『「まりあの方舟」はカルト宗教団体?極悪女子レスラー「万石デンジャラスまりあ」のクリスマスの奇跡』

M‐赤井翼

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「逃亡報道」

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「逃亡報道」

 12月20日朝、大阪ニコニコプロレスのハイエースには目立たないように団体名のステッカーが大きく貼られたサイドパネルには黒いごみ袋を養生テープを張って、道場の前を通らず直の家の裏に停めると、土日で学校が休みの武雄と凛を含む8人が一斉に乗り込んだ。
 車を大阪中央線に向けて走らせて、門真市駅から約10分の東大阪の古い一戸建てに到着した。
 昔ながらの生垣で囲われた昭和中期の木造住宅は解体予定で、正月明けに工事に入る予定という事で2週間の自由使用を副島が不動産オーナーに許可を取っているとの事だった。25分後に第2陣、50分後に残りのメンバーも全員東大阪の新たな根城に移動が済んだ。

 ガス、電気、水道は止まっているので煮炊きと暖を取る為に昔ながらの「七輪」コンロとカセットボンベ式のガスコンロを副島が用意してくれていた。
 電気は出口がメディアクリエイトの太田に相談し、取材旅行時に使うガソリン発電機を持ち込んでくれているので灯りは確保できるようになっている。水は18リットルのポリタンクで隣りにある児童公園の水栓から運ぶ段取りで、とりあえず水洗トイレは使えるようになっているが、当然、ウォシュレットや温熱便座は無い。
「まあ、「住めば都」って言葉もあるし、とりあえずここはあのアホみたいにうるさいデモ隊が居れへんだけましやろ。布団はレンタル屋に頼んでるから今晩には届くと思うで。
 起死回生の昨日の「居酒屋ニコニコ」での拉致未遂の画像があの放水で使われへんようになってしもたから、今日、明日はここで大人しくしてるんやで。
 昨日のメディアプロダクトさんの半グレ誘拐実行犯のワゴンの尾行で敵のアジトとワゴン車が最終的に戻った先のGPS信号で黒幕の繋がりも見えてきてる。出口君もメディアプロダクトの太田さんと金城事務所の森先生、副島はんも裏取りで動いてる。もう少しの辛抱や!」
と直がメンバー全員に現在の状況と「これから・・・・」を話した。

 電気がない事で久しぶりにテレビから解放された環境で午前中をのんびりと過ごす事ができた。昼前には目立った買い物はできなかったので無人販売所で売られていた東大阪産の「馬鈴薯」を夏子と陽菜が七輪で焼き、じゃがバターで皆の腹を満たした。
 夕飯に向けては、「春秋だいこん」を煮込み味噌を和えて食べる「ふろふき大根」を仕込んでいる。
「直さんが過ごした戦時中ってこんな生活やったんですか?」と夏子が直に問うと、日本酒の入った湯呑をくいっと空け、夏子にじゃがバターのアルミホイルを投げつけた。
「あほぬかせ!わしは昭和25年生まれのバリバリの戦後っ子じゃわい!1950年生まれは四捨五入したらお前らと同じ2000年生まれやないか!」
 直なりの場を和ませるジョークだったが、「はいそうですね!」と忖度しておけばよいものを真っ向から夏子は反論した。
「その四捨五入はおかしいでしょ!直さんと凛ちゃんが同じ年って言うんやったら、桁によっては直さんはマンモスや恐竜と同級生って事になりますよ!ぎゃはははは!」

 その瞬間、直の合気術の秘伝技「空気投げ」が腹を抱えて大笑いしている夏子に決まり、空中で360度回転し、そのままの体勢で着地すると皆から「おーっ!」という歓声と大きな拍手が湧いた。更に、直が夏子に技をかけようとした瞬間、玄関から声がした。
「すんませーん!向日葵寿司の三朗でーす!お寿司の差し入れに来ましたー!」
と声がした。
「きゃーっ!サブちゃん素敵ーっ!お昼、じゃがバターだけやったから凄い助かるわー。もう、好き好き、大好きー!」
 稀世が玄関に向かってかけ出すと、「私も運ぶの手伝いまーす!」と夏子も走って直の前から逃げていった。

 稀世と三朗と夏子が寿司の大桶と吸い物の入ったポットを持って部屋に入ると、皆が頭を寄せ合ってガイルの周りに集まっている。
「どないしたん?また変な書き込みでもあったん?」稀世は動物的な直感で嫌な予感を感じ取った。部屋でひと固まりになっている皆の顔もこわばっている。直が三朗に厳しい口調で尋ねた。
「おい、三朗!おまえ、ここに来るまでに誰かにつけられてへんか?わしらがここに居るのはお前と金城事務所の森先生と副島藩だけのはずやねんけどな!正直に話せや!」

 なぜそんなにきつい口調で問い詰められるのかわからない三朗はしどろもどろになって
「い、いや…、だ、大丈夫やとお、思いますけど…。く、車で追跡を受けへんように、進入禁止ポールのある住宅地の裏道を、で、出前用のスーパーカブで来てますから…。」
応えるのが精いっぱいだった。
「じゃあ、これはどういう事やねん!」
とガイルの手からスマホを直はもぎ取るとその画面を三朗に突きつけた。ガイルのワンセグテレビチューナーの入ったアンドロイドスマホには、いつも道場の食堂で見ていた昼のワイドショーが画面に映っていた。表では突然の雨が降り始めた。
 ユーチューブや動画サイトでないのはすぐに理解できた。時刻表示と雨が降り始めレポーターが傘をさすシーンでそれが生中継である事は皆理解した。
 問題はその画面に映り込んだ、大阪ニコニコプロレスのハイエースだった。明らかにこの物件がカメラに映し出され、全国に報道されているという事だった。

 「お前、なんかえらいポカしたんとちゃうやろな!」と更に厳しく三朗を問い詰める直の前に稀世は両腕を大きく開いて三朗と直の間に割って入った。
「直さんやめてや!なんでサブちゃんを責めるんよ。この寒さと崩れそうな天気の中、バンじゃなくわざわざバイクで来てくれたんやで。サブちゃんが言ったように、車の追跡を気にして狭いところを抜けて来たって言うてるやん。
 私らが仲間であるサブちゃんを信じてあげられへんでどうするんよ。みんなが疑心暗鬼になったら、そのうち「スパイ・・・」探しになってしまうで!私はそんなの嫌やわ!」
 涙を浮かべて三朗を庇う稀世を見て、直は冷静になって、三朗に頭を下げた。
「せやな…。昨晩の放火からちょっといらだってしもてたわ。三朗、すまんかった。お前がスパイな訳はあれへんし、バイクで来たって事はそういう事やわな…。」
 三朗は、直の態度の恐縮してしまい、逆に直を気遣いつつ、ここに来る前の事を思い出した。
「直さん、気にしないでください。みんなピリピリしてる時ですから…。あっ、ちなみに、今日、誰か「道場」に行ってますか?朝一番に、道場の勝手口から2人ほど人が入っていくのが見えたんですけど?」

 「もしかしたら消防の人かな?明るくなったらもう一度「見分」があるかもしれへんって言うてたから…。表のシャッターの鍵は私が渡してるからかまへんねん。」とまりあが言った。(ん?今、サブちゃんは「勝手口」って言うたよな。消防の人やったら鍵持ってるんやからわざわざ裏の勝手口に回らんでええんとちゃうんかいな?)と稀世は思ったが、夏子が間髪を入れず「今の道場に取られるもんなんかあれへんやん。「火事場泥棒」や「空き巣」やったら「ざまあみろ」やでな!ケラケラケラ。」と笑った。
 緊張した室内の空気はいくらか和らいだが、稀世の気持ちは晴れなかった。すると窓の外の様子を確認しっていた陽菜が皆の輪に戻り
「なんでテレビ局がここを突き止めたんかは分からへんけど、ここも安住の地じゃなくなったって事やろ。幸い、テレビ局だけでデモ隊は来てないみたいやから、いざという時に備えて、せっかく三朗兄さんがお寿司を差し入れてくれたんやから先にご飯は済ましてしまっとこうや。
 奴らもうちのハイエースのナンバーは押さえてるやろうから、そのうち騒ぎ出しよるでなぁ…。」
と皆に語りかけると、スマホのスピーカーから女性レポーターの声が室内に響いた。
「皆さん、昨晩、門真市駅東商店街にある「まりあの方舟」の道場に自ら火を放ち、逃亡した「教祖まりあ」の所有する車がここ、東大阪の古民家の庭に停まっています。信者はここに拉致監禁されているのでしょうか?私たちが掴んでいる情報では、「まりあの方舟」の信者のひとりから、昨晩、強制的に連れ出され、この場に監禁されているとの電話が警察に入っています。
 現在、大阪府警は放火と信者の拉致、監禁の容疑で「教祖まりあ」こと「万石まりあ」に対する逮捕状を請求しています。我々はこの場で「教祖まりあ」の逮捕の瞬間を待ちたいと思います。ではスタジオにマイクをお返しします!」



「おまけ」
今日は「抱き枕」イラストでーす(笑)!









稀世ちゃんは「ショートバージョン」も!


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