幻想世界の統合者

砂鳥 ケイ

文字の大きさ
175 / 242

第百七十六話:不死の王討伐4

しおりを挟む
少し遡る。
不死の王ノーライフキング側の動向
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「それにしても、さっきの奴は何だったんだ?」

スイは、自分の獲物を横取りされ苛立っていた。

「折角の僕の獲物を横取りしやがって・・今度見つけたら真っ先に始末してあげるよ。きっと、まだこの近くに居るだろうしね」

スイは誰もいない洞窟の奥へと舞い戻る。

洞窟の最奥には、広さ100m四方程のスペースがあり、そこには夥しい程の骨が山積みになっていた。

その骨の下には、ドス黒い線で描かれた魔法陣めいた物が伺える。

「さて、邪魔者も居なくなった事だし、始めるとするかな」

スイは、両手を地面につけ、呪文を唱える。
両手から発せられた黒い光が、描かれている魔法陣の線に沿って広がっていく。
全ての線に黒い光が宿り、魔法陣の中にあった大量の骨が黒い光で覆われ、やがて見えなくなった。

そして、黒い光の中から何かがソッと這い出てくる。

全身が骨だけの生物だった。

その形は様々で、人の形をしていたり、四足獣の形をしていたり、中には竜のような大型の形をしているなど、様々だった。

黒い光の中から現れたその生物は、まるで何かに操られているかのように一列をなして、洞窟の入り口を目指し、向かって行った。


ロストマジック:アンデット生成
その名の通り、骨を媒介にしてアンデットを生成する事が出来る。
そして、生成されたアンデットには一つだけ命令を与える事が出来る。

''自分たち以外の敵を殺せ''

それがスイの与えた命令だった。

こうして、瞬く間に夥しい数のアンデットの軍団が誕生した。

「ざっと5000体くらいか。手始めに手近なあそこを落とすくらいならばこの程度で十分だろう」

スイは、膨大な魔力を秘めていたが、流石に大量のアンデット生成で魔力が底をつきかけていた。

「最後に保険を掛けておくか」

ロストマジック:ジェネラルアンデット生成
レベル60以上のアンデットを生成する事が出来る。
ジェネラルアンデットは、複数の命令を与える事が出来る。

「お前には、下位アンデットたちの先導役を頼むよ」

体長30mを超える巨大な骨竜が颯爽と洞窟の外へと向かう。

魔力を使い果たしたスイは、その場に倒れた。

「ククク・・目が覚めた頃には、死の国となっているだろうな」


数日の間眠っていたスイが目を開けた。

スイは洞窟の入り口に、万が一の時の為に見張り役を忍ばせていた。
そして、そいつが仕留めたのであろう人族の亡骸が散乱していた。

スイは、それを気にも留めていないように天翔(てんしょう)を使い、上空へと舞った。
自分がけしかけたアンデットたちを追ったのだ。

「あれ?これはどう言う事?」

今、スイが見ている光景は、洞窟からマルガナ国までの丁度半分位の距離にあたる場所だ。
無残にも散らばっている自分がアンデット生成で作り上げたアンデット軍団の残骸だった。

「もしかして、全滅・・・か?」

辺りを散策するスイ。

時折、地面に手を当て何かを探っているそぶりを見せる。

「・・・この残留魔力は、あの時のあいつか。僕から獲物を攫った奴・・・またしても邪魔をするか・・」

その時だった。
スイのすぐ後ろから、2つの影が勢いよく飛び出し、そのままスイの首筋へと剣を突き立てる。

たまたま、偵察中に|不死の王(ノーライフキング)であるスイを発見した冒険者だった。

不意打ちを狙ったにも関わらず、剣の方が溶けて折れてしまった。

もう1人は、同じように足を切り落とすべく剣を振るった。
しかし、同様に剣が溶けてしまい、傷一つ追わす事は叶わなかった。

スイは冒険者の気配には気が付いていたが、到底脅威とはなり得ぬと判断した為、これをあえて無視した。

そして恐ろしい事を考えていた。

「お前たち2人に命令を下す。この魔力の持ち主を見つけ出し、殺せ」

スイは、斬り掛かってきた相手の2人に対して、振り向きざまに洗脳を使用していた。

「今回の相手は、雑魚をいくら用意した所で、無意味なようだね。ククク、面白い・・・、待っていろ。お前には、絶望という名の快楽を与えてやる」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ユウ視点

本日の討伐会議が終わり、宿に戻った俺は、ある異変に頭を悩まされていた。

「これは一体、何の騒ぎだ?」

宿屋の入り口に、おびただしい数の人の列が出来ていたのだ。
まるで、スキャンダルを起こした芸能人宅を取り囲んでいる報道記者のような感じだった。

俺は咄嗟に、透明化マントを羽織り、誰にも気付かれる事なく、部屋の中に入る事が出来た。

「あ、お兄ちゃん!お帰りなさい!外がね、大変だよ!」
「ああ、分かってるから、それともう少し小声で頼むよ。隠れて戻って来たのがバレちゃうから」
「一体、何をしたの?」
「知らん」

ルーがジト目で凝視してくるが、当然の事ながら、全く身に覚えが無かった。

「あるとすれば、取り囲んでいるのは、恐らく冒険者だ。アンデット軍団を討伐した俺たちに興味があるのかもしれない」
「追っ払いますか?マスター」
「そうだなぁ、、このまま居座られてもこっちも息がつまるしな」

ガツンと言ってやろうと、俺は意を決して入り口のドアを開ける。

すると、どういう事か、先程まで溢れかえっていた冒険者たちが誰一人として居なくなっていた。

「あれ、何処行った?」

レーダーにも反応は無かった。

後ろを振り向くと、先程までいた部屋ではなく断崖絶壁の崖上にいた。

流石にこれは異常だよな。
一体何が起こってる。

頭の中が整理できないまま、再度振り向くと、そこには懐かしき人物が立っていた。

ありえない・・

「母さんなのか・・?」

周りの景色も、いつの間にか記憶の中にある実家そのものの光景だった。
懐かしいな・・。

母親と瓜二つなその人物は、にっこりと笑顔のまま両手を広げていた。

これが夢だったならば、久し振りの元の世界を満喫するんだけどね・・。

「何がしたいんだいあんたは?それとも、不死の王ノーライフキングと呼んだ方がいいのかな?」

これは夢ではない。
何故かって?

それは、今までこっちの世界に来てから、一度たりとも元いた世界の夢を見た事がないらだ。
どんなに願っても見る事はなかった。
それを今更なんて事はありえない。

ならば、考えられるのは、幻術か何かの影響化にあるという事。
現状、俺に幻術なんかを仕掛けて来そうなのは、不死の王ノーライフキングしか考えられないからだ。

「あら、どうして分かったの?」
「それは、こっちが聞きたいな。どうして俺の場所が分かったんだ?」
「そんなの簡単だよ。 キミを知ってる者を洗脳して、色々聞きだしたんだよ」

厄介な能力を持ってるようだ。
恐らく冒険者の誰かだとは思うけど、そいつを通して幻術を掛けていると見て間違いないだろう。

俺の推測が正しければ、不死の王ノーライフキングは、まだマルガナ国には来ていない。
それだけは断言出来る。

俺が何の準備もせずに今に至っている訳じゃない。
いつ攻めて来てもいいように、幾つかの布石を張っていた。

ま、その布石すらも無効化する程の相手ならば、最初から俺たちに勝ち目はないだろう。

まずは、いつも使用している範囲探索エリアサーチだ。
不死の王ノーライフキングが俺の半径1km圏内に入れば、脳内アラームが鳴るように設定していた。
一度でもその姿を視認していれば、ターゲットを指定してセット出来る。
あの時、一瞬だけとは言え、この目で見る事が出来たのは大きい。
視認する前は、範囲探索(エリアサーチ)に映りすらしなかったけど、視認した直後からは、しっかりとその姿を捕らえていた。

そしてもう一つ・・

「あんたは、陽の光の下には出れないんでしょ?」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

処理中です...