意志をつぐ者

タクナ

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混沌の始まり

第十一話 所長登場!だけど、すぐ退場

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 客室を出て、意外と長い廊下を進むコータ、ミツル、斉藤の三人。
 未だに学校の制服姿のコータとミツルと、明らかに戦闘用だとわかる体にピッタリとフィットした黒いアーマースーツ姿の斉藤という明らかに不釣合いな組み合わせの三人は、所長が待つ、所長室へと向かっている。
 途中にすれ違った訓練生たちは、初めに会ったときとは全く違う格好した斉藤に驚きつつも、何も言わずに通してくれた。
 多分、コータとミツルという実力者が付いているので、誰にも止められないのだろう。
 もし、他のヒトだったら、警察の職務質問よろしく、事情を催促されていただろうが、そんなことは一度もないまま、所長室の扉の前についた。
 「そういえば、この訓練所の所長は神様でしたよね?」
 「ええ、一応は」
 「期待するなよ」
 「???」
 思い出したようにコータとミツルの二人に聞く斉藤。
 そして、それに、歯切れの悪い言葉で肯定するコータと、注意を促すような声音で言うミツル。
 斉藤はただ首を傾げて二人を見たが、中から人が出てきたので、言葉を発する前に、そちらに注意が逸れてしまった。
 ドアを中から開けて出て来たのは、ココに来るときに同じチームであった、確か蓮とか言う少年だった。
 その蓮は、ドアの前にいた三人を見て、驚いたような顔をしたが、斉藤に視線を移した瞬間、怪訝そうな顔をした。
 「大丈夫だよ、蓮。 武装を外してもらっただけだから」
 「外したら、こんな格好になるのか?」
 「そうらしいぞ」
 安心させるように笑うコータに、苦笑する蓮だったが、ミツルの言葉に不安そうに顔を歪める。
 顔を歪めたところでイケメンに変わりはないので、どこかの乙女ゲームみたいで、思わず噴き出しそうになるコータだったが、咳払いを一つする。
 「オホン、まぁ、大丈夫だから安心してって」
 「人の顔を見て笑うようなヤツに言われたくはないが…………まぁ、いいだろう。 気をつけて、話せよ?」
 「? 気をつけてって、何が―――」
 「じゃあなー」
 なにやら意味深なコトを言う蓮だったが、全てを語らずに足早に去っていってしまった。
 さっきの態度はなんだったんだろうと、不審に思うコータだったが、中から声がかかる。
 「そんなところにいないで、早く入って来たまえ」
 「はい。 わかりました。 では、いきますか」
 中の人物に、丁寧に返事を返し、後ろの二人に確認がてら声をかけるコータ。
 そして、二人が頷くのを確認してから、部屋の中に入る。
 入って正面には重厚な天上の植物である#世界樹_ユグドラシル_#で作られた机と、左手にあるワイナリーと、グラス達がある。
 そのほかには、何もないので、違和感満載の部屋である。
 「で、その者が盟友システィーナの配下である、斉藤とか言う男だな?」
 「はい、システィーナ遊軍、第二軍所属、少将の斉藤と申します」
 開口一番、そう聞く所長に斉藤が慇懃な態度で答える。
 所長は第二軍所属と聞いた瞬間、少しだけ眉を顰めたが、斉藤の格好には触れずに、自分も自己紹介をする。
 「私は、オリンポスの十二神の一角、ディオニュソスだ。 豊穣とブドウ酒の神だ」
 「それでは、何から話しますか?」
 神に対して、一歩も引かずに、自分から話を切り出す斉藤。
 間に入って仲介しようとしていたコータだったが、強気な姿勢の斉藤は予想外だったので、機を逃がす。
 「ふむ…………では、なぜ、ここに来たのかを教えてくれないか?」
 「はい。 お安い御用です」
 斉藤に態度には何も言わずに、理由を聞く所長。
 それに、ニッコリと笑う斉藤。
 「本来の命令は、ココの手伝いをしろと言うモノです。 必要なら、援軍を呼んでも構わないとも言われました」
 「それは、誰の命令だ?」
 任務内容を所長に説明する斉藤だが、途中で遮り、誰の命令なのか聞く、所長。
 その言葉に、ニッコリと答える斉藤。
 「我らが、鷲目隊長です!」
 「はぁ…………また、アイツか。 マサルといい、ホークといい、なんであの世代は厄介ごとを持ち込んでくるかねぇ…………」
 溜め息をつきながら、疲れたように言う所長。
 そこに、コータが、勢い付いて所長に詰め寄る。
 「マサルから何か、連絡があったんですかっ!?」
 「あぁ、あったとも。 ついさっきな」
 「なんて言ってましたかっ!?」
 「…………今日中には帰るから、宴の準備よろしくだとよ」
 「…………マサルらしいですね」
 「あぁ」
 コータが期待してる答えとは違うだろうと思っていたディオニュソスは、言いにくそうにコータに告げるが、コータは無理やり納得したように返す。
 その話を隣で静かに聞いていた斉藤だが、話が終わったと見てディオニュソスに聞く。
 「では、今日中にマサルさんに会えるんですね?」 
 「あぁ、多分な。 アイツのことだからホントに今日来るかはわからんが」
 「それは大丈夫です。 私も彼とは面識があるので」
 「そうか。 まぁ、そうだろうな。 第二軍所属ならおかしくもないか」
 「はい、そういうコトです」
 マサルとは面識があるという斉藤の言葉に、驚いた顔をするが、すぐに納得するディオニュソス。
 なぜか、皆を納得させるマサルとかいう人物に、密かに会ってみたいと興味が湧くミツル。
 コータとは長い付き合いではあるが、マサルという人物については、全く知らない。
 ミツルだけではなく、今、この訓練所にいる訓練生でマサルを知っているのは、コータとユキと蓮と数人の先輩訓練生ぐらいしか知らないのだ。
 訓練所にはほとんど帰って来ないヒトなので、それも仕方ないと思うが。
 「まぁ、その話は置いといて、どんな情報が入ってきたのだ? それを知らせる為にココに来たんだろう?」
 「あら、バレてましたか。 アハハ、マサルさんに頼まれていたことだったので、彼に教えるためでしたが…………まぁ、教えてもいいでしょう」
 話題を転換させ、鋭い目で斉藤を見ながら言うディオニュソスに、観念したように笑う斉藤。
 そこでちらりとコータとミツルを見るが、その真意を悟ったディオニュソスは二人を見ながら言葉を発する。
 「大丈夫だ。 コイツらなら、信用できるし、腕も立つ。 情報が漏れることはないだろう」
 「そこまで仰るなら、教えましょうか。 我が軍の調べた情報によると、この世界に危機が迫っております」
 保障してくれたディオニュソスに対し、感謝の念を持ちつつ、情報とやらを聞くコータとミツル。
 しかし、いきなり舞い込んできた『世界の危機』とかいう単語に驚かされるコータ。
 ミツルは何を考えているのか、相変わらずの無表情だが。
 そんな驚いた顔のコータには触れずに、尚も続ける斉藤。
 「古き敵が侵攻しようとしています。 我が軍は既に、敵の前哨部隊と交戦し、迎撃に出撃した第四軍に負傷者がでております」
 「なんとっ!! すでに戦闘になっていたのかっ!?」
 「はい。 我が軍が確認した中では、その前哨部隊、ただ一つでしたが、既に侵攻せれている可能性はあります」
 重々しい口調で話す斉藤に、驚き椅子から立ち上がり確認のため、もう一度問うディオニュソス。
 その確認を即座に肯定したため、ディオニュソスは顔色を悪くし、時計を確認しながら言う。
 「これは、まずいコトになったな…………全ての訓練生を呼び戻したほうがいいかね?」
 「…………私どもは、非番の隊員も全て徴集しております。 もちろん、協力者達からも呼び集めています」
 「なるほど、では、こちらも呼び戻したほうがいいな。 神々に連絡は?」
 「おそらく、明日辺りに、証拠と共に通告が行くでしょう」
 斉藤の言葉に、訓練生を全員呼び戻すと、宣言をするディオニュソス。
 しかし、内容を把握しきれないコータは、ついに口を開く。
 「ちょっと、さっきから一体、何の話をしてるの?」
 「そのままだろ」
 「いや、もうちょい詳しく」
 説明を求めたコータに、ミツルが至極当然のことを言うが、コータはそれを跳ね返す。
 「なら、そこの斉藤にしてもらえ。 わたしはしばらく訓練所を空けるぞ」
 「ええっ!? ちょっと、所長!?
 「わかりました。 私から説明しましょう」
 説明を求めるコータの目の前で、一言だけ残し、煙のように姿を消すディオニュソス。
 コータの驚いた声と、斉藤の了承の声を聞き終える前にいなくなってしまったので、聞いているかは微妙だが。
 「…………じゃあ、説明をお願いします」
 「はい、わかりました。 しかし、それほどわかっていることは少ないんですがね。 大昔にあった聖戦と呼ばれる戦はご存知ですか?」
 「うん。 アレでしょ、神様達が地上から撤退したっていうお話」
 「そう、そして、その敵が何者であったかはご存知ですか?」
 「イヤ、僕は知らないです」
 「異邦人だな」
 「そうです。 よく知ってますね?」
 「情報集めが趣味だから」
 「なるほど。 それで、その異邦人というのは、言葉通り、この国の人間ではないです。 それどころか、この世界のヒトですらありません」
 「異世界の住人!?」
 「まぁ、簡単に言えば、そうゆうコトになりますかね。 今、話した内容は、その敵である『異邦人』が、この世界に侵攻してきたというコトなんです」
 「…………なんだって?」
 「ほう」
 斉藤が、簡単かつ、シンプルに話していく間に、質問を投げかけるコータと、ところどころで会話に小さく入っていたミツルが話を聞き終わり、反応を示す。
 コータは青ざめた顔で言うが、ミツルはなぜか妙に嬉しそうな顔で言う。
 「てことは、また攻めてくるってコトなんだよね!?」
 「ええ、そうなりますね」
 「じゃあ、ヤバイじゃん!」
 「でも、私達システィーナ遊軍も、神々も、あなた達訓練所だって、何も備えをしてないワケじゃないですよ」
 青ざめた顔で慌てるコータに、斉藤は余裕の表情で返す。
 「え!? そうなんですか!?」
 「はい。 私達は着々と軍備を整えてますし、神々はへパイストス様を中心にロボット兵士を作ってもいます。 あなた達だって、訓練生を各地に派遣して、怪物たちに力になってもらおうとしてるじゃないですか。 過去の記憶を持つ怪物たちは古き敵を恐れてますからね」
 「そ、そんなコトをしてたのか…………」
 「あれ、ご存知ではなかったのですか? 我らはすでに小国なら落とせるほどの軍事力を、ロボット兵は10万を超えるとか、味方になった有力な怪物もちらほらいるみたいですし」
 事実を知らされていないらしいコータの驚きように、キョトンとして返す斉藤だったが、その全容を明らかにする。
 その話を隣で静かに聞いていたミツルが、うんうんと小さく頷きながらコータに言葉をかける。
 「因みに俺は全部知ってたぞ」
 「な、なんだって!? じゃあ、他の皆も?」
 「流石に知らないと思うぞ」
 「あぁ、良かった。 知らないのは俺だけじゃなかったのか」
 「ていうのは嘘だ」
 「ええっ!? ホントっ!?」
 「いや、嘘。 冗談だよ冗談」
 「…………あんまり、笑えないんだけど」
 見事に騙されたコータを見て、珍しく声を上げて笑いながら言うミツル。
 そのミツルに非難めいた声で言うコータだったが、ミツルは相手にしない。
 (こんなに呑気なら、大丈夫そうですね。 この子達は…………) 
 そう心の中で思わずにはいられない斉藤だった。
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