幻想世界の統合者

砂鳥 ケイ

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第百八十六話:もう一人のハイエルフ

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「私は、ミラ。ハイエルフのミラ」
「じゃ、改めて。俺は ユウ。宜しくな」
「私は、ルーだよ。お姉ちゃんって呼んでいいからね」

ルーが姉とか、妹は何だか不敏だな。
脳内に妹に注意されてるルーの姿が思い浮かぶ。

迷子のハイエルフの少女を故郷へと送り届ける事になり、俺たちが寝泊まりしている宿へと連れ帰ってきた。

「という訳で、この子を故郷へ返す為、暫く俺たちの旅に同行する事なったから」

一人留守番するアリスに事情を説明する。

「了解しましたマスター。彼女を最重要保護対象として登録します」
「ああ、頼む。それに調べ物がしたいから、少し出掛けてくるよ。留守番たのむぞ」
「いってらっしゃい!」


国立図書館に足を運び、ハイエルフの里についての情報が得られないか探して見るつもりだった。
それに、少しの間とは言え、仲間が増えたんだから、何かお祝いしないとね。
美味しい食材でも買って、たまには料理でもしてみるのも良いかもしれない。

国立図書館には、スイの事を調べる為に一度訪れた事があった為、ショートカットを兼ねて転移を利用する。

この転移。非常に便利なんだけど、目的地を鮮明にイメージしなければ、転移する事が出来ない。
一度訪れたからと言っても脳内にイメージ出来なければ、転移出来ない。
記憶力が良くないと駄目という事だ。

国立図書館へ到着した俺は早速ハイエルフの里について調べる事にする。



一方その頃、ユイたちの方は・・・

「へー、ミラちゃんは、モンスターテイマーなんだぁ。じゃあさ、何かモンスターを召喚出来るの?」

ミラは、コクリと頷いた。
 
「見たいなー!」

ミラは目を瞑り、呪文を唱える。
勿論、声には出していない。口をパクパクとさせているだけだった。

すると、ミラの膝の上に小さな手のひらサイズのモンスターが現れた。

「きゃー!何それっ!可愛い!」

ハムスターのような茶色と白のマダラ模様の鼠だった。

「ねえ、触ってもいい?」

ミラはコクリと頷く。

「いいなー!ルーちゃんの次は私ね!」

二人でミラの召喚したモンスターを取り合いしている。

「ミラ、この子名前はないの?」
「・・・ミュウ」
「ミュウちゃんって言うんだ!」

ユイとルーに''もふもふ''されるミュウ。
それは、俺が戻って来るまで続けられた。


国立図書館にて~

「おい!どこにもないじゃないか」

ハイエルフの里について記載してある本を探す事早、4時間が経過していた。
ハイエルフの基本的な情報についてはいくらかあったんだけど、肝心の住処については全く記載がなかった。
そもそも、エルフなどの希少種にしたって、居場所に関しては秘匿されている。

「やっぱり、そう簡単にはいかないか・・」

がっくりと肩を落として、帰路に就く。

その道中に妙な人集りが出来ているのを見つけたので、興味本位で近付いてみる。
どうやら冒険者たちの集まりのようだ。

「へっへー、こいつを奴隷として売り飛ばせば、残りの人生遊んで暮らせるぜ」
「上手いことやりやがったな。何処で見つけたんだよ」
「郊外にあるエアード高原だな」
「里の場所が分かれば俺たちも一攫千金が狙えるって事か!」
「あー?聞いても無駄だぜ。何度問い詰めたが、こいつ口を割らねえどころか喋りもしやがらねえからな」


自分よりも背丈のある冒険者たちが前をがっちりガードしていて、問題の人物がよく見えない。

押し退けて前に出ると、首と両手を鎖で繋がれている痛々しい少女の姿がそこにあった。

「それにしても、エルフの奴隷なんて珍しいな」

野次馬の一人がそんなセリフを言っていたが、俺には目の前の少女が、エルフではなく、ハイエルフである事が見えていた。

(どうしますか?ユウさん)
(これも何かの縁だな。でも、荒事にだけはしたくはないな)

「なあ、その子を売ってくれないか?」

ざわついていた周りが一斉に静まり返った。

「ああ?なんでえ、誰だよお前さんは?」

この場にいる全員の視線が俺へと集まる。
不死の王ノーライフキングを討伐したのが俺だと言うのは、実は一部の関係者しか知らない。
こちらからお願いして、口外しないように言っている。
適当に、穏やかに冒険がしたいという理由付きで。
勇者とか英雄扱いされるのは、御免だ。

というような経緯もあり、今この場にいる冒険者は俺の事を知らないようだ。

「ただの金持ち冒険者さ。それより幾らで売ってくれるんだい?」
「悪いがな、あんちゃん。こいつは明日開催される奴隷オークションにかけるのさ」
「言い値を出すと言っても?」
「あんたもしつこいな。そんなに言うなら金貨10枚でも出せるってのかい?」
「おいおい、いくらなんでもそいつは高すぎじゃないか?」
「過去に一度だけエルフの取り扱いがあった時は、確か金貨3枚だったぞ」

静まり返っていた周りが再び騒つく。

俺は懐から出すフリをしてストレージから金貨を10枚取り出した。

「これでいいか?」
「なっ・・あんちゃん貴族か何かかよ・・」

(相変わらずですね。また人助けですか?)

精霊のセリアだった。
姿も見えないのにいきなり話しかけられるのはビックリするんだよね。

(まあね。それにお金はそれこそ山のようにあるからね)

俺は別にこのハイエルフの少女に同情して解放してあげる訳ではない。
同情して一から百まで解放していれば、それこそ幾らあっても足らない。
せめて手の届く範囲くらいは助けてあげたいとは思うけど、今回は別の目的があった。
奴隷らしく身の回りの世話をして貰う?
それも違うな。

このタイミングでもう一人のハイエルフに会えるなんて何かの運命を感じられずにはいられない。
もしかしたら神の掌の上で踊らされているのかもしれない。いや、本当にありそうで怖い。

「あんちゃん本当にいいのかよ?前言撤回はなしだぜ?」
「構わないよ。取引成立だな」

無事に商談が成立し、一緒に奴隷商会に移動する事になった。
しかし、それは不要と伝え、皆の反対を押し切り、その場で檻からハイエルフの少女を出した。

奴隷商会で施される奴隷紋。
全ての奴隷に施される印であり、奴隷とそれ以外とに区分けする目印でもある。
しかし、ただの目印ではなく、主人の言う事に意を反すれば直ちに全身に強烈な痛みが走る。
連続で発動させれば、それこそ対象を死に追いやる程の効力がある。別名絶対服従の印。

周りが反対したのは、奴隷紋をせずに檻から出すなど、折角大金をはたいた奴隷に逃げられでもすれば、目も当てられないと言う事だからだ。
俺が奴隷商会行きを断ったのは当然の事ながら、奴隷紋など必要がないし、奴隷紋は一度施されると決して消すことが出来ない。
仮に奴隷を辞めても絶対服従の効力が消えるだけで印
自体を消す事は出来ない。
そんなものを年端のいかない少女に施すなんて真似が出来る訳がない。

檻から出された少女は、逃げるどころか俺の手を掴み寄り添って来た。

「逃げないのか?」

少し意地悪な質問をしてみた。

「え、なんで逃げる必要があるんですか?」
「そうか、一応確認してみただけだ。俺の名前はユウ。よろしくな」
「私はアニ。よろしくね旦那様・・・

旦那様・・・?聞き間違いか?
それにしても、人懐っこいと言うか、馴れ馴れしいと言うか、妙に聞き分けが良い気がする。今も俺の右腕を掴んで離さない。

「アニは俺の事が怖くないのか?」
「怖い?なんでですか?旦那様からは、仲間と同じ匂いがするから、逆に安心しますよ」

そう言うと、抱きついて顔をスリスリするアニ。
仲間と?ああ、ミラの事だろうか?

「訳あって、今アニと同じ種族の子と一緒にいるんだよ」

アニと一緒に皆の待つ宿へと戻った。
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