『「愛した」、「尽くした」、でも「報われなかった」孤独な「ヤングケアラー」と不思議な「交換留学生」の1週間の物語』

M‐赤井翼

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「クリスマスパーティー」

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「クリスマスパーティー」

12月24日クリスマス。昨日の朝から麻衣の容態は驚くほど安定し、昨日の朝からの笑顔と小さな体の動きは継続していた。那依が昨晩、麻衣のベッドの枕元に置いた百均で買った大きな赤い靴下に入れた今年の「関ロメンディーせき・ろめんでぃー」のライブDVDを取り出すと麻衣のベッドの背を起こし正面に設置した22インチのテレビで再生した。
オープニングの音楽がかかり、ロメンディーのヒット曲が流れだすと麻衣の目が薄っすらと開き、画面を目で追っているような気がした。あえて(そんなことはあり得ない)と「否定する気持ち」を押さえ、麻衣の耳元で
「お母さん、メリークリスマス。大したことしてあげられないけど、お母さんのために買ったロメンディーのライブDVDやで。たっぷり2時間あるから楽しんでな。」
と囁くと麻衣の視線が那依に向き口が数秒動いたような気がしたがすぐに視線は正面のテレビに戻った。
クリスは那依に「お母さん、喜んでくれてるじゃない!」とだけ話すとどこに行くとも告げずに勝手に出かけていった。

那依はクリスと過ごす最後の晩御飯を考えていると、スマホのラインに着信があった。送信元は「葵」だった。「今から4人で行くから、出かけんといてや!」とだけ入ってきた。
一瞬、バスケ部の他のメンバーに送るべきメッセージを間違えて那依に送ってきたのではと思ったが、「4人で」という部分が心に引っかかった。(「4人」?さくらの家でクリスマス会とかなら「3人」よね…。まあ、送信間違いは固いわね。送信ミスを知らずにいたら葵が他の人に迷惑かけちゃうかもしれないから、ここは返信は入れておいてあげるべきよね…。)と思った.
那依は「那依のスマホです。送信ミスであれば、本来の送り先に送り直してあげてください。」と送り返すと速攻で「那依宛てでOK!今から門工女バス最後のクリスマス会するよ!」と返事が返ってきて頭が混乱した。
(何このメッセージ。もしかして「嫌がらせ」なの?)と穿うがった見方をした自分をすぐに恥じた。

笑顔の女バス3年生メンバー4人がミニスカサンタの恰好をして笑顔で現れたのだった。その後ろにはクリスの姿も見える。(えっ、本当にみんな来たの?クリスも一緒ってどういうこと?)と思ったが、全員が笑顔で玄関で
「メリークリスマス那依!アンド18歳の誕生日おめでとう!そして「今までごめんね!また、仲良くして欲しい!」みんな、今までの事、反省して今日は仲直りにきました。」
と声を揃えて言ったあと、丁寧に頭を10秒間下げた。
「えっ、ちょ、ちょっと頭を上げてよ…。わ、私、今、頭がパニック起こしてるんやけど…。み、みんな、こんな私の事を許してくれるの…?」

 思いもよらぬ展開にドモリながら那依が返事をすると、葵が一歩前に出て言った。
「那依、今まで本当にごめん…。私、何も知らんかった…。一昨日、お母さんから那依の事を聞いてね、真っ先に謝らないといけないと思ったんだけど、一人で謝る勇気が無かったんよ…。私、那依に凄く酷いことしてしまってたから、許してもらわれへんかと思って…。くすん。
 クリスが、「じゃあみんなで今の気持ちを伝えたら?それならパーティーするのがいいんじゃない?きっと「神様」も「クリスマスの聖霊」も私たち・・・の気持ちを受け入れてくれるはずよ。」って言ってくれて…。ぐずぐず…。
 那依、この半年の事は全部謝るから前みたいに…、いや、前以上に仲良くして欲しいの。うわーん!」

 思い切り泣き出した葵は那依の手を取り、その場で膝から崩れ落ちた。那依も膝立ちになり葵を抱きしめた。
「これって、「夢」じゃないよね…。本当に、昔みたいに仲良くなれるの…。許すも何もないよ。私こそ、みんなに正直に言えなかったことを謝らないと…。
 まあ、玄関じゃゆっくり話せないからとにかく上がって。」
と葵の手を取って立ち上がるとスリッパを並べた。
 女バスの4人は半年ぶりに那依の家のリビングに上がり、10分の間、互いに謝り続けた。5人はカラッとした表情に変わった。

 キッチンに那依、クリスに続いて4人が入ると、葵がスポンジケーキのベースとイチゴとホイップクリームの元と牛乳、さくらがクッキーの生地と餃子の皮とクラムチャウダーのレトルトパックと冷凍あさり、美咲はいろんな刺身の入ったタッパーと野菜と数種類のドレッシングボトル、美羽はアルミホイルにくるまれたローストビーフとたくさんの手羽先と調味料を取り出した。
「那依は生クリームをホイップしてな!ケーキのデコレーションは一緒にやるで!」
 すっかり半年前に戻った笑顔で葵が声をかけてくれたので、那依も笑顔で返した。
「任せてんか!イチゴがたくさんあるからクリームとチョコチップで「イチゴのサンタクロース」も作るわな!」

 さくらはクッキーの生地をテーブルに敷いたクッキングシートの上に置くと、うどん用の綿棒で伸ばしながら言った。
「クリス、あなたがわざわざドイツから持ってきたっていうクッキーの型で抜いていってくれる?」
クリスは待ってましたとばかりにエプロンのポケットからドイツの老舗の菓子道具ブランドのスタッダー社のクリストキントレスマルクのクッキー型を取り出すとクッキーを抜いていった。丸く抜かれたクッキーの上に刻印された「女神」のような「絵」を見て横で見ていた美咲と美羽が「これって「スターバックスのマーク?」と尋ねた。
「ううん、似てるけど、これは南ドイツのクリスマスの聖霊「クリストキント」よ。ドイツでは、クリスマスにこのクッキーを食べながら「願い事」をするのよ!」
と答えた。

「わー、私は「花道」の「素敵なお嫁さん」をお願いしようかな。この間仲良くなったNPOにお願いしてるんだけど、「女の子の秋田犬」が入ってきたら「里親」になるんだよー!」
「私は弟の呉海のダンス選手権の活躍かな!呉海も「芸能界」でないところで頑張る気になってるから、姉としても全力で応援せなあかんからな!」
と好き勝手に騒いでいる美咲と美羽を見て、(あぁ、「花道」君も「呉海」君も強い味方がついてて安心ね。)と生クリームをホイップしながら那依は微笑んだ。

 さくらは、コーヒーカップにクラムチャウダーを注ぐと中に冷凍のアサリを入れ、2枚重ねた餃子の皮で蓋をしながら言った。
「お相撲の二所の関部屋では「場所」の初日には「アサリとカツ」を食べるんやて。「あっさりと勝つ」ってゲンがいいねんて!カツは美羽が用意してくれてるからセットで食べて、受験が残ってる葵と那依、まあ受験するんかどうか知らんけど美羽には食べて欲しいな。もちろん「弟君」のダンス大会にかけてもええねんけどな。
 パイ皮は手間がかかるから、蓋は横着して餃子の皮にさせてもらうわな。余った皮は「ミニピザ」にするわな。昨日、家で試作したんやけど、どっちもうちのお父さんが「美味しい」って言うておかわりしてくれたレシピやから期待しててや!」
とすっかりさくらの父親も回復したことを知り那依は安心した。

 美咲は大皿にカルパッチョを作り、数種類のドレッシングをミックスしている。美羽はローストビーフをカットすると、手羽先に下味をつけ小さな「たまあられ」と「黒ゴマ」をころもとしてつけ、サラダ油を刷毛はけで塗るとフライパンで焼き始めた。
 2人の料理はクリスマスパーティーに似合った華やかなものだった。

 90分後、料理が揃い、みんなで「メリークリスマス&ハッピーバースデー!」の掛け声とともにパーティーが始まった。那依は食べられるかどうかわからなかったが麻衣にも配膳した。
 麻衣は、にっこり笑って少しずつ口にして笑顔を那依にむけた。

 久しぶりにフルメンバー揃ったパーティーは大いに盛り上がった。その輪の中にクリスも入り、食事の後は半年使われることのなかった駐車場のバスケットゴールで「3オン3」をしたり、商品&罰ゲーム付きの「1オン1」のリーグ戦をして楽しんだ。「1オン1」の決勝は那依とクリスの一騎打ちで那依が制したが、その順位は「商品」、「罰ゲーム」の内容が書かれた紙が入った封筒を取る順番になっていただけで、一番良い商品は「6位」の美羽がゲットし、「1位」と「2位」だったないとクリスは「罰ゲーム」の「パンスト被り綱引き」で皆に「変顔」をスマホで取られることになったが6人全員が笑っていた。

 3時には那依がイチゴとホイップクリームで作った8つのサンタクロースがのったケーキとクリストキントの刻印が刻まれたクッキーを各自お願い事をしながら食べた。ケーキをカットするときに葵が那依に尋ねた。
「どうしてサンタは6つじゃなく8つなの?切りやすさを考えての事?」
「ううん、6つはみんなで食べて、2つは葵の持ち帰り用よ。帰ったらお母さんと一緒に食べてね。私からは「この半年、うちのお母さんの為にありがとうございました。」って伝えてね。後は、葵とお母さんの仲直り祝いってね!」
と那依は囁くと2枚のクッキーと併せて2つのケーキを持ち帰り用のショートケーキの箱に入れた。
「ありがと…。お母さんと一緒にいただくね。」
 葵は素直にケーキの小箱を受け取った。



「おまけ」
ようやく「明るい」挿絵が描けます。
ながらく「どよよーん」な小説に付き合ってくださりありがとうございました!

JKのグループらしくハッチャケタいたストを作りたかったのですが、そこに
「AIくん」の弱点が~!

「大人数」のイラストが苦手!
「AIくん」は「2以上」の数がよくわからないようです(笑)。

いっぱい作って「唯一」の「6人で描かれたイラスト」がこれです!




あとは、何度やっても「6人」にならない!
とりあえず、全部「ボツ」にするのもしのびないので、一人がカメラ係ということにしてください!
(苦しい言い訳(´-∀-`;))







こんな感じでなんとなく「仲直り」と「楽しさ」が伝わってくれるといいのですが…。

そして、那依ちゃん&クリスちゃんの2ショット!




那依ちゃんと仲直りした葵ちゃんのつもりで作ったけど、葵ちゃんは「やさぐれて」茶髪にしたんだったでしたね(笑)。



自分のキャラも把握できずにすみません。


最後はケーキ作ってる那依ちゃん!






ずっとイラストアップしてなかったんで、まとめてアップで許してください!
(。-人-。) ゴメンネ~!
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