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「カルテ3 万朶野さくらの場合」
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「カルテ3 万朶野さくらの場合」
新たに「居酒屋ニコニコ」と「BARまりあ」に加わったメンバーの今は別の名で働いている「ガイル」と「結衣」は人気者だった。SNSを見て来店した女性客からも興味を持たれ、ここに居つくようになった経緯なども良く聞かれた。
客の中には、かつてのテレビ放送の影響で「#まりあの方舟」、「#令和のマリア様万石まりあ」のタグを使い、ガイルや結衣の話を書き込みを続けたため、相変わらず「宗教団体」と勘違いしてやってくる客が多くいた。
次に「駆け込んできた」のは、父親が国家公務員の27歳の美女「万朶野さくら」だった。さくらは、職場の女先輩に連れられて行った初めてのホストでのトラブルが悩みの原因だった。
あまり表で飲食しない桜は、初めて行ったホストでの飲み放題5000円の「初回チャージ」料金を正規の料金と思い込んでしまっていた。最初に知り合った若い人気タレント風の年下のホストから「さくらさん、今月あと1日平均5000円のノルマが見えていません(汗)。このままだとクビになってしまいます(泣)!どうか助けてください(。-人-。) !」と「月末メッセージ」を繰り返しもらい、仏心を出し店を訪れた。
元々、酒に強くないことを初回来店時に告白していたさくらは、「カモ」にされた。甘いフルーツ系カクテルに通常量の数倍のウォッカを入れられ、店でつい眠り込んでしまった。
「ツケ」の制度も理解していなかった為、支払いをすることなく月末まで3度若いホストを指名しての訪問となった。月末最終日に、若いホストから渡された請求書には「200万円」を超える請求明細が添付されていた。
驚いたさくらが「私そんなに飲んでへんよ。それにこのシャンパンタワーって何なん?そもそも、私、ブランデーとか飲まれへんし!」と若手ホストに憤慨すると、ホストに代わって「いかつい男」が出て来たという。
「はいはい、お姉ちゃん、楽しんだ分はしっかりと払わんと「飲み逃げ」で訴えるで!あんたが払われへんねやったら、親の所に請求に行かなあかんな!
「あんたの娘は飲み逃げの確信犯で常習犯の詐欺師です!」ってな!払われへんねやったらその素敵なプロポーションの「身体」で払ってもらわなあかん事になるで!まあ、俺らはやさしいから「AV」か「風俗」かは選ばせたるからな!ゲラゲラゲラ!」
と笑いながら脅されたという。
支払期限の10日まで2日を残した8日に、SNSを頼りに大阪ニコニコプロレスの道場のドアを叩いたさくらをまりあ達は優しく迎え入れた。
父親にも正直に話して相談したさくらは、「27歳にもなって何やってるんだ。私のキャリアに傷をつけつつもりか!」と叱責され、どうしようもない場合には「絶縁」を宣言されたという。
直は毎度の如く、金城司法書士事務所の2人を呼んだ。
「うーん、飲み屋の飲み代って難しいんですよね。ちなみになんていう店ですか?あとホストの名前も教えてください。」
副島がノートを出して、さくらにヒアリングに入った。店の名前とホストの源氏名を伝えると、夏子が鼻の穴を思いきり膨らませて叫んだ!
「なんやてー!「御蔵良郎李」やとー!あいつ、まだそんなことやっとんかい。新人ホストどころかあの店のナンバーワンホストやぞ!いやナンバーワン詐欺師や!」
陽菜の話によると、夏子も御蔵良に「君が一番だよ。」、「どうか僕を助けて欲しい。」、「僕が店を持ったら結婚しよう。」と50万以上ぼったくられた経験があるという。さらに御蔵良は妻子持ちだったという「裏切り」の上乗せで貴船神社に「藁人形」を持ち「丑の刻参り」に行った程の相手だという。
更に店の経営主体は反社の企業舎弟である「曰く付き」の店であることも分かった。
「まあ、思いっきり「ギルティー」やな…。後は、どう「成敗」したるかやけど、どないする?「ややこしいやつ」が出てくるんやったら、副島はんところで正当な手続きをするより、「裏の手」で対応したんのもええやろ。
「違法な請求」には「違法な報復」ってな!夏子、陽菜、お前らなんか考えは持ってるんやろ!さくらちゃんの借金帳消しにして、奴らが悪さできへんようにかましたったらどうや?」
と直がいつになく厳しく言った。
「前のガイルちゃんの時の「例」もあるから、さくらちゃんに危険が及べへんようなやり方で頼むで。何とかなりそうか?」
まりあが夏子と陽菜の顔を覗き込む。フリーライターの出口はふたりの返事に注目した。
「よっしゃ、じゃあ、シナリオはこうやで…」と夏子と陽菜の解説で作戦会議が始まった。借金を親に打ち明けたところ、さくらは親から大きな怒りを買い、急遽、強制的に「海外留学」させられることになった。父親に軟禁されている状況なので「ネットバンク」での振り込み扱いとしたいので、口座を教えて欲しいとメッセージを送る事にした。
桜のネットバンクには使用制限がかかっており、個人口座への送金は1日50万円までの限度枠がある為、法人口座でないと2日間で200万円超の振り込みはできない旨を書き込んだ。
「じゃあ、御蔵良に送って!」と夏子が指示すると、すぐに「法人口座」の情報が送られてきた。事前に副島が調べていた「反社系」の法人口座はタックスヘブン特典を活かしているであろう香港の銀行になっていた。
「じゃあ、さくらちゃん、次は「ウイルス」を送り付けるから、ちょっとスマホ貸してくれる?」
と陽菜がスマホを預かると「怪しいアプリ」のアドレスを貼り付けた。
「私のネットバンクの口座IDとパスワードを暗号化して送ります。今、同じ部屋にいる父にばれたくないので私から送金する事はできません。時間制限30分以内のワンタイムパスワードを送りますので、すぐにアプリを開いてネットバンクにログインしてください。」とメッセージを送った。
5分後、夏子のPCにメールが届いた。陽菜が中古のブランクスマホを取り出すとパソコンとUSB接続をした。PCのモニターにおびただしいデータ量がスクロールしていき、スマホの画面に「〇〇パーセント」の表示と徐々に増えていく円グラフが現れた。
「100%」を表示すると同時に、陽菜が「さくらちゃん、スマホの電源を落として!」と言った。さくらは何が起こっているのかわからないままに指示に従った。
陽菜が手にしたスマホにさくらの携帯番号が表示され発信状態である事が表示された。もちろん、さくらのスマホは電源を落としているので繋がる事は無い。
続いてメッセージアプリで「送ってもらったIDとパスワードでログインできません。至急、連絡ください。」と画面に文字が打ち込まれていく様子が見られた。陽菜はパソコンから「銀行の親子口座契約の口座のようなので、親口座で受け入れ処置をとった上で、受け取り口座画面から振り込み受け入れ申請して下さい。」返信した。その様子を見ていたさくらと稀世は首を捻り、直も不思議な顔をして夏子と陽菜に尋ねた。
「このスマホは何なんや?」
夏子と陽菜は顔を見合わせ笑顔を浮かべた。夏子が手短にからくりを説明した。さくらのスマホから御蔵良へ送ったID、パスワードの暗号化アプリというのは、いわゆるクローンスマホを作る為の「スパイアプリ」だという事だった。
「まあ、なっちゃんが被害に会った時にも御蔵良へはクローン携帯アプリは使ってきたからもうちょっと様子見よな。そのうち、上司か本部に連絡入れよるやろうからな!」
と陽菜がスマホ音声をパソコンのスピーカーに繋いだ。
「すみません。うちの売掛なんですけど、ネットバンクの「ID」と「パスワード」入れたんですけど開かないんですよ。本部のマスターパソコンとリンクしますのでそちらでもチェック入れてもらえますか?」
と御蔵良の泣きの電話が道場2階の事務所に響いた。
御蔵良がおそらく自分のものであろうパソコンを立ち上げた事が、スマホを通じて夏子と陽菜には分かった。
「ラッキー!やっぱりスマホのネットバンクとパソコンとリンクしてるわ。口座情報もこいつのID、パスワードも筒抜けやで!これでこいつの店の口座情報はこっちのもんやで。」
「さらにラッキーが続いたで!御蔵良の口座は親会社の「子口座」扱いや!こいつ、結構「ずぼら」やな!IDもパスワードも毎回入力やなく、グーグルのクラウドに保存してるわ!」
「うひょーっ!IPアドレスもいただきや!おっ、本部の口座番号と通帳ページも入ってきたで!すげぇ残高入ってるなぁ。」
「ぎゃおっ!このバカ、メーリングリストとアドレス帳を開きよったぞ!全部、いただきってねもんや。あっ、毎日の売り上げ報告もあるし、クラウドのアクセスコードも分かった!なっちゃん、御蔵良のアドレスでパソコンもアクセスできるな?」
「あたり前田のクラッカーや!本部もワンタイムパスワードじゃなくグーグルに記憶させとるで!こりゃ「グーグル様」に感謝せなあかんな!店の帳簿もゲットやで!このまま、本店のホストコンピュータにアクセスせえ!そっちのデータも丸ごともらうで!全データ貰ったら、こっちでパスワード変更をかけて、向こうが使われへんように「ロック」かけたるわ!」
笑顔で専門用語を並べて騒ぎまくる夏子と陽菜がやっている事を副島がわかりやすくまりあ達に解説してくれたおかげで、夏子と陽菜がハッキングをかけている事がわかった。
「はいはい、御蔵良の店も本部もパスワードを英数記号を混ぜた8桁に変えたったから、まず解除はできへんやろ。今のうちに、さくらちゃんの売掛記録を削除して、全帳簿を「国税庁」と「警視庁」に間違いメールを装って送ったるわ。
私はやさしいから「御蔵良」のメールアドレスで「今月、「あほ」みたいに利益が上がっていますので、「脱税」の指南の程、よろしくお願いします。また、「あほ」な客を眠らせるための「睡眠薬」の在庫が切れそうなので追加も送ってください。「あほ」な税務署や警察にばれへんように頑張りまーす!」ってな!」
夏子はゲラゲラ笑いながら、国税庁と警視庁宛てのメールの送信ボタンを押すと、今度は悪乗りした陽菜が「ジャック」した御蔵良のパソコンを叩いた。
大手マスコミ宛てに「御蔵良」の名で「内部告発文」のタイトルで「大阪のぼったくりホストで働いている「御蔵良朗李」といいます。本部の極悪非道のやり方についていけなくなりました。か弱き女性たちを守るために、うちのグループで行われている悪事を内部告発させていただきます。詳細は添付ファイルにしていますので社会的制裁を加えてください。取材は「有料」にてお受けさせていただきますので、お電話ください。よろしくお願いします。」とメッセージを打つと、本部の代表電話、幹部の携帯番号を入力し送信した。
「はー、凄い手際ですね!それにしても「ハッキング」ってそんなに簡単にできちゃうんですね。」
と出口が感心して呟いた。夏子と陽菜の解説によると、パソコンのシステムに侵入するのはそれなりに大変なのだが、スマホと連動している場合には簡単に侵入できるスパイアプリが「普通」に流通しているという。
夏子が使ったのは「浮気調査」用のスパイアプリでダウンロードすると同時にクローンスマホが作れ、相手の操作は「音声通話」から「キー操作」まで筒抜けになるという。
また、ID、パスワード管理をクラウドに任せることは非常に「便利」だが「危険」である事も伝えられた。
「まあ、乗っ取った後はやりたい放題や。奴らの本部の口座から金を抜かれへんように、「間違えたパスワード」を「12回」送り付けて口座も24時間はロックしたったから御蔵良のスマホからゲットしたラインとメールの履歴で被害者名簿も作って「大阪府警」にも送ったったらいくらか弁済もしてもらえるやろ。ギャハハハ!」
「さすがは「門真の正義のホワイトハッカー!「アイスマン」もとい「門真のマックスバトラーなっちゃん」やな!「私怨」が含まれてるけど、さくらちゃんの債務は消せて、悪いホストを潰したった事で泣く女がひとりでも減ってくれたらええよな。カラカラカラ。」
と笑う夏子と陽菜にまりあと直は「まあ、今回は「ええ事」したという事で良しとするか!」とふたりを褒めた。
「おまけ」
新たに「居酒屋ニコニコ」と「BARまりあ」に加わったメンバーの今は別の名で働いている「ガイル」と「結衣」は人気者だった。SNSを見て来店した女性客からも興味を持たれ、ここに居つくようになった経緯なども良く聞かれた。
客の中には、かつてのテレビ放送の影響で「#まりあの方舟」、「#令和のマリア様万石まりあ」のタグを使い、ガイルや結衣の話を書き込みを続けたため、相変わらず「宗教団体」と勘違いしてやってくる客が多くいた。
次に「駆け込んできた」のは、父親が国家公務員の27歳の美女「万朶野さくら」だった。さくらは、職場の女先輩に連れられて行った初めてのホストでのトラブルが悩みの原因だった。
あまり表で飲食しない桜は、初めて行ったホストでの飲み放題5000円の「初回チャージ」料金を正規の料金と思い込んでしまっていた。最初に知り合った若い人気タレント風の年下のホストから「さくらさん、今月あと1日平均5000円のノルマが見えていません(汗)。このままだとクビになってしまいます(泣)!どうか助けてください(。-人-。) !」と「月末メッセージ」を繰り返しもらい、仏心を出し店を訪れた。
元々、酒に強くないことを初回来店時に告白していたさくらは、「カモ」にされた。甘いフルーツ系カクテルに通常量の数倍のウォッカを入れられ、店でつい眠り込んでしまった。
「ツケ」の制度も理解していなかった為、支払いをすることなく月末まで3度若いホストを指名しての訪問となった。月末最終日に、若いホストから渡された請求書には「200万円」を超える請求明細が添付されていた。
驚いたさくらが「私そんなに飲んでへんよ。それにこのシャンパンタワーって何なん?そもそも、私、ブランデーとか飲まれへんし!」と若手ホストに憤慨すると、ホストに代わって「いかつい男」が出て来たという。
「はいはい、お姉ちゃん、楽しんだ分はしっかりと払わんと「飲み逃げ」で訴えるで!あんたが払われへんねやったら、親の所に請求に行かなあかんな!
「あんたの娘は飲み逃げの確信犯で常習犯の詐欺師です!」ってな!払われへんねやったらその素敵なプロポーションの「身体」で払ってもらわなあかん事になるで!まあ、俺らはやさしいから「AV」か「風俗」かは選ばせたるからな!ゲラゲラゲラ!」
と笑いながら脅されたという。
支払期限の10日まで2日を残した8日に、SNSを頼りに大阪ニコニコプロレスの道場のドアを叩いたさくらをまりあ達は優しく迎え入れた。
父親にも正直に話して相談したさくらは、「27歳にもなって何やってるんだ。私のキャリアに傷をつけつつもりか!」と叱責され、どうしようもない場合には「絶縁」を宣言されたという。
直は毎度の如く、金城司法書士事務所の2人を呼んだ。
「うーん、飲み屋の飲み代って難しいんですよね。ちなみになんていう店ですか?あとホストの名前も教えてください。」
副島がノートを出して、さくらにヒアリングに入った。店の名前とホストの源氏名を伝えると、夏子が鼻の穴を思いきり膨らませて叫んだ!
「なんやてー!「御蔵良郎李」やとー!あいつ、まだそんなことやっとんかい。新人ホストどころかあの店のナンバーワンホストやぞ!いやナンバーワン詐欺師や!」
陽菜の話によると、夏子も御蔵良に「君が一番だよ。」、「どうか僕を助けて欲しい。」、「僕が店を持ったら結婚しよう。」と50万以上ぼったくられた経験があるという。さらに御蔵良は妻子持ちだったという「裏切り」の上乗せで貴船神社に「藁人形」を持ち「丑の刻参り」に行った程の相手だという。
更に店の経営主体は反社の企業舎弟である「曰く付き」の店であることも分かった。
「まあ、思いっきり「ギルティー」やな…。後は、どう「成敗」したるかやけど、どないする?「ややこしいやつ」が出てくるんやったら、副島はんところで正当な手続きをするより、「裏の手」で対応したんのもええやろ。
「違法な請求」には「違法な報復」ってな!夏子、陽菜、お前らなんか考えは持ってるんやろ!さくらちゃんの借金帳消しにして、奴らが悪さできへんようにかましたったらどうや?」
と直がいつになく厳しく言った。
「前のガイルちゃんの時の「例」もあるから、さくらちゃんに危険が及べへんようなやり方で頼むで。何とかなりそうか?」
まりあが夏子と陽菜の顔を覗き込む。フリーライターの出口はふたりの返事に注目した。
「よっしゃ、じゃあ、シナリオはこうやで…」と夏子と陽菜の解説で作戦会議が始まった。借金を親に打ち明けたところ、さくらは親から大きな怒りを買い、急遽、強制的に「海外留学」させられることになった。父親に軟禁されている状況なので「ネットバンク」での振り込み扱いとしたいので、口座を教えて欲しいとメッセージを送る事にした。
桜のネットバンクには使用制限がかかっており、個人口座への送金は1日50万円までの限度枠がある為、法人口座でないと2日間で200万円超の振り込みはできない旨を書き込んだ。
「じゃあ、御蔵良に送って!」と夏子が指示すると、すぐに「法人口座」の情報が送られてきた。事前に副島が調べていた「反社系」の法人口座はタックスヘブン特典を活かしているであろう香港の銀行になっていた。
「じゃあ、さくらちゃん、次は「ウイルス」を送り付けるから、ちょっとスマホ貸してくれる?」
と陽菜がスマホを預かると「怪しいアプリ」のアドレスを貼り付けた。
「私のネットバンクの口座IDとパスワードを暗号化して送ります。今、同じ部屋にいる父にばれたくないので私から送金する事はできません。時間制限30分以内のワンタイムパスワードを送りますので、すぐにアプリを開いてネットバンクにログインしてください。」とメッセージを送った。
5分後、夏子のPCにメールが届いた。陽菜が中古のブランクスマホを取り出すとパソコンとUSB接続をした。PCのモニターにおびただしいデータ量がスクロールしていき、スマホの画面に「〇〇パーセント」の表示と徐々に増えていく円グラフが現れた。
「100%」を表示すると同時に、陽菜が「さくらちゃん、スマホの電源を落として!」と言った。さくらは何が起こっているのかわからないままに指示に従った。
陽菜が手にしたスマホにさくらの携帯番号が表示され発信状態である事が表示された。もちろん、さくらのスマホは電源を落としているので繋がる事は無い。
続いてメッセージアプリで「送ってもらったIDとパスワードでログインできません。至急、連絡ください。」と画面に文字が打ち込まれていく様子が見られた。陽菜はパソコンから「銀行の親子口座契約の口座のようなので、親口座で受け入れ処置をとった上で、受け取り口座画面から振り込み受け入れ申請して下さい。」返信した。その様子を見ていたさくらと稀世は首を捻り、直も不思議な顔をして夏子と陽菜に尋ねた。
「このスマホは何なんや?」
夏子と陽菜は顔を見合わせ笑顔を浮かべた。夏子が手短にからくりを説明した。さくらのスマホから御蔵良へ送ったID、パスワードの暗号化アプリというのは、いわゆるクローンスマホを作る為の「スパイアプリ」だという事だった。
「まあ、なっちゃんが被害に会った時にも御蔵良へはクローン携帯アプリは使ってきたからもうちょっと様子見よな。そのうち、上司か本部に連絡入れよるやろうからな!」
と陽菜がスマホ音声をパソコンのスピーカーに繋いだ。
「すみません。うちの売掛なんですけど、ネットバンクの「ID」と「パスワード」入れたんですけど開かないんですよ。本部のマスターパソコンとリンクしますのでそちらでもチェック入れてもらえますか?」
と御蔵良の泣きの電話が道場2階の事務所に響いた。
御蔵良がおそらく自分のものであろうパソコンを立ち上げた事が、スマホを通じて夏子と陽菜には分かった。
「ラッキー!やっぱりスマホのネットバンクとパソコンとリンクしてるわ。口座情報もこいつのID、パスワードも筒抜けやで!これでこいつの店の口座情報はこっちのもんやで。」
「さらにラッキーが続いたで!御蔵良の口座は親会社の「子口座」扱いや!こいつ、結構「ずぼら」やな!IDもパスワードも毎回入力やなく、グーグルのクラウドに保存してるわ!」
「うひょーっ!IPアドレスもいただきや!おっ、本部の口座番号と通帳ページも入ってきたで!すげぇ残高入ってるなぁ。」
「ぎゃおっ!このバカ、メーリングリストとアドレス帳を開きよったぞ!全部、いただきってねもんや。あっ、毎日の売り上げ報告もあるし、クラウドのアクセスコードも分かった!なっちゃん、御蔵良のアドレスでパソコンもアクセスできるな?」
「あたり前田のクラッカーや!本部もワンタイムパスワードじゃなくグーグルに記憶させとるで!こりゃ「グーグル様」に感謝せなあかんな!店の帳簿もゲットやで!このまま、本店のホストコンピュータにアクセスせえ!そっちのデータも丸ごともらうで!全データ貰ったら、こっちでパスワード変更をかけて、向こうが使われへんように「ロック」かけたるわ!」
笑顔で専門用語を並べて騒ぎまくる夏子と陽菜がやっている事を副島がわかりやすくまりあ達に解説してくれたおかげで、夏子と陽菜がハッキングをかけている事がわかった。
「はいはい、御蔵良の店も本部もパスワードを英数記号を混ぜた8桁に変えたったから、まず解除はできへんやろ。今のうちに、さくらちゃんの売掛記録を削除して、全帳簿を「国税庁」と「警視庁」に間違いメールを装って送ったるわ。
私はやさしいから「御蔵良」のメールアドレスで「今月、「あほ」みたいに利益が上がっていますので、「脱税」の指南の程、よろしくお願いします。また、「あほ」な客を眠らせるための「睡眠薬」の在庫が切れそうなので追加も送ってください。「あほ」な税務署や警察にばれへんように頑張りまーす!」ってな!」
夏子はゲラゲラ笑いながら、国税庁と警視庁宛てのメールの送信ボタンを押すと、今度は悪乗りした陽菜が「ジャック」した御蔵良のパソコンを叩いた。
大手マスコミ宛てに「御蔵良」の名で「内部告発文」のタイトルで「大阪のぼったくりホストで働いている「御蔵良朗李」といいます。本部の極悪非道のやり方についていけなくなりました。か弱き女性たちを守るために、うちのグループで行われている悪事を内部告発させていただきます。詳細は添付ファイルにしていますので社会的制裁を加えてください。取材は「有料」にてお受けさせていただきますので、お電話ください。よろしくお願いします。」とメッセージを打つと、本部の代表電話、幹部の携帯番号を入力し送信した。
「はー、凄い手際ですね!それにしても「ハッキング」ってそんなに簡単にできちゃうんですね。」
と出口が感心して呟いた。夏子と陽菜の解説によると、パソコンのシステムに侵入するのはそれなりに大変なのだが、スマホと連動している場合には簡単に侵入できるスパイアプリが「普通」に流通しているという。
夏子が使ったのは「浮気調査」用のスパイアプリでダウンロードすると同時にクローンスマホが作れ、相手の操作は「音声通話」から「キー操作」まで筒抜けになるという。
また、ID、パスワード管理をクラウドに任せることは非常に「便利」だが「危険」である事も伝えられた。
「まあ、乗っ取った後はやりたい放題や。奴らの本部の口座から金を抜かれへんように、「間違えたパスワード」を「12回」送り付けて口座も24時間はロックしたったから御蔵良のスマホからゲットしたラインとメールの履歴で被害者名簿も作って「大阪府警」にも送ったったらいくらか弁済もしてもらえるやろ。ギャハハハ!」
「さすがは「門真の正義のホワイトハッカー!「アイスマン」もとい「門真のマックスバトラーなっちゃん」やな!「私怨」が含まれてるけど、さくらちゃんの債務は消せて、悪いホストを潰したった事で泣く女がひとりでも減ってくれたらええよな。カラカラカラ。」
と笑う夏子と陽菜にまりあと直は「まあ、今回は「ええ事」したという事で良しとするか!」とふたりを褒めた。
「おまけ」
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さいとう みさき
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