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第百三十二話:それぞれの道
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眼前には、豪華絢爛な食事が所狭しとテーブルに並んでいる。
ここは、モルトト城の大食堂の隅っこの一角だ。
食卓についているのは、仲間のユイ、クロ、リン、ジラ、アリス、ミミ、シュリ。そして聖女様だ。
魔王様に一夜だけとお願いをしてクロを連れ帰ってきた。
「明日から、何人かは俺たちの元を一時離れる。だからせめて今晩くらいは全員一緒に食事をしよう」
クロは魔界の魔王の元で療養生活を始める。
クロは魔族の狂気にあてられており、見た目では判断がつかなかったが、中身は既にボロボロだと言う。
すぐに命に関わることはないということだが、今まで無理をさせていたことに深く反省している。
教えてくれた魔王様に感謝しないとね。
ちなみに、完治するには、かなり時間が掛かるそうだ。
リンは、サーシャと一緒に各国を周る。
というのも、魔族との停戦協定を結んだことにより、全ての人族にこれを伝える必要がある。
主要都市ならば、何かしらの伝送技術があるそうだけど小さな村や町には直接伝令に行かなければならない。
サーシャは聖女で、治癒の能力に関してはズバ抜けていたが、それ以外は一般人と大差ない。
身を守る力は持っていない。
当然専属で護衛はいるのだろうけど、他ならぬリンが側に居てくれれば、俺としても安心出来る。
ジラは暫くの間、魔界へ帰る。
停戦協定の対応で魔界側も人手不足のため、戻ってきて欲しいと言われたそうだ。
魔界も人界同様かなり広大な敷地面積がある。
それに人族以上に血の気の多い連中もたくさんいる為、力のある人材が一人でも多く必要なのだそうだ。
最後にミミだ。
まだ仲間になってから日は浅かったけど、何でも、やる事が見つかったから解放して欲しいという。
ミミに関しては正直よく分からない。
成り行きで強引に主従契約を用いて仲間にしたようなものだからね。
了承して解放する事にした。
以上の3人と1匹が明日から別行動になる。
「改まって言うのも恥ずかしいものだけど、俺はみんなに感謝してるんだ。みんなが居たから今の俺がいるし、今回の件だって、こうして魔族たちとも争わずに済む事が出来た。本当にありがとう」
「お兄ちゃん一人じゃ心配だからね。これからも私がずっと隣に居てあげるよ」
「ああ、頼りにしてる」
豪快にユイの頭を撫でてやる。
こうするのが、一番ユイが喜ぶんだよね。
俺としても、ユイの狐耳を蹂躙出来るので、一石二鳥とはまさにこの事だろう。
「このメンバーでこうやって集まって食事をするのももしかしたら最後かもしれない。だけど、俺たちは決して切れない絆で結ばれた最高の仲間だ。それは離れていても、この世界のどこにいても変わらない。ささやかだけど、今日はご馳走を用意したからたくさん食べて飲んでくれ。それでは、乾杯!」
「「「かんぱーい!」」」
この日ばかりは禁酒を解除して、俺も楽しく酒の席に混じった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
とある古めかしい城内にて
「海斗様!」
仮面を被った男の元へ息を切らした従者が走り寄る。
「たった今伝令が入りました」
「魔族停戦協定の件か?」
「はっ、ご存知でしたか」
「なんでも二族間の橋渡しを行なったのは、人族のまだ年若い青年と言うじゃないか・・・ククク、面白くなってきたな」
海斗は、明後日の方向を見ながら不適な笑みを浮かべていた。
「すぐに熾天使たちを召集してくれ。その者に会いに行く」
「はっ!すぐに伝えます!」
そう言うと従者は、またすぐに去っていった。
「クククッ最後のかけらの場所が分かったかもしれんな。これで世界は救われるだろうか・・」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「・・・ふあぁ」
隣で大きな欠伸をしていたのは、シュリだ。
というのも、結局晩餐会は朝方まで続いた。
その場で力尽きて寝る人が続出したからお開きになったのだけど、かく言う俺も完全に二日酔いだった。
頭が痛い。
クロとジラは既に今朝早くに魔界へと帰って行った。
リンもフラフラしながら聖女様の元へと先程出て行った。
ミミはいつの間にか居なくなってるし。
服従の契約は昨晩解除してあるから問題はないけど。
ユイはまだ隣で気持ちよさそうに寝ていた。
アリスは、魔力補給でもしているのか部屋の隅で正座を決め込んで微動だにしない。
昨晩まだ意識がまともな内に、リンたちとは別れの言葉を交わしていた。
途中から離れ離れになるのが辛いのかユイがクロを抱きしめて離さない。
エンエンと泣きじゃくって、なだめるのが大変だった。
思えば、ずっと一緒に旅してたんだもんな。
クロの事を本当の妹のように接してたしね。
また会える日が待ち遠しいな、ユイ・・。
ユイの頭を優しく撫でる。
「・・・むにゅむにゅ・・お兄ちゃん・・だい・・すき・・」
寝言か・・
一体どんな夢を見ているのか・・
その光景を頬ましく思いながら起き上がった。
少し外の空気を吸ってこよう。
結局昨晩というか今朝は宿まで戻る元気がなかったので、モルトト城の一室を借りていた。
そういえば、まだ今回の宴を準備してくれた王様にお礼を言っていなかったので、王の元へと向かう事にした。
起きたばっかりだけど、時刻は既に正午過ぎだった。
謁見の間に通された俺は、昨晩の食事を準備してもらった事、寝床を準備してもらった事、飛行船を貸してくれた事に対してお礼を述べた。
”この国の英雄に協力できたことを誉に思うぞ”
と言われた。
英雄とは、これいかに・・
さて、今日は出発に向けての準備をして、明日この国を出るとしよう。
いつの間にか隣にいたシュリと一緒に買い物をする為、街へと繰り出す。
酔い覚ましに暖かいココアのような、シャルムを買って二人でそれを一気に飲み干した。
シュリは、外見的には15.6歳くらいなんだけど、既に立派に成人しているらしく、昨晩は一緒にキツイ酒をグビグビ飲んでいた。
年齢は結局のところ聴けてないんだけどね。
女の人に年齢って何か聞き辛い。
買い出しを終えて戻って来たら、ユイが目を覚ましていた。
何故か頬をプクッと膨らませてドアの前に仁王立ちしている。
「どうしたんだ?」
「どうしたじゃないよ!シュリと二人っきりで買い物なんてズルいよ!私も行きたかった!」
「悪い悪い、ユイの寝顔があんまりに可愛いかったから、起こすのに躊躇しちゃってさ」
「えっ・・むぅ。そ、それならまぁ、仕方ないかな・・」
ふっ、チョロいな。
でも嘘じゃないからね。
ともあれ、俺たちの中でみんなの姉的な存在だったリンとジラが離れてしまったのは戦力的にも非常に大きな損失だ。
まぁ、それでも他のみんなもこの世界のレベルからすると既に英雄級の実力を兼ね備えているので、大丈夫だとは思うけど人数が減ってしまった分、用心に越した事はないだろう。
時間のあるうちに回復剤なども整備しておく。
次の日の朝、グリムを出して馬車を牽引してもらう。
久しぶりの外に出た開放感からか、いつもより馬車を牽引するスピードが気持ち早い気がする。
モルトトを出発する前にリンと聖女様に挨拶したかっけど、既にモルトトを去った後だった。
「相変わらず、仕事熱心なんだよな・・・聖女様の事、頼んだぞリン」
だいぶ寄り道してしまったが、俺たちの次の目的地は、バーン帝国だ。
まだまだ先は遠いけどね。
モルトト王に空艦でも借りていけばすぐなんだけど、それだとつまらない。
道中の馬車旅も気楽でいいもんだしね。
そうして馬車を走らせる事、数日が経過していた。
今俺たちは、赤い点に囲まれている。
「お兄ちゃん、馬車のすぐ近くまでモンスターが寄って来てるよ」
「そうだな」
だが、モンスターに囲まれたくらいで俺たちは慌てない。
食後のコーヒーでも飲むかのように当たり前のように対応するだけ。
俺ではなく可愛い妹たちがね。
俺が何も指示を出すまでもなく、ユイとシュリがモンスター相手に無双している。
既にいくつかのパターンでの戦法はみんなに説明してるので、余程のイレギュラーでもない限りは、俺の出る幕はない。
別に怠けているわけではない。
俺は俺の方で色々とやることがあり、忙しい。
「お兄ちゃん!なんか見つけたよー」
うん、想定内想定内・・。
馬車の少し先の所にユイが立っている。
その辺りにはモンスターとか人の反応はない。
グリムをユイのいる方向へと進める。
「こっちこっち~」
少し先は崖になっているようで、ユイはその崖下を指差している。
「あれだよお兄ちゃん」
あ、あれは・・
「んと、集落か何かかな」
50人規模程度の小規模な集落跡が100m程崖下先に広がっていた。
集落跡と言ったのは、人の反応が全くないからだ。
しかし、気になるので降りて調べて見る事になった。
グリムを一旦戻して、4人で崖下へと降りる。
「おーい、二人とも。あんましはしゃぐと怪我するぞ!」
ユイとシュリが崖を駆け足で降りていく。
あー、今までだったら、こういうシュチュエーションは、姉貴分のジラ達がちゃんと躾けてくれていたっけな・・。
改めて居ない事への弊害を感じてしまう。
アリスは、上空を優雅に飛んで降りて行く。
俺が一番最後に、崖下へと着地した。
「じゃ、行くか。気配がないから誰もいないとは思うけど一応警戒はしておいてくれ」
「おっけー」
ユイとシュリがラジャーのポーズを取る。
いつのまにシュリに教えたんだ・・。
集落跡に入った途端、妙な違和感に苛まれた。
「この集落跡おかしいぞ・・」
「ん?誰もいないから?」
「いや、そうじゃない。根本的におかしいだろ。誰も居ないのに、まるで、ついさっきまで人が生活していたような感じじゃないか」
薪は、まだ熱を持って煙を出しているし、木と藁で作られた簡易な居住スペースには、作りかけの食事が放置してあった。その光景を見たシュリが指を咥えている。
「食べたらダメ?」
「シュリちゃん、駄目だよ」
ユイがここぞとばかりにお姉ちゃんアピールしていた。
「でも、美味しそうだから一口くらいならいいかな?」
前言撤回だ。
状況から見て数時間前までは人がいた痕跡がある。
だけど今は誰一人いない。
俺たちがここを見つけてからまだ15分程度しか経過していない。
その時点でも1k圏内に反応はなかった。
妙だな。
(神隠しですか?)
(え、神隠しってこっちの世界にも存在するのか?)
(本当かどうかは不明ですけど、人族は昔から悪い事をすると神隠しでどこか別の世界に連れて行かれるという迷信があるみたいです)
物知りセリアが言うんだから本当にあるんだろう。
でもあくまでも迷信だからね。
魔法のあるこの世界でも流石に神隠しって言われてもシックリこない。
それに、この世界の神の一人とは知り合いだしね・・。
ここは、モルトト城の大食堂の隅っこの一角だ。
食卓についているのは、仲間のユイ、クロ、リン、ジラ、アリス、ミミ、シュリ。そして聖女様だ。
魔王様に一夜だけとお願いをしてクロを連れ帰ってきた。
「明日から、何人かは俺たちの元を一時離れる。だからせめて今晩くらいは全員一緒に食事をしよう」
クロは魔界の魔王の元で療養生活を始める。
クロは魔族の狂気にあてられており、見た目では判断がつかなかったが、中身は既にボロボロだと言う。
すぐに命に関わることはないということだが、今まで無理をさせていたことに深く反省している。
教えてくれた魔王様に感謝しないとね。
ちなみに、完治するには、かなり時間が掛かるそうだ。
リンは、サーシャと一緒に各国を周る。
というのも、魔族との停戦協定を結んだことにより、全ての人族にこれを伝える必要がある。
主要都市ならば、何かしらの伝送技術があるそうだけど小さな村や町には直接伝令に行かなければならない。
サーシャは聖女で、治癒の能力に関してはズバ抜けていたが、それ以外は一般人と大差ない。
身を守る力は持っていない。
当然専属で護衛はいるのだろうけど、他ならぬリンが側に居てくれれば、俺としても安心出来る。
ジラは暫くの間、魔界へ帰る。
停戦協定の対応で魔界側も人手不足のため、戻ってきて欲しいと言われたそうだ。
魔界も人界同様かなり広大な敷地面積がある。
それに人族以上に血の気の多い連中もたくさんいる為、力のある人材が一人でも多く必要なのだそうだ。
最後にミミだ。
まだ仲間になってから日は浅かったけど、何でも、やる事が見つかったから解放して欲しいという。
ミミに関しては正直よく分からない。
成り行きで強引に主従契約を用いて仲間にしたようなものだからね。
了承して解放する事にした。
以上の3人と1匹が明日から別行動になる。
「改まって言うのも恥ずかしいものだけど、俺はみんなに感謝してるんだ。みんなが居たから今の俺がいるし、今回の件だって、こうして魔族たちとも争わずに済む事が出来た。本当にありがとう」
「お兄ちゃん一人じゃ心配だからね。これからも私がずっと隣に居てあげるよ」
「ああ、頼りにしてる」
豪快にユイの頭を撫でてやる。
こうするのが、一番ユイが喜ぶんだよね。
俺としても、ユイの狐耳を蹂躙出来るので、一石二鳥とはまさにこの事だろう。
「このメンバーでこうやって集まって食事をするのももしかしたら最後かもしれない。だけど、俺たちは決して切れない絆で結ばれた最高の仲間だ。それは離れていても、この世界のどこにいても変わらない。ささやかだけど、今日はご馳走を用意したからたくさん食べて飲んでくれ。それでは、乾杯!」
「「「かんぱーい!」」」
この日ばかりは禁酒を解除して、俺も楽しく酒の席に混じった。
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とある古めかしい城内にて
「海斗様!」
仮面を被った男の元へ息を切らした従者が走り寄る。
「たった今伝令が入りました」
「魔族停戦協定の件か?」
「はっ、ご存知でしたか」
「なんでも二族間の橋渡しを行なったのは、人族のまだ年若い青年と言うじゃないか・・・ククク、面白くなってきたな」
海斗は、明後日の方向を見ながら不適な笑みを浮かべていた。
「すぐに熾天使たちを召集してくれ。その者に会いに行く」
「はっ!すぐに伝えます!」
そう言うと従者は、またすぐに去っていった。
「クククッ最後のかけらの場所が分かったかもしれんな。これで世界は救われるだろうか・・」
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「・・・ふあぁ」
隣で大きな欠伸をしていたのは、シュリだ。
というのも、結局晩餐会は朝方まで続いた。
その場で力尽きて寝る人が続出したからお開きになったのだけど、かく言う俺も完全に二日酔いだった。
頭が痛い。
クロとジラは既に今朝早くに魔界へと帰って行った。
リンもフラフラしながら聖女様の元へと先程出て行った。
ミミはいつの間にか居なくなってるし。
服従の契約は昨晩解除してあるから問題はないけど。
ユイはまだ隣で気持ちよさそうに寝ていた。
アリスは、魔力補給でもしているのか部屋の隅で正座を決め込んで微動だにしない。
昨晩まだ意識がまともな内に、リンたちとは別れの言葉を交わしていた。
途中から離れ離れになるのが辛いのかユイがクロを抱きしめて離さない。
エンエンと泣きじゃくって、なだめるのが大変だった。
思えば、ずっと一緒に旅してたんだもんな。
クロの事を本当の妹のように接してたしね。
また会える日が待ち遠しいな、ユイ・・。
ユイの頭を優しく撫でる。
「・・・むにゅむにゅ・・お兄ちゃん・・だい・・すき・・」
寝言か・・
一体どんな夢を見ているのか・・
その光景を頬ましく思いながら起き上がった。
少し外の空気を吸ってこよう。
結局昨晩というか今朝は宿まで戻る元気がなかったので、モルトト城の一室を借りていた。
そういえば、まだ今回の宴を準備してくれた王様にお礼を言っていなかったので、王の元へと向かう事にした。
起きたばっかりだけど、時刻は既に正午過ぎだった。
謁見の間に通された俺は、昨晩の食事を準備してもらった事、寝床を準備してもらった事、飛行船を貸してくれた事に対してお礼を述べた。
”この国の英雄に協力できたことを誉に思うぞ”
と言われた。
英雄とは、これいかに・・
さて、今日は出発に向けての準備をして、明日この国を出るとしよう。
いつの間にか隣にいたシュリと一緒に買い物をする為、街へと繰り出す。
酔い覚ましに暖かいココアのような、シャルムを買って二人でそれを一気に飲み干した。
シュリは、外見的には15.6歳くらいなんだけど、既に立派に成人しているらしく、昨晩は一緒にキツイ酒をグビグビ飲んでいた。
年齢は結局のところ聴けてないんだけどね。
女の人に年齢って何か聞き辛い。
買い出しを終えて戻って来たら、ユイが目を覚ましていた。
何故か頬をプクッと膨らませてドアの前に仁王立ちしている。
「どうしたんだ?」
「どうしたじゃないよ!シュリと二人っきりで買い物なんてズルいよ!私も行きたかった!」
「悪い悪い、ユイの寝顔があんまりに可愛いかったから、起こすのに躊躇しちゃってさ」
「えっ・・むぅ。そ、それならまぁ、仕方ないかな・・」
ふっ、チョロいな。
でも嘘じゃないからね。
ともあれ、俺たちの中でみんなの姉的な存在だったリンとジラが離れてしまったのは戦力的にも非常に大きな損失だ。
まぁ、それでも他のみんなもこの世界のレベルからすると既に英雄級の実力を兼ね備えているので、大丈夫だとは思うけど人数が減ってしまった分、用心に越した事はないだろう。
時間のあるうちに回復剤なども整備しておく。
次の日の朝、グリムを出して馬車を牽引してもらう。
久しぶりの外に出た開放感からか、いつもより馬車を牽引するスピードが気持ち早い気がする。
モルトトを出発する前にリンと聖女様に挨拶したかっけど、既にモルトトを去った後だった。
「相変わらず、仕事熱心なんだよな・・・聖女様の事、頼んだぞリン」
だいぶ寄り道してしまったが、俺たちの次の目的地は、バーン帝国だ。
まだまだ先は遠いけどね。
モルトト王に空艦でも借りていけばすぐなんだけど、それだとつまらない。
道中の馬車旅も気楽でいいもんだしね。
そうして馬車を走らせる事、数日が経過していた。
今俺たちは、赤い点に囲まれている。
「お兄ちゃん、馬車のすぐ近くまでモンスターが寄って来てるよ」
「そうだな」
だが、モンスターに囲まれたくらいで俺たちは慌てない。
食後のコーヒーでも飲むかのように当たり前のように対応するだけ。
俺ではなく可愛い妹たちがね。
俺が何も指示を出すまでもなく、ユイとシュリがモンスター相手に無双している。
既にいくつかのパターンでの戦法はみんなに説明してるので、余程のイレギュラーでもない限りは、俺の出る幕はない。
別に怠けているわけではない。
俺は俺の方で色々とやることがあり、忙しい。
「お兄ちゃん!なんか見つけたよー」
うん、想定内想定内・・。
馬車の少し先の所にユイが立っている。
その辺りにはモンスターとか人の反応はない。
グリムをユイのいる方向へと進める。
「こっちこっち~」
少し先は崖になっているようで、ユイはその崖下を指差している。
「あれだよお兄ちゃん」
あ、あれは・・
「んと、集落か何かかな」
50人規模程度の小規模な集落跡が100m程崖下先に広がっていた。
集落跡と言ったのは、人の反応が全くないからだ。
しかし、気になるので降りて調べて見る事になった。
グリムを一旦戻して、4人で崖下へと降りる。
「おーい、二人とも。あんましはしゃぐと怪我するぞ!」
ユイとシュリが崖を駆け足で降りていく。
あー、今までだったら、こういうシュチュエーションは、姉貴分のジラ達がちゃんと躾けてくれていたっけな・・。
改めて居ない事への弊害を感じてしまう。
アリスは、上空を優雅に飛んで降りて行く。
俺が一番最後に、崖下へと着地した。
「じゃ、行くか。気配がないから誰もいないとは思うけど一応警戒はしておいてくれ」
「おっけー」
ユイとシュリがラジャーのポーズを取る。
いつのまにシュリに教えたんだ・・。
集落跡に入った途端、妙な違和感に苛まれた。
「この集落跡おかしいぞ・・」
「ん?誰もいないから?」
「いや、そうじゃない。根本的におかしいだろ。誰も居ないのに、まるで、ついさっきまで人が生活していたような感じじゃないか」
薪は、まだ熱を持って煙を出しているし、木と藁で作られた簡易な居住スペースには、作りかけの食事が放置してあった。その光景を見たシュリが指を咥えている。
「食べたらダメ?」
「シュリちゃん、駄目だよ」
ユイがここぞとばかりにお姉ちゃんアピールしていた。
「でも、美味しそうだから一口くらいならいいかな?」
前言撤回だ。
状況から見て数時間前までは人がいた痕跡がある。
だけど今は誰一人いない。
俺たちがここを見つけてからまだ15分程度しか経過していない。
その時点でも1k圏内に反応はなかった。
妙だな。
(神隠しですか?)
(え、神隠しってこっちの世界にも存在するのか?)
(本当かどうかは不明ですけど、人族は昔から悪い事をすると神隠しでどこか別の世界に連れて行かれるという迷信があるみたいです)
物知りセリアが言うんだから本当にあるんだろう。
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