意志をつぐ者

タクナ

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混沌の始まり

第二十七話 冒険の旅とは?

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 「おおっ!! てことは、俺は冒険の旅に出られるんだなっ!?」

 「まぁ、そーゆうことになるな」

 「やったぜぇぇぇ!! 念願の初冒険の旅だ!!」

 興奮した様子のワタルに、マサルがのんびりとした声をかける。
 なぜワタルがここまで興奮しているかというと、「冒険の旅」とは歴代の英雄たちが行ってきた予言(別名を神託という)に基づき、旅に出ることを言う。
 一口に「冒険の旅」といっても、様々な要望がある。
 一番多いのが、怪物を倒したり、要人の救出であったりする。
 ヒドイものになると、神々のおつかいだったり、ただの嫌がらせなんてこともある。

 「冒険の旅って、そんなにいいもんではねぇよ?」

 「それでもいいんだよ!!」

 「毎年、何人も行方不明になったり、死んだりしてるけど?」

 「ぐっ、それを言われると行きたくなくなる…………」

 「そんな生半可な覚悟で冒険の旅を騙(かた)るな。 冗談抜きでホントに死ぬぞ、おまえ」

 マサルが真剣な瞳で、かつ、冷酷な声音ではしゃぐワタルに言い放つ。
 いつもは軽薄でフワフワとした性格のマサルでさえ、そういう声になるほど、冒険の旅とは危険なモノなのだ。
 それが例え、危険度が低そうな神託の内容だろうと、全体の成功率は3割を切っている。
 冒険の旅全体のうち、死者、行方不明者が出る旅が2割もあるのだ。
 無論、全くの無傷で冒険の旅を終える者など、ほぼ皆無に等しい。

 「……すまなかった。 俺が悪かったよ。 だから、さっきまでの態度を謝るよ」

 「……それなら、いい。 これからも口には気をつけろよ」

 空気の読めない発言をしたワタルだったが、自分に非があるのを素直に認めたので、マサルはそれ以上は何も言わない。
 超絶空気が読めない男であるワタルだが、引き際を見極めるのはぐうの音が出ないほどに上手い。
 もっとも、壊すことが多ければ直すのが上手くなるのは当然のことかもしれないが。

 「ワタルのせいで、ヘンな空気になったけどさ、結局誰が一緒に着いていくのさ?」

 「うーむ、そこまでは予言にも指定はなかったからなぁ。 5、6人いれば助けられるんじゃね?」

 「マサル、みんなの期待を裏切らない対応をありがとよ」

 「えっ? なんで、俺がこんな白い目で見られなきゃいけないわけっ!?」

 「はぁ、ともかく、決めようぜ」

 「今の溜め息は絶対に呆れが多分に含まれてる!! 裁判長、発言の撤回を要求したいっ!!」

 「アンタは黙ってなさいってーの」

 「うええっ!? アキまで冷たい!!」

 誠二の問いかけに、平常運転いつものペースでいきなり話し出すマサルに、一同はなんとも言えないような顔つきになったので、誠二が溜め息と共に言う。
 そして、アキにまで冷たくされて意気消沈する。
 そんなマサルを見て、静かになったとでも言わんばかりに誠二が話し出す。

 「神が捕まるぐらいだから、敵は強いんだよな?」

 「そうだね。 でも、ワタルを見捨てられはしないから、僕たちのチームは一緒に行くよ?」

 「マっジかよ、コータさん!? 戦力外になりそうで怖いアンド死にたくないから行きたくない!!」

 「命は保証してあげるよ。 それに誠二も強いから大丈夫だって」

 「その信頼が胸に突き刺さるぅ!!」

 誠二に答えたコータが、当たり前のように自らのチームの参加を表明する。
 早口で捲し立てる誠二は、非常に行きたくなさそうだったが、もう一人のチームメイトであるミツルは頷くだけで了承する。
 この信頼の相互関係にひどく差があるコータチーム。

 「おお、コータたちと一緒なら心強いな」

 「おまえは囮なんだからしっかり働けよ」

 「誰が囮じゃ、ボケェェェ!! 今に見てろよ、覚醒しておまえより強くなるから!!」

 「未来形なのが痛い」

 「やめてぇ!! 憐れむような目で俺を見ないで!!」

 ワタルとミツルが言い合いを始めるが、感情の映らない瞳をワタルが勝ってに解釈して落ち込む。
 キャラの強さではマサルとどっこいどっこいなのだが、本人たちはそれに気づかない。

 「まぁ、それはともかく、他のメンバーはどうしようか? 4人だけじゃ、いくらなんでも少ないだろうしね。 マサルとアキは一緒に来てくれる?」

 「すまんな、我が弟よ。 俺は意外と忙しい」
 「ゴメンね、コータ。 マサルがそう言うから」

 (だと思ったよ…………絶対、面倒だと思って来るのやめたな、この二人)

 おおよそ予想通りの答えが返ってきたのでコータは超強力な援軍の同行を諦める。
 あと、戦力になりそうなのは遊軍のホークか、斉藤や蓮だが、半分訓練所の問題でもあるため、遊軍の構成員は連れていけない。
 そして、蓮はワタルや誠二との共同戦闘の相性が悪いので、残念ながら連れていけない。
 はて、どうしたものかと迷っていたら、マサルが思い出したように、ある提案をする。

 「そういえばさ、さっきの俺が言った予言の中に、『雷の姫』っつーのがあったよな。 それって、『雷の意思をつぐ者』のことじゃないのか?」

 「え、あたし?」

 マサルの言葉に、今まで部屋で静かに(といっても、さきほどの漫才じみたやりとりをカオリと一緒に大爆笑しながら見ていたのだが)していたミホに白羽の矢が立つ。

 「どうだかなぁ。 それはちょっと安易じゃないか? だって、普通に言えばいいのに、神託様はわざわざ『姫』だなんてつけてるんだぜ?」

 「そうそう、全然『姫』っぽい性格じゃないし」

 「ふんっ!」

 「ぐへぇッ!!」

 反論を示すホークに、ワタルが深々と頷きながら追従する。そんなワタルにミホが華麗にボディブローをかます。
わざと人が後ろにいないとこを狙ったのか、そのまま壁に背中からぶつかり、頽れるワタル。
 静かになったワタルを心配そうに一瞥してから、コータが口を開く。

 「僕もホークの意見と同じだね。 そんな簡単な考えで決めないほうがいいと思う」

 「大丈夫だって。 同じ雷属性の持ち主だから」

 「なに、その雷属性って」

 「え? いやほら、江戸で一番怖いのは地震、雷、火事、親父ってな! ぶべたがすっ!?」


 コータの言葉に、親指をサムズアップしてどこから来るのかわからない自信で確信したマサルに、今度はアキのボディブローが入る。
 その威力により、ワタルのちょうど隣に倒れるマサル。
 そして、仲良く隣り合って倒れているマサルに、アキが告げる。

 「女の子に失礼なコト言わないの」

 「大の男を軽々しく吹っ飛ばせる女の子なんて、ただのゴリぶばぁ!!」

 「女の子に失礼なコト言わないの」

 「はい、すいません、以後気を付けます」

 非難めいた声音で叫ぶマサルに最後まで言わせず、今度は華麗なフォームを描いた右足の蹴りが入る。
 そして、抵抗を諦めたマサルは正座しながらアキの言葉に神妙に頷く。
 未だにワタルは腹を抑えながら呻いているが、それは地力の違いだろう。

 「それより、結局誰が一緒に行くの? 僕たち以外で」

 「あたしが行くんだから、同じチームのカオリとユキも連れて行ったらいいんじゃない?」

 「それが妥当だろうな」

 「わかった。 でも、それでも7人しかいないよ?」

 「そこは俺たちが手を貸すぜ」

 コータの問いに、提案をするミホに首肯するミツル。
 そして、協力を申し出たのは、なんとホークだ。

 「遊軍が?」

 「あぁ。 なんせ、その神が囚われている煉獄の山ってのは、元は俺たち遊軍の土地だからな。 大戦の折に放置したんだが、その場所がそのまま敵さんに乗っ取られたんだろう」

 「かなりの激戦区でしたしね、あそこは」

 「そうだな…………俺が吹っ飛ばしたけどな」

 「士気が下がるので、そういうこと、言わないでくれませんかねえ!?」

 なぜか変なモノでも見るかのようなワタルの言葉に、遠い目をしながら答え、いらないことまで言うホークに斉藤がもっともなことを言う。
 しかし、そんな斉藤には取り合わずホークはなおも続ける。

 「とりあえず、俺たちとおまえらは一緒に行軍するわけにはいかないからな。 別動隊として、おまえらに働いてもらうぞ」

 「奇襲でもかけるか?」

 「まぁ、それも一つの手かもしれないが……それは当事者だけで話し合おう。 どこから情報が洩れるかわからんからなぁ」

 普段なら、そのホークの発言に怒る者がいたからもしれないが、たった今、普通ならバレないハズの訓練所が襲撃されたこともあり、誰も何も言わない。
 そんな雰囲気を見計らい、マサルは一番早く動く。

 「じゃあ、そーゆうことなら、俺はもう帰って寝るわ。 じゃあな、ホーク。 また、後で」

 「おう、じゃあな、マサル」

 「じゃあ、あたしはユキを呼んでくるわね」

 「うん、お願い。 そんなに急がなくていいよ」

 「はぁーい」

 マサルを先頭に、ぞろぞろと重い腰を上げて部屋を出ていく訓練生たちを見て、ユキを呼びに行こうとしているミホに声をかけるコータ。
 なぜ、ゆっくりでいいと言ったのかというと、

 「ぐええぇぇぇ。 は、腹がァァァァ!!」

 「大丈夫か、ワタル。 あまり無理するなよ」

 「貧弱者め」

 さっき倒れたところでえずいているワタルの周りに心配そうに歩み寄る面々。
 全く歩み寄る気のないヤツもいるが。

 「全く、アイツ手加減なしなんだよなぁ。 痛いったらありゃしねぇ」

 「でも、さっきのは悪いのワタルの方なんじゃない?」

 「確かに言い過ぎたのはあるけど……お返しが強すぎやしないかい、旦那? 俺、危うく戦闘不能だよ。 モンスターボ○ルの中に帰っちゃうよ?」

 「いつも通りじゃないか」

 「ミツルも少しくらい心配してくれてもいいんじゃないの!? いつも、毒ばっか吐いてるから彼女ができないんだよ!」

 「あんなケンカばっかりの彼女なんていらねぇ」

 「久しぶりに感情の籠った声が聞こえたと思ったら、すっごい侮蔑!!」

 それとなしにコータが客観的な意見を述べるが、ワタルは先程蹴られた場所を愛おしそうに触りながら言う。
 ミツルは吐き捨てるように言ったのが印象深い。

 「あっははは。 おまえら、面白いなぁ。 訓練生なんて、やめてお笑い芸人でもやればいいのに」

 「いや、やらねぇよ!!」

 「お笑い芸人は僕もやりたくないなぁ」

 「呑気だな、おまえらっ!? これから、作戦会議なんだよね!?」

 笑いながら言ってくるホークに対し、キレイなツッコミを入れるワタルと、それに比べ呑気なコータ。
 誠二が総じてツッコミを入れるが、その言葉に誰も肯定しない。

 「いや、ほら。 全員いないじゃん? だから、別にいいだろ」

 「ユキ、連れてきたわよー。 ん、どったの?」

 「…………いや、ほら。 全員いないじゃん? だから―――」

 「「見なかったようにするなよ!!」」

 わざとらしく辺りを見ながら答えるホークに、ユキを伴ったミホが声を発したが、それをしれっとスルー。
 そして、ホークに、やはりキレイなツッコミを入れるワタルと誠二。

 「とにかく、これで全員そろったね。 じゃあ、作戦会議を始めようか」

 なぜか、一番の実力者であり、提唱者であるホークではなく、コータが仕切る。
 ホークも文句を言わないので、別にいいのだろうが、この状況になったということは、ホークの扱いも決まってきたということだろう。

 なぜか、やるせない気持ちになったコータであった。
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