『偽りのチャンピオン~元女子プロレスラー新人記者「安稀世」のスクープ日誌VOL.3』

M‐赤井翼

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「大流血試合」

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「大流血試合」

 11月8日午後4時、昨日までと違い1試合ごとのスケジュールが90分取られるようになり、午後1時から始まったUCWW大会2日目の準々決勝第3試合の開始宣言をリングアナウンサーが行うと、今日は赤コーナー登場の稀世とまりあは、青コーナーの「ミスJ・F」の登場を花道から見守っていた。
 リング上の今日の第3試合にあたる「稀世対ミスJ・F」の賭けレートは、「6対1.8」と明らかに「ミスJ・F」有利でリング上の大型モニターに映し出され、「エントリー残り時間5分」と表示され、会場でどちらに「賭け」をベットするのか決めかねていた観客がスマホのQRコードリーダーをモニターに向けている。
 「ミスJ・F」がリングに上がると、モニタ―にその様子が映し出された。リング中央にいる男性リングアナウンサーとほとんど変わらない身長の「ミスJ・F」の姿をモニターで確認したまりあが盛り上がる歓声の中、稀世にむかって大声で叫んだ。

「稀世、「AEW」公式ページに掲載されてた「ジェーン・ファレンティノ」のプロフィールよりでかく感じるなぁ。体重110キロはともかく、身長は180センチはありそうやし、腕の筋肉が「女離れ」してるよな。
 あれだけマッチョなレスラーとやるのは初めてやろ。上に乗られての「締め技」、「固め技」には気をつけろよ。無理して「投げ技」には行かんようにな!
それにあれだけごつい胸板してたら、稀世の「なんでやねんチョップ」も効けへんかもしれへん。「ガチ」勝負ってことで「る」んやから「ラリアット」も「ローリングソバット」も胸やなく、「あご」狙いで行けよ。
万一、上に乗られてマウント取られたら、即、顎への「掌底」や。一発で効けへんかったら、5発でも10発でも打ち込んだれ!パンチンググローブつけてるとこ見たら、顔面への打撃もあるかもしれへんから、気をつけろよ!国内やったら、女の顔に「掌底」入れるんはどうかと思うところもあるけど身長差20センチ、体重差50キロあるんやから、そこの「遠慮」は無しやで!」

 まりあのアドバイスに稀世は顔を赤くしてまりあに怒った。
「まりあさん、体重差は50.2キロですよ。私は59.8キロ!60キロもあれへんですからね!もう、激おこですよ!プンプン!」
 まりあの予想以上に、リラックスしている稀世の様子を見てリングアナウンサーのコールがかかると、稀世の前に立ち花道に入った。
 昨日は無かった、ニコニコ商店街女子部のみんなが作ってくれた「「安稀世選手「必勝」!ぱにゃにゃんだー!」と大きく書かれた横断幕が3階席の最前列に飾られているのが目に入り、「稀世」と書かれた赤い団扇を振る「応援ハッピ姿」の直や夏子、陽菜の姿が目に入った。

 いつものように、リング下からコーナーポールへの階段を駆け上がるとトップロープに手をかけ、サイドフリップでコーナーポールの頂点にすくっと立ち、天井に右手の人差し指を掲げるタイガーマスクの登場シーンを模した入場だったのだが、リングアナウンサーが「赤コーナー、大阪ニコニコプロレス所属「安稀世」―!」とコールが終わるか終わらないかの間に、「ミスJ・F」が青コーナーを飛び出し、稀世の紹介ビデオがかかる前に突っかかった。
 いきなり、コーナートップの上で両足を抱え込まれ、ガウンのままの稀世をリングに叩きつけた。

(くそっ!見かけだけやなく、「パワー」も男並みってか!そっちがその気なら受けてたったるわ!)稀世は両手をリングにつくと同時に、身体を捻り相手の両腕から足を抜くとトンボ返りで着地し、真っ赤なガウンを脱ぐと、「ミスJ・F」の頭の上にかぶせ視界を奪うと、左右の連続蹴りで攻めた瞬間違和感を覚えた。
(ん、今の蹴り、肘に当たったんか!か、「堅い」!空手の達人の肘のよう…、いや、それ以上に固い!「エルボー」攻撃も要注意やな!)と思った瞬間に開戦セレモニー無しでゴングが鳴った。まりあがセコンドポジションから叫んだ。
「稀世、気を抜くなよ!こいつは「反則」ありありやぞ!」

 敵は稀世のガウンを頭から剥ぎ取ると、稀世の前で引き裂き、稀世に向けて「中指」を立て挑発した。
 稀世は一度、距離をとった。目はメッシュ生地で見えず、口の部分だけが開いた不気味な柄のマスクに上下ツナギのロングレオタードから伸びる手足には肘、膝とも男子のプロレスラーが使うようなビッグサイズのプロテクターと昔ながらの網上げのリングシューズが目に入った。
 (げろげろ、こいつの足、28センチはあるんとちゃうか!全てが「でかい」!)冷静に敵を分析する稀世に相手が両腕を肩の上に上げて「力比べ」を挑んできた。
 (挑まれた勝負は一度は受けるが基本やからな!)と稀世も両腕を頭上に上げた。敵の手を見た最初の感想も「でかい」だったが組みついた瞬間に「こいつ強い!」にコンマ1秒で変わった。

 あっという間に稀世は組み伏せられ、片膝をリングにつかされた。(くっ、力比べで負けた事なんかデビュー1年目以降あれへんかったのに!)稀世の両腕が徐々に肩から後ろに押し込まれ、身体がエビ反っていく。(このまま、後ろに倒されたらヤバイ!ここは素直に「力比べ」の負けは認めて、この体勢から抜けなヤバイ!)と腕の力を瞬時に抜き、敵の右目上の額に渾身のヘッドバットを撃ち込んだ。
 一発目で敵は怯んだのか、両腕のホールドを解いた。稀世はすぐに次の攻撃に出ようとも考えたが、自分が繰り出した技を相手が返してくるなら受けるのが「礼儀」とばかりにワンテンポあけ、アントニオ猪木ばりの、手招きで挑発した。
 そこで相手の取った行動は日本ではNGとされる「髪」をつかんでのヘッドバットだった。瞬時に首に力を入れて耐える受け身が間に合わず、眉間で受けたヘッドバットで目から火花が出た。(なんやこいつ!眉間で5寸釘でも撃つ特訓してるんか!まるで金づちで殴られたような感じや!これを受け続けたらあかん!)

 稀世は距離を取ろうと、「ミスJ・F」の胸に左右の掌底を叩きこんだが、髪が引っ張られる痛みに負けて深く突きが伸びなかった。
 再び、敵は「髪」をつかんだまま、2発目のヘッドバットを繰り出してきた。身長差20センチが災いし、正面からでなく上からの衝撃に襲われた。一発受けるたびに目から火花が飛ぶ!
 両手で敵の顔を左右から耳のあたりで挟み、発生確率0.03%と言われる相撲の奇手「決まり手」の「徳利投げ」のように力いっぱい、右から左に振ったところ、3度目の強烈なヘッドバットは稀世の額から逸れて左のこめかみにヒットした。
「がおっ!」
 あまりの痛みに稀世が叫び声をあげると同時に左の視野が赤く染まった。

 瞬く間に稀世の顔半分が鮮血に覆われ、「カーットブレイク!」とレフリーが思わず割って入った。「ミスJ・F」は執拗に稀世の流血個所に拳を叩きこむ。レフリーからのカウント4でようやく敵は自陣の青コーナーに引き上げていった。
 レフリーは稀世を赤コーナーに連れていき、まりあにタオルで傷口を拭かせた。幸い、傷は瞼ではなく左のこめかみ上の髪の生え際で、傷はそう深くはないことが確認された。
「稀世どうする!棄権するならそれもええねんぞ!」
 まりあが傷口にワセリンを塗り込みながら大歓声の中、稀世に声をかけた。
 
 「血を止めてください。ルールでバンテージを巻くのは許されてますから!出血が止まればまだまだ戦えます!この数分のファイトで気になることも出て来たんで、ここでリタイヤするわけにはいきません!」
との稀世の言葉は「レスラー」としての言葉とまりあは判断していたが、稀世の気持ちは違っていた。
 レフリーから指示された3分間で血止めには成功し、レフリーに許可を得てバンテージを三重に巻いた。

 ファイト再開後、も稀世は滅多打ちの目に遭った。稀世の攻撃は相手の上腕やブーツのパーリングで受けられ、その都度、技を繰り出した稀世の方が苦痛の表情を浮かべた。セコンドのまりあは、リング上部の大型モニターの残り時間ばかり気になり(無事にリングを下りてくれたらええねんからな。絶対に無理しすぎるんやないで…。)と胸の前で手を組んで神に「稀世の無事」を祈った。

 試合開始から30分間、ボディーを中心に7対3で攻撃を受け続けた稀世の膝はけいれんを起こし、今にもリング上に落ちかけている。
 (あかん、このままやったら応援してくれたみんなに合わす顔がない…。ここは一発で相手の意識を刈り取るためには…。ここは掌底を顎に決めて、顎が下がったところで敵が下がればローリングソバット、身体を入れ替えて相手をコーナーに追い詰められればサマーソルトキックでの「顎攻撃」の2段重ねやな。ただ、このガクガクのダメージの膝で飛べるか…?)
 コーナーマットで本来反則技のナックルブローを交えた腹への膝蹴りと頭部へのエルボーの「堅い攻撃」を「亀」のようにひたすら丸くなり耐えた稀世に奇跡が起こった。

 顔面への反則の拳を「逃げられへん!」と頭を下げてそれまでのダメージから少ししか振れなかった結果、敵の拳を頭頂部で受けた瞬間、鈍い痛みと同時に、頭の上で「ボキッ」っという聞きたくない音がした。
 思わず拳を引き、自分の右拳の小指部分を左手で庇う「ミスJ・F」の無表情なマスクの上からでも「骨折の痛み」を感じ取った稀世は最後の力を振り絞り、渾身の掌底を左右からピンポイントで顎に叩きこんだ。(よっしゃ、感触は十分や!)
 ふらつきリング中央に後退する相手を追いかけ(ここはローリングソバットを顎に叩きこめば後はトップロープからのムーンサルトドロップで決まりや!ん、でも、あかん!膝が前に出えへんし、跳躍する余力がない!負けた…。)と思いながら繰り出した稀世の得意技のローリングソバットの稀世のかかとは思い描いた150センチの高さの3分の2も上がらず、「ミスJ・F」の股間にヒットした。



「おまけ」
はい、書いてて辛かった「大流血試合」お終いです!
この間の「閑話」を読んだ人はもう「ピン」と来てますね!
はい、「ネタバレ」しちゃいます。

「ミスJ・F」は替え玉「悪役男性レスラー」ですので「股間」にローリングソバットが決っちゃうと…。
(´-∀-`;)

「災い転じて福となす!」
あくまで「女子レスラー」としてリングに上がってますので「悪役男性レスラー」は自業自得ですね!
安心して下さい、稀世ちゃんは「反則負け」にはなりません!
ヾ(o´∀`o)ノワァーィ♪

さて、「ネタバレ」の後は、いつもの「ボツイラスト」コーナーです!
今回の稀世ちゃんは赤井的には笑えました。

いつも通り
「赤基調のリングコスチュームの黒髪ショートカットの女子プロレスラー」
的なプロンプトで生成しています。

余談ですが、「ものぐさ」な赤井は「PixAi」で「4枚」同時生成モードをよく使います。
一回のプロンプト入力で「4枚」イラストができるんですよねー!
まあ、4枚とも「ヒット」ってなかなか無いんですけど、1,2枚使えるものがあれば「ラッキー」ってなもんです。

でも、これは無いよねっていうのがこれです!



ん?リンコスと言うよりは特撮ヒーローっぽい?



あれれ、ヘルメットはプロレスでは被れへんよ!



「マシンロボ クロノスの逆襲」の「レイナ」ちゃんぽい?



なんじゃこりゃ(※松田優作風に読んでください!)!
すっかり「女子レスラー」じゃなく「アイアンマン」!
((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

まあ、貴重なコイン使って笑わせてくれる「PixAi」君が好きです(笑)。

バイバイ~!
(@^^)/~~~
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