やがて、知る。

茜色の空で

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やがて、知る。

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 「ねぇ、もしさ、明日世界が終わるとして,何かやり残したことってある?」
いつかの思い出が甦る。君にこの質問をされた時,俺はまったく実感が持てずにたった一言,
「……分からない。」
そう返しただけだった。こんな時,「君と一緒に居たい」などと答えたら,気の利いた返しだったのかな……?

 アサガオが咲いている夏真っ盛りの季節,君は未知の病気にかかって入院した。主な症状として,吐血・呼吸困難感・感染症にかかりやすい、などであり、非常に厄介な病だ。俺は黙って病室のニュースをつけると、ちょうど君のかかった病気のことがやっていた。今分かっているものは一番最初の発症者が確認された国だけだ。それは、アフリカにある国で、汚染された水を飲むことで感染する、という説が強かった。でも、本当はそうではなかったんだ……。

 そして、君は亡くなった。入院初日の深夜、無菌室で体調が急変した、とのことだ。オーバーテーブルに置いてある日記に目を通す。そこには「助けて」「死にたくない」……君の心の声がなぐり書きされていた。俺は君に何もしてあげられなかった……君の亡骸を抱きしめながら、ずっと泣き叫んだ。

 そこから数週間が経ち、少しずつこの病気の内容がわかってきた。まず、感染源は寄生虫の侵食によるものであること,非常に感染力が強いこと,致死率も20%近くと高いこと,そして、とても進行が早いこと……。アフリカの国はもう壊滅的だという情報も入ってきた。

 感染に恐れ、家に閉じこもっていた俺だが、そろそろ食料も底をつきそうだったため、買いに出かけた。かつては混雑していた商店街も今はほとんどの店が閉まっていて,閑静なシャッター街と化していた。10分に1本あったはずの公共交通機関もダイヤ数が減少していた。全てが感染症対策だろう。タイムリミットのように、時限爆弾のように、世界の終わりに近づく空気が流れているようで、寂しさを感じる。「明日、世界が終わるとしたら,やり残したこと」……今思えば、たくさんあるよ。でも、できるのならば、君のその明るく眩しい笑顔をもう一度見たい……。それが、今の俺の一番やり残したことだ。

 今さら気づいたこと、それは君が当たり前の存在ではないってこと。この世の全ては当たり前なんかではなくて,ほんの些細なことでも奇跡なんだって、今さらながら気づいた。このことを心に留めて,これからの1日1日を過ごしていこう。
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