幻想世界の統合者

砂鳥 ケイ

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第八十五話:合流

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賊の二人を倒した俺達は完全に油断していた。

倒したはずのシュラの身体が突如光り出したのだ。
声を発する間もなく、大爆発を起こした。
咄嗟に障壁を張り、自身へのダメージは防ぐ事に成功したのだが、二人の位置は遠く、障壁が届かなかった。

凄まじい衝撃波と、爆発により舞い上がった黒煙が遥か上空まで伸びていた。

直ぐに範囲探索エリアサーチで二人を探す。
反応を見る限り一緒にいるようだ。

「エスナ先生!ノイズ様!」
「こっちよ!」

声の聞こえた方へと向かう。
どうやらノイズが結界を張っているようだ。良かった。二人共無事みたいだな。
しかし、まさかまだ動けるとは思わなかった。
俺はいつも油断してばかりだな・・

「仲間が来る前にここを離れるぞ」

三人は、バステト村のクラウの小屋まで戻って来た。
樹海の小屋まで戻らなかったのには理由があった。
何処で追っ手が来るか分からないからだ。
常時警戒して移動していたつもりだが、俺のような遠視なんてものがあるかもしれない。

「今日は、ここで寝ずの警戒じゃ」

仮に追っ手が来た場合に迎え討つ為だ。
順番に寝る事になった。
最初はエスナ先生が見張りをするそうなので、俺とノイズが床に就く。

三人で交代しながら丸一日警戒していたが、結局追っ手は現れなかった。

クラウさんの小屋を整理して、貴重品などはエスナ先生が引き取る事になった。
決して、口や態度には見せなかったが、終始エスナ先生が何処となく寂しそうな表情をしていた。

エスナ先生とノイズは樹海の小屋に戻るというので、俺も皆が待つガゼッタ王国へと戻る事にした。

「ユウも気をつけるのじゃぞ」
「ありがとうございます。俺には優秀過ぎるくらいの仲間がいますので、心配しないで下さい」
「元気でな」
「エスナ先生も。あとついでに、ノイズ様もね」
「ついでとは何よ!アンタ1回妾に勝ったくらいで調子に乗ってんじゃないわよ!」

相変わらず、ノイズをいじるのは楽しい。

二人と別れて、俺はプラーク王国に戻り、空艦にてガゼッタ王国へと戻って来た。

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とある古めかしい城内において


「何、シュラと迎えに行ったアビスモがやられただと?」

報告しているのは、仮面を被った女だった。

「は、はい・・二人が戻らないので、追加で捜索隊を派遣した所、二人の姿は何処にも見当たらず、その・・シュラは、体内のコアを融爆させたようです。捜索隊が大規模なクレーターを確認しています」

海斗と呼ばれた男は右手を顎に当て考え込んでいた。

「それ程までの相手という事か。切り札を使ったのならば、相手は既に死んでいるか重傷を追っているかもしれんな」
「討伐隊を再結成しますか?」
「いや、その必要は無い。相手の力量が未知数である以上、危険だ。これ以上、こちらの戦力を失うと計画に支障が出てしまう。石の回収を最優先してくれ」
「分かりました」

仮面の女は、暗闇の中へと消えていった。

「計画を急がねばならん・・」

----------------------------------------------------------------
ガゼッタ王国にて

色々あったが、やっと戻る事が出来た。
空艦乗り場に降り立つと、皆が出迎えてくれた。
ユイが一目散に駆けて来て、俺に抱き付く。
それを見たクロも真似をしてきた。

俺はそれを愛くるしい目で眺めつつ、二人の頭を愛でる。
久しぶりに、もふもふ成分をチャージしておかないとね。

「ただいま」
「お帰りなさい!お兄ちゃん!」
「ユウお帰り」
「お帰りなさいませ、ご主人様」
「お帰りなさい、マスター」

まず、遅くなってしまった事について詫びた。
逐一、動向については連絡を入れていたが、再度宿屋に戻ったら説明しておこうと思う。
亡国の騎士の件もあるしね。

俺のいなかった間の皆の話も聞きたいので、一緒にご飯を食べに行く事になった。
何でもユイ達が美味しい所を開拓したそうなので、楽しみだ。

大通りから少し離れた、予想とは正反対のイメージな、古風な外見のレストランだった。
中に入ると、案の定客は誰もおらず、貸切状態だった。
ま、客が誰もいない方が気兼ねなしに会話出来るんだけどね。

暫くは皆の会話を聞いていた。

確かに、俺の居ない間、休日だと思い体を休める事!と言ったはずだったが・・

「鍛錬とか修行以外に本当に何もしなかったのか・・・」
「強くなったよ!」
「私の指導で、ユイちゃんとクロちゃんもかなり腕を上げました」
「はい、それに私達だけでダンジョン攻略をして来ました」

ええ!さすがにそれは、危ないんじゃないか!
あれ、ガゼッタ王国のダンジョンは前に一度攻略していたはずだが。

どうやら、ガゼッタ王国にはダンジョンが二つ存在していたようだ。
俺抜きの危険な行為に対して注意しようとも思ったが、十分に安全マージンを取っていたようなので、勘弁しておいた。
リンが良い感じでユイとクロの姉的存在となっているようだ。それに今はジラもいるしね。

俺がいない事も想定して、皆にはもう少し単独行動の特訓をしておいた方が良いかもしれない。

特に苦戦する事もなく最下層まで到達したようだ。
ダンジョンを攻略した証として、ヴィランズダンジョン最深部到達者の証と何かの地図を戦利品として持ち帰ったようだ。

「お兄ちゃん!その地図きっと、すっごいお宝の場所が印してあるんだよ!」

宝の地図なんて物に触れたのは、いつ以来だろうか。
恐らく記憶にないくらい遠い過去なのだろう。
だが、いくつになってもこういう代物に胸躍るのは何故だろうか?

「私達が見ても、さっぱりどこの地図なのか何の地図なのか分かりませんでした」

俺は、その地図をジラから受け取ると、

「えっと、どれどれ・・・・うーん・・・分からんな」

ダンジョン最下層の物なら、偽物というのは考えられないし。
後で考える事にしよう。


食事を終え、街の中を観光していた。

そうして辿り着いた先は、巨大な虫眼鏡がモニュメントの一軒の店の前にいる。
看板には、鑑定屋と記載されていた。

鑑定といえば、自作ではないモンスタードロップ品やダンジョン産などは、鑑定しないと能力が分からない武具やアイテムなどがある。
鑑定しなくても使う事は可能だが、自身が使う物の効果くらい知っておきたいのは当然の事だ。
中には、身に付けているだけで呪いを付与なんて怖い代物もあるのだ。

俺のように鑑定スキルがあれば問題ないのだが、そうではない人は、皆この鑑定屋にお世話になっている。

先程の地図を藁にも縋る思いで、手掛かりだけでもいいので鑑定して貰おうと考えた訳なのだが・・

「いらっしゃいー」

中は意外と広く、鑑定屋だというのに色々な商品が売ってある。

「これはまた、美人さんがいっぱいだな」

店主は、いかにもな感じのおっさんだった。

「えっと、鑑定をお願いしたいんですけど」
「ほいさ、このカウンターに置いてくれるかな」

俺は目の前のカウンターに地図を広げて置いた。

「これは、何かの地図のようだな」

ああ、それくらいなら誰でも分かるんだ。

「地図は、専門外だな」

専門とかあるのかよ。
もう諦めて帰ろうと思った矢先に、

「シュルト!ちょっと来てくれ!」

店主の声に、暫くすると店の奥から青年が現れた。
彼がシュルトだろう。感じからすると、この店の跡取りだろうか。

「地図なんだが、お前こういうのは得意だろう?」

シュルトは、単眼橋を取り出し、食い入るように地図の隅々まで眺めていた。

「本物ですね。お兄さん達、何処でこれを?」
「ダンジョンのドロップ品です」
「なるほど・・」

シュルトさんは、腕を組んで考えている。

「この地図の解読にいくらまでなら出せますか?」

おっと、そう来たか。
今まで相手を試す事は何度かあったが、自分が試される経験はあまりなかった。
解読料の相場など知る由もない。しかも、最初にこれが本物であると断言されている。
だが、何の地図かはまだ分からない。

「何の地図なの?」

ユイが汚れのない眼差しで質問した。
ナイスだが、どうせ分からないと言うに違いない。

「うーん。詳しく鑑定してみない事には何とも言えないんだけど、約1000年以上前の物には間違いはないよ。この地図に使われている材質がね、今では存在していない大昔の皮脂で出来ているんだ。それと、こことここ、後ここの文字だけど、はっきりと兵器と記載してあるんだ。その他の文字はちょっと薄くなってて今の段階では、判別が難しいんだけどね」

(確かに古代文字ですね。私から言わせたら、普通に使ってた文字なんですけどね)

齢約1000歳のノアが助言をくれた。

(兵器って書いてあるのか?)

これが嘘ではないなら、彼を信用する事にしよう。

(ええ、間違いないわ)

「解読料だけど、これで足りるかな?」

ポケットから金貨を10枚取り出した。

その金額を見て、店主のおっさんが驚いていた。
シュルトさんは、微動だにしていない。

「この地図にそれだけの価値があると、既に見抜いているんですね」
「まあね」
「分かりました。お引き受けさせて頂きますね」

解読出来たら、宿まで連絡してもらうように頼み、鑑定屋を後にする。

「そんなに価値のある地図なのですか?」
「さぁ、分からないけど。1000年前の本物だって事は分かったからね。少しだけ期待してもいいかなって、願掛けの意味も込めたんだ」

外も薄暗くなりかけていたので宿屋へと戻って来た。
宿屋の前のグリムが寂しげな目でこちらを見ている。

「グリム久しぶり!ごめんな全然相手してあげれなくて、その代わりと言ったらなんだけどお土産持って来たからこれで許してくれ」

俺は、ストレージから大好物の大怪鳥のモモ肉を取り出した。
馬車を使っての旅をしないと、グリムが暇をしてしまう。そろそろ新天地へと旅立ってもいい頃合かもしれない。

部屋に入ると、何やら小道具が散乱していた。
男にはあまり関係の無さそうな、化粧道具から、俗に言うキラキラ系など・・。
今更ながら、俺以外はみんな女の子なんだよな。しかも年頃の。
普段から一緒にいるせいで、これが普通なんだと逆に感覚が麻痺していたのかもしれない。

「あ、すぐに片付けます」

俺も片付けるのに協力しようと思ったら、よく見ると下着の類まで無造作に転がっているではないか。
手を出すのは止めて、窓の外でも眺める事にした。
色々と問題ありそうだしね。
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