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第百二十八話:魔王誕生の秘話2
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その日、妾はいつものようにシュンの部屋を訪れていた。
昨日、一昨日と爺に拘束されて、地界に来れなかったので、シュンと会うのは実質2日振りだった。
そう、シュンに衝撃的な告白を受けてから3日後・・
「あれ、シュンはいないようじゃの」
部屋の中には誰も居らず、部屋の鍵がガチャッと外から掛けられた音が聞こえた。
「やはり現れたか、忌々しい魔族め!」
すぐに声のする方へと振り返る。
部屋の死角になっている箇所からぞろぞろと武装した騎士団員があっという間に妾を取り囲む。
「なんじゃ、お前らは?」
「我らはこの国の親衛隊だ!お前が報告にあった魔族で間違いないな!」
何故取り囲まれているのか、当然身に覚えがなかった。
しかし、魔族と言われれば自分の事で間違いないのだろうと認識した。
「じゃったら何だと言うのじゃ?」
「国の脅威となり得る勢力は強制排除だ!」
親衛隊を名乗る連中は一斉にキキに向かって槍を振るった。
しかし、そんなものが妾に命中する訳もなく、易々とそれを交わした。
此奴らが妾を狙っている理由は分からんが、そんな事は妾にはどうでも良かった。
「シュンは何処じゃ!」
胸騒ぎがしていた。
襲われている理由なんてどうでもいい。シュンに会って聞けばいい。しかし、姿の見えないシュンの事が気に掛かる。
妾の問いに対して親衛隊の一人がヘラヘラと笑っていた。
「裏切り者の騎士団長様ならもうこの世にはいないぜ」
?
此奴が一体何を言っているのか、すぐに理解する事が出来なかった。
いや、理解したくなかったのかもしれない。
騎士団長は、この世にいない?
いないってどう言う事じゃ?
発せられた言葉を頭の中で何度も何度も復唱する。
直後、背後からチクリと痛みを感じ、我に返った。
親衛隊の一人が妾の背後から槍をブッ刺したのだ。
貧弱だったのか、服に小さな穴が開いた程度で、肌には文字通り傷一つさえも入らなかった。
「お前達が何を言っておるのか理解が出来ん。シュンの元に案内するならば、今のは見逃してやるが?」
親衛隊は、今まで感じた事のない殺気混じりの鋭い威圧にたじろぐ。
「だから言ってるだろ!騎士団長のシュンは死んだ。昨日公開処刑されたんだ!それはそれは盛大だったぞ、お前にも見せーーー」
瞬間、発言した騎士の首が空《くう》を舞い地面へと落下する。
「何を言っておるのじゃ?そんなはずがなかろう。ついこの間話しをしたばっかしじゃぞ?」
仲間の身に起こった出来事を目の当たりにし、その場でガクガクと震える者、この場から逃げ出す者、逆に敵討ちだと言わんばかりに斬りかかってくる者、それぞれが一斉に行動を開始した。
あまりの衝撃的な内容に放心状態になっていた。
そして次の瞬間、この部屋には妾以外は、誰一人として立っている者はいなかった。
何処からか取り出した大鎌一振りにて全員の首を刎ねたのだ。
「はははっ・・・シュンが死んだだと・・?妾は信じぬぞ・・」
その後は、城内をシュンを探すべく宛もなく彷徨い歩いた。
その光景は、側から見ればまさにゾンビのようなゆっくりした徘徊と呼べるものだっただろう。
すれ違う者一人一人にシュンの居所を聞き、知らない者は全員殺した。
「おとなしく止まれ!!」
気が付くと、いつの間にか包囲されていた。
無意識のうちに中庭まで出ていたようじゃ。
今、周りには20人程度の武装した騎士隊が構えている。
騎士団長を名乗る男が妾の前に歩み寄ってきた。
「我は、現騎士団長を務めているゲイルだ。前任者のシュンは魔族と結託し、国家転覆の容疑が掛かった為、即刻処刑された」
「うそじゃ!!」
「うそじゃない。そして、お前が共犯者の魔族である事は調べがついている」
「国家転覆じゃと?シュンはそんな事は望んでいなかったぞ!デタラメを言うな!」
「・・・出る杭は打たれるのさ」
ゲイルは、ニヤリと口元を緩ませ驚くべきことを話し出した。
「真実を知らずに死ぬのは辛いだろう。教えてやる」
そして、それから1時間としないうちに、この大陸からザムル国とその一帯は、跡形も無く消え焦土と化した。
周辺諸国をも巻き込んだ、魔族のまだ年端も行かぬ少女VS人族との争いを後に第一次人魔対戦と呼んでいる。
同時に人族が魔族と正式に決別した日でもある。
「妾は・・人族と争いなどしたくなかった・・。人族のシュンの事が好きだった・・しかしそれ以上にそのシュンを殺した人族を決して許す事が出来ない・・この恨み尽きるまでは・・」
それから数年の後、魔族の少女キキは魔王となった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「どうかしたのバルちゃん?」
「いや、昔の事を思い出しておったんじゃ」
「それって、もしかして以前聞いた初恋の話かな?」
「ほんとにメルは勘が鋭いなって、ここだと全てバレるんじゃったな」
まるで昼下がりの休憩時間に友達と話しているような会話のこの2人は、神メルウェルと魔王バルサだった。
日常的に意思の世界にて二人は会話を楽しんでいた。
「あーあ、バルちゃんの封印が解かれちゃうと、話し相手が居なくなっちゃうのがちょっとだけ寂しいかなー」
「妾は、メルの愚痴を聞かなくて済むので清々するがの」
「あ、バルちゃんそれちょっとヒドイよ!!」
神メルウェルは、頰をぷくっと膨らませている。
「冗談じゃ。代わりに妾の側近にしてやるから許せ」
「それだと、私仕事を辞めないとだめなんじゃないかな?」
誰がこの光景を見て、魔王と神だと分かるだろうか?
「ユウは、上手くやると思う?」
「どうじゃろな。彼奴は、妾の・・・彼奴と似ておる。危なっかしい所までな。側にいて守ってやりたくなる程に」
「だめだよ!ユウは渡さないからね?」
「力付くで奪うと言ったら?」
「それは私が困るなぁ、だってバルちゃん暴れたら手に負えないし・・」
「はははっ、妾はもうそんなに子供じゃないさ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ジラ視点
ジラ、イス、ユライハムの3人は、魔界の中でも一際広大な更地である凪の丘まで足を運んでいた。
ここに、魔王様の堕とし子達が収容されているからだ。
「贄の儀式は既に始まってるのよね?」
「恐らくな。当初は魔王様奪還の前日が儀式の予定だったんだが、どういう訳か早まったらしい」
お願い間に合って・・
只々それを願うばかりである。
「あそこだ!」
兄さんが指をさした先は、広大な更地のある一区画にポツリとそびえていた塔のような施設だった。
3人はすぐにその塔へと降り立ち中へと入ろうとする。
「これはこれは、ユライハム様。本日はこの場所にどう言った御用ですかねえ?」
塔の一つしかない入り口を門番が守っていた。
巨大な斧を脇に抱えた身の丈3mはありそうな大柄な人物がへへへと口元に笑みを浮かべている。
「儀式はもう始まっているのか?」
「ええ、始まっていますよ」
「中に入りたい。通して貰えるか?」
「すみませんねえ、元老院のビャッコ様より、何人たりともここを通すなと言われてましてね」
どうやら誰も通す気はないようだ。
3人がお互いの顔を見合う。
イスが先制して動いた。
途端、巨体な門番が倒れ込んだ。
得意の魅了と追加効果の昏倒を門番に仕掛けたのだ。
「相変わらず、凄い効き目ですね」
「はい、同性以外でしたらほぼ百発百中ですよ!一人を除いては・・」
「それって、もしかしてユウ様の事かしら?」
しかし、答えをはぐらかされてしまった。
この件が終わった後でもう一度聞いてみないと。
「行くぞ」
兄さんを先頭に塔の中へと入って行く。
螺旋階段をひたすらに登って行く。
暫く登った先に広い空間が現れた。
中央に誰かが張り付けにされている姿が見える。
その前には儀式の最中と思われる祭祀の姿と元老院が一人、そして傍観者であろう数人の魔族がいた。
良く見るとクオーツのメンバーの姿も何人か見えた。
「メルシー様っ!」
叫んだのはイスだった。
張り付けにされていたのは、メルシー以外に2人いた。
恐らくメルシー様と同じ堕とし子と呼ばれる存在なのだろうけど、私には見覚えがなかった。
「何だお前達は!」
メルシー様達を救う為に、ここにいる皆に魔王様に言われた事を説明した。
「指揮官殿まで世迷言に騙されおって」
指揮官というのは、魔族軍の指揮官をしている兄さんの事だ。
私の説明を聞いた祭祀達が動揺を見せる。
「ビャッコ様、儀式はどうしますか?」
「予定通りこのまま続けろ」
やはり、聞く耳を持ってはくれないか。
しかし、何故そうまでしてメルシー様達を贄にしたいのか・・。
「ビャッコ様は、堕とし子という存在が邪魔なのではないですか?」
「え、兄さんそれってどう言う・・」
「この魔界において、元老院達は魔王様の次に権力を持っている。それが何千年も続いて来た歴史なんだ。魔王様不在の折は、次点である元老院達が最高権力者のはずだった。しかし、何処から現れたのか、魔王様の堕とし子なんて存在が現れたものだから・・」
兄さんの説明によると、魔王様の不在を狙って好き勝手を企んでいた矢先に現れたメルシー様達魔王様の堕とし子という存在が邪魔だった。
これまでも何度か命を狙う為の工作をけしかけていたらしい。
そういえば、以前ユウ様に聞いた話に、メルシー様達との出会いは、竜族に捕縛されたフラン様を救った時だと聞いた事があった。
もしかしたらそれも偶然ではなく仕組まれた事だとすれば、合致する。
「指揮官殿よ。それ以上何か言おうものなら反逆行為と見なすが良いか?」
「ビャッコ様!さっきの話を認めるって事ですか!」
イスがいきり立っている。
「お前は、クオーツの者か。ふん、だとしたらどうだというのだ」
「許さない・・そんな理由でメルシー様を・・」
私は咄嗟にイスの肩に手を置き感情を抑えるように促した。
「指揮官殿、このまま儀式を続けさせてくれぬか?黙って立ち去るというのら3人の命は保証しよう」
「面倒なことになったぞジラ」
私たちの行動に兄さんをこれ以上巻き込むことは出来ない。
「兄さんは、帰って下さい」
「何?」
「巻き込めませんし、私達も喰い下がるつもりもありません」
「良く考えろ。実力行使でどうにかなると思っているのか!相手は元老院の一人にお前と同じクオーツも二人いるんだぞ」
「はい、分かってます。それに兄さんにはもう一つだけお願いがあるんです」
昨日、一昨日と爺に拘束されて、地界に来れなかったので、シュンと会うのは実質2日振りだった。
そう、シュンに衝撃的な告白を受けてから3日後・・
「あれ、シュンはいないようじゃの」
部屋の中には誰も居らず、部屋の鍵がガチャッと外から掛けられた音が聞こえた。
「やはり現れたか、忌々しい魔族め!」
すぐに声のする方へと振り返る。
部屋の死角になっている箇所からぞろぞろと武装した騎士団員があっという間に妾を取り囲む。
「なんじゃ、お前らは?」
「我らはこの国の親衛隊だ!お前が報告にあった魔族で間違いないな!」
何故取り囲まれているのか、当然身に覚えがなかった。
しかし、魔族と言われれば自分の事で間違いないのだろうと認識した。
「じゃったら何だと言うのじゃ?」
「国の脅威となり得る勢力は強制排除だ!」
親衛隊を名乗る連中は一斉にキキに向かって槍を振るった。
しかし、そんなものが妾に命中する訳もなく、易々とそれを交わした。
此奴らが妾を狙っている理由は分からんが、そんな事は妾にはどうでも良かった。
「シュンは何処じゃ!」
胸騒ぎがしていた。
襲われている理由なんてどうでもいい。シュンに会って聞けばいい。しかし、姿の見えないシュンの事が気に掛かる。
妾の問いに対して親衛隊の一人がヘラヘラと笑っていた。
「裏切り者の騎士団長様ならもうこの世にはいないぜ」
?
此奴が一体何を言っているのか、すぐに理解する事が出来なかった。
いや、理解したくなかったのかもしれない。
騎士団長は、この世にいない?
いないってどう言う事じゃ?
発せられた言葉を頭の中で何度も何度も復唱する。
直後、背後からチクリと痛みを感じ、我に返った。
親衛隊の一人が妾の背後から槍をブッ刺したのだ。
貧弱だったのか、服に小さな穴が開いた程度で、肌には文字通り傷一つさえも入らなかった。
「お前達が何を言っておるのか理解が出来ん。シュンの元に案内するならば、今のは見逃してやるが?」
親衛隊は、今まで感じた事のない殺気混じりの鋭い威圧にたじろぐ。
「だから言ってるだろ!騎士団長のシュンは死んだ。昨日公開処刑されたんだ!それはそれは盛大だったぞ、お前にも見せーーー」
瞬間、発言した騎士の首が空《くう》を舞い地面へと落下する。
「何を言っておるのじゃ?そんなはずがなかろう。ついこの間話しをしたばっかしじゃぞ?」
仲間の身に起こった出来事を目の当たりにし、その場でガクガクと震える者、この場から逃げ出す者、逆に敵討ちだと言わんばかりに斬りかかってくる者、それぞれが一斉に行動を開始した。
あまりの衝撃的な内容に放心状態になっていた。
そして次の瞬間、この部屋には妾以外は、誰一人として立っている者はいなかった。
何処からか取り出した大鎌一振りにて全員の首を刎ねたのだ。
「はははっ・・・シュンが死んだだと・・?妾は信じぬぞ・・」
その後は、城内をシュンを探すべく宛もなく彷徨い歩いた。
その光景は、側から見ればまさにゾンビのようなゆっくりした徘徊と呼べるものだっただろう。
すれ違う者一人一人にシュンの居所を聞き、知らない者は全員殺した。
「おとなしく止まれ!!」
気が付くと、いつの間にか包囲されていた。
無意識のうちに中庭まで出ていたようじゃ。
今、周りには20人程度の武装した騎士隊が構えている。
騎士団長を名乗る男が妾の前に歩み寄ってきた。
「我は、現騎士団長を務めているゲイルだ。前任者のシュンは魔族と結託し、国家転覆の容疑が掛かった為、即刻処刑された」
「うそじゃ!!」
「うそじゃない。そして、お前が共犯者の魔族である事は調べがついている」
「国家転覆じゃと?シュンはそんな事は望んでいなかったぞ!デタラメを言うな!」
「・・・出る杭は打たれるのさ」
ゲイルは、ニヤリと口元を緩ませ驚くべきことを話し出した。
「真実を知らずに死ぬのは辛いだろう。教えてやる」
そして、それから1時間としないうちに、この大陸からザムル国とその一帯は、跡形も無く消え焦土と化した。
周辺諸国をも巻き込んだ、魔族のまだ年端も行かぬ少女VS人族との争いを後に第一次人魔対戦と呼んでいる。
同時に人族が魔族と正式に決別した日でもある。
「妾は・・人族と争いなどしたくなかった・・。人族のシュンの事が好きだった・・しかしそれ以上にそのシュンを殺した人族を決して許す事が出来ない・・この恨み尽きるまでは・・」
それから数年の後、魔族の少女キキは魔王となった。
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「どうかしたのバルちゃん?」
「いや、昔の事を思い出しておったんじゃ」
「それって、もしかして以前聞いた初恋の話かな?」
「ほんとにメルは勘が鋭いなって、ここだと全てバレるんじゃったな」
まるで昼下がりの休憩時間に友達と話しているような会話のこの2人は、神メルウェルと魔王バルサだった。
日常的に意思の世界にて二人は会話を楽しんでいた。
「あーあ、バルちゃんの封印が解かれちゃうと、話し相手が居なくなっちゃうのがちょっとだけ寂しいかなー」
「妾は、メルの愚痴を聞かなくて済むので清々するがの」
「あ、バルちゃんそれちょっとヒドイよ!!」
神メルウェルは、頰をぷくっと膨らませている。
「冗談じゃ。代わりに妾の側近にしてやるから許せ」
「それだと、私仕事を辞めないとだめなんじゃないかな?」
誰がこの光景を見て、魔王と神だと分かるだろうか?
「ユウは、上手くやると思う?」
「どうじゃろな。彼奴は、妾の・・・彼奴と似ておる。危なっかしい所までな。側にいて守ってやりたくなる程に」
「だめだよ!ユウは渡さないからね?」
「力付くで奪うと言ったら?」
「それは私が困るなぁ、だってバルちゃん暴れたら手に負えないし・・」
「はははっ、妾はもうそんなに子供じゃないさ」
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ジラ視点
ジラ、イス、ユライハムの3人は、魔界の中でも一際広大な更地である凪の丘まで足を運んでいた。
ここに、魔王様の堕とし子達が収容されているからだ。
「贄の儀式は既に始まってるのよね?」
「恐らくな。当初は魔王様奪還の前日が儀式の予定だったんだが、どういう訳か早まったらしい」
お願い間に合って・・
只々それを願うばかりである。
「あそこだ!」
兄さんが指をさした先は、広大な更地のある一区画にポツリとそびえていた塔のような施設だった。
3人はすぐにその塔へと降り立ち中へと入ろうとする。
「これはこれは、ユライハム様。本日はこの場所にどう言った御用ですかねえ?」
塔の一つしかない入り口を門番が守っていた。
巨大な斧を脇に抱えた身の丈3mはありそうな大柄な人物がへへへと口元に笑みを浮かべている。
「儀式はもう始まっているのか?」
「ええ、始まっていますよ」
「中に入りたい。通して貰えるか?」
「すみませんねえ、元老院のビャッコ様より、何人たりともここを通すなと言われてましてね」
どうやら誰も通す気はないようだ。
3人がお互いの顔を見合う。
イスが先制して動いた。
途端、巨体な門番が倒れ込んだ。
得意の魅了と追加効果の昏倒を門番に仕掛けたのだ。
「相変わらず、凄い効き目ですね」
「はい、同性以外でしたらほぼ百発百中ですよ!一人を除いては・・」
「それって、もしかしてユウ様の事かしら?」
しかし、答えをはぐらかされてしまった。
この件が終わった後でもう一度聞いてみないと。
「行くぞ」
兄さんを先頭に塔の中へと入って行く。
螺旋階段をひたすらに登って行く。
暫く登った先に広い空間が現れた。
中央に誰かが張り付けにされている姿が見える。
その前には儀式の最中と思われる祭祀の姿と元老院が一人、そして傍観者であろう数人の魔族がいた。
良く見るとクオーツのメンバーの姿も何人か見えた。
「メルシー様っ!」
叫んだのはイスだった。
張り付けにされていたのは、メルシー以外に2人いた。
恐らくメルシー様と同じ堕とし子と呼ばれる存在なのだろうけど、私には見覚えがなかった。
「何だお前達は!」
メルシー様達を救う為に、ここにいる皆に魔王様に言われた事を説明した。
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指揮官というのは、魔族軍の指揮官をしている兄さんの事だ。
私の説明を聞いた祭祀達が動揺を見せる。
「ビャッコ様、儀式はどうしますか?」
「予定通りこのまま続けろ」
やはり、聞く耳を持ってはくれないか。
しかし、何故そうまでしてメルシー様達を贄にしたいのか・・。
「ビャッコ様は、堕とし子という存在が邪魔なのではないですか?」
「え、兄さんそれってどう言う・・」
「この魔界において、元老院達は魔王様の次に権力を持っている。それが何千年も続いて来た歴史なんだ。魔王様不在の折は、次点である元老院達が最高権力者のはずだった。しかし、何処から現れたのか、魔王様の堕とし子なんて存在が現れたものだから・・」
兄さんの説明によると、魔王様の不在を狙って好き勝手を企んでいた矢先に現れたメルシー様達魔王様の堕とし子という存在が邪魔だった。
これまでも何度か命を狙う為の工作をけしかけていたらしい。
そういえば、以前ユウ様に聞いた話に、メルシー様達との出会いは、竜族に捕縛されたフラン様を救った時だと聞いた事があった。
もしかしたらそれも偶然ではなく仕組まれた事だとすれば、合致する。
「指揮官殿よ。それ以上何か言おうものなら反逆行為と見なすが良いか?」
「ビャッコ様!さっきの話を認めるって事ですか!」
イスがいきり立っている。
「お前は、クオーツの者か。ふん、だとしたらどうだというのだ」
「許さない・・そんな理由でメルシー様を・・」
私は咄嗟にイスの肩に手を置き感情を抑えるように促した。
「指揮官殿、このまま儀式を続けさせてくれぬか?黙って立ち去るというのら3人の命は保証しよう」
「面倒なことになったぞジラ」
私たちの行動に兄さんをこれ以上巻き込むことは出来ない。
「兄さんは、帰って下さい」
「何?」
「巻き込めませんし、私達も喰い下がるつもりもありません」
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