングスタイルを活かした配球だ。

 続く四球目、今度は高めの球だ。
 やや外れるだろうと思われるその球に、雫は冷静に見送った。

「ストライク! バッターアウト!」

 見送った雫は判定が下った瞬間、驚きのあまり後ろを振り向いた。しかし、榛名さんのミットの中には、余裕を持ってストライクゾーンを通過した球が収まっていた。

 四球目はフォークだ。高めで変化しにくい上に打たれれば痛打となる球。ただ、追い込まれているからこそボールカウントを増やして優位に進みたい雫は、長打を避けたいこの場面でのフォークを予想せず、ボール球に見える球が来たため見送ったのだろう。
 実際、フォークを高めに投げることは少ないが、ボール球を見送りたいという雫の心理の裏をかき、榛名さんは勝負に出た。
 そして結果としてその策は上手くいった。

 代打としては痛い見逃しの三振に終わった雫は意気消沈しながらベンチへと戻る。流石に代打でこの結果は最悪とも言える。そのためベンチに戻った雫は神代先生から説教を受けていた。

 雫を打ち取ったが、まだ怖いバッターが続く。
 七番に座る魁が打席に入った。
 魁は打力としては三番……場合によっては四番を打ってもおかしくない選手だが、選手層が厚い光陵のためキャッチャーという守備の負担も考えて下位打線を打つことが多い。
 鋭い読みと選球眼の良さ、一発は少ないが長打や出塁を狙える選手だ。

 その魁への初球。晴が投じたファーストストライクとなる外角低めのストレートを、魁はいきなり捉えてきた。

「ファウルボール!」

 打球はレフト線への強い打球。フェアゾーンに入っていれば長打ともなり得る打球だったが、僅かに振り遅れる。
 外角低めのストレートを初球に持ってくることは多いが、榛名さんの配球では変化球や内角を攻めることが多い。だからこそあえての外角だろうが、魁はそれを読んでいたような迷いのないスイングだった。

 どちらにせよ、初球をストライクとできたことは大きい。その余裕からか、二球目、三球目といずれもストレートを厳しいコースを攻め続けた。
 しかし、いずれも……、

「ボール!」

 狙いすぎたが故に僅かに外れた。
 カウントがツーボールワンストライクとなったが、まだもう一球ボール球を投げられる。
 続けて今度も厳しい内角のコースへとストレートを持ってくる。魁はそれすらも見送った。

「ボール」

 三球連続で外れ、ピッチャーが追い込まれたスリーボールとなる。
 振ってもおかしくないほどの際どい球だが、それでも魁は見送った。初球でストライクカウントを奪ったものの、フォアボールの危機に追い込まれたのは晴の方だった。

 ただ、またしても晴は際どい球を投げ続ける。
 今度は内角低めへの球だ。その球はホームベース手前で一気に落ち、バットを避けようとした。
 しかし、魁のバットはその球を捉えた。
 打球はライト方向へと上がった大きな打球。その打球は途中で大きくファウルゾーンへと向かっていった。

「ファウルボール!」

 落ちるフォークでありながらも、その球の下部を捉えたフライの打球。魁はしっかりと対応してきている。
 際どい球を投げようとも、魁は見切るかしっかりと捉えてくる。配球が通用しない。
 そんな魁を相手に、榛名さんはどのようなリードをするのか。

 五球目。晴の指先から放たれたのは力強い球。その球は先ほどまでのように際どいコースを狙ったものではなく、コースなどを無視した力強い……しかし甘いコースへの球だった。
 その球を魁は打ち損ねた。
 フラフラっと上がった打球は巧の後方へと飛球する。巧はその打球に、余裕を持って落下地点に入ると、打球をグラブに収めた。

「アウト!」

 力で押し切り、バッターの魁が振り遅れた打球。
 意表を突く配球ながら、コントロールを無視してバッターを力でねじ伏せた。
 際どいコースを意識していた魁に甘いコースの球を投げることで、読みが深い魁の意表を突いた。

 もしその球で打ち取れるとわかっていたとしても、怖くてできない配球だ。
 そんな配球を榛名さんはやってのけ、そして実際にバッターを打ち取った。
 それができたのは紛れもなく、晴に力があったからこそだった。
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