『お母ちゃん(霊)といっしょ EP0~北海道編 すべてはここから始まった!お母ちゃんの過去を探れ~』

M‐赤井翼

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『お通夜』

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『お通夜』

 タクシーが病院に着き、さとみとお母ちゃんは裏口から入り、地下の霊安室に下りて行った。午後の外来のナースと入院棟付きの看護師が入れ替わり、立ち替わり霊安室に来て、さとみにお悔やみの言葉をかけていった。お母ちゃんの遺体の前で大声で泣いてくれる看護師もかなり多く、お母ちゃんの生前の人徳がなかなかのものであったことがわかった。
 午後七時、お坊さんが来てお通夜の読経が始まったが、お母ちゃんは落ち着きなく自分の葬式をうろうろしながら見ていた。普通の人がそこまでウロチョロすると絶対怒られてしまう行動だが、お母ちゃんは誰にも見えていないので、粛々と式は進んでいった。

 お坊さんの読経が終わり、坂井がさとみの横に寄ってきた。事務局長も一緒だ。薄い頭に眼鏡の事務局長が、さとみに対して、事務的な口調で
「河合さん、ご愁傷さまでした。当院としても優秀な看護師だった君のお母さんを無くしたことは大きな痛手です。
 まあ、お母さんは君が元気に働く姿を天国から楽しみに見ていると思うから、できるだけ、早めに復帰してくれると助かるよ。じゃあ、元気出しなさいよ。忌引き休暇の予定は、坂井看護師長に出してくださいね。」
と言い残し、事務局長は霊安室を出ていった。坂井があきれ顔で言った。

 「本当に、うちの病院はブラックよねぇ。大阪の中では1,2を争う超ブラックね!事務局長ったら、あれが、今日いうセリフ?(とため息をついた)
 今日は、大変だったわね。どうする、今晩はお母さんと一緒にいてあげる?それならベッドを用意するけど。
 それと、さっきの事務局長の話だけど、さとみさんの場合、入って一年と五カ月だから、有給休暇は十日ね。忌引き休暇も七日あるからね。事務局長じゃないけど、私もシフト組の件があるから、明後日までにいつまで休むか教えてね。」
「はい、普通、みんな何日くらい休みとるんですか?」

 「人それぞれね。まあ、私の考えだけど、有給までは使わずに、忌引き休暇は使っちゃったら?七日間あれば、かずみさんが最後に言ってた、あなたのお父さんの手がかりを探しに行くのにも十分だともうわよ。
 かずみさんのお位牌持って旅に出るのもいいんじゃないかしら。かずみさんがあなたのお父さんと出会ったって言ってたの、斜里町だったけ?知床よね。
 今の季節なら、きっと北海道旅行、いいわよ!お母さんに思い出の風景見せてあげるのもいい供養になると思うし、あなたもいい気分転換になると思うわ。」
坂井の横でお母ちゃんが大きく頷いている。

 「そうですね、明日の初七日済ましたら、何が見つかるかわかんないけど、お母ちゃんと一緒に、斜里町行ってみてみよかと思います。
 ところで、変なこと聞きますが、坂井婦長って幽霊とか見たことありますか?」
「何言ってんの?私は、無いけど。さとみさん、何か見えるの?」
「いやいやいやいや、お母ちゃんの霊って今どこにいるのかな?って。」
坂井の後ろでお母ちゃんが「ここ、ここ!」と自分の顔を指さしている。
「まあ、今日は当直明けで、この状況だから仕方無いけど、今日のさとみさん、ちょっとおかしいわよ。
 今晩は、ゆっくりと休みなさい。じゃあ、私はステーションに戻るんで何かあったらコールしてね。」
と言い残し坂井も出ていった。霊安室に残されたお母ちゃんの遺体の顔にかけられた布を取り、幽霊のお母ちゃんの顔と交互に見た。

 「やっぱり、死んじゃったんやねぇ。まだ信じられへんけど。お母ちゃん、坂井師長もあない言うてくれてるから、明日の葬儀終わったら、斜里町行ってみる?」
お母ちゃんは大きく何度も頷き、嬉しそうな顔をしている。壇上のお母ちゃんの遺体は静かに微笑みずっと眠っている様だった。
「今日は、ふたりのお母ちゃんと寝るか。」
と霊安室の鍵を閉めた。

 誰もいなくなった、霊安室にさとみとお母ちゃんの幽霊とお母ちゃんの遺体の三人だけになった。(さて、問題は、お母ちゃんとの会話ができへんってとこやなぁ。)
「お母ちゃんは私の言うてることや、他のみんなの会話聞こえてんねんよなぁ?」
お母ちゃんは頷いている。
「問題は、お母ちゃんの口が動いてんのは見えんねんけど、私、読唇術なんかできへんからなぁ。お母ちゃん、何かいい手あれへんか?」

 お母ちゃんは、両手を上に上げ、「お手上げ」のポーズをとった。
(うーん、幽霊と話さなあかんことになるとは、過去二十二年、考えたこと無かったもんなぁ。そんな、都合のいい手なんか、無いわなー。)
 お母ちゃんが、お供え物の果物や缶詰を指さし、「食べたい!」のジェスチャーをしている。
「お母ちゃん、そんなん言うても、幽霊なんやから、食べられへんやろ!」
とうつむき、力なく答える。
(!!!んんっ!もしかして!この手は使えるかも!?)

 さとみは、カバンから、お通夜前に葬儀業者からもらった式次第の紙を取り出し、横向けに置き、裏面にペンで書き始めた。
あいうえお、かきくけこ、さしすせそ・・・・。五十音を縦に5文字ずつ、十行にわたって紙の中央に書いた。
その下に、0,1,2,3,4,5,6,7,8,9と数字を書いた。
五十音表の両サイドに、「YES」、「NO」。その下に「好き」、「嫌い」。さらにその下に「男」、「女」と書き込んだ。

 「お母ちゃん!こっち来てよ。」
とお母ちゃんを呼んだ。お母ちゃんはさとみの横に座り、さとみの書いたA4の紙を覗き込んだ。
「お母ちゃん、これ、コックリさんの文字表。これやったら、お母ちゃん言いたい事、指でさして言えるんとちゃう!
 子供の頃、やってお母ちゃんにめちゃくちゃ怒られて以来、初めて書いたから、何か抜けがあるかわからんけど。まあ「入口」と「出口」は必要ないやろ!?」
お母ちゃんが「YES」を指さした。

 「お母ちゃん、斜里に連れて行ってあげたいねんけど、いくらすんのかな?」
お母ちゃんは、コックリさん表を指さした。
「むかし15まんやつた」
「えーそんなに、私、貯金ないよ!どうしよー?」
「おかあちやんのへそくりあるからたいしようふ」
「たいしようふ?大丈夫ってこと?へそくりそんな持ってんの?」
「YES」
「じゃあ、旅費はお母ちゃん持ちで頼むで!」
「YES」
「お母ちゃん、死ぬ前に言ってくれたこと以外に、何か情報無いの?苗字はわからん「直」さん、「斜里観光」、そんで「開拓鍋」。もうちょっとヒントあれへんのかいな?
 私、マンガの名探偵ちゃうから、これだけで、「直」さんにたどり着く自信あれへんでなぁ。」

 「NOおもいたせない」
「うーん、まあ、そこは急げへんから、お母ちゃん、何か思い出したら教えてな。」
「YES」
「よっしゃ、まあ、最低限の会話ができるようになっただけでも、一歩前進やね。さあ、今日は、もう寝よか。お母ちゃんも適当に寝てや。」
さとみは、礼服を脱ぎ、寝巻代わりのジャージに着替え、簡易ベッドで横になった。


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