『お母ちゃん(霊)といっしょ EP0~北海道編 すべてはここから始まった!お母ちゃんの過去を探れ~』

M‐赤井翼

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『お葬式』

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『お葬式』

 9月2日、当直明けの睡眠不足だったこともあり、さとみは朝八時まで爆睡して、すっきりと目が覚めた。横を見ると、壇上の棺桶の中のお母ちゃんと行儀悪く床の上で大の字になっている幽霊のお母ちゃんが眠っている。ふたりのお母ちゃんの姿を見て、改めて思った。
(やっぱり、夢じゃないんや…。死んだお母ちゃんと幽霊のお母ちゃんのふたりおるわ。)
両のほっぺをパシパシとたたき、礼服に着替えた。

 八時三十分、霊安室のドアがノックされた。
「さとみさん、おはよう。起きてる?九時にはお坊さん来られるわよ。入っていい?」
と坂井の声がする。
「どうぞ、準備中ですけど。」
とさとみが答えると同時に、お母ちゃんが目をこすって起きてくる。当たり前の話だが、壇上のお母ちゃんは棺桶の中で寝たままだ。
 坂井は、コンビニ袋に入った、サンドイッチと紅茶のペットボトルをさとみに手渡し、部屋に置いてあったパイプ椅子に座った。

 「さぁ、早めに食べちゃいなさい。良く寝られた?」
「はい、良く寝ました。ありがとうございます。いただきます。」
「あぁ、そう。なら、良かった。さとみさん、あなた昨日様子おかしかったから、心配してたのよ。今日は、あなたがしっかりして、お母さん送ってあげないとね。」
「はい、頑張ります。」
坂井は、テーブルの上の紙に目を止めた。
「これ、今日の式次第?」
と言って手に取った。

 「えっ、何これ!さとみさん、いったい昨晩何をしたの!」
と坂井が声を上げる。式次第の裏の「コックリさん表」を指さし、続けて言った。
「さとみさん、いくら寂しくっても、これはダメ!これはダメよ!それこそ、お母さん成仏できなくなっちゃうわ!これは預かっておきますからね。九時までに食事は終えておきなさい。」
と「コックリさん表」を四つ折りにして、ポケットに入れて出ていった。
 
 「あちゃー、完全に誤解されちゃったわなー。お母ちゃん、師長、生真面目過ぎるからなぁ。また書き直さなあかんな…。」
お母ちゃんは笑ってる。

 九時には葬儀社の人とお坊さんが来て、一時間ほどで本葬を終えた。坂井をはじめ、数人の看護師仲間と院長と事務長と事務局員とドクターの何人かが焼香に来てくれた。斎場には、さとみひとりで行った。もちろん、霊のお母ちゃんは付いてきている。
 昼過ぎには、お母ちゃんの身体は煙となり天に昇って行った。そしてひとりで、お骨上げを済ませた。お母ちゃんの身体は、小さなツボに納まる骨になった。霊のお母ちゃんも自分の骨を見ながら神妙な顔をしている。
 
 斎場で、初七日を済ませ、遺影と位牌と骨壺と簡易の仏壇セットとお供え用の器と小さな花差しを持って、家に帰った。簡易の仏壇を組み立て骨壺と位牌と遺影を並べた。


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