幻想世界の統合者

砂鳥 ケイ

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第百九十四話:迷宮?トレジャー?ダンジョン?

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不幸にもモンスターの被害にあってしまった冒険者を丁重に供養した一行は、更に奥へと進む。

冒険者である以上、一度ダンジョンに足を踏み入れれば、モンスターとの戦闘で命を落とそうが、手足をもがれようが、文句を言うものは誰もいない。
冒険者とは、冒険者になったその日以降、常に死と隣り合わせの職業だ。
自分の身は自分で守る。それが出来なければ冒険者をやる資格は無い。
しかし、今回に限っては、事前に知らされていた訳でもなく、ただの迷宮であってそれ以上でもそれ以下でもない。
故に誰もがモンスターが出るとは想定していなかった。

「エレナさん、ごめんなさい。まさか、モンスターが出るとは思わなかったから・・知ってたら行かなかったのに・・」
「ううん。私も娯楽の為の場所だと思っていたので・・考えが及びませんでした」
「どうするー?まだ入ったばっかだし、戻る?ミラちゃんもいるし」
「そうですね、事情を説明して途中棄権させてもらいましょう」

ユイは、若干残念そうな顔をしていたが、場合によっては命の危険になりうる恐れもある為、これを了承する。

元来た道を戻る事1時間弱。

「あれ?絶対おかしいよ。だって、さっきはここに壁なんてなかったもん」

ユイの盗賊スキルの一つに、ルート把握と言うものがある。
今回のような迷いそうな迷宮にはもってこいのスキルで、一度通った道を把握すると言うもの。
しかし、このスキルを使ったにも関わらず、一向に入り口へと辿り着くことが出来ずにいた。

「完全に迷っちゃいましたね」
「こうなったら!出口に向かうしかないね!でもエレナさん、ミラちゃん、大丈夫だよ。私が守ってあげるから!大船に乗ったつもりで居てね!」


ルーの胸を張った誇張から、既に早8時間が経過していた。
自分たちが前に進んでいるのかさえ分からずにただ宛もなく進んでいた。

「制限時間って確か3時間でしたよね」
「うん、入り口のおじさんが言ってたよ。制限時間を過ぎてもクリア出来なかったら運営の救助が来るって」
「流石に捜すのに手間取ってるって訳じゃなさそだねぇ。クーちゃん何とかならない?」

ルーの頭の上に鎮座している精霊クロウは、怪訝そうな顔をしている。

「ルーの使役している索敵能力を持った精霊でも、こう閉鎖的な空間だと効力を発揮しないね。とにかく前へと進むしかないよ」

グゥ、と可愛らしい音がなる。

「お腹、空いたね・・・」

まさかこんなに長丁場になるとは思わず、食料の類を一切持ってきていなかった。
道中に買いこんでいた物も既に消費してしまっている。

「一先ず、交代交代で睡眠を取りませんか?流石にぶっ通しで進むのは体力的にも精神的にも厳しいと思います」

実際この迷宮に入ってから、少なくとも二桁以上の回数モンスターと交戦していた。
大した強さではなかったにしても、連戦からくる疲労とユイに至っては、常にエーテルライトを使用し続けている為、魔力的にも限界が近かった。

「全員仮眠を取っていいよ。その間は私が見張り役をしよう」

申し出たのは、精霊クロウだ。
エレナが申し訳なさそうにしている。
自分では戦闘の役にはたてない為、負い目を感じているようだった。

「大丈夫だよ。クーちゃんは、すっごく強いから」
「・・・分かりました。精霊クロウ様、すみませんが、宜しくお願いします」
「うん。嬢ちゃんたちは私がこの身に変えても守るよ」

安眠とまでは言えないが、ある程度の休息を取ることが出来たのは、幸いだった。
これも全て、夜通し警護してくれた精霊クロウの働きのおかげだった。

「クロウ様!」

起き抜け一番に、エレナがクロウの元へと駆け寄る。
それもそのはず、クロウは全身傷だらけで、立ってるのもやっとな感じだったからに他ならない。

エレナは、すぐに治癒ヒールを行使し、精霊クロウの傷を癒す。

「ふぅ、助かったよ。あいつらしつこくてね」

見ると、遠くの方からこちらを伺っている存在がいた。
暗めから目をギラギラと光らせている。

飛び掛かってくる前に、朝の運動と称して、ルーがいつの間にか召喚していた精霊の攻撃で沈めていく。

「このダンジョンは何か変だね。エンカウント率が半端ない」
「えんかう?」
「ああ、ごめんモンスター発生率だよ。倒しても倒しても沸いてくるんだ。それと・・・」

クロウは、この現状をユウと一緒にいるであろうセリアに連絡を試みたらしいのだが、通じなかったようだ。

「私もお兄ちゃんに連絡しようとしたんだけど、喋り掛けても返事がないんだよね」

このフィールドの効果なのか、外部への連絡が一切遮断されていた。

その後も、そこら中に沸くモンスターに足止めされながらも宛てもなく彷徨い続ける。

「一体、私たちどれくらい潜ってるのかな・・」

外界とは隔絶された空間により、時間の流れどころか、昼なのか夜なのかの区別すら出来ない。

「問題なのは、食料ですね。水に関しては、ルーさんの精霊様のおかげで工面する事が出来ますけど、こればかりは・・」
「流石に食べ物を作る精霊は持ってないしなぁ」

エレナとルーがどうしたものかと思案していると、さっきから独り言をブツブツ言っていたユイが疑問を投げかける。

「このダンジョンおかしいよ」
「ん、何がおかしいの?」
「まるで生きてるみたいなんだもん」

ユイ曰く、以前は通路だった場所が壁で塞がれていたり、逆に壁だった場所が、通路になっていたりとまるで生き物のようにその形状を変えていると言う。

「私はダンジョンと言うのは初めてですが、確かに妙な話ですね。例えば、視覚を紛らわす幻影みたいな術に陥っている可能性はないですか?」
「もしそうだとすれば、いつもはユウさんがいて、状態回復リフレッシュをしてくれるんだけどねー」
「たぶんだけど、そんなのじゃなくて、この迷宮ダンジョン自体が何か意思を持っているんだと思う」
「仮にそうだとしたら、このまま素直に出口まで連れてってくれるとは思えないですね」
「私にいいアイデアがあるよ!」

全員の視線がルーに集まる。

「壁を壊して真っ直ぐに進んだら、いつかは出られるでしょ」

ドヤ顔のルーにユイもエレナでさえ、冷めた目をしている気がする。

「無理だよ。お兄ちゃんがいたら魔術で破壊出来るかもしれないけど、見てあれ、あそこの壁と同じだったら厚さは1m近くはあるんだよ」

年下のユイに全面否定された事にルーは・・・・落ち込んでなどいなかった。

「んー、良い案だと思ったんだけどなぁ・・・私の元いた世界では、そんな感じで壊して脱出するような映画があったんだけどなぁ・・」

ボソボソと呟くルー。しかし、前方へと歩き始めていた他の者にその声は届いていない。

更に宛てもなく進む事数時間。
既に迷宮トレジャーもとい、ダンジョンへと足を踏み入れてから何時間が経過したのか、誰も正確な時間を把握出来ていなかった。

先程から可愛らしい虫の音が鳴り響いていた。

「うぅ・・・こんな事なら、たくさん食い貯めておけば良かったよぉ」

モンスターとの連戦で、消耗は激しい。
交代交代で仮眠を取りながら何とかここまで進んで来たが、正直出口に向かっている道なのかどうかも分からないまま、精神的疲労、肉体的疲労もここへ来て限界が近付いていた。

一番元気なのは、この中では最年少のミラだった。

そのミラがここへ来て初めて自分の意思表示をしたのだ。

クイクイとユイの袖を引っ張っている。

「どうかしたミラ?」
「この子なら出口分かるかも?」

ミラが微かに聞こえる程の小声でユイに呟くと、口をパクパクとさせ、やがてミラの目の前の地面に魔法陣が浮かびあがる。
そして、その中から出て来たのは、体長30cm程度の可愛らしい妖精の姿をした存在だった。
ミラは、自身が使役しているモンスターを召喚したのだ。

「ユリーカ、超音波で出口分かるかも」

ユリーカは、目が見えない代わりに2本の触覚から超音波を出し、物体の把握が可能だった。
その有効範囲は1kmにも及ぶ程だった。

「ミラ凄い!そんなの出来るんだ」

ユイがミラの頭を撫でる。

残った最後の力を振り絞り、一行はユリーカを先頭に突き進む。

モンスターは、固有種を除き喋ることは出来ない。
しかし、モンスターテイマーである主人とは、ある程度の親密度を達成すれば、念話による意思疎通が可能となる。

暫く進んだ後だった。
ユリーカが空中で止まる。

「だめ・・・ユリーカ、地形が変わる?言ってる」
「やっぱりね。順路が分かっても出口まで辿り着けないんじゃ、どうしようもないよ」

僅かながらでも脱出出来るかもしれないという期待がここに来て失われてしまった落胆は大きい。

地面へと塞ぎ込む。
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