幻想世界の統合者

砂鳥 ケイ

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第二百三十一話: 意外な人物

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「何やらボクがいない間に面白そうな事が起きてるみたいだね」

現在俺は、完全復活した不死の王ノーライフキングことスイを前にしていた。
一触即発の空気とまでは行かないが、一応は敵同士の間柄に僅かばかりの緊張が走る。

「この世界の危機が面白いとは思わないけどな」
「ふふ、ボク以上の危機が存在するとは思えないけどねって、そんな顔しないでくれ。冗談さ。一度は言ってみたいセリフだったんだよ。分かるでしょ?」

分からないでもない所が正直辛い所だな。

「で、冗談は置いといて、スイはこれからどうするんだ?」
「そうだね、今やりたい事は大きく分けて二つあるよ。まず一つ目、ユウ。キミとの再戦を希望する。勿論互いの命を懸けてね」

やはりそう来たか。
でも正直戦うのは御免被りたい。
今は一時でも時間が惜しい。

「もう一つは?」

内心では動揺しつつ、眉一つ動かさない俺に対してスイはつまらないなといった表情をしていた。

「ふ、喰えないね。そうだね、もう一つはね、この世界を征服しようとしている奴等を皆殺しにすることさ。何処の馬の骨とも分からない連中にデカイ顔されているのは正直腹立たしいね。一番許せないのは死神野郎さ。ユウ、キミは死後の世界を知っているかい?」
「唐突だな。生憎死んだ事はまだないから、知らないよ」
「中々に居心地がいい所だったよ。ユウも是非一度訪れてみるといい」

それは即ち、死ねって事だよな。それに一度はって、観光で訪れるような場所でもあるまいし、一度行ったら普通は戻ってこれないんじゃないか?

「まぁ、機会があったらね」
「うん」

何故だか満足げな笑みを浮かべているスイ。

さて、切り出してみるか
今までの空気を払拭するように少なくない威圧を相手に向け、同時に真っ直ぐに相手の目を見る。
今から話すことが冗談ではない事をスイも理解したようだ。

「スイ。互いの目的は同じだ。俺も奴等の暴走を食い止めたい。暫くの間だけでいい。俺達と停戦協定を結ばないか?」
不死の王ノーライフキングとして恐れられているボクと一時的にでも仲間になりたいと?」
「そうだ」

「あははっ、面白いね、ボクを仲間にしたいだなんて。今まで何千年と生きてきたけど、一度も言われた事はないよ。でもそうだね。一つ約束を聞いてくれたらその提案を受け入れてもいいよ」

お前の望みなんてこれしかないよな。

「この件が片付いたら俺との再戦。これでどうだ」
「本気の。を付け足しといて欲しいかな」
「分かった。それでいい」
「なら暫しの間、宜しく頼むよ」

互いに握手を交わした。

「さて、仲間の援護に行こう」

「その必要はありません」

声に驚き振り向くと、戦いを終えたジラとクロが戻って来た。
範囲探索エリアサーチを見ていなかったな。

「早かったな。もう終わったのか?」
「たいした事なかった」
「こちらは二人でしたからね、苦戦とまでは行きませんでした。私達もリミッター解除して本気出しましたしね」
「うん」

え、何リミッター解除って?
今よりまだ強くなるの?
まじで?

我が仲間ながら頼もしい限りだな。

「キミたちとも是非戦ってみたいね」

こらスイ。物騒な事は言わなくていいから。
ジラとクロが誰だよお前?的な目をしているじゃないか。

「紹介するよ。たった今俺達の仲間になったスイだ。宜しく頼むよ」

いきなりの展開に若干動揺しているようだ。

「ジラです。宜しくお願いします」
「クロ」

絶対に、間違っても、冗談でも自分の正体をバラすなよと視線を送ったが、どうやら俺の願いは通じなかったようだ。

いや、寧ろワザとだろ!

「初めまして、お嬢様方。不死の王ノーライフキングと言います。どうぞよしなに」

今の発言に警戒レベルを最大限にし、武器を構える二人。

まぁ、そうなるよね。

はぁ。

「2人とも、大丈夫だから武器を降ろしてくれ」

渋々といった感じだが、武器を降ろすジラとクロ。
しかし、スイの事を睨みつけ、警戒を怠っていない。

これは少しだけ俺達の関係を説明しておく必要がありそうだな。
スイとの停戦協定を結んだ事を話した。
勿論その条件は濁しておく。
それを知られれば、きっと2人は俺の為に刺し違えてでもスイを消そうとするだろう。

「それにしても、魔界の方は大丈夫かい?」

転移門の方を見ながらスイが呟く。

スイは、先程まで奴等と一緒にいた。
故に奴等の戦力を把握しているのだろう。

「スイ、彼奴らの人数と戦力は分かるか?」
「うーん、そうだね、人数は凡そ200位だね。その中でも戦力になりそうなのは半数くらいだと思うよ。で、ボクの分析で把握出来なかったのが5人いたね。恐らく、相当の実力があるんじゃないかな。ま、ボク程じゃないけどね」

スイの感覚で戦力と捉えられるレベルが今一分からないが、恐らく相当に実力があると見たほうがいいだろう。

「ジラ、一応今の情報をクオーツのメンバーに流しておいてくれ」
「分かりました」

(ユウ様、7大魔王と思しき情報が他の精霊より連絡が入りました)

まさに精霊ネットワークとも言えるこの世界の隅々まで展開している精霊達に協力して貰って、7大魔王に動きがあれば逐一連絡が入るようになっている。
また、精霊と信仰の厚い者を介して、7大魔王の訪れとその目的、脅威を全世界に広めて貰っている。
本来は俺がしなければならなかった事だが、この広い世界を一人で回るのは何ヶ月掛かるか分かったものじゃない。
精霊王に頼み込み、快く了承してくれた。

(シア大陸にあるユミルの砂宮と呼ばれる街が、何者かに襲われているようです)
(このタイミングだからな、7大魔王絡みでまず間違いないだろう)

「聞いてくれ、新たな情報が入った」

先程の内容を伝え、次の目的地を話す。

以前購入していたこの世界の地図をストレージから取り出す。
えっと、ユミルの砂宮か。同じシア大陸でも真逆の方向だな。ここからだと大陸の玄関口でもある港町ペリハーファから向かうのが一番だろう。

「ユミルの砂宮か。少し離れてるけど、港町ペリハーファから移動するしかないみたいだな」
「すみません、私も行った事はないので、ユウ様と同じです」

ジラも俺同様に転移を使用する事が出来る。
過去に一度でも訪れた事がある場所へ一瞬で移動出来るチートみたいな魔術。それが転移。
本来は魔族だけの専売特許だ。
俺の場合は、何というか限界突破した際に習得してしまった。

人族をやめて魔族になったとか?
まさかね。

全員と手を握り、転移した。

「目的地は、真っ直ぐ南東の方向だ。あまり猶予はないから、ついてこれないなら置いてくからな」

それからほぼノンストップで12時間程走り続けた。

割と本気の滑走に皆息一つ切らさずに、着いて来たのは言うまでもない。

(セリア、あれが報告のあったユミルの砂宮のはずだ)
(はい、ここです。ユミルの砂丘を守護している砂の精霊によると、一度攻めて来た族は何故だか一旦退いたそうです。だから今は安全みたいです)
(不可解だな。退いた理由は分からないけど、それなら一度中に入って被害状況と警備状態の確認をした方がいいか)

「どういう訳か、奴等は森の方に退いたらしい。詳しい話が聞きたいから一旦あの街に行こう」
「あの中には敵はいないんでしょ? ならボクは森に逃げた連中の偵察でもしてくるよ」
「一人で大丈夫か?」
「誰に物を言ってるんだい?何ならボク一人で潰しちゃってもいいんだけどね」
「分かった。だけど、偵察だけだからな。まだ7大魔王の奴等だと断定された訳じゃないんだから」
「分かってるさ。じゃあ、行ってくるよ」

その場からスイが消えた。

街へ向かうべく、歩み出す。
しかし、ジラがその場から動かなかった。

「本当に彼は信用出来るのですか?」

不愉快そうな顔をするジラ。
ジラが疑問に思うのも最もだ。

「ユウ様の側にあんな危険人物を置いておく事なんて、やっぱり私は賛同出来兼ねます」
「大丈夫、おかしな動きしたら私がやる」

ジラが、クロの頭を優しく撫でる。

「無理です。悔しいですが、私とクロちゃんの2人掛かりで不意打ちしても恐らく彼には勝てないでしょう。その強さは認めます。確かに彼が仲間となってくれるのならば心強いです。ですが、彼は我々魔族に対しても過去に多大な犠牲を出しています」

スイ、お前嫌われすぎだろ。
まぁ、やって来たことを鑑みるとしょうがないのかもしれないけど。

「ジラ、俺を信用して欲しい。確かにあいつは、過去にたくさんの命を奪って来た。それは事実だ。それを全部忘れてくれとは言わない。今は目先の脅威を打破する為に一時的に手を組んでいる。そういう約束だ」
「それは分かります。ですが、彼が裏切らないと断言出来ますか?」

それを言われると正直辛い。
だけど、俺には分かる気がするんだよね。
なんとなくでしかないんだけど、あいつは、スイは、嘘はつかないと。
だけど、ただなんとなくを理由には出来ない。
そんなの誰が信じてくれる?

「断言は…出来ない。でもこれだけは言える。例えあいつが裏切ったとしても俺は絶対に負けない。2人も俺が守るから。それじゃ駄目だろうか?」
もっと気の利いた事が言えればいいんだろうけど、結局そんな理由しか今は思いつかない。

ジラが目を見開いている。
やはり、こんなのじゃ納得してくれないか。

横からクロが割って入ってくる。

「守るのは私たち。だよねジラ?」

ジラが溜息を漏らす。

「はぁ、、そうですね。ユウ様にそうまで言われてしまえば、仕方ありませんね。それに万が一にもそんな事になっても、せめて盾になるくらいなら――ふぎゃ!」

ジラにチョップをお見舞いした。

「俺のせいで仲間達が傷付く事は許さないから」

クロがジラの袖を引っ張る。

「大丈夫。私たちが強くなればいい」

若干涙目のジラをクロがあやすと言うあまり見ない光景を横目に見つつ、俺達はユミルの砂宮へと入る。
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