幻想世界の統合者

砂鳥 ケイ

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第三十九話:行商の街スーラン

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朝から俺はストレージの整理をしていた。
時々しておかないと収集がつかなくなるのだ。
欲しいものがいつでも取り出せるようにしておかないとね。

ノアから貰った金銀財宝が厄介だった。
色々な国の硬貨が混ざっていて、どれが今の時代で使えるのかを仕分けしなければ使うに使えない。
セリアやノアにも協力して貰い、丸一日かけて整理が完了した。
既に使われていない硬貨も多数存在していた為、そういった類はストレージの奥の方にしまっておく。

更に厄介だったのは、この世界で神器と言われる武具の数々だった。
忘れそうなので、リストにして覚えておく。

名前:聖剣アスカロン
説明:第11硬度の硬さを誇る長剣。選ばれし者にしか扱う事を許されない。損傷しても自己修復すると言われている。
特殊効果:敏捷性向上(超大)、殺傷力向上(超大)、自身のステータス大幅向上、自己修復機能付き
相場:金貨5000枚
希少度:★★★★★☆

名前:魔刀フラムジャイル
説明:かつて龍王と言われたガウェインの牙から作られた長刀。
特殊効果:殺傷力向上(超大)、スキル:一閃使用可能
相場:金貨1000枚
希少度:★★★★☆☆

名前:覇者の衣
説明:不死鳥の羽で編んだ戦闘衣。軽量で耐火性に優れており、斬撃に対して非常に強い。
特殊効果:防御力向上(超大)、自己修復機能付き
相場:金貨4000枚
希少度:★★★★★☆

他にも複数あったのだが、ボロボロで使い物にならなかった。
1000年という永い歳月を考えれば当然な気はするが、聖剣であるとか、自己修復機能なんてチートが付属した武具だからこそ、永い歳月を乗り切って尚、元の性能を失っていないようだ。
武器に関しては、今のところは使い道がないのだが、覇者の衣は有効に使わせて貰う事にする。
ユイやクロに着せたいところなのだが、大人サイズの為、結局俺が着る事になった。


次の日、ユイたちにせがまれて、ここを離れる前にもう一度3人で見て周りたいと言われたので出かける事にする。

「そういえば、今晩は3日に1回のウォーターショーの日だったな。また見に行くか?」
「うん!」「行く」

2人にも好評だったしね、それにノアにも是非見せてやりたいし。

3人でショッピングを楽しんだり、美味しい物を食べたりして時間を潰す。クロは俺の魔力だけど。
まだ持っていないと2人に財布を買ってあげた。

そして、道中の路地に差し掛かった所だった。

「少し待ってて」

何かを思い出したかのように、クロが走って何処かへ行ってしまった。
追いかけようとも思ったが、レーダーの範囲内ならば問題ないだろうとそのまま待つ事にした。

5分くらいだろうか。クロが走って戻ってきた。
クロの表情を見ると、微かだが、どことなく嬉しそうな表情をしていた。ずっと一緒にいる俺だから分かるレベルだ。

「何か良いことでもあったのか?」
「ひみつ」

ユイは、知っていた。
前に2人で散歩している時にこの路地で占ってもらった事があったのだ。
また占ってもらったのかな?とユイは思っていた。

当然そんな事は、俺は知る由もないのだが、クロが会話していた内容は、実は聞き耳スキルでバッチリ聞き取れていたのだ。

(おばあさん。この間はウラナイ?ありがとう。正しい選択できた)
(そうかい、それは良かったよ。お嬢ちゃんの未来が明るいものとなるように祈ってるよ)

もちろん何の会話をしているのかは、2人にしか分からないが、この疑問は心の中に留めておく事にした。

夜になり、みんなでウォーターショーを観に来ていた。
初めてのノアは、さっきから「おー」と連呼している。
ノアやセリアの姿が見えるのは、俺と俺が精霊の加護の対象としているユイとクロだけだ。
稀に、うっすらとだが、存在を感じたり、見る事ができる者も存在する。元の世界でも霊感が強い人はいるしね。
エルフ族なんかは、元々霊感が強く、ハッキリとその存在を感じる事が出来る者もいる。
まぁ、人族の街でエルフを見かける事は今までなかったけどね。

ショーを満喫した一行は、宿へと帰って来ていた。
明日は旅支度の準備をして明後日の朝一に水上都市を出発する予定だ。


そして旅立ちの朝を迎えていた。
昨日は、出発前にサナに自室に呼ばれていた。
既に出発前の挨拶は済ませていたので、すぐに帰るつもりだったのだが、アクティナが帰らしてくれない。正確にはセリアと別れたくないようだった。
俺に何度か「宿主を止めなさい!」と言われるほどに。

その都度、アクティナがセリアにお叱りを受けていたのは言うまでもない。
俺は、終始サナと話していたが、セリアたちは精霊同士で話をしていた。

俺たちがツガール帝国から脱出した次の日にサナに報告に来ていたのだが、ノアの姿を見るなり、アクティナが驚いていたのが印象に残っている。
2人は、顔見知りだったのだ。
という事は、アクティナは1200年前から生きていた事になる。
改めて、精霊の歳を取る感覚というのは、俺達とはまったく異なるのだろうと再認識していた。

そんなこんなで、1ヶ月以上もお世話になったこの水上都市アクアリウムともお別れだ。
滞在中に知り合った人達とは既に別れを済ませてあったので見送りは当然誰もいない。
まぁ、来ないで下さいとお願いしていたのもあるけどね。
船頭に頼み、対岸へと渡し船を出してもらった。

次の目的地は、行商の街スーランだ。
物量だけならば、この大陸一と聞いているので俺は話を聞いた時から次の目的地にと考えていた。
もちろん徒歩での移動ではない。
馬車で移動するのだ。
旅立ちの何日か前に魔術師ギルドのクエストに、スーランまでの護衛任務というのがあったのだ。
片道だけの依頼だったのでちょうど良いと依頼を受ける事にした。

依頼主は、シュマさんと言う40代くらいのおじさんだ。
対岸へ到着し、既に出発の準備が出来ていた馬車へと向かう。
どうやら同乗者は、他にも2人いるようだ。

「初めまして、今回依頼を受けましたユウと言います。こっちは、妹のユイとクロです。道中までの短い
間ですが、宜しくお願いします」

そんなこんなで、水上都市ともお別れだった。

この時の俺は、またこの都市を訪れる事になる事を知る由も無かった。

予定では10日程で到着の予定だった。
馬車旅は順調すぎる程に進み、6日目までは特に何も起こる事はなく、時折モンスターが近くを徘徊しているのが見えた程度で、戦闘するまでには至らなかった。
同乗している旅の仲間とは、だいぶ仲良くなった。
俺も、将来的には自分の馬車を持ち旅したい事を相談すると親身になって、色々と教えてくれた。
馬車の操縦もそうだ。
この6日間で既に俺とユイは操縦方法をマスターしていた。

事件が起きたのは7日目の正午だった。
俺のレーダーに複数の反応が現れたのだ。
モンスターではないが、敵対のマークとなっている。
恐らく、盗賊の類だろう。
俺は、全員にこの時点で知り得た情報を説明した。
迂回しようと思ったが、運悪くここは狭い一本道だ。
それを狙っての待ち伏せだろうが、相手は恐らくまだこちらに気が付いていないだろう。
このまま馬車を取り囲まれては、面倒なので、念の為にクロを馬車に残し、俺とユイで前方の盗賊と思われる集団と対峙する事にした。

視界に連中の姿が入ってくる。
予想通り盗賊連中だった。
てっきり隠れているものと思っていたが、堂々と姿を見せ、道をふさいでいた。
既に敵対反応はしていたが、一応相手に尋ねてみる事にする。

「ここを通りたいんですけど、道を開けてもらえませんか?」

盗賊連中は、下卑た笑いをしていた。

「おい、こっちいるのは獣人だぞ」
「ああ、容姿は悪くねえ、奴隷として高く売れるぜ」

ユイは気にしていないようだったが、ユイを連れて来た事を少し後悔していた。

次の瞬間、こちらの質問に答える前に連中が襲って来た。
まったく・・異世界はどうしていつも物騒なのだろうか。

近づく前に奴らの姿が見えていたので、レベルを事前にチェックしていた。
調べてみると10〜25のレベル帯だった。
人数は、8人。

もちろん俺達の相手にすらならない。
相手を無力化するには幾つか方法がある。
ただ単に眠らせても良いのだが、それだと相手に対して何の苦しみも痛みも与えていない為、懲らしめる意味でも痛みを与えて気絶させる事にしている。

俺はユイやクロとモンスター以外と戦闘する事を想定した訓練を何度もしていた。
相手を殺さずに一撃で気絶させるのだ。
もちろん相手が自分達よりも格下の場合に限ってだ。
同等か、格上ならばこうはいかない。

結果、1分と経たずして盗賊達を再起不能にする事に成功した。
縄で縛り大木にグルグル巻きにしておく。

すぐに立ち去ろうと思っていたのだが、奴らのアジトらしき場所を見つけてしまった。
依頼主であるシュマさんに断りを入れて、もう暫く停車して貰う事にする。

奴らのアジトからレーダーに反応があった。
敵対反応が2つ。普通の反応が2つ。
ユイにも馬車で待機してもらっている。

錆びれた小屋だ。
俺は、小屋をノックする。
その音に反応してすぐに中から盗賊の1人が出てくる。
迷う事なく俺は首元に手刀による一撃を与える。
残りの盗賊はあと1人。

小屋は一部屋しかなく、中に入ればすぐにバレてしまう。しかし、盗賊は仲間を倒した侵入者の姿を視認出来ないでいた。
俺が透明化を使っていたからなんだけど。ちょっと卑怯だったかもね。
でも、持ってる技術は最大限に使わないとね。

案の定、小屋の中には盗賊とおぼしき人物と人質と思われる年端もいかぬ少女が2人いた。
ひどく衰弱しきっているようだ。
恐らく、こいつら盗賊に乱暴されたのだろう。

俺は姿を現して、残っていた盗賊を気絶させた。
2人の少女は俺を見るや否や驚いた顔をしていた。
すぐに、2人にヒールとクリーンウォッシュで衣服を含め洗浄した。

小屋にいた盗賊は、縛っていた他の盗賊達と同じ所へ連れて行き、同じように縛っておく。

話を聞いてみると、彼女たちは、目的地であるスーランから連れて来られたそうだ。
シュマさんの許可を貰い、一緒に同行する事になった。
最初は、辛い経験と周りが大人ばかりだと思ったのか、口数も少なかった彼女たちだったが、比較的歳の近いユイや明らかに年下のクロもいることが分かると、次第に口を開くようになり、到着する頃には笑顔が戻っていた。

水上都市アクアリウムを出発して10日目の夜に、俺達は無事に目的地へと到着した。
その後は特に何事も起こる事なく、平和な馬車旅だった。
行商の街と言うだけあり、夜であるにも関わらず灯りが煌々と輝いており、昼間のような明るさで、出歩く人も多かった。
人口はおよそ10000人と聞いている。
かなり少ないのだが、元々は、商人たちの溜まり場的な存在だったのだが、次第に人数が増え今に至っているそうだ。
他の都市や街と違い、統治している人がいないそうだ。
シュマさん達とは、既に別れている。
もちろん報酬は貰っている。
当面はシュマさん達もここで商売するそうなので、また会う事もあるかもしれない。

彼女たちの親を探しに行きたい所だったが、彼女たち自身も場所が分からないという事もあり、今日の所は宿で休み、明日の朝から一緒に探す事となった。

宿は幸いにもすぐに見つかり、部屋は二部屋借りる事になった。
俺が1人で、もう一部屋には彼女達とユイとクロも一緒だ。
さすがに全員同じ部屋というのは、マズイだろうという判断からだ。
ユイが少し渋ったが、空気を読んでくれた。

思えば、1人で寝るのはユイと出会って以降初めての事かもしれない。寂しくはないとだけ最後に添えておく。
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