幻想世界の統合者

砂鳥 ケイ

文字の大きさ
230 / 242

第二百三十一話: 意外な人物

しおりを挟む
「何やらボクがいない間に面白そうな事が起きてるみたいだね」

現在俺は、完全復活した不死の王ノーライフキングことスイを前にしていた。
一触即発の空気とまでは行かないが、一応は敵同士の間柄に僅かばかりの緊張が走る。

「この世界の危機が面白いとは思わないけどな」
「ふふ、ボク以上の危機が存在するとは思えないけどねって、そんな顔しないでくれ。冗談さ。一度は言ってみたいセリフだったんだよ。分かるでしょ?」

分からないでもない所が正直辛い所だな。

「で、冗談は置いといて、スイはこれからどうするんだ?」
「そうだね、今やりたい事は大きく分けて二つあるよ。まず一つ目、ユウ。キミとの再戦を希望する。勿論互いの命を懸けてね」

やはりそう来たか。
でも正直戦うのは御免被りたい。
今は一時でも時間が惜しい。

「もう一つは?」

内心では動揺しつつ、眉一つ動かさない俺に対してスイはつまらないなといった表情をしていた。

「ふ、喰えないね。そうだね、もう一つはね、この世界を征服しようとしている奴等を皆殺しにすることさ。何処の馬の骨とも分からない連中にデカイ顔されているのは正直腹立たしいね。一番許せないのは死神野郎さ。ユウ、キミは死後の世界を知っているかい?」
「唐突だな。生憎死んだ事はまだないから、知らないよ」
「中々に居心地がいい所だったよ。ユウも是非一度訪れてみるといい」

それは即ち、死ねって事だよな。それに一度はって、観光で訪れるような場所でもあるまいし、一度行ったら普通は戻ってこれないんじゃないか?

「まぁ、機会があったらね」
「うん」

何故だか満足げな笑みを浮かべているスイ。

さて、切り出してみるか
今までの空気を払拭するように少なくない威圧を相手に向け、同時に真っ直ぐに相手の目を見る。
今から話すことが冗談ではない事をスイも理解したようだ。

「スイ。互いの目的は同じだ。俺も奴等の暴走を食い止めたい。暫くの間だけでいい。俺達と停戦協定を結ばないか?」
不死の王ノーライフキングとして恐れられているボクと一時的にでも仲間になりたいと?」
「そうだ」

「あははっ、面白いね、ボクを仲間にしたいだなんて。今まで何千年と生きてきたけど、一度も言われた事はないよ。でもそうだね。一つ約束を聞いてくれたらその提案を受け入れてもいいよ」

お前の望みなんてこれしかないよな。

「この件が片付いたら俺との再戦。これでどうだ」
「本気の。を付け足しといて欲しいかな」
「分かった。それでいい」
「なら暫しの間、宜しく頼むよ」

互いに握手を交わした。

「さて、仲間の援護に行こう」

「その必要はありません」

声に驚き振り向くと、戦いを終えたジラとクロが戻って来た。
範囲探索エリアサーチを見ていなかったな。

「早かったな。もう終わったのか?」
「たいした事なかった」
「こちらは二人でしたからね、苦戦とまでは行きませんでした。私達もリミッター解除して本気出しましたしね」
「うん」

え、何リミッター解除って?
今よりまだ強くなるの?
まじで?

我が仲間ながら頼もしい限りだな。

「キミたちとも是非戦ってみたいね」

こらスイ。物騒な事は言わなくていいから。
ジラとクロが誰だよお前?的な目をしているじゃないか。

「紹介するよ。たった今俺達の仲間になったスイだ。宜しく頼むよ」

いきなりの展開に若干動揺しているようだ。

「ジラです。宜しくお願いします」
「クロ」

絶対に、間違っても、冗談でも自分の正体をバラすなよと視線を送ったが、どうやら俺の願いは通じなかったようだ。

いや、寧ろワザとだろ!

「初めまして、お嬢様方。不死の王ノーライフキングと言います。どうぞよしなに」

今の発言に警戒レベルを最大限にし、武器を構える二人。

まぁ、そうなるよね。

はぁ。

「2人とも、大丈夫だから武器を降ろしてくれ」

渋々といった感じだが、武器を降ろすジラとクロ。
しかし、スイの事を睨みつけ、警戒を怠っていない。

これは少しだけ俺達の関係を説明しておく必要がありそうだな。
スイとの停戦協定を結んだ事を話した。
勿論その条件は濁しておく。
それを知られれば、きっと2人は俺の為に刺し違えてでもスイを消そうとするだろう。

「それにしても、魔界の方は大丈夫かい?」

転移門の方を見ながらスイが呟く。

スイは、先程まで奴等と一緒にいた。
故に奴等の戦力を把握しているのだろう。

「スイ、彼奴らの人数と戦力は分かるか?」
「うーん、そうだね、人数は凡そ200位だね。その中でも戦力になりそうなのは半数くらいだと思うよ。で、ボクの分析で把握出来なかったのが5人いたね。恐らく、相当の実力があるんじゃないかな。ま、ボク程じゃないけどね」

スイの感覚で戦力と捉えられるレベルが今一分からないが、恐らく相当に実力があると見たほうがいいだろう。

「ジラ、一応今の情報をクオーツのメンバーに流しておいてくれ」
「分かりました」

(ユウ様、7大魔王と思しき情報が他の精霊より連絡が入りました)

まさに精霊ネットワークとも言えるこの世界の隅々まで展開している精霊達に協力して貰って、7大魔王に動きがあれば逐一連絡が入るようになっている。
また、精霊と信仰の厚い者を介して、7大魔王の訪れとその目的、脅威を全世界に広めて貰っている。
本来は俺がしなければならなかった事だが、この広い世界を一人で回るのは何ヶ月掛かるか分かったものじゃない。
精霊王に頼み込み、快く了承してくれた。

(シア大陸にあるユミルの砂宮と呼ばれる街が、何者かに襲われているようです)
(このタイミングだからな、7大魔王絡みでまず間違いないだろう)

「聞いてくれ、新たな情報が入った」

先程の内容を伝え、次の目的地を話す。

以前購入していたこの世界の地図をストレージから取り出す。
えっと、ユミルの砂宮か。同じシア大陸でも真逆の方向だな。ここからだと大陸の玄関口でもある港町ペリハーファから向かうのが一番だろう。

「ユミルの砂宮か。少し離れてるけど、港町ペリハーファから移動するしかないみたいだな」
「すみません、私も行った事はないので、ユウ様と同じです」

ジラも俺同様に転移を使用する事が出来る。
過去に一度でも訪れた事がある場所へ一瞬で移動出来るチートみたいな魔術。それが転移。
本来は魔族だけの専売特許だ。
俺の場合は、何というか限界突破した際に習得してしまった。

人族をやめて魔族になったとか?
まさかね。

全員と手を握り、転移した。

「目的地は、真っ直ぐ南東の方向だ。あまり猶予はないから、ついてこれないなら置いてくからな」

それからほぼノンストップで12時間程走り続けた。

割と本気の滑走に皆息一つ切らさずに、着いて来たのは言うまでもない。

(セリア、あれが報告のあったユミルの砂宮のはずだ)
(はい、ここです。ユミルの砂丘を守護している砂の精霊によると、一度攻めて来た族は何故だか一旦退いたそうです。だから今は安全みたいです)
(不可解だな。退いた理由は分からないけど、それなら一度中に入って被害状況と警備状態の確認をした方がいいか)

「どういう訳か、奴等は森の方に退いたらしい。詳しい話が聞きたいから一旦あの街に行こう」
「あの中には敵はいないんでしょ? ならボクは森に逃げた連中の偵察でもしてくるよ」
「一人で大丈夫か?」
「誰に物を言ってるんだい?何ならボク一人で潰しちゃってもいいんだけどね」
「分かった。だけど、偵察だけだからな。まだ7大魔王の奴等だと断定された訳じゃないんだから」
「分かってるさ。じゃあ、行ってくるよ」

その場からスイが消えた。

街へ向かうべく、歩み出す。
しかし、ジラがその場から動かなかった。

「本当に彼は信用出来るのですか?」

不愉快そうな顔をするジラ。
ジラが疑問に思うのも最もだ。

「ユウ様の側にあんな危険人物を置いておく事なんて、やっぱり私は賛同出来兼ねます」
「大丈夫、おかしな動きしたら私がやる」

ジラが、クロの頭を優しく撫でる。

「無理です。悔しいですが、私とクロちゃんの2人掛かりで不意打ちしても恐らく彼には勝てないでしょう。その強さは認めます。確かに彼が仲間となってくれるのならば心強いです。ですが、彼は我々魔族に対しても過去に多大な犠牲を出しています」

スイ、お前嫌われすぎだろ。
まぁ、やって来たことを鑑みるとしょうがないのかもしれないけど。

「ジラ、俺を信用して欲しい。確かにあいつは、過去にたくさんの命を奪って来た。それは事実だ。それを全部忘れてくれとは言わない。今は目先の脅威を打破する為に一時的に手を組んでいる。そういう約束だ」
「それは分かります。ですが、彼が裏切らないと断言出来ますか?」

それを言われると正直辛い。
だけど、俺には分かる気がするんだよね。
なんとなくでしかないんだけど、あいつは、スイは、嘘はつかないと。
だけど、ただなんとなくを理由には出来ない。
そんなの誰が信じてくれる?

「断言は…出来ない。でもこれだけは言える。例えあいつが裏切ったとしても俺は絶対に負けない。2人も俺が守るから。それじゃ駄目だろうか?」
もっと気の利いた事が言えればいいんだろうけど、結局そんな理由しか今は思いつかない。

ジラが目を見開いている。
やはり、こんなのじゃ納得してくれないか。

横からクロが割って入ってくる。

「守るのは私たち。だよねジラ?」

ジラが溜息を漏らす。

「はぁ、、そうですね。ユウ様にそうまで言われてしまえば、仕方ありませんね。それに万が一にもそんな事になっても、せめて盾になるくらいなら――ふぎゃ!」

ジラにチョップをお見舞いした。

「俺のせいで仲間達が傷付く事は許さないから」

クロがジラの袖を引っ張る。

「大丈夫。私たちが強くなればいい」

若干涙目のジラをクロがあやすと言うあまり見ない光景を横目に見つつ、俺達はユミルの砂宮へと入る。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

処理中です...