幻想世界の統合者

砂鳥 ケイ

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第百八十四話:勝者の報酬

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ギールさんたちも、マルガナ国まで戻ると言うので、俺たちは「寄り道してから戻ります」とだけ告げて、別れた。

「私たちだけで、た、倒せるよね・・・」

いつになく不安を露わにしているルー。
多少悪戯をしたくなる衝動を抑えて、真面目に応えておく。

「たぶん、奴はもう戦えないだろう」
「どういう事?」
「あくまでも推測だけどな。俺との死闘の末に、奴は相当深手のダメージを負ってるはずなんだ。それこそ死んでもおかしくないレベルのな」
「死なないから不死の王ノーライフキングなんでしょ?」

ルーが、何言ってるの?という顔で俺を見る。

「ああ、言ってなかったけど、あいつは異常なまでの再生能力を持ってるだけで、不死じゃないみたいだな」

直接本人に聞いたのだから間違いないだろう。

「え、そうだったの!なら、私でも勝てるかも!」

一転して余裕の態度を見せ出したルー。
やはり、ビビらせてイジるべきだっただろうか。

「でも、再生出来るならもうダメージも回復しちゃってるんじゃ?」
「時間が経過すればそうかもな。だから、回復される前に見つけ出したい所だな」

いくら奴が再生に長けているとはいえ、30分そこらで全回復まではいかないだろう。
多少は戦えるまでにはなっているかもしれないが、、

程なくして、俺たちは不死の王ノーライフキングと対峙した。

隠れるそぶりもなく、その場に佇んでいた。
それにしても、なんと弱々しい姿なのだろうか。

警戒して完全武装でこの場に赴いていたが、その警戒心すら解いてしまうほどに目の前の人物は酷く憔悴しきっているように見えた。

そして、予想していなかった言葉をスイは発した。

「待っていたよ。そして、おめでとう」

どのような意味を込められて発せられた言葉なのか、俺には分からなかった。

「どう言う意味だ」
「ククク、そのままの意味だよ。キミはボクに勝った。勝者は讃えられるべきでしょ?」

その言葉にも驚かされたが、一番驚いたのは、スイのHPだった。

0なのだ。

この世界の全ての生物にはHP即ち生命値が存在する。
当然、生命値が0になればどんな生物でも死は免れない。
しかし、目の前のスイは間違いなくHPの数値が0となっていた。

「スイ、、、死んだのか?」

スイはニヤリと頬を緩ます。

「キミには圧倒されたよ。まさか、ボク自身に本当の意味での死が訪れようとは思っていなかった。だが、未練はない。キミの事も別に恨んではいない。キミがボクよりも強かっただけ。ただそれだけのことさ。キミを待っていたのは、この残された最後の力を使い、キミに祝福を授けようと思ってね」

そう言い、スイは何かの巻物の束を取り出した。

「廃れてしまうというのは、実に寂しい事だよ。キミもそう思わないかい?だから、これをキミに贈ろう」

念動力で操られたかのように巻物の束が、俺の元へと空中を渡ってきた。

失われた魔術ロストマジックか」

巻物の束には、それぞれ名が記されていた。
一番上にあったのは、ディスペルマジックだったのだ。

「ボクが使える失われた魔術ロストマジックの全て記してある魔導書さ。取得するのには、相当の苦労が必要だろうけど、キミなら案外すぐに取得出来るかもね。さて、この姿を維持するのもそろそろ限界のようだ」

「礼は言わないぞ。俺たちはあくまで敵同士なんだから」
「うん、それでいいよ」

スイは後ろを振り返り、歩き出した。

「あ、最後にキミの名前を教えてくれないか?」

名を尋ねてきたその表情は何処か晴れ晴れしていて、親しい間柄に見せるような晴れやかな笑顔だった。

「戦闘の際に一度名乗った気もするけどな。俺はユウだ」
「ユウか。今度はちゃんと覚えておくよ。ボクを倒したユウ。キミがこれからも精進していけるように願っているよ」

スイは再び背を向け、歩き出す。
そして、その身体がどんどんと薄くなっていく。

「楽しかったぜ!スイとの戦い!生まれ変わったら、今度は一緒に旅しようぜ!」

歩んでいた足をほんの一瞬止め、コクリと頷く素振りを見せたかと思うと、スイは跡形もなく消えてしまった。

これが不死の王ノーライフキングと呼ばれ皆から恐れられていた存在の最期だった。

「・・・そんなに悪い奴じゃなかったのかもな」


その後、マルガナ国まで戻った俺たちを待っていたのは、祝福と歓喜の嵐だった。 


強大な敵を打ち倒した事により、国中がお祭りムード一色に染まっていた。
次から次へと運び込まれる料理の数々にユイの目が終始キラキラと輝いていたのは言うまでもない。
「是非恩賞を与えたい」という国王の申し出を丁重にお断りする。
その際、ルーが「もったいない!ユウがいらないなら私が貰うもん!」などと言うものだから、グリグリの刑に処した事も言うまでもない。

俺は元々、こういう催しが得意ではない為、こっそりと一人抜け出し、夜風に吹かれながら外のテラスで涼んでいた。
アルコールは摂取していないが、会場の熱気に晒され、少しばかり身体が火照っているのを自分でも感じる。

「主役に抜けられてもらっては、折角の宴が台無しじゃないか」

声を掛けてきたのは、勇者のギールさんだった。

「勘弁して下さいよ。あーいうのはどうも苦手なので」
「はははっ冗談さ、隣いいかい?」
「いいですよ」

ギールさんは、ワイングラスを片手に真剣な顔立ちで俺を見る。

「君には感謝している。だから改めて言わせて欲しい。本当にありがとうと。君はこの世界の英雄だ。もしも不死の王ノーライフキングが世に放たれていたならば、尋常ではない数の被害が出ていただろう」
「俺一人ではとても、仲間たちやギールさんたちの力があってこそですよ」
「その謙虚さも申し分ないね」

何の事だろうか?

「実はね、ユウ殿に勇者の称号を与えたいと、この国の国王が申しているんだ」

勇者だって!?

「どうだろうか?答えは今すぐじゃなくていいから、考えてみておいてはくれないだろうか」

答えは既に決まっている。

「とても良い話だと思いますが、俺には勇者の称号は荷が重すぎます。それと、勇者は国に所属すると聞いています。そうなると、今までのように自由に外を出歩く事は出来ないですよね?俺たちは、もっともっとこの世界を旅したいと思ってます。なので、お断りさせて下さい」
「確かに勇者というのは、国お抱えの職業さ。好き勝手出歩く事は出来ないが、特例としてそれが許される事もある。僕みたいにね。だけど、それでもユウ殿は首を縦には振らないだろうね」
「すみません」

勇者って柄じゃないんだよな。
それに、メルウェル様との約束の件もあるしね。
こんな場所で立ち止まってはいられない。


翌朝、目が覚めるとユイの姿が部屋の中になかった。
俺だけ、先に帰り、そのままいつの間にか寝てしまっていた。
隣でとても人様には見せられない変顔をしながら寝ているルーを容赦無く叩き起こす。

「ぷぎゃぁ」

起き抜け早々変な声を出している。

「もう!何するんですかぁ!起こすなら優しく起こして下さいよぉ!これでも一応可憐なレディなんですからね!」
「まだ寝ぼけてるみたいだな。もう一発チョップをお見舞いしようか?」
「いあ、もう目が覚めました!大丈夫です!必要ありません!」
「なぁ、ユイを知らないか?」

ルーが辺りをキョロキョロする。
そして、何かを思い出したのか、ポンッと手を叩く。

「あ、そうでした。昨夜、ここに帰る途中に忘れ物したって言って、お城の方に引き返して行ったんでした。そのまま私だけ戻って、気が付いたら朝でした」

俺はジト目でルーを睨む。

「あははっ・・・、まだ忘れ物探してるの・・かなぁ・・」
「ルー、年長者として、いや姉として妹の面倒を見るのは当然だよな。俺が帰り際にユイを頼むぞって念押ししたよな?」
「そ、そうでしたっけ・・・なにぶんお酒が回ってましたから・・あははっ・・・ぷぎゃぁ」

本日2回目のチョップが炸裂した。
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