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第5話 愛のバカンス

水着選びは慎重に その一

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 何も事情を知らない人から見たら、ハーレム状態の直哉を羨ましがるだろう。そんなハーレム状態で周りから注目されつつ、水着売り場へと移動していく。

 水着売り場には女性客が多く、男の直哉が足を踏み入れにくかった。だが、優子は容赦なく直哉の手を引っ張り、水着売り場へ直哉を引きずり込んだのだ。

「直哉君はどんな水着がお好みなのかな?セクシー系?それともエレガントなタイプ?はっ、まさかのスク水とか?」
「亜子さん、一番最後は悪意を感じるんだけど、気のせいじゃないよね?それに水着ってどれも同じじゃ・・・・・・」

「ちっちっちっ。直哉君は何も分かってないなぁ。水着は男性にアピール出来る絶好のチャンスなのだよ。それにね、好きな人に変な水着なんて見せられないでしょ。ね?優子っ」

「ふぇっ!な、何で私に聞くのよ。でもそうね、幼なじみの直哉に選んで・・・・・・貰おうかな」
「あっ・・・・・・私も・・・・・・直哉君の好きな水着を着たいので・・・・・・選んで下さいね」
「ん~それじゃ私もついでに~。これは直哉君のファッションセンスと趣味が分かるね。ふっふっふ」

 困り顔を見せる直哉を尻目に、優子達は水着を選びに店の奥へと入っていったのだ。

 ここまで来たら覚悟を決めるしかないと思い、直哉は勇気を振り絞り未開の地へ足を踏み入れたのだった。

「僕の趣味・・・・・・って、う~ん、優子なら・・・・・・そうだなぁ」

恥じらいながら店内の水着を見渡すと、地味な物から体のラインがハッキリ見える物そして、こんな物で本当に泳げるのかといった水着が並んでいた。

 直哉は一番選ぶのが簡単そうな優子から選ぶ事にし、優子の体に合いそうな水着を探し始めたのだ。

「優子、これなんかどう?白の水着で腰のスカートが、可愛くて似合いそうだと思うよ」
「え、これ?そっか、直哉はこういうのが好きなのね。分かったわ、直哉の為にこの水着を買うわ。でも、あくまでも幼なじみとしてよ。幼なじみの意見が良かったからなのっ」

 幼なじみという言葉で照れ隠ししながら水着を取ると、嬉しそうな顔をしてサイズを確認する為試着室へ入る優子。

 この水着を見たら直哉はどんな顔をするのだろうと、ドキドキしながら優子は私服から水着へと着替えだした。

「ど、どう?似合って・・・・・・るかな?変じゃ・・・・・・ないよね?」
「大丈夫、よく似合っているよ。普段より可愛く見えるかな」
「普段よりってどういう事よ~。もう、直哉の・・・・・・バカ」

褒められて嬉しかったが、『普段より』という言葉が納得出来ず顔を膨らませて直哉に怒ったのだ。

だが、直哉が初めて選んでくれた水着を大切に眺めると、胸の鼓動が早くなり顔が少し赤くなっていた。

「優子、顔が赤いけど大丈夫?」
「な、何でもないわよっ。せっかく幼なじみの直哉が選んでくれたんだから、しょうがないからこれにするわ」

言葉とは裏腹に顔のニヤけが止まらず、私服に着替え終わると優子は足軽にレジへとむかったのだ。
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