幻想世界の統合者

砂鳥 ケイ

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第二十三話:エルフの里での生活5(修羅場)

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なぜ、エレナが飛び出して行ったのか。
俺には理由が分からなかった。

ミリハさんが、口を開く。
「私、てっきり貴方たちは付き合っているものと思っていたのだけど・・」

なんだって!?

「なぜ、そんな話になっているのでしょうか・・」
別にエレナに不満がある訳ではない。むしろ王女などという身分が無かったとしても、俺にはもったいないくらい良い子だ。
性格も良いし、とても優しい。容姿はどことなく、まだ幼さを残しているが、実年齢は俺とそんなに変わらない。
何より、すごく可愛いのだ。
むしろ嬉しいくらいで、文句の付けようなんてあるはずがない。
しかし、こうも考えていた。

自分はこの世界の住人ではない。他所から来た異世界の住人で、いつまた本当の世界に帰ってしまうのか、俺自身も分からない。そんな俺が、誰かと付き合ったり結婚なんてしても、相手を悲しませてしまうだけだ。少なくとも今の俺にはそんな資格はないと思っていた。

ミリハさんの話によると、晩餐会の席で王様直々に「エレナを娘を嫁に貰ってくれないだろうか。彼女もそれを望んでいる」と俺自身に話をしていたのだそうだ。

その時の俺は、酔い潰れていて、王様と何か話をしていたのは覚えているのだが、内容まではまったく覚えていなかった。
しかし、よくよく考えると、次の日のエレナの態度や王様の身内宣言など、そう考えると納得行く点があるのも事実だった。

「最低だな・・俺・・」

下を向いてうなだれていると、横にいるユイが、いつも俺がしているように頭をなでなでしてくれていた。
ごめんな、覚えていないからノーカンで頼む。なんて事がまかり通るはずがない。純粋無垢なエレナの気持ちを裏切ってしまったのは、事実なのだ。

暫く考え、そして決心した。
机をバンッと叩き、勢いよく立ち上がる。
その行動にユイやクロが少し驚いていた。

「ミリハさん!エレナが何処に行ったのか、心当たりはありませんか?」

ミリハさんは、少し考えた後に思い当たる箇所を教えてくれた。
「そうね~、あ、そういえば、エレナはいつも私やロイドに怒られた時は、王宮の裏側にある湖に浮かぶ小島に行く事があったわ。なんでもそこに行けば気持ちが安らぐと言っていたわね」

「ありがとうございます。ユイたちをお願いします!」

それだけ言うと、一目散に部屋を出た。

「はぁ・・若いって、いいわね~」

出て行った後の部屋の中で、かすかに聞き耳スキルが反応していた。

俺は、一心不乱に猛ダッシュする。

王宮の中は迷路のようだったが、レーダーを頼りに、王宮の裏手側、すなわち南側を目指していた。

暫く進み、やっと外が見えてきた。しかし、ここはまだ3階だ。
「ええい、かまうものかっ」

3階の窓から飛び降りた。
自身のレベルが高いおかげで肉体の頑丈さもかなり高いおかげで着地の衝撃も何ともなかった。

すぐに湖を視認することが出来た。
湖には桟橋が掛かっており、その先の小島へと繋がっていた。

桟橋を駆け抜ける。15mはありそうな桟橋だったが、飛ぶように3歩で渡り終えてしまった。
既にレーダーで小島に誰かがいるのを確認していた。

やがて、一人の少女の後ろまで来ていた。
俺は息を整えていた。

少しの間沈黙が辺りを立ち込める。
徐に口を開く。

「・・・エレナ・・ごめん・・」

その声に反応し、エレナは一瞬身体がビクッとなり、座っていたエレナが立ち上がった。
そして、一呼吸おいて俺の方へと向き直った。

振り向いたエレナの目じりには薄っすらと涙の流れた跡が残っていた。
「なんでユウ様が謝るのでしょうか。これは、勝手に私が勘違いしていただけで、ユウ様は何も悪くありませんのに」

そう言い、何処かに行ってしまいそうに感じた俺は、いつの間にかエレナの手を掴んでいた。
そして、エレナの眼を見る。

「エレナ、俺の話を聞いてくれないだろうか。これは大事な話だ。この話は俺の魔術の先生以外には、まだ誰にも言ったことがない。もちろんユイにもだ」

エレナは、僅かばかり頷いた後、黙って俺の眼を見ていた。
俺もエレナの眼を見たまま逸らさなかった。

俺が真剣なのがエレナにも通じたのか、静かに頷く。

それを見た俺も静かに頷いた。
そして、自分がこの世界の住人ではなく、異世界から来たことを告げた。
この世界に来て、先生と出会い、魔術師となり、この世界に飛ばされた理由を探す旅に出た。
最初の街でユイと出会い、ダンジョンに挑戦して、クロに出会ったんだ。
そして、エレナと出会って、今エレナとここにいる。

気が付けば、2時間近く話しをしていた。
エレナは、俺が話している最中、一言も口を挟むことなく、唯々頷くばかりだった。

一通り話終わったことを察すると、エレナが口を開いた。

「やっと・・・納得できました」

その顔はどこか晴れ晴れとしていた。
そして、笑っている。

「あはははっ・・はは・・・なんだ、そういう事だったんですね・・」
「今言ったことを信じて・・・くれるのか?」
「ユウ様が、どことなく普通の人とは違うなと思っていたんです。それに、今も昔も私はユウ様の事を信じていますよ。そしてそれは、これからも、それは変わることはありません」

少し間を置いた。

「ありがとうエレナ。それと、ごめん。結果的にエレナを悲しませることをしてしまって。あの晩餐会の時、途中からの記憶がないんだ。でも覚えていないからといって、その話は無しなんて事もむしが良すぎるとおも・・んっ・・」

目の前で起きた一瞬の出来事に何が起こったのか分からなかった。

会話を遮るかのように眼を閉じ、エレナが俺の頬に両手を当てて、キスをしてきたのだ。

まるで時が止まったような錯覚に陥った。
実際は一瞬だったのだろうが、俺にはそれが1分にも10分にも長い時間に感じられた。

エレナは、両手はそのままで、ゆっくりと口を放し、俺の顔を見る。
そして俺と眼があう。

「これで許してあげます。だからこの話は無かったことにしましょう」

そう言い、エレナは頬を赤く染めていた。

「俺は、エレナを・・」

エレナが俺の口を人差し指で塞いだ。
まるで、それ以上は言わないでと言わんばかりに。

「でも、私諦めませんからね。ユウ様が私のことを本当に好きだって心の底から言ってくれるその日まで・・だからいいんです。この件は」

エレナは、「はい!おしまい!」と言っている。

強いなエレナは、俺なんかよりも全然強い。

「分かった」

俺たちは、みんなの所へ戻る事にした。
道中に手を繋いで欲しいとエレナが言うので、2人は手を繋いで戻ってきた。

「仲直り出来たようね」

ミリハさんが、俺たち2人を抱きしめる。
「あ、ズルい!」
ユイとクロも抱きついてくる。

なんだなんだ、この状況は・・ 

まぁ、たまには流されてみるのも悪くないかもね。

その後、俺たちは豪華ディナーの続きを堪能した。
隣のユイに至っては、ずっと食べていただろうに、まだ食べている。

辺りは真っ暗で、すっかり深夜になっていたこともあり、今夜は王宮に泊めてもらう事となった。

案内されたのは、大きなベッドのある部屋だった。
デカすぎる。10人が横一列に並んでも寝れそうだった。 
俺の隣にユイ、ユイの隣にクロが並んでベッドに入る。
折角広いのに使用しているのはせいぜい2人分程度のスペースだろうか。

俺に至っては今日の出来事を考えていて、中々寝付けなかった。
ようやく、寝ようかと思った時に、扉をノックする音が聞こえた。

「ユウ様、まだ起きておられますか?」
エレナの声だ。
「うん、起きてるよ」

そして扉が開く。

俺の視線が入ってきた彼女に釘付けになった。
その姿は間違いなくエレナだったのだが、エレナは、シルクのネグリジェを着ていた。
透けていて、下着が見えている。
そのせいも相まってか、その姿は今まで見てきた誰よりも美しかった。

「今夜は、一緒のベッドで寝てもいいでしょうか?」
「え、えっと・・」
冷静になるんだ俺!動揺するな。いつもユイと一緒に寝ているじゃないか。間違いなんて起こるはずない。ただ一緒に隣で寝るだけ。きっと大丈夫だ。大丈夫。
自分に言い聞かせるように頷き、返事をした。

「うん」

エレナは、ユイとは反対側の俺の隣に入ってくる。
流石にユイとも手を繋いで寝たことはなかったな・・。
エレナの暖かい温もりを感じる。
ヤバい、ドキドキする。
エレナも同じ気持ちなのだろうか。
恥ずかしくて横にいるエレナの顔を見ることが出来ない。


そして、いつの間にか朝になっているじゃないか。

ははは・・。結局俺はドキドキしっ放しで、一睡も出来なかった。
我ながら、情けない話である。

先に目が覚めたのは、エレナだった。
隣で、伸びをしている。

「あ、ユウ様起きていらしたんですね、おはようございます。良く眠れましたか?」
「お、おう、おかげさまでゆっくり寝れたよ。ベッドがフカフカだったから、逆にもう少しこの心地良さを感じていたい気分だけどね」

エレナは、笑っていた。
2人が話していると、ユイとクロも起きてきた。
「おふぁよーお兄ちゃん」
「ユウ、おふぁよ」
「2人ともおはよ」
「クロ、ユイのおふぁよーは、間違っているからな。真似したらだめだぞ。正しいのは、おはよーだからな」
クロは頭を傾けて悩んでいた。
まぁ、どっちでもいいんだけどね。
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