意志をつぐ者

タクナ

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混沌の始まり

第十話 客室での待ち方

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 コータが写真をもらうと密かに約束していた頃、斉藤は本部の客室で、ミツルと共にコータの帰りを待っていた。
 別に、所長にある報告をすればいいのだが、それにはコータがいた方が何かと都合が良いので、もし、所長が帰って来たとしても、ココで待つつもりだ。
 というか、先程から顔立ちの整った美少年であるミツルが何も言わずに、何もせずに座っているのでなんとかしてほしい。
 そんな沈黙に耐え切れなくなった斉藤が、ついに口を開いた。
 「そういえば、今日はいい天気ですね」
 「そうですね」
 「……………………」
「……………………」
会話終了。
 せっかく話しかけた斉藤だったが、そこで会話が途切れてしまい、また気まずい雰囲気が出てくる。 
 だが、そんな雰囲気を破るように声を発したのは、なんとミツルだった。
 「別に、無理に会話をしなくていいですよ」
 無愛想で、常に無表情で、自分からは全く話しかけてこなかったミツルが自ら口を開いたことに驚愕する斉藤。
 そのため、内容は全く耳に入っておらず、聞き返す。
 「すみません、今、なんて言いました?」
 「だから、無理に会話をしなくてもいいですよと言ったんです」
 口調は丁寧なのだが、実に素っ気無いカンジで声を発する。
 だが、その言葉の意味を理解した斉藤は、斜め方向に勘違いする。 
 「いえ、別に無用なお気遣いはけっこうですよ」
 「それはこっちのセリフですよ」
 「いえいえ、そんな。 私はそんなコトしてませんよ、一切」
 「でも、さっきから何かと会話をしようとしてるでしょう?」
 ただ淡々と口を動かすミツルに対し、一歩も引かずに話していた斉藤だったが、ミツルの最後の言葉に驚かされる。
 そして、ボロが出てしまう。
 「な、なぜ、それを?」
 「ただ、そう感じただけです」
 明らかに動揺した声の斉藤に、感情の感じられない声音で返すミツル。
 そして、ただ興味がなさそうに続ける。
 「なぜかは聞かないでください」
 「…………聞いたら、答えてくれますか?」
 「面倒なので、答えません」
 未だに動揺から抜け出せないようだったが、一応はダメもとで聞いてみるが、まるでミツルに相手にされない斉藤。
 「そうですか。 わかりました。 そういえば、コータ君は訓練所の皆さんに慕われているみたいですね」
 大人しく、引き下がり、同じチームのコータの話を持ち出す。
 斉藤が見ている限り、コータは、訓練所のメンバーのほぼ全員から憧憬にも似た眼差しで見られていた。
 そのことを会話に引き出したのだが、それは正解だったようだ。
 ミツルが少し目の色を変えながら話し出したのだ。
 「そうだな」
 「なぜ、あんなに慕われているんですか?」 
 「コータが世界を救う男だからだ」
 「? それはどういう意味です?」
 「そのまんまの意味だが」
 斉藤が理由を聞いたが、返って来た理解不能な言葉に、もう一度聞き返すが、ミツルは多くを語ろうとはせず、ただ先程自分が発した言葉を首肯する。
 訳がわからないと言った風に首を傾げた斉藤だったが、次の言葉を言う前に、客室の扉が開かれる。
 そこには、ちょうど今、話の内容となっていたコータが立っており、当の本人は困惑顔でこちらを見る。 
 即ち、何かを言おうと途中まで口を開きかけた斉藤と、興味がないような顔をして椅子に座るミツルを見て。
 「…………何か、あったんですか?」
 「…………いえ、なんでもありません」
 訝しげな顔をして口を開いたコータに、少し遅れて否定する斉藤。
 さすがに、本人に聞いたところで、ちゃんとした事実は返ってこないのだから、聞くことはしない。
 斉藤の言葉を聞いたが、まだ納得していない様子のコータだったので、斉藤は話題転換を図る。
 「そういえば、さっきの女の子との話とやらは終わりましたか?」
 その瞬間、熟れたトマトのように顔を真っ赤にするコータ。
 隠し事が苦手らしく、目までキョロキョロとしており、やたらと挙動不審である。
 「え、ええ。 しっかりと終わらせました。 任せてください」
 最初はつっかえたが、しっかりと言い切るコータ。
 誰も聞いていないのに、何が任せたなのか意味がわからないが。
 「コータってユキのこと、好いてるよな」
 「ええっ! そうなんですか!? あの美少女とっ!?」
 「ちょっ、お前、なに言ってるんだよ!?」
 ミツルがなにともなしにカミングアウトしたので、思わずそれに食いつく斉藤とコータ。
 「事実だけど?」
 「俺はそんなコト言った覚えないでしょう!?」
 「言って無くても、見てればバレバレだぞ?」
 「なっ! ………………俺って、そんなわかりやすかったか?」
 「あれで気付かないのは、よほど鈍いか、周りが見えてないかだな」
 「そ、そんな…………」
 ミツルが顔色を変えずに、淡々とコータを捲くし立てる。
 コータはビックリしたような、落胆したような顔でミツルを見ながらガッカリする。
 斉藤は、これだけ一気に喋ったミツルを初めて見たので、そこに驚愕を隠せない顔をしている。
 「フッ、安心しろ。 向こうにはバレてないから」
 小さく笑い、コータを安心させるように言うミツル。
 これまた、初めて笑い(小さくだが)、しかも2文以上喋ったミツルに驚く斉藤。
 これまで、斉藤はミツルが笑えないのではないかと思っていたのだ。
 こういう世界ではよくあることで、大きなショックを受けたりすると、感情の欠落が見られるというのは、よくある話なのだ。
 訓練所に初めて来たときに、そうゆう症状があるヒトが目の前にいるミツル以外は見られなかったことも驚いた。
 「そ、そうなのか?」
 「あぁ、大丈夫だ」
 隣で驚愕する斉藤には全く気付いていない様子で聞くコータ。
 対するミツルは、気付いてはいるが、そちらには何も言わずに、コータの言葉のみに応える。
 「理由は聞いても……?」
 「面倒だから教えない」
 「…………そうか、でも、ホントに気付かれてないんだな?」
 「保障する」
 「なら、いいか…………はぁ」
 先程、唐突に聞いてきた誠二といい、ミツルといい、なにかと自分の想いがヒトに筒抜けだったのに、溜め息を吐くコータ。
 (まさか、そんなにわかりやすかったとはな…………)
 心の中でそう思いながら、次からはしっかりとバレないようにしようと決めるコータ。
 しかし、既にほとんどの訓練生は知っているので、今から変えてもあまり意味はないのをコータは知らない。
 自分と近しいヒト達にしか気付かれていないと思っているコータの浅はかな考えだった。
 「そういえば、コータさんはなんでココに来たんですか? 訓練所の所長が来たのではないのですか?」
 自らの考えに沈むコータに、この状況を打開するために斉藤は声をかける。
 その言葉に、パッと顔を上げ、思い出したように声を上げる。
 「あっ! そうだった!! すっかり忘れてた!」
 「好きな子の話になるといつも、#こう_・・_#、だもんな」
 慌てたコータに、ミツルが一部分を強調しながら、無表情で冷やかしを言う。
 そのミツルに、慌てふためき返すコータ。 
 「そ、そんなコトないぞっ! いつもはもっと、静か…………あぁっ、何を言ってるんだ、僕はっ!?」
 訂正しようとしたが、自ら失言をするコータ。
 そして、いらぬことを言った自分の頭を叩く。
 「で、用件は?」
 「さっきまで、いじめておいて、それかよっ!?」
 非情にも言葉を続けるミツルに、非難めいた声音で言うコータ。 
 だが、相手にされないのはコータにはよくわかっているので、要求どおり用件を言う。
 「…………所長が俺たちを呼んでいる。 しかも、武装を完全に解除してくれだとよ」
 「なるほど」
 「…………ふぅむ。 それはなんとも、受け入れがたい要求ですね」
 言いにくそうに言うコータに、ただ頷くミツルと、難色を示した斉藤。
 いくら同盟関係にあるとはいえ、武装を全くしないというのは、やはり抵抗があるのだろう。
 しかし、斉藤はどこから見ても全く武装をしているようには見えないのだが、銃でも持っているのだろうか。
 探るように視線を走らせていたコータに気付いたのか、なぜかニッコリと笑う斉藤。
 「そういえば、武器はダメなんですよね?」
 「ええ、そう言ってましたケド…………?」
 「では、#武器_・・_#は置いていきましょう」
 「???」
 含みがある言い方で話し、困惑するコータの前で、スーツを脱ぐ斉藤。
 見ただけではわからなかったが、スーツの裾の中に、ナイフが2本ずつと、背中のところにはサブマシンガンが巧妙に隠されていた。
 そして、近くにあったテーブルの上に、取り出した装備を端から並べていく。
 しかも、目の前でズボンとワイシャツも脱ぎ始めるが、中には戦闘用であろう特殊な生地でできている体にピッタリとしたスーツを着ており、そこにもいくつかの武装が仕込まれていた。
 眼前でてきぱきと外していく斉藤を、驚愕の表情で見つめるコータ。
 全ての武装を取り終わると、テーブルの上には3人が完全武装できそうなくらいの武器が並んでおり、一人だけなら何日も戦闘を続けられそうなくらいである。
 「さて、行きますか」
 隣で驚愕の表情を浮かべたまま固まっているコータに、声をかける斉藤。
 そのなんともないように言う声音に、若干、頬を引きつらせながら答えるコータ。
 「は、はい。 そうですね」
 もしかしたら、自分やミツルよりも強い存在なんじゃないかと、また思わさせられるコータだった。
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