幻想世界の統合者

砂鳥 ケイ

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第二十五話:エルフの里での生活7(ダークエルフの里)

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セリアと一緒に、ガリムの陰謀を暴くために、片っ端から部屋の扉を開けていた。もちろん中に誰もいない事を確認した上でだ。

そして今、俺たちはとある部屋の前にいる。
恐らくガリムの部屋なのだろう。他の部屋とは違い、部屋にはカギが掛かっていた。

セリアに中から開けてもらう。
精霊は、物体をすり抜ける事が出来るので、非常に便利なのだ。
セリアと組めば、世紀の大泥棒にだってなれるかもしれない。

部屋の中に入り、真っ先に机の上に置いてある封筒が気になった。
中身を開けて読んでみると、そこには驚愕の内容が書かれていた。
要約するとこうだ。

お前に精霊族を従わせる力をやろう。その変わりに次期教皇選で必ず当選すること。
その力を使えば、容易いだろう。
精霊を密偵として使えば、ライバルや上層部の弱みなど握り放題だ。
また、精霊を前面に出せば、選ばれた存在として民衆から崇められるだろう。
お前が教皇となったあかつきには、我らの悲願がまた一歩前進する。
その際は追って連絡をする。
全ては我らの神、サージャ様の為に。

なんだかヤバい物を見つけてしまったようだ。
これを証拠に、出すところに出せばガリムを捕まえる事が出来るだろうか?

いや、そうとは限らない。
この書面だけではいくらでも便宜の余地がある。
何せ彼はまだ表立って行動を行っていないのだから。
取り敢えず、手紙は机の上に戻す。
それ以外には特に怪しいものは見られなかった。

俺たちは部屋を後にする。

これ以上屋敷を物色しても恐らく何も出てこないだろう。
違う観点から追い詰めていくしかない。

そっとエレナの所へと戻った。
ちょうどガリムとの話が終わるタイミングだったようだ。
俺は、エレナの肩の上に手を置く。

そして、表向きの要件を終えたエレナはガリム邸を後にする。
その際、ガリムが一言。

「王様には、是非よろしくお願い致しますと口添えをお願いしますね。私めが教皇になることが出来れば、この里の生活を必ずや一変してみせますと」

「お父様は、皆に対して公平中立な立場にあります」
エレナがキッパリとそしてハッキリと返していた。

屋敷へ戻る道中、俺は透明化を解いた。

「エレナのおかげで無事にセリアを助け出すことが出来たよ。ありがとう」
セリアも出てきて、お礼を言っている。
「いえいえ、お二人の力に慣れて私も嬉しいです」

ガリム邸で見聞きした事は、屋敷に帰ってからエレナに話すことにした。
外だと、誰が聞いているか分からないしね。

帰る前に、ユイたちのお土産を買っておくのを忘れないようにしよう。
ユイは基本なんでも食べるのだが、中でも一番の好物は肉なのだ。
ということもあり、フライドチキンのような食べ物をお土産として数本購入した。
こっちの呼び名では、ビアブルと言うらしい。
鳥モンスターの足の骨付き肉だった。
道中、エレナと味見したが、中々に美味だったけど、若干ピリ辛だった。

屋敷へと戻ってきた俺たちを出迎えたのは、以外にもメイドのルナだけだった。
他の皆はどうしたのだろうか?

どうやら、あまりにもユイたちが暇だ暇だ言うものだから、執事のザンバドさんと夕飯の買い出しに付き添っているらしい。

食堂で、ルナにお茶を出してもらい、エレナと一緒にガリム邸で見聞きした内容について確認していた。

「ユウ様の言うように、彼が精霊を使って何をしているのか?また、何をしようとしているのかを暴く必要が有りますね」
エレナは続ける。
「あと、最後のサージャ様と言うのは、有名な人物ですよ」
エレナが教えてくれた。

なんと、邪神の名前らしい。
おいおい、邪神とかやめて欲しい。
しかし疑問がある。

「彼が教皇になることが邪神に対して何か影響するのだろうか?」

エレナは、ガリムから今日聞いた内容を思い出していた。

そういえば彼が興味深い内容を話していたそうだ。
なんでも、彼が教皇となり、やり遂げたい政策の一つにダークエルフと友好関係を結ぶというのがあるそうだ。
「ダークエルフ?」
「ユウ様はご存知ないですかね?ダークエルフというのは、祖先は我々エルフと同じなのですが、遥か昔に、我々エルフ族を裏切って、魔族側に寝返った者たちです」

俺自身もダークエルフという言葉は聞いたことがあった。エルフと同種で、肌が黒いという簡易な情報だけだが。

「現在もエルフとダークエルフはほぼ絶縁関係にあります。ガリムさんの政策は、この絶縁関係にあるダークエルフを過去の所業は水に流して、元々同種同士友好関係を築こうといったものでした」

内容としては、俺も悪くないと思う。
しかし、この里に住む人々の反応は半々だそうだ。

ダークエルフに直接的に何かをされた。というのはないのだが、子供のころから、学校や親たちから、彼らは裏切者だったという教育を皆受けて育って来ていた為だ。
しかし、エルフ族は本来心優しき種族の為、昔の事は水に流そうと思っている人たちがいる事もまた事実だ。

なるほどね、安易な考えだけど、俺の考えをエレナに伝えた。

「仮に、あの手紙の送り主がダークエルフだったとして、エルフ族をも巻き込み、一緒に邪神を崇めようという事なのだろうか?そもそも邪神って何者なんだ?」

「私も詳しくは知らないのですが、邪神というのは、たった一人で数千年前に滅びたと言われる存在です。この世の全てを破壊し尽す寸前まで陥れた存在だと言われています」
「化け物か・・・魔王とは違うんだよな?」
「はい、魔王ではありません。魔王は寧ろその邪神を倒すために一緒に戦ったと言われています」

「セリアはどう思う?」
俺の問いかけにセリアが出てきた。

「ダークエルフは、エルフの悪しき心が生み出したと言われています。しかし、それも遥か昔の話。今の彼ら彼女らには、そういう思想は根付いていないと思われます。仮にユウさん、エレナさんの推測通りだったとしても、ダークエルフ全体ではなく、一部の邪神信者たちの行動だと思います」

3人の意見は出揃ったな。
「エレナ、ダークエルフの里はこの近くにあるのか?」
「馬車で2日と行ったところです。もしかして、行くのですか?」
「こうなったら、行ってみないと分からないしね」
エレナは少し考えていた。
ダークエルフの里とは、現在絶縁関係にあり、関係を持つことは法律で禁止されていたからだ。
だから、誰も里の現状がどうなっているかを知らないのだ。
もちろんセリアも知らなかった。

「教皇選挙まで、もう1週間を切っている。俺は真実が知りたいんだ」

真剣な俺の表情にエレナが承諾してくれた。

「分かりました。ユウ様の意思は固いようですね。こちらはこちらで調べておくことにします」
「ありがとうエレナ」

善は急げだ、早速明日の朝出発する事になった。
馬車の調達はエレナにお願いした。

巻き込みたくはなかったのだが、無断で屋敷を開ける訳にもいかない。
俺は、執事のザンバドさんやメイドのルナさんにもこの話をする。
ユイとクロは、もともと同行して貰うつもりだ。
戦力としては申し分ないからね。
最近俺が忙しくしているので、かまってやることが出来なかったのだが、ユイとクロは屋敷の裏手で毎日組手をやっているそうだ。
ザンバドさんの話だと、ユイはともかくクロの動きもユイに負けておらずなかなかのものだと言う。
もしかしたら、2人とも俺より強いんじゃね?なんて思ったりもしていた。

話をすると、ザンバドさんが私も着いていくと言い出したのだ。

「元々私は、王より勅命(ちょくめい)を受け、貴方に仕えるようにと言われています」
「だけど、ダークエルフとの接触は法律で禁じられているんじゃ・・」
「心配には及びません。私は王の命令通り、主人様のお供をしているだけに過ぎないのですから」

ザンバドさんがいれば、確かに何かと安心だ。戦力としても然(さ)ることながら、何よりダークエルフの里までの道のりを知っているそうだ。
ついでに言うと、馬車の操作までお任せ下さいという事だ。
有能すぎる・・。一家に1台は欲しいね。うん。

昔、里の任務でダークエルフの里近辺までの調査をしたことがあるそうだ。

この話を聞きながら、ユイとクロは、俺のお土産である、ビアブル(フライドチキンみたいなもの)を骨ごと美味しそうに食べている。


明日の朝、俺とユイ、クロ、ザンバドさんの4人でダークエルフの里に向かう事になった。
早速食料の買い出しを行う。
いつものように買ってはストレージに放り込んでいくだけの簡単な作業だ。

俺が食料調達から戻ってくると、馬車が屋敷の中庭に止めてあった。
仕事が早いな・・。

俺は、ある程度の食料を馬車に積み込んでおく。

夜が明けて、朝になった。

さぁ、出発だ。
時間が惜しいので、まだ早朝だったのだが、馬車は出発していた。
若干馬車のスピードが以前乗った馬車に比べて早い気がしていたのだが、進む速度が少しだけ速くなる、精霊の加護が掛かっている馬車だそうだ。

きっとザンバドさんの腕が良いのも速い理由の一つなのだろう。

道中は特にイベントも起こらず、時々モンスターが出てくる程度で、全てユイやクロが倒してしまった。

そして、エルフの里を出発して二日目の朝に、ダークエルフの里の近辺までやってきていた。

俺たちは旅の者で、ダークエルフの里を訪れたという設定だった。
途中立ち寄ったエルフの里で案内役を雇って、連れてきて貰ったことにする。

ダークエルフの里の前まで馬車が来たところで、門番と思われる若者が話しかけてくる。

俺の想像通り、エルフの肌を小麦色にしたような感じの外見だ。まだ若い青年のようだ。
間違いなく話に聞いていたダークエルフだろう。

「そこの馬車、止まれ!」

その声に反応してザンバドさんは、馬車を止める。
「貴様、エルフだな。ここがダークエルフの里と知っての来訪か!」

俺は慌てて馬車から降りる。

「私は、街から街を放浪している冒険者です。彼は、ここに来るための道案内役です。それとも、この里は同族以外は誰も通すなという決まり事でもあるのですか?」

門番の青年は少し考えていた。
「少し待て」と言い、建物の中に入ってしまった。
恐らく、誰かと相談しているのだろう。

暫くして、先ほどの青年と年配のダークエルフがやってきた。
そして、年配のダークエルフが口を開く。
「通行を許可しよう」

良かった、無事に通れそうだぞ。
「しかし、エルフ族はだめだ。それ以外の者のみ通行を許可する」

やはりそう来たか。予想はしていたけどね。
俺は、ザンバドさんと話す。
元々こうなる事は予想していた為、ザンバドさんは馬車と一緒にこの近くに停留しておくとの事だ。

ザンバドさん以外の俺たちは馬車から降りて、ダークエルフの里の中に入る。
入る際に、簡単な手荷物チェックを受けた。

こうしてようやく、里の中に入る事が出来た。
里の規模は、そこまで大きくない。エルフの里の1/4くらいだろうか?
他種族が珍しいのだろう。すれ違う者が皆、驚いた表情を見せていく。
観光をしたいのは山々なのだが、それはまた別の機会にするとしよう。

偉そうな事を言ってここまで来たが、アテがあるわけではなかった。そもそもダークエルフの里の住人がガリムと繋がっていると言う確証もないのだ。

しばらく歩いていると警備隊だろうか?いつの間にか俺たちを取り囲んでいた。
「旅の者。王が会いたいと申している。悪いが我々と同行して頂く」

半ば強制だったので、いい気分はしないが、俺にとってもこれは願っても無いチャンスだった為、素直に従う事にした。

警備隊に連れられ、俺たちは立派な屋敷の前に辿り着いていた。
エルフ里の王宮とは、比べ物にならないが、俺が住んでいる屋敷と同じくらいだろうか。

このダークエルフの里の王が待つと言う広間に案内された。

王と言われたので、てっきり、高齢の方だと思っていたのだが、今目の前にいるのは、どうみても20代の美しい女性だ。
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