幻想世界の統合者

砂鳥 ケイ

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第六十話:リンvsジラ

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魔族のジラが俺たちの仲間になりたいという申し出をとうとう、断り切れなかった。

リンに告げるとジラと一騎打ちで勝負させて欲しいと頼まれてしまった。
色々と気持ちの整理だとか、思う所があるのだろう。
俺には、それを断る事は出来なかった。

「分かった」
「ありがとうございます」
「一つ確認だけど、結果がどうであれジラが仲間になることには異論はないよね?」
「はい、それに関しては異論はありません。ただ私自身の心の整理がしたいだけですので。ご無理を言い、申し訳ありません」

そして、荷物をまとめて降りてきたジラに一騎打ちの事を告げる。

「私も問題ありません。すぐにでも大丈夫です」

すぐにとは言っても二人が一騎打ち出来る場所を探す必要がある。
街中では当然目立って無理なので、外の荒野でも探そうかと考えていると、ジラがいい場所がありますと提案してきた。

ガゼッタ王国から西に少し行った先に辺り一面の荒野が広がっている場所がある。
広さもだし、場所としても、申し分なさそうだね。
審判は、俺が務めることになった。

「2人共、ルールは武道大会と同じでやる事。場外負けは無し。それ以外に、俺が危険だと判断したら試合を強制的に止めるからそのつもりで」

「分かりました」
「問題ありません」
「じゃ、準備はいい?」
「「はい!」」

両者の目を見る。双方とも真剣な眼差しだ。

「それでは、始め!」

開始の合図と共に、リンが物凄い初速でジラに突進した。先制攻撃というやつだろう。

ジラは、杖を武装強化してリンの剣撃を防いでいた。
遠距離戦闘に持ち込みたいジラだったが、リンの剣撃の休まる時がなく、戦い辛そうにしている。
ジラは、自分が当たるのを覚悟で雷撃を撃って応戦していた。
勇者を追いつめた魔球まだんは、撃つのに若干の溜めが必要な為、リンが撃たせる隙を与えまいとしている感じだった。

恐らく、武道大会の決勝戦をよく分析しているのだろう。

一方、ジラの方は、魔球まだんは諦めたのか、張り付かれたら雷撃で若干の間合いを取り、火の玉と高密度の水鉄砲で反撃している。
リンは、ギリギリでそれを避け、避けられない分は剣で斬り落としている。
斬り落とされた魔力の残滓ざんしが地面に当たり、リンの周りの地面が穴ボコだらけになっている。
中々の威力のようだ。
一発でも当たれば、大ダメージは免れない。

リンの斬撃も地面を抉り、ミミズが這ったような形状になっている。
そのまま拮抗した勝負が繰り広げられる。
観戦してる方は、この勝負果たして決着が着くのだろうか?
と思えるほど2人の実力は拮抗していた。

1時間が経過し、2時間が経過しようとしていた。
お互い全てを出し合ったのだろう、向き合ったまま一歩足り共動かない。
死力を全て尽して、立っているのがやっとと言った感じだ。

「2人とも、引き分けでいいかい?」

リンが、無言のままジラの元へと近付いた。
2人が向かい合う形になっている。
ジラに対して、リンは握手だろうか、手を差し出している。
ジラもそれに応えた。

「やはり強いですね。事前に貴女の戦い方を見ていなければ、あっさりやられていました」
「いえ、貴女も相当お強いです。今まで戦ってきた人族の中では間違いなく貴女が一番でした」

握手をしながら、互いの健闘を祟っている。
こんな凄い試合、観客が俺だけというのも勿体無い。
俺は、精一杯の拍手をして、2人を労った。

「ご主人様、この度はご無理を聞いて頂き、ありがとうございました」
「もう、いいんだな?」
「はい」
返事をしたリンのその姿は、何処か晴れ晴れしく、澄み渡っている感じに見えた。
ボロボロになっている2人に治癒ヒール状態回復リフレッシュを使用した。


ジラを連れて宿に戻った時には、すっかり夜が明けて、部屋に入るとユイもクロも既に起きていた。

「お帰りなさい!」
「ああ、ただいま」

何故だか、2人共がジラを見ても驚かない。

(私が事前に説明しといたわよ)

なるほど、気が利きますねノアさん。

クロが何だか照れ臭そうにジラを見つめていた。

「また会えましたね。クロ」

ユイとクロにとっては、新しい姉が出来たような感じだろうか。

こうして、俺たちに新しい仲間が加わったのだが、ジラの加入により、一層のトラブルが舞い込んで来る事をこの時の俺には、知る由も無かった。


ジラが仲間になってから数日が経過していた。
当初、ジラが魔族だとバレるのはマズかった為、ツノと背中の翼隠し用のフードコートがないと街を出歩けなかったのだが、たまたま見つけた魔術書に形態変化メタモルフォーゼという状態を変化する事が出来る物があった為、即購入して試した所、任意の場所を自由に形態変化出来るというものだった。

多数の選択肢があったのだが、クロがせがんで来たので、最終的にクロと同じ犬人シエンヌの耳と尻尾で落ち着いた。

魔族のツノを何よりも誇りに思っているジラが、反論があるかと思っていたが、この形態変化メタモルフォーゼは、他人からしか判別出来ないようで、自分には元の状態がハッキリ見えているという点があった。
という事もあり、隠れて街を歩く必要も無くなったジラも納得してくれた。

俺はというと、この数日間、クロには狐耳や猫耳や兎耳。ユイには犬耳や猫耳や兎耳をせがまれる苦行の日々だった。

そして、今俺たちは、ダンジョンの入口の前に来ている。
水上都市アクアリウムには無かったが、ここガゼッタ王国にはダンジョンがあったのだ。
昨日、偶然散策中に見かけたので、挑戦してみる事になった。

今までダンジョンは、二箇所制覇している。
制覇すると、コンプリートガチャのようなクリアの証を貰えるのだ。
なので、新しい場所に立ち寄った際には、ダンジョンがないかどうかチェックするようにしていた。

入口の衛兵に滞在期間を告げ、早速俺たちはダンジョンへと潜る。
ジラもリンもダンジョンは初めてだそうだ。

ダンジョン内部は、従来と同じで低階層には、低レベルモンスター。下に降りて行くに連れ、徐々にモンスターのレベルが上がっていく。

道中、特に問題なくジラも加わった俺らの戦力は凄まじいものだった。
より一層俺の出番がないのは言うまでもない。

1日で20階層まで降りてきていた。
各5階層毎にモンスターの出現しない安全層が設けてある。
今日はここ20階層で野宿する事になった。

俺が頑張ってくれたみんなに手料理を振舞う。
手料理と言っても、あまり手の込んだ料理ではなく、焼き魚、焼き鳥、後は栄養面が偏らないように野菜たっぷり鍋だ。

ここに降りて来るまでに何組かの冒険者パーティと擦れ違っていた。
念の為にレーダーを侵入検知モードに切り替えて置く。
テントを張り、みんなで一緒に・・・以前はユイとクロだけだったが、今はリンとゼラもいる。流石にこのテント一つでは厳しすぎる。
次回までに解決する事を約束して、今日は本当の野外での野宿だった。
使いたい人は、テントを使っても良かったのだが、全員俺と一緒に洞窟の天井を見上げながら床についた。

次の日も朝一から、最下層目掛けてモンスターを狩り続けていた。
これといって苦戦する事もなく、午前中のうちに29階層まで到達した。

「今までと同じならば、恐らくこの階層に強い個体がいるから、みんな注意してくれ」

心して、29階層へと乗り込んだのだが、他の階層と変わらずモンスターがわんさかいるだけで、とうとうボスモンスターに会うことなく、30階層に来てしまった。
どうやらダンジョン全てが同じという訳ではないようだ。

そして・・・・ない!
そこに在るべき物がない!
というより、さらに下層にいく階段が見える。
やはり、今までのダンジョンとは違うようだ。

31階層に降りると、今までとは明らかに空気が変わった。
何というか、嫌な感じだ。

俺が感じだイメージは、どうやら間違ってはいなかったようで、この階層のモンスターのレベルが29階層と比較してもかなり高くなっていた。
高くてもレベル40程度だったモンスターが、この階層では、下は40。上に至っては50までが確認出来た。

今までは、支援のみでしか参戦していなかったが、俺も攻撃に加わる。
敵のレベルが上がれば、流石に簡単には進めなくなり、半日掛けても5階層しか稼げなかった。

「みんな、この先どこまで続くか分からないが、大丈夫か?」
「うん!今回本気出せてて楽しいよ!」
「まだこの程度なら余裕」
「ここまで高レベルモンスターとの連戦は、初めてなので、いい経験です」
「皆さんがお強いので、私はだいぶまだ余裕がありますね」

全く頼もしい限りだ。

次の日も、その次の日も階層へと潜り続けた。
今いる階層は、46階層だ。
モンスターのレベルがヤバい。
上は、遂に60を超え出している。
既にユイやクロよりも遥かにレベルが高いのだ。
流石の俺たちでも、ここらが限界ではないだろうか。
今でも囲まれた時は一瞬ヒヤっとする。
俺も本気で魔術を使用している事もあるし、50階層まで行き、まだ上があるようならば、悔しいが撤退しようと考えていた。

かなり余裕のない状態で、何とか49階層まで辿り着いた。
この感じは・・モンスターの気配がない?
恐らくボス部屋だ。

俺を先頭に、慎重に進んで行く。
レベル次第では、即撤退もありえる。

そして警戒しながら暫く進むと、レーダーに反応があった。

「デカい・・これはマズくないか?」

視界に入ってきたのは、全長20mはありそうな、マンモスのようなモンスターだった。


名前「バリアント・モス」
レベル70
種族:-
弱点属性:なし
スキル:衝撃波Lv4、突進Lv4、一閃Lv4、地割れLv3、レーザーアイLv3、フレアバーストLv4

相手は、リンのレベルすら遥かに凌駕している。
ジラよりは、下だが・・。
しかし、みんなにも相談したが、チームの連携技を磨くいい経験にしたいと言うのだ。

確かに、格下相手では、得られるものは限られている。
こんなチャンスは滅多にないかもしれない。

「分かった、だけどやはり俺が危ないと判断した時は、すぐに攻撃を止めて、48階層に撤退するぞ」

皆が静かに頷く。
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