幻想世界の統合者

砂鳥 ケイ

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第九十九話:海賊に占拠された国【潜入編】

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船酔いを克服した俺は、皆と今後の作戦会議をしていた。

あくまでも最初は偵察を含めた情報収集に徹する。
あわよくば、気が付かれないように上陸出来れば良いのだけど。
そこで一つ思い付いた作戦がある。

名付けて、潜水艦でGO !

以前取得した潜水ダイビングとウォーターコーティングとの複合技なのだが、本来は生物に対して行う前提なのだが、船に対して行えないかと考えた。

どうしても見晴らしの良い水面では、隠れて近付くなど不可能に近い。
物体をカモフラージュ的な、姿を別のものに見せる魔術も存在しているそうだが、生憎そんなものは持ち合わせていないし、形ある物に化けても不自然で無意味な気がする。

早速試してみる。
まず、船全体を薄い膜で覆ってみた。
ここまでは成功だ。
続いて、潜水ダイビングを使用して水面下へ潜る。
まさに潜水艦を思わせるようにゆっくりと船体が沈んでいく様は何だか心踊る。
船体が自身の体のイメージで何処まで沈ませるのかコントロールする感じだ。

うん、何とか問題なく出来そうだね。

ちょっとした水族館気分だな。
周り全体がスクリーンでここまでの水族館は元の世界だっで拝める事は出来ないだろう。

「お兄ちゃん、なんか息苦しい」

潜水ダイビングのスキルを持っていたら、水中でも呼吸出来ると思っていたが、よく考えるとここは水面下であっても水中ではない。

さて、どうしたものか。

「私の出番ですね」

ジラが待ってましたと言わんばかりに風魔術を形成していく。

「地上から私達が呼吸に必要な空気を生成しています」

風系魔術の応用らしい。俺にも使用出来るらしいが、訓練が必要なようだ。

俺は半ば努力もせずに取得したので、この辺りの下積み経験が少ない。というか無いに等しい。
時間を見つけて修行しないといけないな。

水中だと帆による浮力がないので、風魔術でスクリューの代わりをする。
こっちに関しては、俺でも可能だった。
ただ単純に一定の出力で後方に風による真っ直ぐの竜巻を発生させる。
これだけで前には進むのだが、方向を変えようと思えば、変えたい方向とは逆側に同様に真っ直ぐの竜巻を発生させる。しかし、出力コントロールが非常に難しい。
急激に進行方向を変えてしまうと船を壊してしまう恐れもある。
パワーバランスを徐々に逆転させ、ゆっくりと進路変更しなければならない。

さて、ここでもうひとつ問題がある。

水中に潜っている為、外の様子が分からない。
俺の範囲探索エリアサーチでは、生物探知しか出来ない。

という訳で、アリスの出番だ。
アリスは俺よりも高性能なレーザーを積んでいる。

「アリス、悪いけど頼むよ」
「了解。敵がいたら殲滅しても?」
「いや、それは俺の指示を待ってくれ」

もしかすると、アリス一人で海賊全員を相手に出来てしまうかもしれないと本気で思えてしまう所が怖い。
ていうか、ここから陸上のターゲットが攻撃可能のか?
まさに魚雷だな・・。

即席で考えた作戦だったが、何とか島の近くまで進む事が出来た。
範囲探索エリアサーチにも複数の反応がある。
正面は砂浜の海岸になっているようで、裏手は切り立った崖になっていた。

どちらから上陸するかなんて決まっている。
崖から行こう。
本音を言うと、砂浜で戯れているお姉さん達を観察、いやいや、捜査上の偵察をしたいのはやまやまなのだが、海賊に占領されていればそれも期待出来ないし、何より海賊達は奪還されるのを警戒しているのか相当数の監視の目を海岸に配置していた。

というわけで、島の裏手に回ってきた俺達は、監視の目がない事を確認し、潜水状態から浮上した。
確かにアリスの情報通り、切り立った崖になっていた。
上の方は、崖からの上陸を阻むようなギザギザの尖り岩肌で覆われている。
島からここは、確かに見えない。隠れて船を止めるには最高の場所かもしれないが···

「これ登れるのか??」
「無理ですね。規格外のユウ様でも厳しいと思います。飛んでいきましょう」

素っ気なくジラに返されてしまった。
だよね、忍者じゃあるまいし。

「俺はここで待ってるさ。無事を祈るぜ」

おじさんと別れて、崖上まで飛んだ。
飛べないユイとリンは、それぞれ俺とジラの肩を貸す。

さてと、まずは堂々と歩いて調査しようか。

俺が透明化のマントを羽織り、皆と手を繋ぐ。
手を離さない限りは、透明化の効果は全員に行き渡る。
「声は普通に聞こえちゃうから喋るときは小声か、誰もいない時にね。じゃ、行動開始だ」

島の裏手は一面荒れ地となっていた。
人が近付きそうな感じではない。
所々に大きな岩があるので、姿を隠す為の拠点を置くなら良いかもしれない。何より後ろの心配もしなくていいしね。

1時間程歩くと、そこは背丈よりも高い草が生い茂る湿地帯だった。
地面はぬかるんだ沼になっている。
今の所、まだ誰とも遭遇していない。

そのままひたすら真っ直ぐに歩く。
範囲探索エリアサーチによる生物探知があるとはいえ、どこで見られているか分からないので、姿を隠したままだ。

「反応があったぞ」

端なのでまだ1km先だが、複数の反応が確認出来た。
敵対を示す色なので、海賊で間違いないだろう。
緩んでいた皆の顔が真剣な顔付きになっていた。

そして視認できる距離まで近付いた。

「あの位置から動く気配がない事から、あそこが防衛ラインでしょうか」
「だな、人数も6人だしそれぞれ職業が違う。まるでパーティーを組んでいるようなバランスの取れた感じだ」

周りは崖になっているので、先へ進む為にはこの一本道を通るしかない。
レベルは25前後だ。
冒険者のレベルからしたら中堅クラスなんだろうが、俺達の敵ではない。

「マスター、殲滅の許可を」
「え、お兄ちゃん、倒してもいいの!」

ちょっと待てい!

俺はそんな殺戮大好きっ子に育てた覚えはないぞ!
なんでこうも戦闘を好むのだろうか。
何処かの戦闘民族じゃあるまいし・・

「まだだめだ。今は偵察に専念。このまま通り過ぎるぞ」

心なしか残念そうな素振りを見せている。アリスとユイとクロ。
って、クロお前もか!

(全く、誰に似たんだか)
(俺じゃないだろ?俺は極力戦闘は回避したいんだよ)
(ユウじゃないわ。時々、ジラさんがあの3人に戦闘の楽しさ?ってのを教えてる光景を見るわよ)
(何それ!)
(私も見た事ありますよ。相手をいたぶる方法とか講義してますね)

ノアに続いて、セリアも知ってて俺が知らないだと・・
何よりも何て事を純情な2人に教えてるんだ。

「ジラ、後で話があるから体育館裏集合ね」
「はい?」

防衛ラインを超えて、更に内部へと進んでいく。

見晴らしの良い高台に出た。
ここからグラキール王国が一望できそうだ。
眼下、少しばかり先にグラキール城がそびえ立っていた。

初めてその全貌を目の当たりにしたが、どうやらこの島は、典型的なグラキール城とその城下町という構造になっていた。
俺達が上陸したのは、城の裏手側のようだ。

「見える範囲に見張りが12人いますね」
「全員海賊と思われます。それにしても、この島の人が誰もいないですね、恐らくどこかにまとめて収容されているのか、もしくは・・・」

俺も最悪の事態が一瞬脳裏を過ぎったが、杞憂に終わったようだ。

「いや、どうやら島民は、自分達の家の中にいるみたいだ」

範囲探索エリアサーチにほぼ全ての家の中で反応があった。

「好都合だな」

いざ、戦闘になれば、島民達を巻き込む恐れがあったのだが、その心配は無くなった。

「海岸はあれだけいたのに妙ですね。城下町の方の見張りが少ない気がします」

ジラさん、どれだけ目いいんですかね。俺の遠視並じゃないか。あれか、魔族補正なのか?羨ましい限りだ。

「ドアの部分に何かの魔力を感じます。もしかしたら、開けられないようになっているのかもしれませんね」

物理的に開けることが出来ないもしくは、開けると爆発するなどで脅しておけば、自殺願望でもなければ、開ける人はいないだろう。

どちらにしても島民の方は後回しにしても大丈夫だろう。

「城の周りは山程いますね」

うーん。数えるのが面倒い程いるね。

「よし、このまま城の裏手側ギリギリまで行こう。中に入れるとは思えないが、壁際でも中の様子が分かるかも知れない」

俺の聞き耳スキルはもちろんだが、アリスには本邦未公開の特殊能力がある。

「壁際についたら、アリスは透視を頼むよ」

男なら誰もが憧れる?かどうかは分からないが、壁を1枚だけ透けさせて中の状況を把握する事が出来るのだ。
どういう原理か、主人である俺だけ、その光景を共有する事が出来る。
誓約はあるんだけど・・。

全員が手を繋いで歩いているものだから、移動に時間が掛かる。
見えていないから良いものの、端から見れば、かなり恥ずかしいよな。
6人で真横に手を繋いで何してるの?みたいな。

城の裏側の城壁を全員が同時にジャンプで飛び越える。
2m近くあったが、俺達には何の問題もなかった。

無事に城の裏側まで到着する事が出来た。

「アリス頼む」
「了解マスター」
アリスが、横を向き壁に右手を壁に突き当てる。

「スキャニング成功」

俺は横を向いたアリスの正面に移動する。
そして、ゆっくりとアリスの額に自分の額を重ねる。

「ちょ、お兄ちゃん⁉︎」

額と額を合わせる行為に驚いたのか、ユイが声を挙げる。

「こうすれば、透視の結果が俺にも見えるんだ。あと、バレるから静かにな」

これが誓約なんだが、絶対誰かしら突っ込みを入れてくると思ったよ。

「これはビンゴかもしれない」
「ビンゴ?」
「ああ悪い。会話を読み取るとどうやら、王様と海賊のリーダーとがやり取りをしているみたいだ」

暫く耳を傾けていると驚愕の事実が明らかになった。
俺の顔色が変わったのを感じたのか、お互いが顔を見合わせる。
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