幻想世界の統合者

砂鳥 ケイ

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第百三話:黒ローブとの死闘

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侍を拘束して、俺達はユイ達の元に合流した。
といっても捕縛は既に解除してフリーの状態だ。
流石に2本の刀は没収してるけどね。

クロもジラも回復して、今はケロッとしていた。
ジラとクロをこんな目に合わせた侍だったが、なぜ拘束すらせず一緒に歩いているのかと言うと、
ジラを治療した際、胸を一突きにされていたが、偶然か臓器を全く傷付ける事なく、貫かれていた。
こんなの狙わずに出来る訳がない。
元から、殺すつもりはなかったという事だ。

「ユウ様、この度は本当に不甲斐ない所をお見せしてしまいました。それだけではなく、ユウ様の手を煩わしてしまうなんて、かくなる上はー」

俺はジラにゲンコツを落とす。
勿論最大限に手加減している。

「それ以上言ったら怒るよ?」

ジラが力なくその場に座り込む。
右手を顔にあて、何処となく顔が赤くなっている気がする。
あれ、そんなに痛かった?

「はぁ・・・ユウ様・・どうしてユウ様はこんなにも・・」

ジラが何故だか吐息を漏らしながらエロい声を出している。叩きどころが悪かったかもしれない。

そういえば、体育館裏でのお仕置きを忘れていたな。
忘れないように脳内メモに記しておこう。

「お兄ちゃん、大変なの!」

ユイが慌てて駆け寄ってきた。

「国王様が何処にもいないんだって!」

うん、それは妙だな。

「取り敢えず、状況が知りたいので関係者を集めよう」

50人程が収容出来そうな部屋に関係者がごった返していた。
ジークさんの姿も見える。

城内の海賊達は鎮圧し、拘束していた。
城の奪還に成功したようだ。
ジラとクロの頑張りもあり、城下町も静圧出来た。
ミラ王女の姿が見えなかったが、どうやら王妃様と一緒にいるようだ。
かなり心配していたから、そっとしておこう。

「ユウさん、そこにいる人物は傭兵団グリモアですよね?」

ジークさんの言葉に親衛隊がどよめき出す。

「そうですよ」
「敵だったはずですが・・」
「そうですね、敵でした」

皆が俺の言ってる事が分からないと言った表情をしているので説明を入れておく。

「彼を雇ったんです。彼は傭兵、傭兵はお金でしか動きません。雇い主である海賊団が全員捕縛されて、フリーになった彼を雇ったんですよ」

取り敢えず、納得してもらえたのだろうか。
一応、保険として刀は没収してはいる。

それに、この席にはもう1人の敵だった人物が参加している。
勿論こっちは、拘束付きだけどね。

「海賊団棟梁ブルギス、全て自供すればその罪は軽くなるぞ」

てっきり、この手の男は時間を費やして拷問しないと口を割らないと思っていたが、あっさりと全て自供してしまった。
彼は何故か、汗びっしょりだ。
実は、一目見た時から俺が威圧をかけて精神的に追い詰めておいたのが功を奏したようだ。
皆知らない事なので、黙っていようと思う。

ブルギスの話を纏めると、海賊家業に限界を感じていた彼等は、黒ローブを羽織った男に一芝居打ってくれたらグラキール王国での永住権を全員にくれるという申し出を受けたそうだ。
もちろん最初は信じなかったようだが、黒ローブを羽織った男が連れて来たのはなんと、グラキール王国国王であるビゼルト王だったのだ。
ブルギスも当然国王の顔は知っていた為、疑う事なく黒ローブの申し出を受けた。

その後何度か密会を繰り返し、作戦内容、決行日時を決めていった。
当初は、もう2日程早めの予定だったが、ミラ王女が例の晩餐会から戻ってこなかったので、戻ってくるまで延期となったようだ。

結局何故こんな申し出をしてきたのかは、聞いても教えてくれなかったようだ。

「黒ローブと国王様の目的が不明ですね」
「国王は、ここ数週間で変わってしまわれた。ブルギスの話が本当ならば、密会していた頃と国王の様子がおかしくなった頃が合致する」
「という事は、国王様は洗脳めいた事をされていたのでしょうか?」

親衛隊達が各々意見を言い合っていた。

その時だった。

ドゴゴォォォォォ!

何処か近くで、爆発が起こった。
凄まじい轟音と縦揺れを感じた。
何人かは机の下に潜っていた。

「な、何事だ!」

何者かの攻撃か!

親衛隊の一人が慌てて会議の席に飛び込んでくる。

「た、大変です!城の屋上が突如爆発しました!」

嫌な予感がしていた俺は誰よりも速く屋上まで駆け上がり、その正体を確認した。

屋上には俺が危惧していた、黒ローブを羽織った人物が一人だけ立っていた。

周りには、勇敢に立ち向かったのだろう親衛隊の亡骸が転がっている。

「貴様だな。我の計画を潰してくれたのは」 

一瞬だけ淡く光ったかと思えば、先程までいた場所とは違う場所へ転移させられていた。
俺だけではなく、黒ローブも一緒だった。

「貴様は一体何者だ」

正直に答えるつもりもない。

「ただの冒険者だ」
「そうか、答える気はないか。ならばそのまま死ね」

右手に持った杖を俺に向け、何やら唱えている。
杖の先端が怪しく光ったその瞬間、

体に妙な脱力感を覚えた。

”即死耐性を取得しました”

おっと、どうやら今の攻撃は即死魔術だったようだ。
耐性を取得してからは、体の違和感は無くなった。

しかし驚いたのは、この黒ローブには鑑定アナライズが効かなかった事だ。

視界の端に文字が現れる。

鑑定アナライズ無効”

「貴様不死属性か・・厄介な・・」

あっちは、あっちで術が効いていないので驚いていた。

ゾンビみたいな言い方は失礼だな。耐性があるだけだ。

さて、相手の実力が分からない戦いは初めてだな。
可能ならば生け捕りしたい所なんだけど。

先に動いたのは黒ローブだった。
黒ローブの左右、上部の三箇所に直径1m程の黒い球体が出現した。
そのまま、黒い球体がこちらに向かって高速で迫ってくる。
障壁で受けても良かったのだが、自身にブーストを使用して避ける事を選択した。

余裕を持って躱したつもりが、俺の躱した方向へと追従してきた。

おいおい、追尾とかありかよ!

しかし冷静に対応する。
スピード的には俺の方が早いのでこのまま躱し続ける事は可能だったのもあるが、アニメとかでこんな局面を結構見ていたので、対処方法はいくつか思いついたからだ。

ギリギリまで引きつけて、相手にぶつけて終わりだ。

黒ローブに向かって走る。
俺の行動の意味が分からないのだろう、黒ローブは一瞬の隙を見せていた。
そのまま突進して、すぐ隣を通り過ぎる。
思惑通り、追従してきた球体が黒ローブへと当たる・・はずだったのだが、自分に当たると判断した黒ローブは、球体をかき消した。

まぁ、自分が出したのだから、消す事も可能だよね。
少し思惑と外れたが、一連の黒ローブの動作で隙だらけとなっていた真後ろから捕縛を発動する。

身体に自由が利かなかったからか、(グッ)という声をあげていた。

「さてと、このまま拷問させてもらうよ」

「ディスペル」

微かに聞こえる小さな声でそう呟いた声が聞こえた。

うん、想定の範囲だ。
すぐに催眠スリープを発動させる。
意識を無くしてしまえば、その術は使えまい。

過去に2度そいつでやられているからね。
3度目はないよ。

俺は咄嗟に黒ローブから離れた瞬間、雷撃ライトニングボルトが落ちてくる。

狙いは俺ではない。
放たれた雷撃ライトニングボルトは、黒ローブに命中した。

威力から察するに黒焦げになるかと思えば、黒ローブがちょっぴり焦げただけだった。

あのローブ欲しいな。
きっと高魔術耐性でもついているのだろう。

っと、そんな呑気な事を考えている場合じゃなかった。
先程の雷は、恐らく催眠対策だろう。
自身に痛みを与え強制的に解除したのだ。
至近距離からの催眠発動で眠るまでの猶予は2秒もなかったはずだ。
一瞬の内にそこまで判断して行動するとは、敵ながら大したものだ。

魔術耐性があるなら遠慮はしない。
衝撃波ショックウェーブを発動する。
目に見えない衝撃波が黒ローブを襲う。

直撃したはずだった。
しかし、ダメージをそこまで受けている様子はない。
どうやら魔術耐性は伊達ではない。

今度は黒ローブが動いた。

先程自身に受けた雷撃ライトニングボルトを連続で放ってきた。
先程よりも威力がありそうだ。

しかし、その程度じゃ俺には当たらない。
所詮は連続だ。慌てず1本づつ躱すだけだ。

お返しとばかりに、見せつけるかのように俺は雷撃ライトニングボルトを同時に発動した。
全範囲雷撃ライトニングレインだ。

躱すことは不可能。
俺は相手が倒れるまで打ち続けるまでだ。

その時、背後に何かを感じた。

「え・・?」

背中に剣が突き刺さっていた。

刺さっている方向からすると背後からやられたのだろう。
しかし、周りには黒ローブ以外の反応はない。
第三者からの攻撃ではない。恐らく黒ローブの何らかの魔術だろう。

ゆっくりと俺のHPゲージが削れていく。
よほどHPが高いのか、急所を外れているのかは不明だがHPの減りは思ったよりも遅い。

すぐに剣を抜き去り、その場に捨てる。
回復を使うまでもなかったが、傷口から血がドクドクと流れ出ていた為、トラウマになりそうなので、すぐに治癒ヒールを使う。

流石に全範囲雷撃ライトニングレインを途中で解除していた。

相当なダメージは追っているようだが、黒ローブもまだその場に立っている。
相当タフなようだ。
俺に近づいて来ない所を見ると、催眠スリープや捕縛を警戒しているのだろう。

先程の剣投げには俺も警戒しなければならない。

少しの間、睨みあいの時間が流れた。

「頃合いだ。時は動き出した。今更貴様が何をしようが、もう誰にも止められん」
「何のことだ?」
「戻ってみれば分かるさ」

そう言い、黒ローブはその場から忽然と消えてしまった。

まんまと逃げらてしまった。
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