幻想世界の統合者

砂鳥 ケイ

文字の大きさ
131 / 242

第百三十二話:それぞれの道

しおりを挟む
眼前には、豪華絢爛な食事が所狭しとテーブルに並んでいる。

ここは、モルトト城の大食堂の隅っこの一角だ。

食卓についているのは、仲間のユイ、クロ、リン、ジラ、アリス、ミミ、シュリ。そして聖女様だ。

魔王様に一夜だけとお願いをしてクロを連れ帰ってきた。

「明日から、何人かは俺たちの元を一時離れる。だからせめて今晩くらいは全員一緒に食事をしよう」

クロは魔界の魔王の元で療養生活を始める。
クロは魔族の狂気にあてられており、見た目では判断がつかなかったが、中身は既にボロボロだと言う。
すぐに命に関わることはないということだが、今まで無理をさせていたことに深く反省している。

教えてくれた魔王様に感謝しないとね。
ちなみに、完治するには、かなり時間が掛かるそうだ。

リンは、サーシャと一緒に各国を周る。
というのも、魔族との停戦協定を結んだことにより、全ての人族にこれを伝える必要がある。
主要都市ならば、何かしらの伝送技術があるそうだけど小さな村や町には直接伝令に行かなければならない。
サーシャは聖女で、治癒の能力に関してはズバ抜けていたが、それ以外は一般人と大差ない。
身を守る力は持っていない。
当然専属で護衛はいるのだろうけど、他ならぬリンが側に居てくれれば、俺としても安心出来る。

ジラは暫くの間、魔界へ帰る。
停戦協定の対応で魔界側も人手不足のため、戻ってきて欲しいと言われたそうだ。
魔界も人界同様かなり広大な敷地面積がある。
それに人族以上に血の気の多い連中もたくさんいる為、力のある人材が一人でも多く必要なのだそうだ。

最後にミミだ。
まだ仲間になってから日は浅かったけど、何でも、やる事が見つかったから解放して欲しいという。
ミミに関しては正直よく分からない。
成り行きで強引に主従契約を用いて仲間にしたようなものだからね。
了承して解放する事にした。

以上の3人と1匹が明日から別行動になる。

「改まって言うのも恥ずかしいものだけど、俺はみんなに感謝してるんだ。みんなが居たから今の俺がいるし、今回の件だって、こうして魔族たちとも争わずに済む事が出来た。本当にありがとう」
「お兄ちゃん一人じゃ心配だからね。これからも私がずっと隣に居てあげるよ」
「ああ、頼りにしてる」

豪快にユイの頭を撫でてやる。
こうするのが、一番ユイが喜ぶんだよね。
俺としても、ユイの狐耳を蹂躙出来るので、一石二鳥とはまさにこの事だろう。

「このメンバーでこうやって集まって食事をするのももしかしたら最後かもしれない。だけど、俺たちは決して切れない絆で結ばれた最高の仲間だ。それは離れていても、この世界のどこにいても変わらない。ささやかだけど、今日はご馳走を用意したからたくさん食べて飲んでくれ。それでは、乾杯!」

「「「かんぱーい!」」」

この日ばかりは禁酒を解除して、俺も楽しく酒の席に混じった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
とある古めかしい城内にて

「海斗様!」

仮面を被った男の元へ息を切らした従者が走り寄る。

「たった今伝令が入りました」
「魔族停戦協定の件か?」
「はっ、ご存知でしたか」
「なんでも二族間の橋渡しを行なったのは、人族のまだ年若い青年と言うじゃないか・・・ククク、面白くなってきたな」

海斗は、明後日の方向を見ながら不適な笑みを浮かべていた。

「すぐに熾天使たちを召集してくれ。その者に会いに行く」
「はっ!すぐに伝えます!」

そう言うと従者は、またすぐに去っていった。

「クククッ最後のかけらの場所が分かったかもしれんな。これで世界は救われるだろうか・・」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「・・・ふあぁ」

隣で大きな欠伸をしていたのは、シュリだ。

というのも、結局晩餐会は朝方まで続いた。
その場で力尽きて寝る人が続出したからお開きになったのだけど、かく言う俺も完全に二日酔いだった。
頭が痛い。

クロとジラは既に今朝早くに魔界へと帰って行った。
リンもフラフラしながら聖女様の元へと先程出て行った。

ミミはいつの間にか居なくなってるし。
服従の契約は昨晩解除してあるから問題はないけど。

ユイはまだ隣で気持ちよさそうに寝ていた。
アリスは、魔力補給でもしているのか部屋の隅で正座を決め込んで微動だにしない。

昨晩まだ意識がまともな内に、リンたちとは別れの言葉を交わしていた。

途中から離れ離れになるのが辛いのかユイがクロを抱きしめて離さない。
エンエンと泣きじゃくって、なだめるのが大変だった。
思えば、ずっと一緒に旅してたんだもんな。
クロの事を本当の妹のように接してたしね。
また会える日が待ち遠しいな、ユイ・・。

ユイの頭を優しく撫でる。

「・・・むにゅむにゅ・・お兄ちゃん・・だい・・すき・・」

寝言か・・
一体どんな夢を見ているのか・・
その光景を頬ましく思いながら起き上がった。
少し外の空気を吸ってこよう。

結局昨晩というか今朝は宿まで戻る元気がなかったので、モルトト城の一室を借りていた。

そういえば、まだ今回の宴を準備してくれた王様にお礼を言っていなかったので、王の元へと向かう事にした。

起きたばっかりだけど、時刻は既に正午過ぎだった。

謁見の間に通された俺は、昨晩の食事を準備してもらった事、寝床を準備してもらった事、飛行船を貸してくれた事に対してお礼を述べた。

”この国の英雄に協力できたことを誉に思うぞ”
と言われた。

英雄とは、これいかに・・

さて、今日は出発に向けての準備をして、明日この国を出るとしよう。

いつの間にか隣にいたシュリと一緒に買い物をする為、街へと繰り出す。

酔い覚ましに暖かいココアのような、シャルムを買って二人でそれを一気に飲み干した。

シュリは、外見的には15.6歳くらいなんだけど、既に立派に成人しているらしく、昨晩は一緒にキツイ酒をグビグビ飲んでいた。
年齢は結局のところ聴けてないんだけどね。
女の人に年齢って何か聞き辛い。

買い出しを終えて戻って来たら、ユイが目を覚ましていた。
何故か頬をプクッと膨らませてドアの前に仁王立ちしている。

「どうしたんだ?」
「どうしたじゃないよ!シュリと二人っきりで買い物なんてズルいよ!私も行きたかった!」
「悪い悪い、ユイの寝顔があんまりに可愛いかったから、起こすのに躊躇しちゃってさ」
「えっ・・むぅ。そ、それならまぁ、仕方ないかな・・」

ふっ、チョロいな。
でも嘘じゃないからね。

ともあれ、俺たちの中でみんなの姉的な存在だったリンとジラが離れてしまったのは戦力的にも非常に大きな損失だ。
まぁ、それでも他のみんなもこの世界のレベルからすると既に英雄級の実力を兼ね備えているので、大丈夫だとは思うけど人数が減ってしまった分、用心に越した事はないだろう。
時間のあるうちに回復剤なども整備しておく。


次の日の朝、グリムを出して馬車を牽引してもらう。
久しぶりの外に出た開放感からか、いつもより馬車を牽引するスピードが気持ち早い気がする。
モルトトを出発する前にリンと聖女様に挨拶したかっけど、既にモルトトを去った後だった。

「相変わらず、仕事熱心なんだよな・・・聖女様の事、頼んだぞリン」

だいぶ寄り道してしまったが、俺たちの次の目的地は、バーン帝国だ。
まだまだ先は遠いけどね。
モルトト王に空艦でも借りていけばすぐなんだけど、それだとつまらない。
道中の馬車旅も気楽でいいもんだしね。


そうして馬車を走らせる事、数日が経過していた。
今俺たちは、赤い点に囲まれている。

「お兄ちゃん、馬車のすぐ近くまでモンスターが寄って来てるよ」
「そうだな」

だが、モンスターに囲まれたくらいで俺たちは慌てない。
食後のコーヒーでも飲むかのように当たり前のように対応するだけ。
俺ではなく可愛い妹たちがね。

俺が何も指示を出すまでもなく、ユイとシュリがモンスター相手に無双している。

既にいくつかのパターンでの戦法はみんなに説明してるので、余程のイレギュラーでもない限りは、俺の出る幕はない。
別に怠けているわけではない。
俺は俺の方で色々とやることがあり、忙しい。

「お兄ちゃん!なんか見つけたよー」

うん、想定内想定内・・。

馬車の少し先の所にユイが立っている。
その辺りにはモンスターとか人の反応はない。
グリムをユイのいる方向へと進める。

「こっちこっち~」

少し先は崖になっているようで、ユイはその崖下を指差している。

「あれだよお兄ちゃん」

あ、あれは・・

「んと、集落か何かかな」

50人規模程度の小規模な集落跡が100m程崖下先に広がっていた。
集落跡と言ったのは、人の反応が全くないからだ。

しかし、気になるので降りて調べて見る事になった。
グリムを一旦戻して、4人で崖下へと降りる。

「おーい、二人とも。あんましはしゃぐと怪我するぞ!」

ユイとシュリが崖を駆け足で降りていく。

あー、今までだったら、こういうシュチュエーションは、姉貴分のジラ達がちゃんと躾けてくれていたっけな・・。
改めて居ない事への弊害を感じてしまう。

アリスは、上空を優雅に飛んで降りて行く。

俺が一番最後に、崖下へと着地した。

「じゃ、行くか。気配がないから誰もいないとは思うけど一応警戒はしておいてくれ」
「おっけー」

ユイとシュリがラジャーのポーズを取る。
いつのまにシュリに教えたんだ・・。

集落跡に入った途端、妙な違和感に苛まれた。

「この集落跡おかしいぞ・・」
「ん?誰もいないから?」
「いや、そうじゃない。根本的におかしいだろ。誰も居ないのに、まるで、ついさっきまで人が生活していたような感じじゃないか」

薪は、まだ熱を持って煙を出しているし、木と藁で作られた簡易な居住スペースには、作りかけの食事が放置してあった。その光景を見たシュリが指を咥えている。

「食べたらダメ?」
「シュリちゃん、駄目だよ」

ユイがここぞとばかりにお姉ちゃんアピールしていた。

「でも、美味しそうだから一口くらいならいいかな?」

前言撤回だ。

状況から見て数時間前までは人がいた痕跡がある。
だけど今は誰一人いない。

俺たちがここを見つけてからまだ15分程度しか経過していない。
その時点でも1k圏内に反応はなかった。

妙だな。

(神隠しですか?)
(え、神隠しってこっちの世界にも存在するのか?)
(本当かどうかは不明ですけど、人族は昔から悪い事をすると神隠しでどこか別の世界に連れて行かれるという迷信があるみたいです)

物知りセリアが言うんだから本当にあるんだろう。
でもあくまでも迷信だからね。
魔法のあるこの世界でも流石に神隠しって言われてもシックリこない。
それに、この世界の神の一人とは知り合いだしね・・。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?

水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。 日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。 そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。 一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。 ◇小説家になろう、ベリーズカフェにも掲載中です! ◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

【完結】嫌われ公女が継母になった結果

三矢さくら
恋愛
王国で権勢を誇る大公家の次女アデールは、母である女大公から嫌われて育った。いつか温かい家族を持つことを夢見るアデールに母が命じたのは、悪名高い辺地の子爵家への政略結婚。 わずかな希望を胸に、華やかな王都を後に北の辺境へと向かうアデールを待っていたのは、戦乱と過去の愛憎に囚われ、すれ違いを重ねる冷徹な夫と心を閉ざした継子だった。

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

処理中です...