『「まりあの方舟」はカルト宗教団体?極悪女子レスラー「万石デンジャラスまりあ」のクリスマスの奇跡』

M‐赤井翼

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「駆け込み寺」

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「駆け込み寺」

 大阪ニコニコプロレスが門真に移転し、ひと月くらい経った頃、研修生の夏子と陽菜がまりあに「新しい商売考えたんやけど、サンドバッグ使わせてもらってもいいですか?」と尋ねてきた。
 「ストレス解消!本物のサンドバッグ「蹴り放題」&「殴り放題」!30分千円!」というサービスだった。
「まあ、好きにしたらええよ。ただ、「ぼったくり」や「インチキ」はすんなよ。あと、素人さん相手やねんから絶対にケガはさせるなよ!」
とだけ言われ、新サービスは始まった。

 直からは「そんなあほな商売成功するわけあれへんやろ。」と馬鹿にされていたが、多くの女性客が集まった。女子中学生から初老の女性まで多くの「ストレス」を抱えたものが道場を訪れ、爽快な汗を流しすっきりしていった。
 ストレスを解消した客には「有料」のドリンクを提供し、夏子と陽菜がホストを務めた。雑談の中で、「ここってどんな人がやってんの?」と尋ねられ、必然的に「まりあ」の過去が語られた。
 絶頂の女子トップレスラーからの転落、恋人の「おかま化」、無収入状態での出産、地獄のようなリハビリと「不幸のジェットコースター」のようなまりあの人生に興味を持つ者が多く現れ、まりあの話を聞くために「BARまりあ」を訪れる女性客も増えた。

 まりあはそんなストレスを抱えた女性にやさしかった。自らの経験を正直に話し、世話になったおかまバーのママの名言「死ぬこと以外はかすり傷」という言葉の意味を説いた。
「どんなにつらい事があっても、悩むことがあっても絶対に「自暴自棄」になったらあかんで。諦めたらその時点で前には進まれへんようになってしまうからな。
 この店でも道場でも何かあったらいつでもおいで。私以上の経験をしてる人もおるからいろいろと聞いたらええよ。壮絶な人生を送ってきた女の人も居るし、法的な事も含めて何でも相談にのってくれるビリケンさんみたいな「よろず相談屋さん」もこの街にはおるから、内容によってはそっちを紹介させてもらうで。」
と幼い子供を残し、左翼活動家に夫を殺された直の昔話や、かつて誤診で「余命半年」を宣告され、いつ来るかも知れぬ「死」を意識して生活を送らざるを得なかったトップレスラーの稀世とその横に寄り添い続けた「三朗」の話をした。
 また、金銭や法が絡むややこしい案件については、直が絶対的に信頼している「ぼったくり」はしない「よろず相談」を受け付けている「金城司法書士事務所」の司法書士の森とコンサルタントで補助者の副島を紹介した結果、真剣に悩みの解決策を相談しに道場やニコニコ商店街に来るものが増えた。

 いつしか悩みから解放された女性たちからは、「まりあさんはまさに「マリア様」みたいな存在ですね!」、「ここに来ると悩みを忘れてスッキリして帰ることができます!」とSNSでの書き込み、そこに「#令和のマリア様万石まりあ」、「#まりあの方舟」、「#門真のマリア様」のハッシュタグがつけられるようになり、いつしか「プロレス」や「サンドバッグでのストレス解消」は関係無しに、駆け込み寺の如く相談を持ち込むものが増えて来た。

 市民サロンに来る子供たちもそんなまりあに相談をするようになった。その多くは、「両親の不仲」に端を発する「家庭内DV」や離婚による「男親世帯」での「育児放棄ネグレクト」や「女親世帯」での「貧困問題」が多くあげられた。
 児童相談所や地元の民生委員に相談を持ち込んだが、子供を含めた家庭問題に「決定打」は無く、子供たちの居場所として道場を解放し、商店街のメンバーとも話し合い「こども食堂」を当番制で開くことにした。

 「居酒屋ニコニコ」の開業前に親が夕飯時に不在で明らかに栄養的に不足している子供や、貧困原因からそもそも適切な食事が与えられていない子供たちに食事を提供するようになった。
 道場での興業の際に募金を呼び掛けたり、BARと居酒屋や商店街内のメンバーで寄付を募ったりしたが実質的に「持ち出し」は避けられず運営は厳しかった。
 金城司法書士事務所の森と副島が市役所と掛け合い、高齢者指定配食事業者登録を「門真市駅東商店街飲食店部」として受け、「居酒屋ニコニコ」と三朗が営む「向日葵寿司」と三朗の幼馴染がやっている「お好み焼きガンちゃん」が「単身独居」または一定条件を満たす「老老夫婦」に対する週3日の夕食配食の補助を受けられるようになった。
 配食サービスで得られる利益は微々たるもので「宅配」を行うと赤字になるような状況だったが、配達をこども食堂の利用者に任せることで差し引きして、子供たちの夕食提供の費用を算出する事ができるようになった。

 こども食堂利用の子供たちには、高齢者宅に夕食を配達するだけでなく、配達先の高齢者との会話の中で異常があれば直たちに知らせる「見守り」活動も行うように指導した。
 丸一日、誰とも話すことなく過ごしてきた単身独居の高齢者からは子供たちと配達時に交わす会話で心に活気が湧くと好評だった。
 配達先でもらったお菓子や果物は必ずこども食堂に持ち帰り、皆で分けることをルール化し、幼稚園児から中学生利用者は必ずペアで配達を行うルーチンが仕上がった。

 その取り組みを知った、地元テレビ局が取材に訪れたのが配食サービスの起点となっていた道場だったので「まりあ」が主体として子供や高齢者に対する福祉活動をやっているものと思い込み、ネット上に溢れる「#令和のマリア様」、「#まりあの方舟」のタグから、福祉事業は「宗教法人まりあの方舟」が行っていると誤って放送してしまった。
 その時は、「どうせ一回きりの放送やろ。」とその放送事故が大きなトラブルに繋がるとは誰も予想していなかったので、「訂正」も「修正」も求めなかった。しかし、放送局のホームページの過去ログとしてその誤った記事は残り続けた事が災いを持ち込むこととなる。

 その頃から「心の救い」を求めるものが道場を訪れる事が増えてきたが、まりあ達はそれまでと態度を変えることなく優しく丁寧な対応を続けた。
 こども食堂と高齢者配食の新規事業は副島たちのおかげで、軌道に乗り始めしっかりとした夕食が取れるようになった子供や、元気な笑顔の子供たちと共に夕食が運ばれてきてわずかではあるが会話を楽しむ単身独居の高齢者からも好評を得た。
 それまで閉じこもりがちだった老人たちも道場の市民サロンを訪れ、将棋や碁を楽しんだり、日によって行われる「カラオケ」や夕食を自宅でなく道場で他の利用者と共に食べ、会話を楽しむようになっていた。

 スタートから大きなトラブルなく活動を広げて来た大阪ニコニコプロレスの道場に、年末にまりあを絶対的な社会的窮地に追い込み、大阪ニコニコプロレスの存続を危うくさせる大きな災いをもたらせる4組5人が相談に現れるのはもう少し先になる。


「おまけ」








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